DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
117 / 279
第七章

第二話

しおりを挟む
晩飯は大好評だった。

トゥエラは夢中でガツガツと、子犬のように頬張り、

テティスは何故か肉を小さく切り分け、
ガリバタライスで“寿司もどき”を作ってはウットリ。

リリはというと、メガネを曇らせながら──

「あふうぅぅぅぅぅぅぅん♡」

まるで連続パンチペガサス流星拳を喰らってる最中のような、
悶絶フェイスで愉しんでいた。

おっさんは、下味だけの肉に、
山脈ゴブリンの爪山わさびをちょいとおろして乗せ、
醸造魔石汁醤油を霧吹きでワンプッシュ。

ツンと鼻に抜けるゴブリンワサビの刺激。

酒が、捗るってもんだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

メシの終わった家族に、渋めのお茶や、
リリにはオレンジのカクテルスクリュードライバーを淹れてやり、

おっさんは腐った川の話を面白おかしく披露すると…
テティスが川を覗き込み、

「地脈が相当に濁っていますね。」

とか言っている。

おっさんは簡易血圧計で指を測り、
「130くらいだっぺ」

とか的外れな検査をしている。


リリとトゥエラが纏めてくれた話によると、

川の水自体が汚いのではなく、
地中深くに流れる謎パワーが、
混ざったり滞ったりとかして、

最悪の場合、この辺りは全部腐って生物が住めなくなる。らしい。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

んだかそうなんですか~」

おっさんは肩をすくめて煙草に火をつけた。
……とはいえ、どうしようもない。

地盤検査の車両も、コンクリート杭打ち重機も、
腰袋おっさんの車庫には収まっているが、
意味もなく掘って打っても無駄だ。

今は忘れよう。
今日の酒と、晩飯がうまけりゃそれでいい。



そして──翌朝。

皆を乗せトラックで出発したのだが…

空が、明らかにおかしかった。

雹が降ったかと思えば、次の瞬間に快晴。
かと思えば、雷が連続で落ち、
土砂降りと強風が同時に襲ってきた。

「なんだこりゃ……」

おっさんはエアコンとワイパーのスイッチを交互にガチャガチャやりながら、
異常な天気の中、車を走らせる。

笑ってるのはトゥエラだけだ。
「たのしーね!」と、ぴょこぴょこ跳ねる。

リリとテティスは無言のまま、険しい表情でフロントを睨んでいる。

そして――

霧が、スッと晴れた。



目の前に現れたのは――

「古墳……じゃないな。」

丸みを帯びた巨大なふちを持つ地形。
だが盛り上がっているのではない。地面が、
ぽっかりと底抜けていた。

まるで大地に穿うがたれた巨大な盃。
その底には、豆粒のように小さな家々や、
まばらに立ち並ぶ塔の影があった。

“街だ”

……すごい風景だ。

でも、雨が降ったら?
排水は? 食料は? どうやって降りる?
穴の底に街。階段ひとつ見当たらない。

「何か色々、間違ってんでねえべか?……」

つい、職業病でツッコミを入れてしまうおっさん。

建築基準法もへったくれもないこの世界に、
またひとつ、謎が増えた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

こんな怪しい場所に、無理して立ち入る必要はない。
だが——
どんな種族が、どんなふうに暮らしているのか。
ちょっとだけ、興味が出てしまった。

おっさんは腰袋から撮影用のドローンを取り出す。

そのままでは目立つと思い、ラッカースプレーで
カーキ色やらグレーやらをシュッと吹きかけ、
簡易迷彩を施す。

静かにプロペラが回りはじめ、
ドローンはゆっくりと宙へと舞い上がった。

谷底の街の上空まで飛ばし、
周囲をゆるやかに旋回しながら、
録画を開始するおっさん。

「……何が映るんだっぺか」

少しだけ、期待と警戒が入り混じる目で、
おっさんは画面を覗き込んだ。

映って見えたのは……
ゴブリン……ではない。

アイツらはどっちかって言うと“食材”枠だ。

この街の連中は、もっとこう……
背が低く、太古の魔女みたいに尖った鼻。
顔はでこぼことして、なんというか……ホヤ?
あの、海にいるボコボコしたやつ。あれに近い。

おっさんも、
人の顔面偏差値をとやかく言える立場じゃないが、
一目見て「ちょっとモテなさそうだなぁ」
と思ってしまった。

リリが画面を覗き込みながら呟く。

「……ホビットですね、多分」

そういう名前らしい。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

男も女もいるようだが、さほど大差はない。
みんな背が低く、顔は……まぁ、その……味がある。

ドローンのカメラを大きめの建物へと寄せていくと、
神官服のようなボロを纏った個体が数体見えた。
きっとこの街の“偉いポジション”なのだろう。

こんな街にオレたちが乗り込んだら、
目立って仕方がないだろうな……
よし、今回はスルーして次を探そう。

──そう思っていた矢先だった。

自動旋回していたドローンが、
穴の中心部を撮影する。

そこには、ひときわ大きな構造物が建っていた。
塔とも神殿とも要塞とも言い難い……
とにかく“謎の塊”としか言いようがない建物。

その壁面に描かれていたのは──

「……あれ。テティスだっぺか??」

無数のレリーフ。浮き彫りにされた長耳の女たち。

髪型も雰囲気も、どことなく似ている。
というか、たぶんあれ……
ラノベで見たことのある、ダークエルフだ。

「……」

テティスは画面モニターをじっと見つめる。
一拍おいて、ぽつりと答える。

「……よく分かりませんが、
私では…ないような……気がします」

曖昧な言い方。
だが、その声にはどこか
“見覚えのある何か”を感じた気配が滲んでいた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

処理中です...