DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
134 / 279
第七章

第十九話

しおりを挟む
夜は静かに、その深みを増していた——

子供たちもすっかり寝静まった頃…

おっさんのベッドルームに、
着崩した妖艶な浴衣姿湯上がり美女のリリが訪れた。

この海底寝室シレーナ・アルマには、プライベートバルコニーが備えられており、
本来であれば喫煙タバコは、外の灰皿を使うのがルールなのだが……

おっさんは気にも止めず、
ベッドサイドの小さなテーブルで、紫煙をくゆらせていた。

部屋に充満する煙に、バイオレットラグーンの反射が混ざり合い──
幻想的というよりは、どこか“怪しい占いの館”のような雰囲気を醸し出している。

手にしたグラスの中は、スピリッツ炭酸水割りソーダ
そこに数滴垂らしたポン酢が、
ほのかな柑橘を香らせる。
通称:柑橘系ストロング酎ハイ。

リリの来訪に少々驚きつつも──
「眠くないのけ~?」と、不細工に笑って、
薄めのポン酢サワーを作ってやる。

対面の椅子には座らず、
おっさんのすぐ隣に腰掛け、
しなだれかかってくる専属受付嬢。

「……お慕い申し上げます」

潤んだ瞳で妖艶な目配せをしつつ、おっさんの顔へとゆっくり近づいて──

しかし、そのタイミングで、
お洒落なカクテルグラスに注いだ酸っぱい酒ポン酢サワーを、
おっさんがリリの顎をクイッと上げて、スッと流し込んでしまう。

「……ッ!?」

覚悟していた“感触”とは違う、
硬いガラスの口当たりに、目を丸くするリリ。
けれど、文句を言うでもなく、
しっかり咀嚼(?)し、頬をぷくっと膨らませる。

「……美味しいです。……ケド。」

ハムスターのような可愛さで膨れっ面をするリリに、
おっさんはヘラヘラと笑って──

おめは貴女はんなことしねでもこんな事しなくても……めんごいんだわ美しいですよ
無理すんでね一緒に呑みましょう。……」

そう言って、リリの頭を優しく撫でる。

まるで波音のように静かな、夜のひとときだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「……不安なんです。貴方が突然、
どこかへ消えてしまうのではと……」

リリは瞳を潤ませ、曇った眼鏡の上から、おっさんをじっと見つめていた。

「…ですから今のうちに深い絆事実関係を…」

などと内情を暴露し始める美女に対し、

こんだら俺みたいなこぎたねぇ冴えないおっさんさ中年男に妙な気使うんでね貴女は勿体無い
慕ってくれるもんを側に居てくれる貴女をうっちゃけて置いてどこかさ突然いっだりしねから旅に出たりはしません気ぃ揉むんでね愛してますよ。」

と訛り切った東北弁で告白してみた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

風呂上がりで暑いのか、頬を真っ赤に染める受付嬢。

「窓あけっけ?」

と夜風を導き、煙草臭い部屋を換気する、

壮大な抱きたいが鈍感系色々面倒くさい主人公おっさんであった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

長崎県・五島列島の片端はしっこに存在する──

Sanctuaryサンクチュアリィ

名もなき小島に、
たったひとつだけ建つ、
静けさの聖域リゾート

ここは、
都会の喧騒ざわめきから遠く離れ、
ただ、
波音とともに眠るためだけに、生まれた場所。

それが、このホテルの名称なまえである。

──そして今、
海の果てから目を覚ました朝焼けが、

自動的に開いたカーテンの向こうから、
雰囲気作りライトアップを終えた寝室に、
容赦なく差し込んできた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

結局──
汗臭いおっさんの腕を枕に、
リリは幸せそうな寝息を立てていた。

腕の麻痺と強烈な神経死しびれの狭間で、
なんとか彼女を起こさぬよう、
ベッドルームからの脱出に成功したおっさんは──

壊死寸前もうちょいで腐りかけの左腕を抱え、

洗面台のぬるま湯にて、
応急処置揉みほぐし治療を施していた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

昨夜の艶のある情景が頭の中で何度も再生ヘビーローテーションされるが…

おっさんがリリを抱くことは──多分ない。


若かりし頃、
出張先の南国で、妻と出会った。

大地震と津波の被害により、
瓦礫の山となってしまった街並み。

その撤去と、仮設住宅の建築、
行方不明となってしまった島民の捜索などで、
大工として派遣された青年おっさん

そんなとき……煙草が切れてしまい、
禁断症状イライラで仕事が雑になり掛けた…そんなとき。

昭和の駅弁売りのような、
見窄《みすぼ》らしい木箱を首から下げた少女が──

若干湿気ったメンソールタバコを、
一本づつ手売りしながら歩いて来た。

浅黒く、長いソバージュに魅せられた青年は、
「箱ごと買わせてくれ」と、
カラフルな一万フィリピンペソの札束を、
少女に握らせた。

呆気に取られる煙草売り可愛い娘に微笑みを浮かべ、
スーッとこないメンソールに火をつけ、
日本の渋い俳優を意識して煙を吐き出した。

若い頃からさっぱり整っていなかった顔面ブサイクは、
それでも少女を微笑まわらわせた。

一年以上の復旧工事をひと段落させ、
帰国の途につく青年に…

寄り添い手を繋ぐ少女の姿があった。

それから十数年、喧嘩もしたが、
仲睦まじく暮らしてきた。

──つもりだった。

ある日突然、故郷くにへ帰る。

と彼女に言われ、
謝ることも、
宥めることも、忘れて怒鳴り散らしてしまったおっさん

そして独身一人となり、
仕事と酒だけにのめり込み…

それでも。妻を──愛していた。


それからというもの、
おっさんはスナックやキャバレーで鬱憤を晴らすことはあっても、

異性を口説くことは辞めた。


もちろん、ホモな訳では無い。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

処理中です...