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家出少女①
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ほどなくして、先生は学園の系列である別の高校へ転任していった。
表向きの理由は赴任先の高校で教師が退職し急きょ先生にお呼びがかかったということだが、実際のところは先生が学園の生徒に手を出していたことが発覚し、学園にいられなくなったからだともっぱらの噂だった。
先生が転任した直後に、委員長が学園を退学した。
これも噂にすぎないが、先生の子供を妊娠してしまい、中絶を拒んで親と大喧嘩になっているそうだ。
だが、先生が手を出していたのは僕と委員長ばかりではない。
全校集会で、先生が挨拶もなく転任していくことが学園長の口から告げられたとき、クラスの女子だけで五人以上の子がその場に泣き崩れた。
一年の女子にも、三年の先輩にも、人目をはばからず泣いている子がいた。
ハンサムでみんなの人気者だった先生がいきなりいなくなったことで悲しみに暮れていただけと見ることもできる。
けれども同じ立場である僕には、彼女たちが泣いている理由が痛いほどわかった。
* * *
先生が生徒に手を出していることをリークしたのは僕ではない。
おそらく、委員長でもない。
クラスでも派手めなグループの子たちが、隣に僕が座っているにも関わらずべらべら喋っていたのを聞いたところによれば、それは発覚するべくして発覚したのだ。
『個人練習と称して残したテニス部の部員を更衣室で食っているのは有名だった』
『保険医ともデキていて保健室でよくやっていた。その関係で鍵でも預かっているのか、生徒を保健室に連れ込んでヤッていることもあった』
『体育館倉庫で使用済みコンドームが見つかったのも先生の仕業だった』
『中校舎三階のトイレで女の悲鳴が聞こえるっていう七不思議も、実際は先生が生徒とエッチしていただけだった――』
……そこまで手広くやっていたのなら、どこから発覚したかは問題ではない。モテるのをいいことに生徒を食いまくっていたヤリチン教師は、欲望に正直になりすぎて自滅したのだ。
転任先は男子校だというから、ある程度のペナルティーを課されたとも言える。けれども両手に余るほどの生徒を好き放題食い散らしてきた罪科に照らせば、寛大過ぎる処分と言うべきだろう。
『事の大きさに、学園側が表沙汰になることを怖れた。懲戒免職にしても先生の口を封じることはできない。それならば、学内に留めて飼い殺すしかない――』
隣の席の子たちが話すもっともらしい内部事情も、今の僕にとっては心底どうでもよかった。
* * *
マコトの身体が一番大好きだ――セックスするたびにそう言って僕を喜ばせた先生の言葉は、あるいは嘘ではなかったのかも知れない。
学園内でそれだけ多くの女子とちまちま関係を持ちながら、僕のことは三日にあげず家に連れ込んではあの回数のセックスをこなしていたのだから。
僕が一号で委員長が二号、他の女子たちはつまみ食い。
先生がそれぞれの女子とセックスするのに使っていた『時間』で測れば、そう結論づけることができる。
ただ、実際のところどうだったかは先生に聞いてみなければわからない。
心の中にはもっと好きな子がいて、ただヤリたいときにいつでもヤレる僕と一番長い時間を過ごしていた……ということも考えられるからだ。
【会いたいよ、マコト。会いたくてたまらない】
――だからこのLINEも、先生がいまだに僕のことを想っている証拠とは限らない。
先生がいなくなってもう半月になるが、先生からは毎日LINEが来る。
一日一通だけ。『会いたい』というただその一言だけをいろんな言い回しで毎日。
長ったらしいポエムを送ってくるのではない、一日に何通もストーカーチックに送ってくるのでもないその絶妙なやり方に、さすがは先生と皮肉な感動を覚える。
男だった僕の心を女のそれに変え、どろどろに蕩けさせてしまっただけのことはある。
そんな先生のLINEに、僕は一度も返信していない。
僕の毎日の既読スルーを先生がどんな目で眺めているのかわからない。だがそれでも先生は粘り強く、僕に『会いたい』と一言だけ伝えるLINEを送り続けている。
電話ではなく、面と向かって会うことだけを求めてくる――これはいかにも先生らしい手口だ。
