Breaker

いずみたかし

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6章 正体

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6章 正体

「倉木、松林が憎いだろ?」
 深夜、僕は倉木を都内某所の廃墟ビルへ呼び出した。誰も知らない僕の隠れ家。誰も知らない僕の顔。幼い頃に殺した猫の姿が脳裏に浮かぶ。体をビクビクと震わせて血を流して息絶えた猫。その一部始終を見届けた時は僕の脳に快感が走った。思えばあれが始まりだった。内なる声に従った結果だ。
「は・・・い・・・」
 倉木には以前から少しずつマインドコントロールするように話しかけてきた。マインドコントロールは意思決定能力に欠ける者程効果を発揮することができる。僕が倉木をマインドコントロールの対象に選んだ理由の一つに倉木の意思の脆弱さがあった。
 廃墟ビルには電気が通っていないため、自前の懐中電灯で周囲を照らす。ぼんやりと映った倉木の目は虚ろで、まるで人形のようだ。もっとも虚ろにしているのは僕なのだが。
   出来損ないの人形。
「君はずっと我慢してきた」
「は・・・い・・・」
「松林は死んで当然だと思うだろう?」
「は・・・い・・・」
 社会の歯車として正常に機能しない者同士を壊すのが僕の趣味だ。松林は能力ある人間
ではあるが、倉木を含め大勢の人間を病ませてきた理不尽な振る舞いは社会不適合者と言っていい。つまり破壊の対象だ。
「じゃあ、どうする?」
 僕の問いに倉木は数秒の沈黙の後に答える。
「僕が・・・」
「僕が・・・?」
「殺・・・し・・・ます」
 合格だ。思わず顔がにやけてしまう。
 錆び付いたアルミサッシの窓の外からポツリポツリと雨音が聞こえてきた。室内を見渡す。古びた本棚。実験器具が並んでいる大きな机。シューズで擦るとザラザラとしているコンクリートの床。冬だと言うのに横たわっている虫の死骸。理科室に置いてあるような人体模型。そして僕が用意した出来損ないの人形。
 ふと本棚の中を見るとジョージ・オーウェルの「一九八四年」が目に留まり、手に取ってページをパラパラとめくる。
   戦争は平和なり。
   自由は隷従なり。
   無知は力なり。
 何度も読み返したこの言葉達は僕の血肉となっている。現在は二〇一九年だが、僕達の生きるこの世界はオーウェルの描いた「一九八四年」の世界と一体何が異なると言うのだろう。何も違わない。人間は平和を望みながら、自由を望みながら、力を望みながら、本当のところは支配されたがっている。
   僕はこの世界のビッグ・ブラザーになろう。
 奴らは別所のことを追うのだろう。僕がマインドコントロールした別所を。

