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第三話

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「結婚してください!」


「離婚してください!」


「どうしたら結婚してくれるんだ!?」


「どうしたら離婚してくれるんですか!?」


「俺に足りないものはなんだ?」

 
「あげればきりがないです!」


「特に足りないものは?」


「…財力」


「わかった、金持ちになればいいんだな」


「そんな単純なことじゃないです!」


「おい、ダードとかいう商人」


「え、僕?」


「どうすればお金が稼げる?」


「ええっと…街道に現れる賞金がかかった野盗を捕まえれば」


「そうか。ありがとう」


 俺はすぐにその街道に向かう。


「待ってろよナナル。必ず君を取り戻す」


「…何よ全く」




 この商業都市は様々な行商人がやってくる。

 それを狙う野盗も同じく存在する。

 その中でも最近行商人を困らせているのが禁商団という野盗らしい。

 禁商団は他の野盗と違い統率の取れた集団で無駄がない。

 そのため街道を警備している自警団もお手上げだそうだ。



「すみませんでした」


 その禁商団のリーダーが今俺の前で土下座している。

 何でかって?

 街道を歩いていたら偶然禁商団を見つけてボコボコにした。

 仲間の居場所を聞き出しそこに乗り込んでボコボコにした。

 そしたらリーダーが土下座した。

 以上だ。

 聖騎士ではなくなったが元々騎士なのでそこら辺の野盗ごときには負けない。


「なんとか見逃してくれないか?」


「金が要る。無理だ」


「そうか…」


「それよりこいつをどうかしてくれ」


 俺の右隣に俺の腕をがっちりホールドしている若い女性。

 短髪の赤髪で頬に傷があるものの美しい女性だった。


「ラン、離れなさい!」


「いや!こんなに強い男に初めて会ったんだ。絶対離さない。結婚する」


「そうか…どうか娘をよろしくお願いします」


「待て、俺はこいつと結婚する気はないぞ」


「私は罪を償ってきます。…娘を幸せにしてください」


「だから俺はこいつと結婚する気はない」


「ラン、幸せになれよ」


「話を聞け」


「お父さん!今までありがとう」


 禁商団のリーダーはそのまま抵抗もせず自警団に引き渡され俺はお金を手に入れた。


 俺は手に入れた金を持ってナナルのところに向かった。


「ナナル、金は用意した。結婚してくれ」


「……」


「なんだ?そんなクズを見るような顔をして」


「……」


「金以外に足りないものがあるなら言ってくれ」


「常識とデリカシー」


「なんだそれは?どうやったら手に入る?」


「ねえ?グラスは私に求婚してるのよね?」


「ああ」


「ならその女は何?」


「初めまして。私はラン。私のことは気にしないで」


「そういうことだ気にするな」


「気にするわよ!!求婚してる男が隣に女を連れているなんておかしいでしょ!!」


「こいつはもう俺から離れないらしい。諦めてくれ」


「うん。私はグラスから離れないから。諦めて」


「……」


「ナナル。俺と結婚してください!」


「グラス。私と離婚してください」
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