おおかた会って話せばいくらでも僕を言いくるめられると思っているのだろう。言葉巧みに僕の同情を引き出して、またあの頃のように僕の身体をヤリたい放題にできる関係に戻りたいと考えているのだ。
そして、僕が求めに応じて先生と会えば、きっとそうなる。
最後に一度だけならと、LINEで先生と会うことを約束して出向く。さすがに先生の家で会うようなことはしない、喫茶店かどこかで会う。
そこで先生がどんな言い訳を連ねるかわからない。ただ話の持っていき先は決まっている。
帰り際に先生が後ろから僕を抱きしめ「俺にはマコトしかいないんだ」と言って大声で泣く……それで先生のミッションはコンプリートだ。
燃えるような瞳で見つめられ、「好きだ」と言いながら何度もキスされ、ためらいつつ先生の家に連れてゆかれ、翌朝まで一晩中セックスする。
何度もイカされ、何度も中に出され、心は先生を恨んだまま身体は先生のものに戻ってしまう。
そうして僕はこれまでのように、先生にとって都合のいい『セックス用のカノジョ』になる。
「たぶん」でも「おそらく」でもなく「きっと」そうなる。
なぜなら他の誰でもなく、僕がそうなることを望んでいるからだ。
「……っ!」
……そのことを思うとどす黒い感情が胸の奥にわきおこってくる。
僕の恋心を裏切った先生を殺したいほど憎む気持ちと、先生を許してまた抱かれたい気持ち……そのふたつの気持ちが胸のうちに共存したまま僕の内側を埋め尽くすようにふくらんでゆき、頭がおかしくなりそうになる。
また騙されてもいい、他の女がいたっていい。もう一度先生に会って、先生と話がしたい。先生と抱き合ってひとつに溶け合って、先生の気持ちが僕から離れてしまったのではないことを確かめたい。
「……っ! ……~~~っ!」
でも僕は絶対に先生を許さない。
僕に愛の言葉をささやいている裏で他の女にも同じことを言っていた先生を許さない。
僕と毎日あれだけラブラブなエッチをしながら他の女ともセックスしていた先生を許さない。
僕の心を女につくりかえたのは先生なのにその女心を踏みにじった先生を許さない。
許さない、許さない、許さない。
僕は絶対に先生を許さない!
「~~~っ! ~~~っ!」
決して相容れないふたつの感情の間で揺れ動く心が、苦しい苦しいと言って壊れかけている。
初恋の男に身も心も捧げて裏切られた女の子は、こんな気持ちになるものだろうか。
ふとそう思って――それこそがまさに僕自身であることに気づいた。
初恋の男に身も心も捧げて裏切られた女の子――それが僕だ。
「……そうだよね」
もと男だったとかそうじゃないとか、そんなことはなにも関係ない。
生まれながらの女の子だって、きっと最初から『女』だったわけじゃない。
真剣に誰かに恋をして、好きだから身体を開いて、その人を自分の中に受け入れてはじめて『女』になるのだ。
僕は、女の子として先生に恋をした。
先生を自分の中に受け入れて、先生によって『女』にされた。
――そう、身体だけでなく心も。
先生にまた抱かれたい気持ちを胸にかかえながら、先生と会うことをかたくなに拒絶するのは、僕が先生に恋をしていたからだ。
いや違う……僕が先生に恋をしているからだ。
そう思って、先生と別れてはじめての涙が僕の両目から溢れ出した。
「うっ……ううっ……」
駅前のベンチに座ったまま、人目もはばからず僕は泣き続けた。
何人か声をかけてきそうになった男もいたが、睨みつけて追い返した。
天国から地獄に叩き落された……そんな使い古された言い回しも今の僕の状況を正確には言い表せない。
僕は心を犯された。
先生によって女にされた心を、その先生に犯されたのだ。
そうして僕は、自分の心がもう完全に女になっていることを認めざるを得なかった。
……その通り。僕はもう完全に女だ。
……だってそうだろう。男に手ひどく裏切られ、その男を激しく恨み、けれどもその男への想いを断ち切れずに泣いている――そんな僕が、女以外の何であるというのだ……。
「……メチャクチャにしてやる」
信じていた男の裏切りは、女を破滅的な行動に駆り立てる。
――いつかどこかの週刊誌で読んだフレーズだが、それはどうやら本当だったようだ。
ただ、裏切った先生を滅茶苦茶にしたいわけではない。僕は女としての自分自身を滅茶苦茶にしてやりたくなった。