      * * *

「白野君が行方不明?」
 ハルカが珍しくすっとんきょうな声を上げる。
「ああ、一昨日から家にも戻って来ていないし、会社も休んでいるらしい。おまけにGPSアプリでの追跡もできない」
 俺は喫茶シャーロックを訪れていた。俺の頭の中は破壊者を追うことでいっぱいだった。汚い二郎の家にいるより、喫茶シャーロックにいるほうが考えを整理するのには都合がいい。俺が纏っている空気を察しているのか今日は珍しくケプリルは店に姿を現さなかった。
「これからどうする気?」
 ハルカがコーヒーを淹れ、コーヒーカップを俺の目の前にコトンと置く。俺は黒いコーヒーに映る自分の顔を覗き込んでから、コーヒーを一口啜る。やはり物事を考えるのにコーヒーは欠かせない潤滑油だ。
「別所を追う。が、他にも考えていることはある」
 俺は一枚のメモをハルカに差し出す。
「過去を洗いざらい調べてくれ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「疑っているのね?」
「・・・この状況で疑わずにはいられない」
「・・・わかったわ。全力で情報をかき集める」
「今奴の身辺を嗅ぎまわるのは危険が伴う。くれぐれも注意しろよ」
「あら、心配してくれてるの?」
「・・・まあな」
「私を誰だと思ってるの?」
「一流の情報屋」
「分かってるじゃない」
「・・・これ以上犠牲者は出したくない」
「犠牲者になるつもりはないわ。私が何のために情報屋を始めたと思ってるの?」
「そうだったな」
 俺はハルカの過去を知らない。なぜ情報屋になったのかも。だがそれに破壊者が関わっていることは間違いなかった。
「なあ、現代にビッグ・ブラザーは存在し得ると思うか?」
「いきなりどうしたの? ビッグ・ブラザーってオーウェルの小説に出てくる人物よね?」
「ああ」
「現代日本と「一九八四年」の世界はまるっきり異なるわ。ビッグ・ブラザーは全体主義国家でなければ、存在し得ない。民主主義社会の現代日本ではあんな独裁者は認知されない」
「そうかな? 民主主義と全体主義ってのは大きく異なるように見えて、実は似たりよったりだと思うけどな。あのヒトラーだって民主主義社会が生み出した産物だ」
「それに」
「破壊者は国家という単位ではなく個人で全体主義を実現しようとしているような気がする。個人よりも社会秩序を重んじるという点で」
「つまり破壊者はただの愉快犯ではないと?」
「あくまでも推論だ。もちろん愉快犯的要素もあるとは思う」
「黒田、携帯が鳴ってるわよ」
 話に没頭して携帯のバイブレーションに気付かなかった。携帯電話を見ると電話は神城からだった。
「もしもし」
「慧君。今そっちに向かってるから、後十分以内には着けると思う」
「そうか。急に呼び出して悪いな」
「全然そんなことないよ。そんなに気を遣うような仲じゃないだろう?」
 通話を終え、携帯電話をカウンターに置く。
「神城さん?」
「ああ、あいつにも協力してもらう」
「いいの?」
 ハルカは不安そうな表情で俺の方を見ている。
「今はなりふり構っている場合じゃないからな」
「黒田」
「最近無理して振舞わなくなったわね。破壊者のことで切羽詰まっているのもあると思うけれど」
「そうか?」
「ええ。頭のねじが飛んでるような言動が見受けられないわよ」
「・・・あいつらの影響かもな」
 コーヒーの苦みが欲しくなり、一気に飲み干す。うん、苦い。でもこの苦みが俺の心を落ち着かせてくれる。
「ブレンド、お代わり頼む」
 俺がハルカに注文するのと同時に入口のドアが開く音が聞こえた。少し息を切らしながら神城が歩いてくる。
「ごめんね遅くなって。今日出張で」
「いや、こっちこそ忙しいのに悪いな」
「神城さん、ブレンドでいい?」
「ああ、ありがとうございます。ブレンドでお願いします」
 神城がコートを脱いで椅子に掛け、椅子を丁寧に引いてから腰掛ける。青いネクタイをきっちりと締め、ネイビーのスーツを着こなしている神城は実に絵になる。
 ハルカは豆を挽くために俺達の席から離れたコーヒーミルの置いている場所へと向かった。
「白野君と連絡がつかないんだろう? 昨日から会社を無断欠勤してるみたいだ」
「ああ。破壊者に巻き込まれた可能性が高い・・・。が、もう一つの可能性がある」
「もう一つの可能性?」
「・・・・・」
「二郎自身が破壊者だという可能性だ」
「ちょっと待って慧君。そもそも破壊者からのメッセージは白野君に送られてきたんじゃ
なかったかい?」
「そうだ。でもそれも二郎が何者かを使って、メッセージを送らせたのかもしれない。いくつか疑問に思っている点もあるしな」
『続いてのニュースです。本日午後五時頃五反田のオフィスにて松林修一(しゅういち)さん(五十歳会社員)が殺害されました。』
「これって・・・」
 神城が絶句している。
 テレビに映っているアナウンサーがニュース原稿を読み上げる。
『容疑者は同じ会社に勤める倉木義則(よしのり)(二十三歳会社員)。ゴルフクラブで被害者の松林さんの頭部を何度も殴打したことが確認されています』
「うちの会社だ・・・」
 神城の目がいつもより大きく開いているように見えた。
 スピーカーから流れるワルキューレの騎行が耳に刺さってきた。

      * * *

 僕の中の神様の声が倉木に松林を殺させると言っていた。本当にその通りになるだろう。神様の声は絶対だ。
 初めて神様の声が聞こえたのは確か僕が十歳の時だ。あの時神様は何者かに社会の低層の人間を殺すように命じたと言っていた。僕に神様が命じたのは別所幸一という男をマインドコントロールすることだった。
 そして少し前、神様は僕に別所達彦を使って紗良をマインドコントロールするように命じた。あの時も神様の声の通りに事が進んだ。僕を捨てた紗良は狂ったように犯罪に走った。心の中にいるもう一人の自分がざまあみろと呟いていた。
 コンコンと扉をノックする音が聞こえたので「はい」と返事をする。
「失礼します。もう少々お待ちいただけないでしょうか?」
 黒いスーツに黒い蝶ネクタイをつけた柔和な顔をした青年が丁寧に尋ねた。
「ああ。かまわないよ」
「ありがとうございます。失礼します」
 そういえば僕はいつの間にこの場所に来ていたのだろう。確か最後の記憶は・・・。
 思い出そうとすると頭がグラグラッとして視界が歪んだ。思い出せないことを無理に思い出そうとしたからだと思った。ならば思い出す必要はない。
 視界に映っているのは小綺麗な部屋だった。応接室のような部屋。視界には対面のソファに奥に佇んでいる本棚、白い壁紙、古い映画のポスターが映っている。部屋はほのかな照明が光っているだけで少し薄暗いが、その薄暗さが心地良い。
   気分はどうだい?
 ふと、神様の声が聞こえた。
   邪魔者を出し抜こう。
 今の状況で邪魔者とは誰か。それは明白だった。黒田達だ。僕は神様の声の続きの声を待った。しかし、神様は声を発しなかった。
 テーブルの上に置かれているガラスのコップに入った水を飲む。口当たりが柔らかい軟水が僕の喉を潤す。思った以上に喉が渇いていたようで、一気に水を飲み干した。
 再びノックの音が聞こえたので返事をする。
「失礼します。大変お待たせ致しました」
 別所幸一が深々と頭を下げた後、姿勢を正して僕の方向を見つめる。
「B様」

