29 / 29
25勘違いしました! ーエルドラント国宰相ー
しおりを挟む
ミランダ様の正妃了承とエマリア様の次期王位継承が済み数日が過ぎた。
後は、前正妃の刑執行日を決めるだけだ。
色々とあったが、王の執務室内は、今日も変わらず慌ただしい時を送っている。
そんな中で、宰相である私「ミラルド=ヘイドリア」も、陛下の右腕としてバタバタと動き回っていた。
その時。
「閣下、お客様です」
今日此方に用があると言っていた、私の兄にして、現当主であるヘイドリア公爵が来たと、近侍から伝えられた。
「かまわん、此方へ通してくれ」
どうやら、兄は今日陛下に対し、個人的な用があるらしい。
まぁ、私も同席を願われたので国に関する内容だろう。
「ミラルド、すまんな」
「いえ…では、陛下の元へ参りましょうか?」
そう言うと、私は兄を伴い陛下の居られる最奥の部屋へと向かった。
因みに、陛下の執務室は縦三部屋に分かれており、普段私は二番目の部屋で仕事をしている。
「相変わらず、お前の部屋は書類だらけだな」
そんな中、兄は二番目の部屋を見るなり一言言った。
「まぁ、陛下にお渡しする前の書簡や嘆願書などは、私が先にチェックしてますからね……陛下、ヘイドリア公爵をお連れしました」
「入れ」
コンコンと、軽い音を立て扉をノックすると、直ぐに陛下から返答があった。
それに合わせ、兄と部屋の中に入る。
「よく来たなヘイドリア公爵。まぁ、座ってくれ。ミラルドも座りなさい」
豪奢な執務机に座り、書類に埋もれていた陛下は、疲れた表情で席を立つと、そのまま目の前にあるソファーに座り直した。
「では、失礼して…」
私達が座ると同時に、侍女により紅茶が用意された。
「して、ヘイドリア公爵。今日其方が話があると言っていたが、何用だ?」
紅茶に口を着けながら、穏やかに問われる陛下。
それに対し、何処か落ち着きのない兄が応えた。
「実は…エマリア様についてお話が」
その瞬間、陛下の眉がピクリと動いた。
それはそうだろう。
先日、ルドニーク殿とカイル殿を同時に城から出したばかり。
少し警戒なさるのも無理はない。
「エマリアがどうした?」
陛下の態度に、兄の表情が強張る。
「実は、先日の式典後のパーティーの件なのですが…」
はて、あの式典やパーティーで問題などなかったが。
寧ろトーラス国の客人も招く事が出来、此方としてはかなり有意義だった。
「あの時、エマリア様が最初のダンスを踊られた方と、エマリア様はとても仲睦まじく感じました。しいては、エマリア様の婚約者として我が国に招くと言うのはいかがかと……陛下?」
兄の言葉に、陛下が物凄い顔になっていた。
…………いや、私もか。
確かに、エマリア様と「彼」はいい雰囲気だった。
だが、あれは「そう言う」のではなく、将来のため、手をとられただけだ。
「ヘイドリア公爵……お前もまだまだだな。あれが「そう」見えたか。だが、残念だ……彼、シルビア=サフィール殿は、トーラス国次期国王であるエリオット殿の婚約者。無闇にこちらから手を出せる相手ではない………それに、彼奴の父親は「あの」レイナード=リクトルだぞ?今はサフィール家に婿に入り家が変わったが………お前も知っていよう?」
そこまで言われて、兄の表情が一気に青ざめた。
「レイナード=リクトルですと!……あの「氷の悪魔」ですか!まさか、そんな!では私は………しまったーーーーーーーー!」
いきなり発狂した兄。
まさか………。
「既に、提案としてトーラス国に書簡を送ってしまいました!」
我が兄ながら………バカなのか?
普通考えるだろぉ!
「貴様!知らぬとは言え、まずワシを通してから出さんか!」
「兄上!何故よりによってサフィール家に手を出すのですか!」
そう、サフィール家は我が国の鬼門。
代々トーラス国の中枢を担い、王族との血縁関係もある。
しかも、現宰相である「レイナード」殿は、若かりし日から近隣諸国では有名人。
その頭脳と冷血さ、そして、操る血統魔法から「氷の悪魔」と言う二つ名がついた程だ。
我がエルドラント国も、散々彼に泣かされてきた。
「陛下……如何いたしますか?」
既に兄は気を失い、床に転がっている。
「まったく、バカ共の火種を消したばかりだと言うのに……。ミラルド……すまぬが頼めるか?」
頭を抱える陛下。
お気持ちは痛い程分かります!