先生に裏切られた女としての自分を、もっとどこまでも貶め、汚してやりたいという思いがふつふつと湧いてきたのだ。
はじめて先生の家に招かれる前に考えていた神待ち掲示板の利用も、今の僕なら余裕でできる。見ず知らずの男の家に泊まって無理やり犯される……女としての自分をそんなひどいめに遭わせてやりたい。
もっとも、現実問題としてそうせざるをえないという事情もある。先生と別れてからネカフェを泊まり歩いていたが、そろそろお金が尽きようとしているのだ。
だから僕は今日これから、はじめて神待ち掲示板に書き込もうと思っている。
バスト89の女子高生です。顔もかわいいってよく言われます。ゴム無しでオーケーです。やさしい人、どうか泊めてください――とでも書き込めば、ものすごい数の男が手をあげてくれることだろう。
そして僕はその中から選んだ男の家に泊まり、好きでもないその男に中出しセックスされることになる。
「……ふふっ」
だがそんな自分を想像したとき、僕の身体におこった反応はおまんこの疼きだった。
先生に開発されまくったこの身体は、そんな救いのないシチュエーションにすら欲情するのだ。
この淫乱クソ女、と心の中で自分に悪態をつく。
わが身の情けなさに、僕は泣きながら笑い続けた。いくら巨乳の美少女といっても、周囲にはだいぶアブナイやつに見られていたことだろう。
「……そんなんじゃ足りない」
そう……そんな中途半端な凌辱では足りない。今の僕にはそんなものすら生ぬるい。
女としての自分を、もっと取り返しがつかないほど滅茶苦茶にしてやりたい。
「たとえば……そうだ」
大学の研究室に『キモデブ』とあだ名されるドクターの先輩がいた。
そのあだ名通り不潔感ただようデブで、顔はブサイクを売りにしている某芸人に似ており、卑屈で挙動不審でコミュ障を絵にかいたような、いつも研究室の隅っこで一人ブツブツ呟いている男。
真性のロリコンらしくローティーンの女子を見る目のギラつきが異常で、いつか新聞に名前が載るのではないかと学生ばかりか教授陣にまで陰口を叩かれている犯罪者予備軍。
……ここはいっそロリっ子にでもキャラメイクしなおしてその先輩の家に転がりこむというのはどうだろう?
そうすれば僕はそのロリコン野郎によって滅茶苦茶にされるに違いない。
処女膜もありで臨めばおじさんに奪われたときには快楽のうちに過ぎてしまった破瓜の苦痛もしっかりと味わえるはずだ。
なぜならキモデブ先輩は使い道もないくせにチンコばかりが異様にデカく、勃起時にはゆうに20センチはあろうかという無駄に立派なモノをお持ちだという噂だからだ。
そんな凶悪なモノをロリっ子である僕の処女マンコに無理矢理ねじ込んだら、それはそれはひどいことになるだろう。
先生のようなイケメンに望んで抱かれるのではなく、キモい変態のクソ野郎に嫌で嫌でたまらないが無理矢理に犯されるのだ。
淫乱クソ女と変態クソ野郎、ちょうどいい組み合わせではないか。
ヨダレが出るほどロリっ子とヤリたくて仕方がない変態の家に、無防備なロリっ子が転がりこむのだから、大きなアリジゴクの巣に弱ったアリを放り込むようなものだ。
さぞかし美味しく食べていただけることだろう。
そうすれば自分の中にある先生への想いの残滓は消えてくれる気がした。逆にそこまでしないと、僕の中にある先生への想いはいつまでも断ち切れないと思った。
男女の性差として、恋愛の思い出をどうやって心に残すかをPCへの保存になぞらえた有名な格言がある。
『男は名前をつけて保存、女は上書き保存』
甘い甘い初恋のメモリーを、一生悪夢に見るような最低最悪の記憶で上書きしてやるのだ……それこそが、先生への最高の復讐になるのではないかと思った。
「ふふっ……ふふふっ……」
また笑いがこみあげてくる。だが今度は泣き笑いではない。
もう涙はとっくに乾いていた。
……そんなことができるなら苦労しない。ログインしてこの方、ゲームらしい展開もないまま、やけにリアルな男との性的な関係ばかり体験させられているのだ。
キャラメイクのやりなおしなんて、そんなゲームみたいな展開は期待するだけ無駄だ。
そう思って、僕は頭をあげた。
そこで、久しぶりに目の前に選択肢が現れた。
「え……」
その選択肢を目にしたとき、僕は唖然としてしまった。
――――――――――――――――――
1.5歳若返ってゲームを続ける。
2.今のままの歳でゲームを続ける。