      * * *

「それにしても寒いね」
「ああ」
 十二月の深夜のバス停で神城と次のバスを待っている。この時間帯はバスの本数は少ないが、次のバスが来るまであと十分の予定だ。二人共厚着をして手袋をしているが、この寒さは体の芯を冷やす。
「白野君、無事だといいんだけどね」
 神城が呟く。俺も同じ事を祈っている。さっきから神城の目はどこか虚ろだ。
 喫茶シャーロックで見た衝撃のニュース。二郎と神城の会社内で起こった殺人事件。神城は容疑者の倉木が被害者の松林にパワハラと言える仕打ちを受けていたことを二郎から聞いており、相談に乗っていたと言っていた。
「これも破壊者の仕業なら必ずメッセージを残しているはずだが・・・」
 だが、これまでメッセージを受け取っていた二郎は行方をくらましている。同じ会社の身近な人間が犯罪に走る前に。
   これは。
「慧君」
「白野君を疑う気持ちは分からなくもない。でもそれ以外の可能性もあるんだ。そんなに気を落とさないで」
「・・・気を落としているように見えたか?」
 神城の顔をじっと見る。神城は微笑を浮かべていた。
「そのぐらい分かるよ」
   不自然な様子がなかったのが不自然に思えなくもない。俺の考えすぎだろうか。
 だが、二郎は過去に加藤とも関わりがある。黒沢紗良の元恋人でもあり、今回の殺人事件の加害者と被害者の同僚でもある。
「神城は二郎をどんな人間だと思う?」
「良くも悪くも白野君は普通の人間に見えたよ。とても悪事を働くような人間には思えない」
「けど」
 神城が言葉を続ける。
「人間は分からないからね」
 その時神城の表情が陰った。どこか遠く見ているような目、少し内側に引っ込めた薄い唇。それはどこか儚げだった。
「普通か」
 普通。通常。正常。正しい。健全。枠の中。
 これまで破壊者は枠の中からこぼれ落ちた人間を標的にしてきていると考えていた。
 不審者。梅沢。加藤。冬子。黒沢紗良とその恋人。そして今回の加害者である倉木義則と被害者である松林修一。
   では二郎はどうか。破壊者の標的となり得る人間なのか。
 ・・・。
「確かに人間は誰にも分からないものを抱えている」
「そうだね。慧君も僕も」
 俺の胸の内には誰にも見せることのない禍々しい感情が常に渦巻いている。だが、大小の差はあれども、誰しも自分の中だけで抱えているものは少なからずあるのだと思う。だからこそ俺は五年前の事件の後、それまでの人間関係を一切断ってきた。
 だが、今はこうして隣に神城がいる。
 お互いしばらく無言のまま冬の冷たさを肌で感じる。強い風が吹き、寒さが頬を、耳を、露出している肌を刺す。
 神城がスマートフォンをいじっている。
「それ、iPhoneの新しいやつか?」
「そうだよ、今月出たばかりのね」
「相変わらず新し物好きなんだな。俺は今もガラケーのままだ」
 神城は昔から理系の分野に興味があり、新しい技術や製品に関心があった。それもあって大手電機メーカーに就職し、転職した今でも技術系の仕事をしているという。
「慧君も相変わらずだね。機械関係には昔から無頓着で流行にも左右されない」
「単にめんどくさいだけだ。ところでそのスマホちょっと触ってみていいか?」
「いいよ。はい」
 神城からスマートフォンを受け取る。思っているよりも軽く、小さなサイズのスマートフォン。背面には有名なりんごのマークがデザインされている。
「このデザインいいよな」
「そうそう。Appleのデザインはシンプルで洗練されていて好きなんだ」
 このりんごはどうしてかじられたデザインなのだろうか。ふとそんな疑問が湧いた。
「あの街灯の下にいるのカラスか?」
 神城の注意を引き付ける。
「ああ、ごみを漁っているみたいだね。この辺はカラスが多いのかな?」
「分からない。おいこっち見てるぞ」
「本当だ。深夜にごみを出すルール違反をする人間がいるから、カラスがうろうろしてるんだよね。おまけにごみ袋にネットもかけずにね」
「カラスに罪はないよな。悪いのは人間だ。まあ皮肉なことにそんな人間がいるからカラスは食事にありつけるわけだけどな」
「そうだね」
 吐く息が白い。道路の向かい側にいる三羽のカラスはこちらを凝視するのをやめ、再び一心不乱にごみを漁り始めた。
「ああ、そういえばスマホ。長いこと借りちゃってて悪かったな」
 神城にスマートフォンを返す。
「全然いいよ。どう? iPhoneにしたくなった?」
「いや、俺は当分ガラケーのままでいいかな」
「だと思った」
 神城が笑みを浮かべた。今も実年齢より若く見える神城の風貌から中学時代の神城の笑顔が思い起こされる。上品な笑顔。
「ところで喫茶店で話した件だが・・・」
 話題を変えると神城は笑顔を崩して真剣な面持ちでこちらを見てきた。
「二郎の捜索を頼む。仕事も忙しいのに悪いとは思ってる」
「いや、僕は心配だったから頼まれなくてもやるつもりだったよ。それより慧君こそ無茶しないようにね。別所の所に行くんだろう?」
「ああ。別所が破壊者である可能性も十分高いからな。神城こそ無理はするなよ」
 三鷹駅行きのバスが来た。バスが停車すると神城はSuicaをタッチし、俺は整理券を取ってバスに乗り込んだ。

