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最終話 決着
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塔の扉。
その前に膝を立てる形で座っていたのはベルゾルだった。
服は破れ、明らかに以前より痩せている。
視界の端には使い潰された馬が横になって動かない。
「びっくりしたよ。空き家に行ってみたら誰もいなくて。でもその時何故か直感でここに来れば会える気がしたんだ。2日間馬も休めず走らせて、そしたらほら!やっぱり僕らは結ばれる運命なんだよ」
充血した目で運命を語るベルゾル。
ただの勘でここまで休むことなくやって来て、2日間レレイナ達を待ち続けたのだ。
レレイナに対する執着は異常である。
先ほどまでレレイナしか見ていなかったベルゾルだが、ゆっくりとライの方へ視線を向ける。
「それでさ。その男は誰かな。ねぇ、誰だって聞いているだろ!?」
「レレイナ下がれ」
ベルゾルは刀身剥き出しの剣に手をかけたことで、ライは警戒し、レレイナを自分の背に隠した。
2人のその姿を見てベルゾルは全てを察したのだろう。
俯きながら立ち尽くし、ぶつぶつと独り言を並べている。
「やっぱり僕のことを騙していたんだね。僕は君のことをこんなにも愛していたのに、君は別の男を愛していたんだね。僕は安定した将来も家も人生も何もかもを君のために捨てたのに。こんなの酷すぎる。でも大丈夫。最後には僕の元にいてくれればそれでいい。それでいいんだ。そのためにも僕がするべきことは…」
独り言を辞めた途端、ベルゾルは剣をライに向けて振り下ろした。
ライも自分の剣で受け止めるが、ベルゾルは地面にある袋を叩きつけた。
目くらましようの煙袋。
白い煙が辺りを一瞬で包み、視界が無くなる。
煙が晴れるとベルゾルとレレイナの姿が無かった。
「クソ!!最初から狙いはレレイナか」
開いた扉をみて塔の中に飛び込むライ。
2人の足音が上の螺旋階段から聞こえた。
「助けてライ!!」
「僕が助けてあげるよレレイナ!あの男から」
「ライ!!」
このままではレレイナの身が危ない。
ライは急いで螺旋階段を駆け上がり、屋上へとたどり着いた。
そこにはまるでレレイナを盾の代わりにするように後ろ首を掴むベルゾルがいた。
「ライ君だったかな。君は僕たちの愛には邪魔な存在だ。だから消させてもらうよ」
ゆっくりと歩み寄りながら剣を振るうベルゾル。
この狭い屋上で何とか避けるが、反撃しようにも下手をすればレレイナを切ってしまう。
「ライ!私のことは気にしないで!」
「出来るかなライ君。君はレレイナを傷つけることが」
このままではジリ貧である。
ライは1つの決断をした。
剣を投げ捨てたのである。
ベルゾルは投げ捨てられた剣を。
レレイナとライは互いを見つめていた。
「レレイナ。俺を信じてくれ」
「もちろんよ。ライ」
ライはベルゾルに身1つで突撃した。
突然のことに咄嗟に剣を振るうベルゾル。
剣はライの肩を捉えるが力が上手く伝わっておらず、ライの筋肉に阻まれる。
そのままレレイナごと屋上から押し出した。
「何を!!」
「掴まれレレイナ!!」
ライは片手で屋上の端につかまり、残りの手でレレイナの腕を掴んだ。
ベルゾルは態勢が悪くそのまま逆さまに塔から落ちていく。
僕は何処で間違えたんだ。
僕は何か悪いことをしただろうか。
僕は。
◇◇
それからの話。
ベルゾルはお尋ね者として王直属の衛兵たちが動き、塔付近で発見された。
ベルゾルのあられもない姿にバーファーはバルメロ家の関与を追及したが、既に王からの信頼を失っていたバーファーは聞く耳すら持たれること無くその生涯を閉じた。
ある小さな村に1組の夫婦がやってきた。
