DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第三十話

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まったりとした休日で英気を養ったおっさんは──
翌朝、いよいよ地下室の工事に取りかかる算段を始めた。

まぁいきなり何かを作るわけでもなし、
ドワーフ帝国の酒蔵見学ツアーで、一応見ては来たのだが…

あの工場はあまりにも規模がデカ過ぎたし、原料の植物の栽培までしていた。

……というかだ、あの酒、いったい何処に消費されているんだ?

ドワーフは滅んでしまって誰も居ないというのに、施設は稼働していた。

何十年も寝かせる酒とかもあるのだろうが、
呑む者もいないあの場所で、余らせた酒はどうなっているのだろうか……

少し考えたが、何も判らないのでやめておいた。

最初に必要なのは、原料となる植物を洗ったり、処理する場所だ。
次に、発酵させたり……なんかするやつで…

最終的にあの龍みたいな機械でボコボコシューシューさせれば良いわけだ。

酒造りに関しては全くの素人であるが、
建築なら自信がある。

ようは見て来たあの施設を全て小さくすれば良いのだ。

原料はプランター程度で育ててもいいだろうし、冒険に行っても手に入ることもあるだろう。

ぼんやりとした構想だけを練って、地上に戻る。

まずは朝メシだ。

昨日の夜に保温調理鍋シャトルシェフに仕込んでおいたビーフシチューとバターを塗って焼いたパンだ。

シチューには、米よりもパンが合うというおっさんの持論だ。

ビートル君が作ってくれた魔法の様な鍋は、
おっさんには使えなかった。

ビートル君が使うと、米と水を入れるだけで、洗米から炊飯まで自動的に仕上がるのだが……

いや、よく見たら自動では無かったのだ。
鍋に、一匹のビートル君が張り付いて、魔石に入っている魔力?を操作して料理しているのだ。

おっさんも真似して、魔石を触って念じてみたのだが…
うんともすんとも動かなかった。

なので、愛用の保温鍋から皿にシチューを盛って
家族の待つテーブルへ運ぶ。

八時間ほど煮込まれた牛肉もジャガイモも、
トロットロになっていて噛む必要すらない程だ。

……噛むけれどもな。

みんなに今日の予定を聞くと、冒険者活動くらいしかやる事がない。だそうだ。

なので、お店も人もいっぱい居る王都にでも行って遊んできたらいいべ?
と提案すると、大喜びしていた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
朝食が終わり、オシャレに着替えた家族たちと手を繋ぎ、
おっさんの立て直した王都の教会前へ…フワリと転移する。

んだばそれでは、夕方にここさに迎えにくっかんな来ますからね?」

と言い残し、煙のように消え去った。

一人、自宅に戻ったおっさん。

セーブルにみんなの護衛もお願いしたし、
心配はないだろう。

──しかしアイツ、本当に影みたいに景色に溶け込んで消えるんだなぁ……

女性陣の賑やかしい買い物ツアーに気を遣ったのか、気配を消して同行するようであった。

そういえば……第一王女が街中をプラプラしてて良いのだろうか?

まぁ、テティス特選の派手な服を着させられていたし、カラフルな付け毛?なんかも装着してたし、誰だか判らんかもしれんな。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