 三鷹駅の改札まで神城を送り届けた後、俺は二郎の家まで徒歩で向かっていた。歩きながら考えを整理する。
 ほの暗い照明の下、騒がしい飲み屋通りを歩く。周囲の喧騒も気にならないぐらい俺は集中して考えを巡らせていた。
 俺の知る限り、破壊者の最初の事件は十七年前。俺が中学三年生の時だ。校内に不審者
が侵入し、梅沢の腹部を刃物で刺した。梅沢は意識不明の重体に陥り、その後亡くなった。犯行が行われる前に梅沢の机の上には破壊者からのメッセージと思われる奇妙な紙が置かれていた。メッセージの内容は次の通りだ。

哀れな小悪人へ。
君のくだらない悪戯もここまで続くと見ていられない。
きっと君はこの世の中がつまらないと思っているからこんなことを繰り返すのだろう。
だから僕が飽きることのない刺激を用意してあげる。
楽しみに待っててね。

Breaker

 そして神城の証言では事件の前日に別所幸一が大柄の男と会っているのを目撃したという。大柄の男というのはおそらく事件を起こした不審者だろう。さらに事件の前々日にも別所幸一が公園で誰かを待っているかのようにベンチに座っていたのを神城と加藤が目撃している。
 そして俺の知る二件目の破壊者の事件。東京駅で待ち合わせていた俺達の所へ加藤が虚ろな表情で現れ、包丁で冬子を刺し殺した。逮捕後に加藤は一切を語らず、留置所で舌を噛み切って自殺した。あの事件が起こる前々日、俺と冬子の住む家のポストに一枚の怪しいメッセージカードが入っていた。すぐに捨ててしまったので、内容の正確性には欠けるが覚えている限りでは内容は次の通りだ。

破壊の後に創造あり。
僕が壊すことで救われるものがある。守られるものがある。
君は次のショータイムの後、どんな顔をするだろうか。
破壊の美しさ、清らかさを堪能してくれたまえ。

Breaker

 あの時のことを思い出すと今でも動悸がする。あの時俺が加藤を止められていれば冬子は・・・。
   聞いて、慧君
   今日の朝の星座占い、私最下位だったんだよ。
   そうなのか。でもラッキーアイテムとかで挽回できるんじゃないのか?
   それがね。
   ラッキーアイテムは指輪だったんだよ。
   ならきっと、運気は大丈夫だな。
 大丈夫じゃなかった。事件の前々日にポストに投函されていたメッセージを重く受け止め、もっと警戒心を抱いていれば冬子を守れたかもしれないのに。
 俺は一体何のために体術と観察眼を磨いていたのかという思いに駆られ、いつまで経っても消えない後悔が俺を抜け殻にした。そして俺は警察官を辞め、フラフラしていた頃にハルカに出会い、田中慧の名を捨て黒田慧になった。
 道幅の狭い飲み屋通りを抜け、商店街が並ぶ中央の大きな通りに入る。もう深夜なので店は閉まっており、人通りも少ない。酔っぱらっているのか大声で大好き等と叫び、いちゃつきながら歩いている若そうなカップルが目に映る。女性が男性に甘えてもたれかかり、男性は女性の頭を撫でている。心もとない街灯が前方の二人の背中を照らす。十mも離れていないはずだが、その背中がとてつもなく遠くにあるように思えた。
 今年の十一月にカツアゲに合っていた所でたまたま出会い、破壊者からメールでメッセージを受け取ったという二郎。二郎の会社のメールアドレスに送られたメッセージは次の通りだ。