決して楽な生活ではなかったが、彼らは子供にも恵まれ、幸せな時間を過ごした。
その前に膝を立てる形で座っていたのはベルゾルだった。
服は破れ、明らかに以前より痩せている。
視界の端には使い潰された馬が横になって動かない。
「びっくりしたよ。空き家に行ってみたら誰もいなくて。でもその時何故か直感でここに来れば会える気がしたんだ。2日間馬も休めず走らせて、そしたらほら!やっぱり僕らは結ばれる運命なんだよ」
充血した目で運命を語るベルゾル。
ただの勘でここまで休むことなくやって来て、2日間レレイナ達を待ち続けたのだ。
レレイナに対する執着は異常である。
先ほどまでレレイナしか見ていなかったベルゾルだが、ゆっくりとライの方へ視線を向ける。
「それでさ。その男は誰かな。ねぇ、誰だって聞いているだろ!?」
「レレイナ下がれ」
ベルゾルは刀身剥き出しの剣に手をかけたことで、ライは警戒し、レレイナを自分の背に隠した。
2人のその姿を見てベルゾルは全てを察したのだろう。
俯きながら立ち尽くし、ぶつぶつと独り言を並べている。
「やっぱり僕のことを騙していたんだね。僕は君のことをこんなにも愛していたのに、君は別の男を愛していたんだね。僕は安定した将来も家も人生も何もかもを君のために捨てたのに。こんなの酷すぎる。でも大丈夫。最後には僕の元にいてくれればそれでいい。それでいいんだ。そのためにも僕がするべきことは…」
独り言を辞めた途端、ベルゾルは剣をライに向けて振り下ろした。
ライも自分の剣で受け止めるが、ベルゾルは地面にある袋を叩きつけた。
目くらましようの煙袋。
白い煙が辺りを一瞬で包み、視界が無くなる。
煙が晴れるとベルゾルとレレイナの姿が無かった。
「クソ!!最初から狙いはレレイナか」
開いた扉をみて塔の中に飛び込むライ。
2人の足音が上の螺旋階段から聞こえた。
「助けてライ!!」
「僕が助けてあげるよレレイナ!あの男から」
「ライ!!」
このままではレレイナの身が危ない。
ライは急いで螺旋階段を駆け上がり、屋上へとたどり着いた。
そこにはまるでレレイナを盾の代わりにするように後ろ首を掴むベルゾルがいた。
「ライ君だったかな。君は僕たちの愛には邪魔な存在だ。だから消させてもらうよ」
ゆっくりと歩み寄りながら剣を振るうベルゾル。
この狭い屋上で何とか避けるが、反撃しようにも下手をすればレレイナを切ってしまう。
「ライ!私のことは気にしないで!」
「出来るかなライ君。君はレレイナを傷つけることが」
このままではジリ貧である。
ライは1つの決断をした。
剣を投げ捨てたのである。
ベルゾルは投げ捨てられた剣を。
レレイナとライは互いを見つめていた。
「レレイナ。俺を信じてくれ」
「もちろんよ。ライ」
ライはベルゾルに身1つで突撃した。
突然のことに咄嗟に剣を振るうベルゾル。
剣はライの肩を捉えるが力が上手く伝わっておらず、ライの筋肉に阻まれる。
そのままレレイナごと屋上から押し出した。
「何を!!」
「掴まれレレイナ!!」
ライは片手で屋上の端につかまり、残りの手でレレイナの腕を掴んだ。
ベルゾルは態勢が悪くそのまま逆さまに塔から落ちていく。
僕は何処で間違えたんだ。
僕は何か悪いことをしただろうか。
僕は。
◇◇
それからの話。
ベルゾルはお尋ね者として王直属の衛兵たちが動き、塔付近で発見された。
ベルゾルのあられもない姿にバーファーはバルメロ家の関与を追及したが、既に王からの信頼を失っていたバーファーは聞く耳すら持たれること無くその生涯を閉じた。
ある小さな村に1組の夫婦がやってきた。
決して楽な生活ではなかったが、彼らは子供にも恵まれ、幸せな時間を過ごした。
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