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私はテーブルに置かれたエールがこぼれそうな勢いで立ち上がり、女性に詰め寄った。
「その話は本当!?生きているの!?」
「ちょっと!エールがこぼれる所だったじゃない。全く何をそんなに驚いているかは知らないけど聞いた話によると生きてはいるらしいわ」
……母様、よかった、無事なんだ……。
いけない…涙が。
もう会えないと思っていた母親が生存しているという話に今まで張り詰めていた緊張の糸が緩むような感覚になり、涙を流してしまう。
女性は何も言わずに私が奢ったエールを飲み干すと席を立つ。
「エール美味しかったわ。……それと私は嘘偽りが好きじゃない。だから私が言ったことは嘘ではない。だけど真実が幸せとは限らないから。それを忘れないでね」
何か含みを感じる言葉を吐いた女性は酒屋を後にした。
でも今の私は母様が生きていることを知れたことで気分が舞い上がりそれを気にする程落ち着いてはいなかった。
夕食の前にオリンの屋敷へと戻る。
与えられた部屋のベッドで横になりながら顔をうずめる。
母様が生きている……!
自然と笑みがこぼれてしまう私だが誰かが扉をノックしたので表情を作る。
訪ねてきたのはレレイだった。
「失礼します。お夕食が出来たのでライラも一緒に食べませんか?」
「それは…出来ないです。身請けされたとはいえ元は娼婦、同じ食卓を囲めば使用人に何と思われるか、レレイ様の顔に泥を塗るのと同義です」
「確かにそう思われるかもしれませんが、私はそれで構いません。むしろ同じ食卓を囲み同じものを食べる。なんだか家族みたいだと思いませんか?私はオリン様はもちろん、ライラとも家族になりたいのです」
なんだか昔のレレイを見ているようだ。
誰にでも優しくて私のことを慕ってくれていたあの時の……。
いけない!気をしっかり持て!
しかし断り続けるとかえって怪しまれるかもしれない、ここはレレイの言う通りにしょう。
私とレレイ、オリンは同じ食卓で食事をした。
特に何の役にも立たないオリンの過去の出来事。
誰にでも起こりうるごく普通の失敗談なのに心の底から笑ってしまった。
夜、私はオリンに秘め事の教授を行う。
まだ若々しいその情熱は私自身が感じてきた中でも指折りだ。
秘め事を楽しいと思ったことは一度たりともなかったが、今回ばかりは楽しんでいたと思う。
夜が更け、夢を見ているオリンの横で私は窓から月を眺める。
先程イサから報告があり、レレイの行動に不審な点は見受けられなかったそうだ。
むしろ給仕にすら対等に接しようとする姿勢には感心すらしたと。
「今の私は…一体どうしたいの?」
確かにレレイには恨みを持っている。
だけど、レレイにもレレイなりの事情があったのではないか?それを理解し歩み寄り、手を取り合えるのが本来の姉妹の姿なのではないのか…?
母様が生きていることを知ってから私は変わった。変わってしまった。
信念が揺らぎ、幸せを取り戻そうとしているんだと思う。
でもそれがいけないことなのか、今の私には分からない。
「明日も街に出てみよう。何か分かるかもしれない」
明日に希望を持ちながら私は眠りについた。
「その話は本当!?生きているの!?」
「ちょっと!エールがこぼれる所だったじゃない。全く何をそんなに驚いているかは知らないけど聞いた話によると生きてはいるらしいわ」
……母様、よかった、無事なんだ……。
いけない…涙が。
もう会えないと思っていた母親が生存しているという話に今まで張り詰めていた緊張の糸が緩むような感覚になり、涙を流してしまう。
女性は何も言わずに私が奢ったエールを飲み干すと席を立つ。
「エール美味しかったわ。……それと私は嘘偽りが好きじゃない。だから私が言ったことは嘘ではない。だけど真実が幸せとは限らないから。それを忘れないでね」
何か含みを感じる言葉を吐いた女性は酒屋を後にした。
でも今の私は母様が生きていることを知れたことで気分が舞い上がりそれを気にする程落ち着いてはいなかった。
夕食の前にオリンの屋敷へと戻る。
与えられた部屋のベッドで横になりながら顔をうずめる。
母様が生きている……!
自然と笑みがこぼれてしまう私だが誰かが扉をノックしたので表情を作る。
訪ねてきたのはレレイだった。
「失礼します。お夕食が出来たのでライラも一緒に食べませんか?」
「それは…出来ないです。身請けされたとはいえ元は娼婦、同じ食卓を囲めば使用人に何と思われるか、レレイ様の顔に泥を塗るのと同義です」
「確かにそう思われるかもしれませんが、私はそれで構いません。むしろ同じ食卓を囲み同じものを食べる。なんだか家族みたいだと思いませんか?私はオリン様はもちろん、ライラとも家族になりたいのです」
なんだか昔のレレイを見ているようだ。
誰にでも優しくて私のことを慕ってくれていたあの時の……。
いけない!気をしっかり持て!
しかし断り続けるとかえって怪しまれるかもしれない、ここはレレイの言う通りにしょう。
私とレレイ、オリンは同じ食卓で食事をした。
特に何の役にも立たないオリンの過去の出来事。
誰にでも起こりうるごく普通の失敗談なのに心の底から笑ってしまった。
夜、私はオリンに秘め事の教授を行う。
まだ若々しいその情熱は私自身が感じてきた中でも指折りだ。
秘め事を楽しいと思ったことは一度たりともなかったが、今回ばかりは楽しんでいたと思う。
夜が更け、夢を見ているオリンの横で私は窓から月を眺める。
先程イサから報告があり、レレイの行動に不審な点は見受けられなかったそうだ。
むしろ給仕にすら対等に接しようとする姿勢には感心すらしたと。
「今の私は…一体どうしたいの?」
確かにレレイには恨みを持っている。
だけど、レレイにもレレイなりの事情があったのではないか?それを理解し歩み寄り、手を取り合えるのが本来の姉妹の姿なのではないのか…?
母様が生きていることを知ってから私は変わった。変わってしまった。
信念が揺らぎ、幸せを取り戻そうとしているんだと思う。
でもそれがいけないことなのか、今の私には分からない。
「明日も街に出てみよう。何か分かるかもしれない」
明日に希望を持ちながら私は眠りについた。
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