壊すことは楽しいよ。
君はいつも我慢してばかりで、苦しいだろう。辛いだろう。
彼のように全てを開放して奪ってみようよ。壊してみようよ。
きっと新しい世界が開けるよ。
新しい世界は本当の君を輝かせてくれるよ。救ってくれるよ。
だから君も壊してみようよ。

Breaker

 それまでの二件、破壊者は破壊の対象へとメッセージを送っている。そしてメッセージが送られた直後には何らかの事件が発生している。だが、二郎の元にこのメッセージが送られてから、二郎に、二郎の周囲には何の事件も発生していないと思われる。だがこのメッセージはこれまでの二件とは違い二郎をコントロールしようとしているようにも思える。
   それとも。
 もう一つの可能性を考える。二郎が協力者をマインドコントロールして自分に送らせたという線。だが、だとしたらそれは何のためだろうか。俺が関係しているのか。俺にメッセージを見せるために?
 そしてメッセージの中の彼という表現が気にかかる。彼とは一体誰のことを指しているのか。加藤の事だろうか。加藤と二郎は同じアパートの隣人同士だったことがあり面識がある。
 ・・・。
 三件目の事件は黒沢紗良が恋人の高松紀夫を金づちで殴打して意識不明の重体となった。加害者の黒沢紗良は幼い頃の家庭環境が悪く、養父から性的暴行を受けた過去がフラッシュバックし、精神的に不安定な一面を持っていた。また、被害者の高松紀夫は無職で黒沢紗良に寄生するヒモだったそうだ。この事件の前に二郎の会社メールに次のメッセージが届いている。

君は壊したい? それとも壊されたい?
この世界がひどく理不尽なのは知っているだろう。
壊すか壊されるか。
どうせなら壊す側に回ってみるのはどうだろう。
退屈してるかもしれないから、面白いショーを見せてあげるよ。

Breaker

 黒沢紗良の犯行時の表情を思い返す。心ここにあらずといった目で、生きる屍のような顔をしていた。金づちを振り下ろす力は華奢な女性とは思えない程力強かった。二郎から破壊者からのメッセージだと思われるメールが送られてきたとの連絡を受け、俺は二郎の元へ向かった。あの時待ち合わせ場所を新宿に指定したのは二郎だった。
 ・・・。
 黒沢紗良は二郎の元恋人だった。その点ではこの事件は二郎の周辺で起きたといっていい。そしてハルカが入手した映像では事件の直前に衆議院議員浦川の秘書である別所達彦が黒沢紗良に接触していることが確認されている。別所達彦が映っていた映像は監視カメラのものではないことが別所達彦の周到さが伺い知れる。別所達彦が何らかの指示を受けて行動したただの実行犯でなければ、破壊者は別所である可能性が高い。
 また、未成年の売春を斡旋した曽根崎哲郎に遭遇した時、偶然にも曽根崎は破壊者の関係者であることが判明した。曽根崎を捕らえた後、ハルカが拷問を得意とする筋に依頼し、曽根崎から破壊者の情報を吐かせるべくはからったが、曽根崎からは何の情報も得られていない。拷問をされても決して情報を吐かない忠実で強い精神の持ち主なのか、それとも情報を持っていない末端の人間なのか。俺もハルカもおそらく後者だろうと推測した。
 直近で起きた四件目の事件は加害者の倉木義則が被害者の松林修一をゴルフクラブで殴り殺すというものだった。倉木義則は松林修一からパワハラを受けていたとの報道がなされており、動機は怨恨だと推測されているが、倉木義則は逮捕されてから黙秘を続けているとのことだ。この事件では破壊者からのメッセージは見つかっていない。二郎の元に届いているのかもしれないが、その二郎は事件の数日前から姿をくらましている。

