[執筆休止中]私の婚約者になった人は「氷の王子」と呼ばれる人でした?

阿華羽

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1 婚約者ができました

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 皆様ご機嫌よう。

 まず、自己紹介からいたしましょうか?
 私の名は「シフォン・レイモンド」。
 筆頭公爵家の長女にして、父親は我国「コウラン国」の宰相を勤めております。
 容姿はと申しますと、父親譲りのプラチナブロンドの髪に母親譲りの緑の瞳。お顔は…まぁ、中の上位かしら?美人ではないですが、普通よりは若干可愛らしいのではないかと思います。
 因みに、私と同じ色を持つ一つ違いの兄がおりますが、彼の容姿の破壊力は凄まじいです。なんせ、父親ソックリの超美丈夫なのですもの。
 正直私は可愛らしいお母様に似てよかったですわ……あんな社交界で目立つ顔は御免ですもの。

 と、まぁ……本題に入りましょうか?
 実は、現在私は父の執務室の前でストップしております。

『シフォン、話があるので執務室に来るように』

 そう、お父様からの呼び出しを、私の専属侍女のミミリアから聞いたのはつい数分前。
 その呼び出しを受けた瞬間、嫌な予感しかしませんでした。
 ここ最近、私の周りの方々が色々と動かれているのは「従兄妹」の情報で知っていましたが…。

 正直、逃げてもいいかしら…はぁ、父にして、一族の長の命令ですものね、逃げる訳にもいきませんし、ここは腹を括りましょうか。

「お父様、シフォンです」
「ああ、入りなさい」

 コンコンと、軽めのノックに反応して、中から聞こえた艶のあるバリトンの声に、私はキュっと表情を引き締めると、ゆっくりとノブを回しました。

 中に入ると、宰相と言う肩書き通りの忙しそうな光景に、別に今呼び出さなくても…と、部屋を出たくなりました。
 つまりは、忙しさのあまり持ち帰り仕事が増えた挙句、部屋中に書類が溢れ、室内が超汚いのです。
 足の踏み場もないとは、正にこの事でしょう。

「シフォン、急にすまないな」
「いえ、お父様が宜しいなら構いませんが…」
「まぁ、とりあえず………座りなさい」

 私の表情に苦笑した父は、そのまま着席を促しました。
 お父様……その少し憂いを帯びた表情の破壊力、半端ないですわ。
 本当、昔社交界でそのお顔のせいで失神する御令嬢が多かったと言うのも頷けますね。
 いえ、現在進行形でしたね。お母様が先日ぼやいておいででしたから。

「シフォン?困った顔でどうしたんだい?」

 あら?出してないつもりだったけど、顔に出てたのかしら?……でも。

「お父様…………座る場所がありませんわ」
「…………あ」

 結局、この後、片付けという名の書類整理を手伝い、本題に入ったのは数時間後でした。




*****




「でさぁ、本当にありえないんですけど!」

 私は、カンッ!っと、目の前のソーサーに珈琲の入ったカップを置くと、吐き出す様に愚痴た。
 あ、勢いつけ過ぎて少しソーサーに溢れたわ…。

 今日は学園がお休という事もあり、親友である「リリアナ・クリフ」を誘って、下町の喫茶店に来ている。
 カフェとは言わず、喫茶店と言うのも、この店は古くから商いをしており、最近流行りのお洒落なカフェとは全く違う店だからだ。
 店内は骨董品がお洒落になれべられ、皮のソファーも良い感じにくたびれている。しかも半個室でプライベートもバッチリだ。
 知る人ぞ知る!といった感じのこの店は、昔から私の大のお気に入りだ。

「シフ……地、出まくりよ?」

 いつもの、淑女の中の淑女と言われる仮面をかなぐり捨てる私に、リリアナは呆れ返る様に深い溜息をついた。

「まぁ、今はお忍びですから?余計な事は言わないけど。で?店に入って早々何?家が没落でもしそうなの?」

 彼女の、この歯に着せない話し方に、私はいつもほっとする。本当の親友とは、彼女の様に接してくれる人を言うのだろう。
 社交界では上部だけの関係が多いからね。
 リリアナは伯爵家の長女で次期伯爵。父親のクリフ伯爵は、私の父の補佐官をしている。
 まぁ、簡単に彼女との関係を言うと「幼馴染」ね。

「リリー、実は知ってるんじゃないの?」
「え?どの事」

 あっけらかんと聞き返す親友に、思わず前のめりに突っ伏す。

「どの?って、どれだけ情報もってるのよ!」
「ん?まぁ、色々?」
「……流石情報屋、っつ!じゃない!」
「あらあら、忙しい子だこと」
「誰のせいよ!」

 と、まぁ、漫才はさて置き。
 私は、昨夜父から伝えられら「決定事項」を、重い口調で口にした。

「昨日、お父様から言われたの………「婚約者」ができたって。しかも相手がぁぁ」

 そう。
 昨日、私が執務室に呼ばれた内容。
 それは、私の「婚約者」についてだった。
 貴族の令嬢ともあれば、若いうちに婚約者を決めてしまうのは当たり前と言っていい。
 私も十六歳。世間一般としては、この年齢で婚約者がいない方が珍しいのだ。

「いいんじゃなーい?一生食うには困らない相手よ?」

 相手を伝える前に、リリアナはニヤリと口角を上げた。
 真っ黒なストレートの長い髪に、切長な紅い瞳の彼女は、それだけで様になるほどの悪女っぷりだ。

「………魔女め、やっぱり知ってたんじゃない!」
「魔女言うな!って、まぁ?裏で公爵様とうちのお父様が色々セッティングしてるのは知ってたわよ?」

 まぁ、宰相とその補佐ですものね。一緒に行動してても不思議はないわ。

「相変わらず、深くまで知ってるのね」

 国王陛下の右腕、いや、両腕とも言えるお父様の補佐官の娘ですもの。
 しかも、学生ながら父親の仕事を手伝うとかしてるみたいだし。

「で?何が不満なの?いいんじゃない、相手の方「この国の次期国王」なんだし」

 そう、それが問題なのだ。
 昨日父から伝えられた内容に、未だに頭が痛くなる。
 何でよりによって…。

「だって「氷の王子」様よ?それに、私に王妃の仕事が務まると思う?」

 そう、相手はこの国の王太子、「ルーカス・フォン・コウラン」。
 そして、「氷の王子」と言う二つ名の持ち主だった。

「ま、いいじゃない?氷だって、溶かしてあげたら?それに、あんたが王妃の仕事出来ないなんてありえないから!万年主席の嫌味にしか聞こえないわよ?」
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