プランとして、おっさんは地下室の半分ほどを使うつもりでいる。

家を南側から見たとき、ちょうど中央に配置された螺旋階段を基準に、その右半分を利用する構想だ。

面積としては、およそ10メートル × 9メートル。
つまり、約25坪82.5㎡の広さとなる。

ここを大体だが4つのエリアに分けて、
作物の下処理をする炊事場、

醗酵をさせる一次保管庫、

メイン作業の蒸留をする機械エリア、

出来上がった酒を樽に詰めて寝かせる場所、とするつもりだ。

もし、酒造りが予想より順調に進んで、置ききれなくなったならば、
地下室のもう半分を使っても構わないかと思っているが、

なんせ個人で楽しむ量が作れればいいわけで、多少の客人や親方達に配れれば十分であろう。

おっさんは別に、「Ossantoryオッサントリー」を起業したいわけではないのだ。

炊事場については──
おっさんでも準備できる範囲だ。

システムキッチンだけでは、さすがに作業量に対してシンクが足りない。
なので、業務用のステンレスシンクをズラリと並べる予定だ。

……イメージとしては、ラーメン屋の厨房。
あの、鍋の湯気と水の音が交差する、ゴチャゴチャだけど機能的なやつ。

今更驚く事でもないが……
壁に水道の蛇口や、ガスの差し込む口を取り付けてみれば──

水も出るし、寸胴鍋で湯を沸かすことも出来た。

まるで……一昔前に流行ったマジシャンセロみたいだ。

次のエリア、醗酵はっこう醸造じょうぞうの工程を行う場所だが、ビートル君を見ると、ドラム缶くらいある大きな……

三重鍋魔導シャトルシェフこしらえていた。

そこに原料をぶち込めば──たぶん酒になるのだろう。

……たぶん、である。

そしていよいよ、出来上がったアルコールを「蒸留」して、
酒精を高め、完成へと導く工程に移るわけだが──

この地下室の天井高は、せいぜい四メートル弱。

あのドワーフ帝国で見た、昇り龍のような巨大蒸留機は──
さすがに再現できそうにない。

「……龍が無理なら、蛇でもいいけ?」

おっさんは、ふと思い出していた。

──そういえば、この世界に転生した頃……
樹海で狩ったあの大蛇。

解体するのも忘れて、
そのままフレコンバックに詰め込んで……
ずっと腰袋の底で寝かせていたのだ。

さっそく取り出して広げてみれば──
そのスケール感たるや、まさに圧巻。
不思議と腐敗もしていなく、さっきまで生きていたような新鮮さだ。

長さも太さも、街中の電柱を超えるほど。
全身に白銀の鱗をまとったその巨体は、
魔物というより、もはや神話生物の域である。

おっさんは、仮設足場をパイプで組み上げ、ウインチで吊り始める。

大蛇をくねらせ、巻き付け、吊るし、固定してゆく。

仕上がったその姿は──
まるで「願いを叶えてくれる神龍シェンロン」の蛇版。

酒を蒸留してくれる、神なるセレス白蛇ナーガ

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

だが…生身の蛇が、酒の蒸留を出来るわけがない。
中身は肉と骨なのだ。
そこで地下室の隅に目をやると……

いつぞや、ミケ火山のドラゴンの体内で採集して、使い道もなく保管してあった黄金の山。

「ビートル君、あっこの黄金を溶かしたりなんかして、蒸留機作れっけ?」

と尋ねると、親指を立てて来た。

ネックレスやら王冠やら、指輪、延べ棒、椅子……?

全て純金で出来ているであろう装飾品を、
働きアリのように抱えて運び、ヘビの口からゾロゾロと侵入していった。

おっさんには理解の範疇を超えた作業なので、ビートル君達に一任して、

木材を精密に加工して組み上げ、鉄板を曲げてたがを作り、

酒樽を量産していった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

タルの内側になる部分には、ガスバーナーを取り出して焼き目をつけてゆく。

こうすれば腐敗も防げて、酒の味も良くなるのではないか……?
まぁ、素人のかじった知識なのだが。

生前、工務店のお客様感謝イベントで、
植木鉢やらゴミ箱やらを大量に造らせれた経験が生きて、

丸めた鉄板を溶接で繋ぎ、
キツめに作った底板をはめ込めば、
大猿ドンキーコングが投げてくるような、立派な樽が完成する。

樽が完成すれば、それを横倒しにして保存する棚も必要になるが、

そんな物はおっさんにすれば、
──目を瞑っていても作れる。

そんな訳は無いので、ちゃんと見ながら作るが、
まぁ、簡単なものだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

昼メシを食うのも忘れて、ストゼロを呑みながら機嫌良く作業を進めれば、

大樽10個とそれを収める棚が出来上がった。

時折、後ろから……ズゴオォォォ!とか、
ビシャアァァァン!とか、災害みたいな音が聞こえていたのだが、

おっさんは決して振り向かないように心がけて、手元の作業だけに集中することにしていた。

若干の嫌な予感と、大きな期待を胸にゆっくりと後方を確認すると……

足場は解体され、天井付近までの高さを存分に使い、ウネウネと宙を泳ぐ……

白金プラチナの大蛇がいた。
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