 破壊者について考えを巡らせている間に二郎のアパートに辿り着いた。木造の二階建て
のアパートで築年数は古い。一階から二階へ上がる鋼製階段は錆び付いており、年季を感じさせる。コツンコツンと音を立てて階段を登る。三鷹駅から徒歩約三十分の道のりを歩いてきたからか、階段を登る足が少し重く感じる。俺の気分と同様に。
 二階の三室ある部屋の内の一番手前が二郎の家だ。二〇一号室。俺は鍵穴にスペアキーを差し込み、鍵を開ける。
 扉を開けると、乱雑に靴が置かれた玄関と薄暗いワンルームの部屋が目に映る。靴はスニーカーが二足と革靴が一足置かれているが、どの靴も向きが揃っておらず、二郎の大雑把な性格が表れている。黒い革靴は色が大分剥げてきており、日々の手入れを怠っていたことが伺い知れる。
 靴を脱いで部屋に上がる。電気を付けると部屋の中央にある雑多な物が乱雑に置かれた背の低い黒いテーブルと部屋の隅に設置している書類で埋め尽くされた白のデスクが目に飛び込んでくる。もしかしたら部屋に二郎が戻って来ているのではないかという万に一つぐらいの可能性を期待していたが、案の定部屋には誰もいなかった。
 中央のテーブルの傍に腰を下ろし、テーブルの上に置いてある物を物色する。ティッシュペーパーの箱、ドライヤー、メモ帳、手帳、シャープペンシル、フィギュア、テレビのリモコン。事件の鍵になりそうな物は無さそうだった。そもそもこのテーブルの上は俺が
先日見た時から変化はないように思える。
 次に壁際にあるデスクを漁ってみる。書類はおおむね仕事関係のもののようだ。給与明細の中身を見る。以外と給料が高い事が分かった。いや、今はそんなことはどうでもいい。
 デスクの上には電気関係の資格の参考書がいくつか並べられていたが、俺は二郎が机に向かって勉強している姿を見たことはなかった。参考書は埃をかぶっている。仕事や勉強に精を出す人間という雰囲気は二郎からわずかでも感じたことはなかった。
 デスクの奥の電気スタンドの隣に置いてある埃をかぶった地球儀の下にピンク色の紙がわずかにはみ出ているのが目に留まる。非常に重量の軽い地球儀を持ち上げると出てきたのは封筒だった。封筒の中央に達筆な字で「二郎へ」という文字が書かれている。
 こういうことは本来人としてどうかと自分でも思うが、今は緊急事態だと自分に言い聞かせ、封筒を手に取って白いシールで止められていた封を開ける。中には二つ折りにされた便箋が入っている。畳まれていた便箋を広げ、文章を目で追う。

二郎へ
別れてから二週間が経って、自分なりに気持ちの整理をする意味で手紙を書くことにしました。
付き合っていた時も手紙を渡したことがないので、これが私からあなたへ送る最初で最後の手紙になるでしょう。
別れようと私から言い出した時、あなたはあっさりと受け入れてくれました。
そのことに私はとてもほっとしたのです。
ああ、二郎も私と同じ種類の人間なんだなと。
唯一無二の相手と人生を添い遂げるというような幻想を持つことのない、心が渇き切っていて、冷めていて、情熱とか夢とか希望といったものを遠ざける。
私はあの日、あなたに言いました。
私達って傷の舐め合いしているだけだよね、と。
あれは私達のような人間に限った話ではありません。
誰しも傷を舐め合っている。
そうしないとこの生きづらい世の中で生きていくのは辛すぎるから。
でも私は傷を舐め合っている内に気付いてしまうのです。
私の傷も二郎の傷も舐め合った所で辛くなるだけなのだと。
私は自分の傷口から発生している悪臭や流れ出る黒ずんだ血を改めて思い知るだけなのだと。
愛されなかった自分が人を愛せるはずがないのだと。
普通に育てられなかった自分が普通に生きていけるわけがないのだと。
だから私はあなたに別れようと言いました。
あの時あなたは何を思っていたのでしょう。
あなたの目が時々虚ろになることに私は安心していました。
でもその与えてくれる安心が私を壊していくのです。
どうしようもなくぼろぼろに。
浮気をしておいて、自分から別れようと言って、あなたに憎まれない筋合いはありません。
どうか気が滅入った時には私の藁人形でも作って釘を打ち込んで下さい。
確実に殺せるように心臓に釘を。
あなたの幸せを願っている等と言うことは私にはできません。
でもせめて少しでも傷つかない人生を送って欲しいとは思います。
さようなら。

