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第二話

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 手紙の内容に驚き少し固まっていた。

 何とか気持ちを整えて折りたたまれた紙を開けた。

 …離婚届け

 酒を飲もう。

 ナナル…はいないか。

 自分で酒を用意しようとしたが酒がどこに保管してあるのかわからない。

 もう寝るか。

 ナナルのことは明日考えよう。

 寝ているとき神託を受けた。


「聖女から愛想をつかされましたね。
 
 聖騎士の力を封印させてもらいます。

 聖女からの愛を取り戻さない限り力は戻らないと思いなさい」


 ベットから跳ね上がるように起き上がる。

 聖騎士の力が使えなくなった?

 俺はすぐに外に出て剣の素振りをする。

 聖騎士の時は素振りだけで地面を割る。

 だが俺の剣は振っただけで何も切ることはできなかった。

 まずい、まずいまずいまずい!

 これでは魔物を倒すことも人々を救うこともできない。

 なにより自分が聖騎士でなくなることが怖くてたまらない。

 俺はすぐに身支度をしてナナルを探す旅に出る決意をする。

 まずはナナルの居場所を探さないと。

 手紙に書いてあった「真実の愛」…

 あまり考えたくはないが駆け落ちということか。

 ナナルは主婦だからあまり男性と関係を持つとは思えない。

 だとすれば…商人か。

 俺は地方から王都に商売をしにくる商人たちに聞いて回る。

 聞き込みをした一人がこんなことを言っていた。


「ダードという若いハンサムな商人がいてな、商売するところするところで女性を口説いているんだが結構本気にしてしまう女性が多い。あんたの探している女性もその中の一人なんじゃないかね」


 ダードは王都から三週間かかる商業都市に店を構えているらしい。

 先ずはその商業都市を目指すことにした。


 

 馬車に揺られて三週間、ナナルがいるであろう商業都市にやってきた。

 多種多様の店が軒を連ね活気で満ちている。

 店を回りながらナナルを探していると街の真ん中で人だかりができている。


「だから僕は結婚する気はないんだって」


「ひどい!私とは遊びだったのね!?」


「僕はあなたと付き合っていた気はないよ」


「嘘言わないで!奥さんきれいですねって何度も言ってくれたじゃない!」


「あれは営業トークで…」


 言い合っているのは若いハンサムな男とナナルだった。

 俺はナナルのところに向かうとあちらも俺に気づいた。


「グラス…」


「ナナル、やっと会えた」


「私は会いたくなかったわ」


「そんなこと言わないでくれ」


 俺は持参した婚姻届を出し


「結婚してください!」


 するとナナルも離婚届けを出し


「離婚してください!」


 お互いに九十度のお辞儀でお願いした。
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