※いずれか一方を言葉にして下さい。
――――――――――――――――――
表向きの理由は赴任先の高校で教師が退職し急きょ先生にお呼びがかかったということだが、実際のところは先生が学園の生徒に手を出していたことが発覚し、学園にいられなくなったからだともっぱらの噂だった。
先生が転任した直後に、委員長が学園を退学した。
これも噂にすぎないが、先生の子供を妊娠してしまい、中絶を拒んで親と大喧嘩になっているそうだ。
だが、先生が手を出していたのは僕と委員長ばかりではない。
全校集会で、先生が挨拶もなく転任していくことが学園長の口から告げられたとき、クラスの女子だけで五人以上の子がその場に泣き崩れた。
一年の女子にも、三年の先輩にも、人目をはばからず泣いている子がいた。
ハンサムでみんなの人気者だった先生がいきなりいなくなったことで悲しみに暮れていただけと見ることもできる。
けれども同じ立場である僕には、彼女たちが泣いている理由が痛いほどわかった。
* * *
先生が生徒に手を出していることをリークしたのは僕ではない。
おそらく、委員長でもない。
クラスでも派手めなグループの子たちが、隣に僕が座っているにも関わらずべらべら喋っていたのを聞いたところによれば、それは発覚するべくして発覚したのだ。
『個人練習と称して残したテニス部の部員を更衣室で食っているのは有名だった』
『保険医ともデキていて保健室でよくやっていた。その関係で鍵でも預かっているのか、生徒を保健室に連れ込んでヤッていることもあった』
『体育館倉庫で使用済みコンドームが見つかったのも先生の仕業だった』
『中校舎三階のトイレで女の悲鳴が聞こえるっていう七不思議も、実際は先生が生徒とエッチしていただけだった――』
……そこまで手広くやっていたのなら、どこから発覚したかは問題ではない。モテるのをいいことに生徒を食いまくっていたヤリチン教師は、欲望に正直になりすぎて自滅したのだ。
転任先は男子校だというから、ある程度のペナルティーを課されたとも言える。けれども両手に余るほどの生徒を好き放題食い散らしてきた罪科に照らせば、寛大過ぎる処分と言うべきだろう。
『事の大きさに、学園側が表沙汰になることを怖れた。懲戒免職にしても先生の口を封じることはできない。それならば、学内に留めて飼い殺すしかない――』
隣の席の子たちが話すもっともらしい内部事情も、今の僕にとっては心底どうでもよかった。
* * *
マコトの身体が一番大好きだ――セックスするたびにそう言って僕を喜ばせた先生の言葉は、あるいは嘘ではなかったのかも知れない。
学園内でそれだけ多くの女子とちまちま関係を持ちながら、僕のことは三日にあげず家に連れ込んではあの回数のセックスをこなしていたのだから。
僕が一号で委員長が二号、他の女子たちはつまみ食い。
先生がそれぞれの女子とセックスするのに使っていた『時間』で測れば、そう結論づけることができる。
ただ、実際のところどうだったかは先生に聞いてみなければわからない。
心の中にはもっと好きな子がいて、ただヤリたいときにいつでもヤレる僕と一番長い時間を過ごしていた……ということも考えられるからだ。
【会いたいよ、マコト。会いたくてたまらない】
――だからこのLINEも、先生がいまだに僕のことを想っている証拠とは限らない。
先生がいなくなってもう半月になるが、先生からは毎日LINEが来る。
一日一通だけ。『会いたい』というただその一言だけをいろんな言い回しで毎日。
長ったらしいポエムを送ってくるのではない、一日に何通もストーカーチックに送ってくるのでもないその絶妙なやり方に、さすがは先生と皮肉な感動を覚える。
男だった僕の心を女のそれに変え、どろどろに蕩けさせてしまっただけのことはある。
そんな先生のLINEに、僕は一度も返信していない。
僕の毎日の既読スルーを先生がどんな目で眺めているのかわからない。だがそれでも先生は粘り強く、僕に『会いたい』と一言だけ伝えるLINEを送り続けている。
電話ではなく、面と向かって会うことだけを求めてくる――これはいかにも先生らしい手口だ。
おおかた会って話せばいくらでも僕を言いくるめられると思っているのだろう。言葉巧みに僕の同情を引き出して、またあの頃のように僕の身体をヤリたい放題にできる関係に戻りたいと考えているのだ。