紗良

 黒沢紗良から二郎へと宛てた手紙。その手紙が、その言葉がとてつもない重みで俺の両腕を引きちぎるような力を持っているように感じられた。

      * * *

「B様。あの者はどういたしますか?」
 別所幸一が僕に伺いを立てる。空っぽの操り人形が。
「そうだな」
 僕は腕組みをしながら頭の中で言葉を動かす。
 ゲーム。
 遊び。
 欲望。
 玩具。
「しばらく様子見だ。今は動くな」
「かしこまりました。ではごゆっくり」
 別所が九十度に近い角度で頭を下げ、機械のような動きで出入口のドアの方へと向かう。ドアを引くとこちらに向きなおり再び滑稽なお辞儀をしてからドアを静かに閉めた。親子共々実にお堅い人形だ。
 柔らかいクッションのソファの背もたれにもたれかかると、体がここではないどこかに沈んでいくような不思議な感覚に襲われる。その感覚は僕の頭の働きを加速させてくれる。
 テーブルの手前に置いているマグカップに口をつける。香ばしいかおりが鼻孔に入り込んでくると共に口の中にたまらない苦みが広がっていく。この行為で感じる快楽は玩具をマインドコントロールした時の爽快感に似ている。
 やめられない。たまらない。
 マインドコントロールを始める前の玩具は動物だった。人間の手がなければ生きていけない社会的弱者である動物をいたぶるのはとてつもなく大きなカタルシスを得られた。僕はそのカタルシスに病みつきになった。
 動物を初めて殺したのは僕が十歳の時だっただろうか。ごみ捨て場のごみを漁って袋の中身を飛び散らせる迷惑行為の常習犯の茶トラの小さな猫。公共の場であるごみ捨て場を荒らすという行為は社会秩序を乱すことと同意だ。そんな存在は社会にいない方がいいという僕の頭の中の欲望が僕の体を動かした。深夜にごみ捨て場に現れる猫を待ち伏せし、餌を使って人気のないアパートの裏庭におびき寄せた。おびき寄せた後、餌を地面に置くとその猫はまっしぐらに餌に食いついた。猫が餌を食べていることに集中している瞬間を狙い僕はナイフを思い切り振り下ろし、猫の背中に思い切り差し込んだ。ピクピクと体を動かしながら赤黒い血を流す様をじっと見つめた。少しずつ弱っていく呼吸、助けを懇願するような瞳、そしてじわじわと地面に広がっていく赤黒い液体。猫の動きが完全に止まり、僕は最大級の快感を覚えた。
 動物では飽き足らず、人間も壊してみたいと思うようになった。しかし人間を自らの手で殺害するというのはリスクが大きすぎると思った。そう思っていた時に出会ったのはマインドコントロールの実践法が書かれた本だった。僕は貪るようにその本を読み、一種の感動を覚えた。カルト宗教の信者やテロリストをマインドコントロールした事例に始まり、マインドコントロールをされやすい人間の特徴、行動心理学、マインドコントロールを成立させる種々の条件等が事細かに記載されていた。
 そして僕はその本の記述を元に実験をするかのように人間を操り人形のようにコントロールすることを始めた。

      * * *

 携帯電話の振動で目が覚める。ハルカからの着信だった。
『もしもし』
 寝起きでまだ上手く頭が働かない。昨日二郎に宛てられた黒沢紗良の手紙を発見してから、破壊者につながる手がかりがないかと部屋中を探し続けたが、目ぼしいものは出て来なかった。家探しを終えた時には朝日はとっくに昇っており、時計を見ると時刻は午前十一時を回っていた。この所ろくに寝ていなかったのもあり、俺は泥のように眠り込んだ。
『見つかった?』
 昨日頼んだ情報をもう集めたというのに驚いた。急を要することなので、急いではいたがまさかたった一日で情報を集めてくれるとは思わなかったからだ。俺の頭が一気に冴えていく。
『ああ、ああ』
 ハルカから伝えられる情報を咀嚼する。奴の学生時代の情報。勤務先での情報。
 ・・・。
『そうか』
 疑いはありつつも信じたくはなかった。でもやはりそうかという思いもあった。
『ハルカ』
 スマートフォンのGPSアプリが動きを示した。
『情報助かった。後は俺にまかせろ』
 俺は電話を切り、GPSの情報を食い入るように見つめる。どうやら電車に乗っているようで、山手線の線路を移動している。動きが止まった所が奴の本当のアジトに違いないだろう。

