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28 ユリウス・ラングレー侯爵子息の事情

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 さて、まず僕の自己紹介からだ。

 僕の名前は、ユリウス・ラングレー。
 末端の侯爵家の三男だ。
 ブロンズ色の髪に、金の瞳。
 自慢ではないが、とても美しい色を持っている。

 我が家は代々王国騎士団に勤め、当主であるお祖父様は現騎士団長をしている。

 そして、大変不本意ではあるが、僕は「三男が故」、筆頭侯爵家のドロッセル家長女のフィオラの婿になる事が決まっている。
 お祖父様同士が「仲が良く」、どうやら同い年の僕達を婚約させたらしい。

 因みに僕の父は長男。いずれはお祖父様の後を継がれると思っていたが、どうやら次期侯爵は、長男である兄上らしい。
 父上が「何故」次期侯爵になられないかは「不明」だが………まぁ、気弱な父上だ。当主には向かないと判断されたんだろう。




*****




「本当、父上も勿体ない事をしましたよね」

 両親がいないサロンで、兄上達とお茶をしながら僕は呟いた。
 夕食も終わり、今は兄弟同士の団欒中だ。

 今日は、結婚して家を出た次男のアリア兄上も帰宅している。
 僕は、久しぶりに長兄のセドリック兄上を含む三人で楽しい時間を過ごしていた。

 そんな和やかな雰囲気に、普段から思っていた事がつい口から漏れた。

「何がだ?」
「急にどうした」

 不思議そうに返してきた兄上達。
 歳が一つ違いのせいか、息がピッタリだ。

「いえ、父上のあの性格がなければ、次期当主になれていたのに……と」

 気弱で、いつも書斎から出て来ない父上。
 いつも「何か」に怯えたようにビクビクとしながら生活なさっている。
 特に、自分の父親であるお祖父様に対し、かなり苦手意識を持っているようで、僕は生まれてこのかた、父上とお祖父様がまともに会話をしているのを聞いた事がない。

 僕の言葉に、セドリック兄上が溜息を吐かれた。

「まぁ、父上は仕方ないな。あの「性格」さえなければ結果も違っていただろうに。あれは父上の「自業自得」だ」

 確かにな。
 あの気弱さえなければ、騎士団に在籍し、お祖父様だって認めてくださっただろうに。
 フム…と、僕が顎に手を当て考える仕草をすると、アリア兄上はクスリと笑みを零した。

「ユリウスは優しいな、「あんな」父上を心配するんだから。私には無理だ。私を産んでくれた事は感謝するが、それ以外はどうでもいい。寧ろ話したくもないし、近づきたくもない。アレは尊敬にも値しないクズだ」

 口は笑っているが、目は全く笑っていない。
 何故兄上達はそこまで父上に冷たいんだ?

「おい、アリア……言い過ぎだ」

 呆れたように平然と返すセドリック兄上。
 だが、その表現に感情が無い。

 兄上達は、何故そこまで父上を……。

「まぁ、ユリウスにも「昔話した」様に、父上はこの家に必要ない方だからね。種を残すためだけに存在してるのさ。だから、私達があの人をどう思うかは自由だろ?お前だって、父上のせいでドロッセル家との縁組が決まったじゃないか……まぁ、相手はあのフィオラ嬢。お前には荷が重いだろうが」

 シレっと言われた、アリア兄上の話に言葉が出ない。

 な、んだって?
 父上のせいで僕とフィオラが?
 どう言う意味だ?

 まぁいい、どちらにせよあの女が僕の妻になったら、お飾りでいてもらう予定だ。
 僕が愛しているのはフレアだけだ。フィオラは顔と体だけは美しいからな、「其方」では使わせてもらう。
 いずれは、僕にはいつくばらせ、下僕にしてやるつもりだ。

 それにしても、兄上もよく分かってらっしゃる。
 確かにあの女は、僕には「重荷」でしかないからな。
 財力と体しかのうがないクソ女だ。
 頭がいいのを鼻にかけ、直ぐに人を見下す性格の悪さ。僕より頭がいいからと、いつも小馬鹿にしてくる、最低な女だ。
 あんなのを一生背負わされると思うと吐き気がする。

 婚姻後は使うだけ使って、ボロ雑巾にしてやるさ。

「まぁ、ユリウスは父上のようにはなるなよ?これは「忠告」だ。次の当主としてのな。これ以上我が家に愚か者はいらん。お前も心しておけ」

 静かにだが、圧をかけてくるセドリック兄上。
 流石は騎士団の副隊長だな。

「分かってます。僕は父上みたいにはなりませんよ」

 どう転んでも、僕があんな「気弱」で「根暗」になるはずがないだろうに。
 兄上は心配性だ。
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