そして、僕が求めに応じて先生と会えば、きっとそうなる。
最後に一度だけならと、LINEで先生と会うことを約束して出向く。さすがに先生の家で会うようなことはしない、喫茶店かどこかで会う。
そこで先生がどんな言い訳を連ねるかわからない。ただ話の持っていき先は決まっている。
帰り際に先生が後ろから僕を抱きしめ「俺にはマコトしかいないんだ」と言って大声で泣く……それで先生のミッションはコンプリートだ。
燃えるような瞳で見つめられ、「好きだ」と言いながら何度もキスされ、ためらいつつ先生の家に連れてゆかれ、翌朝まで一晩中セックスする。
何度もイカされ、何度も中に出され、心は先生を恨んだまま身体は先生のものに戻ってしまう。
そうして僕はこれまでのように、先生にとって都合のいい『セックス用のカノジョ』になる。
「たぶん」でも「おそらく」でもなく「きっと」そうなる。
なぜなら他の誰でもなく、僕がそうなることを望んでいるからだ。
「……っ!」
……そのことを思うとどす黒い感情が胸の奥にわきおこってくる。
僕の恋心を裏切った先生を殺したいほど憎む気持ちと、先生を許してまた抱かれたい気持ち……そのふたつの気持ちが胸のうちに共存したまま僕の内側を埋め尽くすようにふくらんでゆき、頭がおかしくなりそうになる。
また騙されてもいい、他の女がいたっていい。もう一度先生に会って、先生と話がしたい。先生と抱き合ってひとつに溶け合って、先生の気持ちが僕から離れてしまったのではないことを確かめたい。
「……っ! ……~~~っ!」
でも僕は絶対に先生を許さない。
僕に愛の言葉をささやいている裏で他の女にも同じことを言っていた先生を許さない。
僕と毎日あれだけラブラブなエッチをしながら他の女ともセックスしていた先生を許さない。
僕の心を女につくりかえたのは先生なのにその女心を踏みにじった先生を許さない。
許さない、許さない、許さない。
僕は絶対に先生を許さない!
「~~~っ! ~~~っ!」
決して相容れないふたつの感情の間で揺れ動く心が、苦しい苦しいと言って壊れかけている。
初恋の男に身も心も捧げて裏切られた女の子は、こんな気持ちになるものだろうか。
ふとそう思って――それこそがまさに僕自身であることに気づいた。
初恋の男に身も心も捧げて裏切られた女の子――それが僕だ。
「……そうだよね」
もと男だったとかそうじゃないとか、そんなことはなにも関係ない。
生まれながらの女の子だって、きっと最初から『女』だったわけじゃない。
真剣に誰かに恋をして、好きだから身体を開いて、その人を自分の中に受け入れてはじめて『女』になるのだ。
僕は、女の子として先生に恋をした。
先生を自分の中に受け入れて、先生によって『女』にされた。
――そう、身体だけでなく心も。
先生にまた抱かれたい気持ちを胸にかかえながら、先生と会うことをかたくなに拒絶するのは、僕が先生に恋をしていたからだ。
いや違う……僕が先生に恋をしているからだ。
そう思って、先生と別れてはじめての涙が僕の両目から溢れ出した。
「うっ……ううっ……」
駅前のベンチに座ったまま、人目もはばからず僕は泣き続けた。
何人か声をかけてきそうになった男もいたが、睨みつけて追い返した。
天国から地獄に叩き落された……そんな使い古された言い回しも今の僕の状況を正確には言い表せない。
僕は心を犯された。
先生によって女にされた心を、その先生に犯されたのだ。
そうして僕は、自分の心がもう完全に女になっていることを認めざるを得なかった。
……その通り。僕はもう完全に女だ。
……だってそうだろう。男に手ひどく裏切られ、その男を激しく恨み、けれどもその男への想いを断ち切れずに泣いている――そんな僕が、女以外の何であるというのだ……。
「……メチャクチャにしてやる」
信じていた男の裏切りは、女を破滅的な行動に駆り立てる。
――いつかどこかの週刊誌で読んだフレーズだが、それはどうやら本当だったようだ。
ただ、裏切った先生を滅茶苦茶にしたいわけではない。僕は女としての自分自身を滅茶苦茶にしてやりたくなった。
先生に裏切られた女としての自分を、もっとどこまでも貶め、汚してやりたいという思いがふつふつと湧いてきたのだ。
はじめて先生の家に招かれる前に考えていた神待ち掲示板の利用も、今の僕なら余裕でできる。見ず知らずの男の家に泊まって無理やり犯される……女としての自分をそんなひどいめに遭わせてやりたい。