 赤羽。
 GPSの動きが止まった。中央線に乗り込んだ俺は電車に揺られながらスマートフォンを見つめ続けていた。周囲の人間を見渡すと俺と同じようにスマートフォンの画面に視線を集中させていた。平日の夜で都心から郊外へと向かう人々は多いが、その逆はさほど多くない。さすがに座ることまではできないが、車内はさほど混雑していない。
 暖房の効いた電車で俺は運ばれていく。毎日のように人身事故の起こる電車に。自動車もそうだが、人を殺すことのできる凶器は街中に溢れていることを実感する。それは物理的な凶器だけでなく、中吊り広告に記載されている週刊誌の言葉達もそうだ。ペンは剣よりも強しというぐらい言葉の力は鋭い刃にもなり得る。破壊者も言葉でたくさんの人間を死に陥れてきたに違いない。
『次は新宿。新宿』
 アナウンスの声に促され、電車から駅のホームへと足を運ぶ。人の波について行き、エスカレーターの列に並ぶ。エスカレーターを登りきると、様々な路線の発車時刻が表示された電光掲示板や案内板を見上げる。相変わらず新宿駅の改札内は人でごった返しており、少しうんざりする。迷路のような改札内を歩き、埼京線のホームへ続く階段を目指す。
 大宮行きの電車に乗り込むとあっという間に赤羽駅に着いた。GPSの点は赤羽駅の東側に表示されている。俺は東口の改札を出て、スマートフォンを片手に目的地を目指して歩く。
 治安の悪そうな歓楽街。赤羽はそんな印象だ。古くから建っていそうな飲み屋やスナックが並ぶ商店街を足早に駆け抜ける。今日は金曜日なので通り過ぎるサラリーマンはどこか開放的な表情に見え、騒いでいる若者の声も聞こえる。
 赤羽駅に来て十五分程経っただろうか。小走りで進んで騒がしい場所からようやく脱出でき、目的地まではもうすぐだ。閑静な場所に来て俺は自分の心臓が波打っていることに気付いた。無理もない。ずっと探していた獲物がこの先にいるのだ。
 GPSの点の表示されている位置まで辿り着いた。目の前には古びた廃墟のようなビルがそびえたっている。長年誰も足を踏み入れていないようなディープな雰囲気が漂っている。入口には空き缶等が大量に捨てられており、とても汚らしい。土の上にはぼうぼうに伸びきった雑草が生い茂っている。肝試し等で使うには格好の場所かもしれない。だが俺は遊びに来たわけじゃない。
 ここに破壊者がいる。
 冬子の笑顔と最後の弱り切った顔が頭をよぎる。俺は心の中に飼っている凶暴な動物を解き放ち、建物の中に入った。

      * * *

 屋上に吹き込む冷たい風が僕の肌を刺す。風というのは見えないのに強大な力を持っている。マインドコントロールと同じように。
 僕はこれから邪魔者を排除する。マインドコントロールではなく自らの手で。そのための準備を整えていた。
 スタンガン。折りたたみ式ナイフ。固定刃ナイフ。包丁。ボウガン。どれがいいか。
 ピストルやチェーンソーも用意してあるが、音が出るものは避けた方がいい。誰にも気付かれてはならないのだから。
 キィーー。
 後方からドアの開く音がした。僕はドキリとして振り返る。
 振り返った先にはパーカーのフードを深めにかぶった背の高い男が立っていた。
   どうして?
   どうしてここが?
 頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる。しかし今は考えている場合ではない。邪魔者がここに辿り着いた理由などこの際どうでもいい。邪魔者を排除することだけ考えるのだ。
 僕はボウガンを構えて狙いを定める。男はこちらをじっと見て動かない。恰好の的だ。男の顔目掛けて引き金を引く。その瞬間に男は素早い動きで体を横に移動させる。その時パーカーのフードが外れて男の顔がはっきり見えた。
「二郎」
 矢は黒田には命中せず金属製のドアに当たり、ゴッという音が聞こえた。僕はチッと舌打ちをする。すると黒田がこちらに向かってダッシュしてきた。
 僕はボウガンから手を放し、ナイフを構える。固定刃のナイフの刃先を迫ってくる黒田に向け威嚇する。しかし黒田は怯まずにこちらに向かう足を緩めない。
   確実に仕留めろ。
 僕の中の声に従いナイフを突き出す。が、黒田は身をよじってナイフをかわし、ナイフを持つ僕の右手を掴んだ。
 しかし、僕は左ポケットに入っている折りたたみ式ナイフを取り出し、収納されていた刃をむき出しにする。ポケットから取り出した折りたたみ式ナイフは僕の背中の後ろに隠しており、黒田の死角になっている。
 今だ。
「危ない」
 僕が左手を動かそうとした瞬間背後から声がした。そして僕の左手が動かなくなった。もの凄い力で左手を掴まれている。僕はその力に屈し、ナイフを手放した。
「何をしてるんだ」
 両手のナイフを取り上げられた僕はひざまずいた。そして後ろを振り返るとあの人が立っていた。
「大丈夫かい? 慧君」
   なぜ?
 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?
「ああ、問題ない」
 黒田は平坦な声で返事をすると、僕の方を見た。
「やっぱりお前が破壊者だったんだな」
「神城」

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