理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに

砂糖水色

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1章

4話 やる気

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「ハァ…ハァ……ッ」
Yo-Yoテスト。往復走を繰り返し、テンポはどんどん速くなる。
太腿が焼けつくように重く、肺が爆発しそうだった。

「お疲れ!」

俺はその場に膝をついた。
「基礎体力がまだまだだな」
ムッキムキのフィジカルコーチが近づいてくる。
汗で視界が滲む中、俺の走りを冷静に分析した。

「佐古、大幅な改善が必要だ。走り方が悪い。膝を庇って腰が落ちてるし、ストライドが狭い。上半身に余計な力が入って肩も揺れている」

突き刺さる言葉。
分かっていた。
俺は足が速い方じゃない。
怪我をかばって身についた変な癖もある。
それでも数字を突きつけられると、逃げ道はなかった。

 
  昨日の昼休み、画面に表示された知らない番号はクラブの番号だった。
慌てて出ると、クラブスタッフの声が響く。
「佐古、明日メディカルチェックとフィジカルテストをやる。放課後にクラブハウスに来れるか?」

心臓が跳ねた。
これはプロ契約を視野に入れてくれているって事かもしれない。

――そして翌日。

メディカルルームで白衣のドクターに膝を触られる。
「両膝の手術は中3だな。成長線が閉じるまで待ってた分、復帰が遅くなったな。安定はしているが、再発リスクは消えていない」

その言葉に、胸の奥が重くなる。もう怪我はしたくない。
さらに体組成のデータを見せられた。
「筋肉量は多い。ただし上半身に偏っているな。上半身ばかり鍛えたな。」
図星すぎて言葉が出ない。
中学時代怪我ばかりでプレー出来ない時間が長くなった時期に少し太ってしまったことがある。
その時、姉の晴子に冷たい視線で言われた。
「基本的に太ってたらモテないよ」
それはまずい。俺の大事な青春が台無しになってしまう。
そう思って、筋トレを始めたら予想外にハマってしまった。

「無駄な筋肉は落とす。こちらの指定した筋トレ以外はするな。動きの効率を悪くしている」
全身を見透かされた気分だった。

「でも――」
ドクターが続けた。
「ロングキックは規格外だ。距離、精度共にだ。あれはお前のとんでもない武器だ。
だが武器を活かすには、全ての能力をプロレベルにして90分走れる体を作らなきゃならない。

 ――そして今、フィジカルテストの続き。

「次は垂直跳びだ」
腕を振って一気に跳ぶ。
「75センチ。悪くない。高校生としてはトップレベルだな」
スタッフの声に少し胸が熱くなる。ようやく褒められた。キーパー時代に鍛えたジャンプ力はまだ健在だった。

だが次の30メートル走。スタートの合図と同時に飛び出し、全力で駆け抜ける。
「4秒15」
数字を聞いた瞬間、胸の熱は一気に冷えた。
「並の高校生よりは速い。だがプロのSBは3秒7を切る。0.4秒の差は致命的だ」

その場に立ち尽くす俺に、コーチは淡々と続ける。
「佐古、お前には武器がある。だが武器を試合で使うには、走れる体と無駄のないフォームが必要だ。」
 ムッキムキのフィジカルコーチがカルテをめくりながら言った。
「186cm76kg。フィジカル的なポテンシャルは高い。
だが、時間はかかる。それでもやれるか?」

俺は荒い息を吐きながら、ただ無言でうなずいた。
ここからは努力で本物にならなきゃいけない。
今までやりたくても出来ない状況が長かった。
それにどうせ、俺はプロになんてなれない。そうも思っていた。
だったらやっても意味無いんじゃないか?
そういう状態から考えれば、今はやりがいしかない。
自分の中のやる気スイッチを連打しまくって乗り越えるんだ。
 俺はそう固く誓った。


 
 
 
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