もっとも、現実問題としてそうせざるをえないという事情もある。先生と別れてからネカフェを泊まり歩いていたが、そろそろお金が尽きようとしているのだ。
だから僕は今日これから、はじめて神待ち掲示板に書き込もうと思っている。
バスト89の女子高生です。顔もかわいいってよく言われます。ゴム無しでオーケーです。やさしい人、どうか泊めてください――とでも書き込めば、ものすごい数の男が手をあげてくれることだろう。
そして僕はその中から選んだ男の家に泊まり、好きでもないその男に中出しセックスされることになる。
「……ふふっ」
だがそんな自分を想像したとき、僕の身体におこった反応はおまんこの疼きだった。
先生に開発されまくったこの身体は、そんな救いのないシチュエーションにすら欲情するのだ。
この淫乱クソ女、と心の中で自分に悪態をつく。
わが身の情けなさに、僕は泣きながら笑い続けた。いくら巨乳の美少女といっても、周囲にはだいぶアブナイやつに見られていたことだろう。
「……そんなんじゃ足りない」
そう……そんな中途半端な凌辱では足りない。今の僕にはそんなものすら生ぬるい。
女としての自分を、もっと取り返しがつかないほど滅茶苦茶にしてやりたい。
「たとえば……そうだ」
大学の研究室に『キモデブ』とあだ名されるドクターの先輩がいた。
そのあだ名通り不潔感ただようデブで、顔はブサイクを売りにしている某芸人に似ており、卑屈で挙動不審でコミュ障を絵にかいたような、いつも研究室の隅っこで一人ブツブツ呟いている男。
真性のロリコンらしくローティーンの女子を見る目のギラつきが異常で、いつか新聞に名前が載るのではないかと学生ばかりか教授陣にまで陰口を叩かれている犯罪者予備軍。
……ここはいっそロリっ子にでもキャラメイクしなおしてその先輩の家に転がりこむというのはどうだろう?
そうすれば僕はそのロリコン野郎によって滅茶苦茶にされるに違いない。
処女膜もありで臨めばおじさんに奪われたときには快楽のうちに過ぎてしまった破瓜の苦痛もしっかりと味わえるはずだ。
なぜならキモデブ先輩は使い道もないくせにチンコばかりが異様にデカく、勃起時にはゆうに20センチはあろうかという無駄に立派なモノをお持ちだという噂だからだ。
そんな凶悪なモノをロリっ子である僕の処女マンコに無理矢理ねじ込んだら、それはそれはひどいことになるだろう。
先生のようなイケメンに望んで抱かれるのではなく、キモい変態のクソ野郎に嫌で嫌でたまらないが無理矢理に犯されるのだ。
淫乱クソ女と変態クソ野郎、ちょうどいい組み合わせではないか。
ヨダレが出るほどロリっ子とヤリたくて仕方がない変態の家に、無防備なロリっ子が転がりこむのだから、大きなアリジゴクの巣に弱ったアリを放り込むようなものだ。
さぞかし美味しく食べていただけることだろう。
そうすれば自分の中にある先生への想いの残滓は消えてくれる気がした。逆にそこまでしないと、僕の中にある先生への想いはいつまでも断ち切れないと思った。
男女の性差として、恋愛の思い出をどうやって心に残すかをPCへの保存になぞらえた有名な格言がある。
『男は名前をつけて保存、女は上書き保存』
甘い甘い初恋のメモリーを、一生悪夢に見るような最低最悪の記憶で上書きしてやるのだ……それこそが、先生への最高の復讐になるのではないかと思った。
「ふふっ……ふふふっ……」
また笑いがこみあげてくる。だが今度は泣き笑いではない。
もう涙はとっくに乾いていた。
……そんなことができるなら苦労しない。ログインしてこの方、ゲームらしい展開もないまま、やけにリアルな男との性的な関係ばかり体験させられているのだ。
キャラメイクのやりなおしなんて、そんなゲームみたいな展開は期待するだけ無駄だ。
そう思って、僕は頭をあげた。
そこで、久しぶりに目の前に選択肢が現れた。
「え……」
その選択肢を目にしたとき、僕は唖然としてしまった。
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1.5歳若返ってゲームを続ける。
2.今のままの歳でゲームを続ける。
※いずれか一方を言葉にして下さい。
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