理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに

砂糖水色

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2章

1話 仲川

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仲川

  時々サッカーには神がいると言われる事がある。
ペレやマラドーナ、ジーコのような神レベルの選手の事ではなく、神だ。
メッシやクリロナの試合を見ていてそう感じた事は俺もある。
試合が終わってみると、メッシの為の物語だったように思えた事が何度かある。
けれど、それはきっとトップオブトップ、世界中でも数人だけが持ち得る物だろう。
そう思っていた。
プロのサッカー選手になって10年。
代表でもベルギー、オランダでもワールドカップでもチャンピオンズリーグでもプレーした。
だけど、一度も試合中に神の存在を感じたことはなかった。
 
…佐古剛に出会うまでは。
 
最初ユースから上がって来た佐古は全然ダメだった。
コイツなんでトップチームに?
むしろユースで通用してたの?
 そう思った。
だけど、トレーニングルームの窓からアイツの個人練をみて驚いた。
 何度も連続でハーフラインから蹴ってバーに当てているのだ。
しかも跳ね返ったボールが、ほぼ同じ位置に並んでいる。
最初見間違いかと思った。

しばらく眺めていると、俺は更に驚愕した。
今度は左足で同じ事を始めたのだ。
 右よりは精度が少し劣るように見えるが2、3回は連続でバーに当て同じところに跳ね返ってくる。
気がつけばキャプテンの遠藤も隣に来てフリーズしていた。
 それから2人で佐古の所へ行って何メートル飛ぶのか、精度は?と佐古を問い詰めるように根掘り葉掘り聞いた。
 
シーズン終盤。
この時期にトップチームに上がってきた高校生。
練習ではいいところがなく意味不明な存在だったが、J2降格圏に居た俺たちはワンチャン何か起きるのでは?そう思い、佐古の使い方をコソ練した。
 それを監督が見ていたのかどうかは分からないし、実際試合で出来るとは思えなかった。
出場する時の佐古はガタガタ震えるほど緊張していたし、デビュー戦だ。
奇跡のような2点目を目の当たりにした直後、俺はいつもと違うスタジアムの雰囲気に飲まれた。
いつもなら自分でゴールを目指すシーンで
「ここ!」
佐古にそう言われただけでバックパスを選択した。
 
 そして佐古が蹴った瞬間、神を、運命を感じた。
 
俺はボールの行方を見る必要がなかった。

この試合は間違いなく佐古剛のための物語だ。

……だけど。

努力も理屈も、積み上げてきた10年も、すべて無意味に思えた。
一蹴りで全部を持っていかれるなんて、こんな事があっていいのか。

納得出来ない。
だけど俺は間違いなく理不尽な神を感じた。

 
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