聖女候補令嬢の奴隷→聖女に選ばれたのは奴隷でした

京月

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第三話

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「これはどうなっているのよ!!」


 最初に声を上げたのはリラだった。リラはマリーに駆け寄る。


「なんであんたが聖女に選ばれるのよ!聖女候補でもないでしょう!?」


 今にも殴り掛かりそうな勢いのリラとマリーの間に大司祭が入りマリーに質問する。


「君の体に赤い痣はあるかい?」


「はい。腿の裏に…」


「何でそれを言わなかったのよ!!」


「すみません…赤い痣はリラ様のように手の甲に出ると思っていたのです。だから私のは別物だと思っておりました」


「違うとは思っても気にはなっただろう。何故聞かなかったのかな?」


「その、一度リラ様に言おうとしたら汚い肌を見せるな、目が汚れるとおっしゃって…」


「それは…それとこれとは関係ないでしょう!!」


 優しく質問してきた大司祭にありのままを伝えると更に激高するリラ。周囲もこの状況をうまく理解できずにいた。

 歴史上、聖女候補となる者に身分は関係していなかった。平民が聖女となるシンデレラストーリーも存在して子供に大人気なのだ。しかし未だかつて奴隷が聖女に選ばれたことはなかった。

 周囲の動揺を煽るようにリラは声を上げる。


「そもそも聖女は数百年前女神アリア様が魔物や不作による飢饉から人間を救うために力を与えた選ばれた人物の事。いわば人類の象徴ともいえるのよ!人類の象徴が奴隷だなんて誰も納得しないわ!!」


「確かに…」


「その通りだな」


「これは何かの間違えだ。もう一度選定の儀をやり直しせ!」


 儀式の間にいた者たちが一斉に声を上げる。その熱気は儀式の間を覆いつくした。


「黙りなさーーーーーーーーーーーい!!!!!」


 その熱気を一言で冷ましたのが大司祭であった。大司祭は自分に注目を集め元居た壇の上に立つ。


「聖女は女神アリア様が選ばれた今後を託せる存在なのです。それを私たちが決めた身分で異を唱えるなど恥を知りなさい!!私は女神アリアを信仰する宗教の大司祭としてあの少女を当代の聖女として認めます」


 大司祭が認めたことで正式にマリーは聖女として認定された。これを否定することは国の最大宗教を敵に回すと同義になる。冷静な人物は声を上げるのをやめた。

 しかし一人怒りで我を忘れ周りが見えなくなっている者がいた。リラだ。


「私は納得できないわ!!私を差し置いてマリーが聖女?冗談じゃないわよ。あんた何か不正をしたのね、そうでしょ、そうと言いなさい!!」


 リラは手を大きく振り上げマリーを叩こうとする。マリーは目をつむり痛みを覚悟したが叩かれることはなかった。

 リラの後ろから振り上げられた手を止めたのはゼフ・リーグルだった。


「この手を下ろせ」


「これは…違うのです!この女が不正をしたから罰を」


「もしこの手で聖女を殴ったら次の瞬間お前の手は無くなると思え」


 ゼフの冷たい視線で正気を取り戻したリラは慌てて弁解するがゼフからあてられた殺気に腰が抜けその場に座り込んでしまった。


「初めまして。私はゼフ・リーグル、これから私はあなたの盾として忠誠を誓います」


 ゼフはマリーの手の甲にキスをした。

 
 聖女選定の儀は一段落付きマリーは今王城でお風呂に入っている。これから国王や大臣達が集まる会議が行われるのだがそのままの姿だと格好がつかない為身なりを整えていた。


 先にマリー抜きで始まった会議では聖女の話で持ちきりだった。


「奴隷を聖女として本当に認めるのですか?」


「そうは言っても女神アリアに選ばれた正式な聖女だ。異論は唱えれないだろう」


「やはり奴隷では国民も納得しないでしょう」


 会議の論点としてマリーの身分が問題となった。国王自身もどうするべきか悩んでいるとゼフと身なりを整えたマリーが会議の場に現れる。マリーの姿をみて皆言葉を失った。


 風呂に入ったことで汚れて黒ずんでいた髪や肌は綺麗な金色と白色を取り戻し、サイドに長さを保ち前髪で切り揃えられた髪のおかげで隠れていた絶世の美人顔が現れ、髪の色によく合う真っ赤なドレスはまるでマリーの為だけに作られたかのように彼女の美しさに磨きをかけていた。さらに歩くだけで伝わる高貴さに大臣達や国王は唾をのんだ。


「えっと改めましてマリーと言います。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」


 数秒の沈黙。その間に大臣達と国王は視線でアイコンタクトを取る。すでに意見は一致した。


「国王のゼパル・リーグルだ。聖女マリー私たちはあなたを聖女として認めよう」

 
 大人たちは皆満面の笑みだった。
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