「分かりました。明日、このバカ兄を連れ、トーラス国に向かいます。直接お詫びしなくては国家間の問題になりかねません!」
「頼む……まったく、次から次に。とにかく、あの国…特にレイナード=サフィールだけは敵にしたくないからな」
あぁ、まったく……胃が痛い。
思い出すだけで具合が悪くなる。
「ええ、また関税や、輸出輸入の規定なんかで問題を起こしたくありませんし……あぁ、本当に胃が痛い………クソ兄め!」
そして、私達は翌日、直ぐに書簡を認め、早馬の馬車にてトーラス国を目指すのだった。
「い………胃が痛い」
「それは私のセリフです!バカ兄上!」
後は、前正妃の刑執行日を決めるだけだ。
色々とあったが、王の執務室内は、今日も変わらず慌ただしい時を送っている。
そんな中で、宰相である私「ミラルド=ヘイドリア」も、陛下の右腕としてバタバタと動き回っていた。
その時。
「閣下、お客様です」
今日此方に用があると言っていた、私の兄にして、現当主であるヘイドリア公爵が来たと、近侍から伝えられた。
「かまわん、此方へ通してくれ」
どうやら、兄は今日陛下に対し、個人的な用があるらしい。
まぁ、私も同席を願われたので国に関する内容だろう。
「ミラルド、すまんな」
「いえ…では、陛下の元へ参りましょうか?」
そう言うと、私は兄を伴い陛下の居られる最奥の部屋へと向かった。
因みに、陛下の執務室は縦三部屋に分かれており、普段私は二番目の部屋で仕事をしている。
「相変わらず、お前の部屋は書類だらけだな」
そんな中、兄は二番目の部屋を見るなり一言言った。
「まぁ、陛下にお渡しする前の書簡や嘆願書などは、私が先にチェックしてますからね……陛下、ヘイドリア公爵をお連れしました」
「入れ」
コンコンと、軽い音を立て扉をノックすると、直ぐに陛下から返答があった。
それに合わせ、兄と部屋の中に入る。
「よく来たなヘイドリア公爵。まぁ、座ってくれ。ミラルドも座りなさい」
豪奢な執務机に座り、書類に埋もれていた陛下は、疲れた表情で席を立つと、そのまま目の前にあるソファーに座り直した。
「では、失礼して…」
私達が座ると同時に、侍女により紅茶が用意された。
「して、ヘイドリア公爵。今日其方が話があると言っていたが、何用だ?」
紅茶に口を着けながら、穏やかに問われる陛下。
それに対し、何処か落ち着きのない兄が応えた。
「実は…エマリア様についてお話が」
その瞬間、陛下の眉がピクリと動いた。
それはそうだろう。
先日、ルドニーク殿とカイル殿を同時に城から出したばかり。
少し警戒なさるのも無理はない。
「エマリアがどうした?」
陛下の態度に、兄の表情が強張る。
「実は、先日の式典後のパーティーの件なのですが…」
はて、あの式典やパーティーで問題などなかったが。
寧ろトーラス国の客人も招く事が出来、此方としてはかなり有意義だった。
「あの時、エマリア様が最初のダンスを踊られた方と、エマリア様はとても仲睦まじく感じました。しいては、エマリア様の婚約者として我が国に招くと言うのはいかがかと……陛下?」
兄の言葉に、陛下が物凄い顔になっていた。
…………いや、私もか。
確かに、エマリア様と「彼」はいい雰囲気だった。
だが、あれは「そう言う」のではなく、将来のため、手をとられただけだ。
「ヘイドリア公爵……お前もまだまだだな。あれが「そう」見えたか。だが、残念だ……彼、シルビア=サフィール殿は、トーラス国次期国王であるエリオット殿の婚約者。無闇にこちらから手を出せる相手ではない………それに、彼奴の父親は「あの」レイナード=リクトルだぞ?今はサフィール家に婿に入り家が変わったが………お前も知っていよう?」
そこまで言われて、兄の表情が一気に青ざめた。
「レイナード=リクトルですと!……あの「氷の悪魔」ですか!まさか、そんな!では私は………しまったーーーーーーーー!」
いきなり発狂した兄。
まさか………。
「既に、提案としてトーラス国に書簡を送ってしまいました!」
我が兄ながら………バカなのか?
普通考えるだろぉ!
「貴様!知らぬとは言え、まずワシを通してから出さんか!」
「兄上!何故よりによってサフィール家に手を出すのですか!」
そう、サフィール家は我が国の鬼門。
代々トーラス国の中枢を担い、王族との血縁関係もある。
しかも、現宰相である「レイナード」殿は、若かりし日から近隣諸国では有名人。
その頭脳と冷血さ、そして、操る血統魔法から「氷の悪魔」と言う二つ名がついた程だ。
我がエルドラント国も、散々彼に泣かされてきた。
「陛下……如何いたしますか?」
既に兄は気を失い、床に転がっている。
「まったく、バカ共の火種を消したばかりだと言うのに……。ミラルド……すまぬが頼めるか?」
頭を抱える陛下。
お気持ちは痛い程分かります!
「分かりました。明日、このバカ兄を連れ、トーラス国に向かいます。直接お詫びしなくては国家間の問題になりかねません!」
「頼む……まったく、次から次に。とにかく、あの国…特にレイナード=サフィールだけは敵にしたくないからな」
あぁ、まったく……胃が痛い。
思い出すだけで具合が悪くなる。
「ええ、また関税や、輸出輸入の規定なんかで問題を起こしたくありませんし……あぁ、本当に胃が痛い………クソ兄め!」
そして、私達は翌日、直ぐに書簡を認め、早馬の馬車にてトーラス国を目指すのだった。
「い………胃が痛い」
「それは私のセリフです!バカ兄上!」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる