彼を取り戻すためにすべてを捧げ…なくても別に良い気がしてきた闇落ち令嬢は、美食家の悪魔と契約をする

hosiiimo

文字の大きさ
10 / 39
レイン、召喚に挑む。

レインが、召喚を望む理由③

しおりを挟む
そしてクラウドが、そんなサニーを庇ったことも、レインにとってはさらなる衝撃だった。

『サニーは君を思って言ってくれてるんだよ。彼女の優しさを素直に受け入れてあげて。僕は、サニーといると、なんだかほっこりするんだ。レインも、せっかく王都に来たんだから、新しい友達を作った方がいいよ』

『中等科の一年の僕らは学業や王都での生活を頑張るべきだよ。レインも無茶な研究は程々にして友達作ったら?王都の女の子たちは健康的でオシャレにも気を使ってるから、今のままじゃ馴染めないよ』

『君も地元のことで落ち込んでばかりいないで、もっと明るく楽しくほっこり過ごしなよ。サンダースさんたちもその方がずっと喜ぶよ』

レインはがっかりするしかなかった。

(大体なんだ。ほっこりって。王都で流行りってんのか。)

彼の態度には、どうしようもない壁を感じてしまい、結局いつも相談はできなかった。

幼馴染より彼女(正確にはお互い意識し合っている状態)を優遇するのは、もっともだ。

友達を作れというのも、王都に馴染めというのも、正論だ。

だけど、クラウドがそれを言うのか。

今も地元のことを忘れ、サニーにデレデレしてばかりのくせに。

レインのことなんか何も分かってないくせに。

レインは、彼への複雑な思いを、さらに拗らせるしかなかった。


◇◇◇◇


そしてある日、耳にしてしまったのだ。学園内の裏庭の静かな一角で…、レインが目立たないところでボッチ飯をしようとしていたところに、やって来た2人がする会話を。

『…また無茶して体を壊したら、僕がレインの面倒見る羽目になるのかなぁ。まったく困ったもんだよ。どうせ、僕は彼女のお世話係なんだ』

(クラウドは…、そんなふうに思っていたのか……。だから、あの女はあんなことを言ってきたのか…。)

『そっかぁ。一緒に地元から来た幼馴染って確かに心配になるよね。でもクラウドくんが全部全部をしょい込むことなんてないよっ!!』

サニーの彼を慰める言葉に、促されるようにクラウドはさらに愚痴をこぼす。

『…辺境伯家のことは……、大切に思ってるよ。……恩義も感じているよ。
だからと言って一生あの子とあの土地に縛られて終わるのかと思うと…なんというか…、未来が真っ暗に感じるんだ!!
自分の可能性を閉ざされてしまいそうで…このまま地元に戻っても、レインの婚約者にでもさせられるだけだ…、そんなのは、本当に無理なんだ!!
僕はただ…、もっと自由でありたんだ。せっかく王都に出てきたんだ!!もっと新しい自分らしい生き方を始めたいんだ!!』

そんな流れを聞いてしまったことで、レインの目の前の方が先に、真っ暗になった。

(クラウドとわたしは…、友達でもなんでもなかったのだ……。自分を縛り付けるだけの『お世話』が必要な存在…。これで相談なんかしたらまた『お世話』を掛けるだけ……。クラウドはサニーのような子といたいのに…、わたしは邪魔な『お荷物』なんだ。)


◇◇◇◇◇◇


親戚の家で虐待を受けていた時期、レインは様々な言葉で罵られた。

『なんであんたなんかの世話をしなきゃいけないの』『手間を掛けさせやがって』『お荷物』『邪魔者』『役立たず』などなど。

サンダース家の元に戻ってから、上手くなじめなかったのはその影響だ。

大好きな彼らの家にも、『世話』になっているから。彼らには、彼らにだけは迷惑をかけてはならない。そういう思いに苛まれたのだ。


当時大人しいクラウドは、本を読むのが好きで、サンダース辺境伯家に遊びに来た時にはいつも本を借りて帰っていた。

双子と外で駆け回るのに疲れた時は、休憩がてら本を読んでいた。

そしてレインが辛かった時も、ただレインの側で本を読んでいた。

彼は、レインを構うといった積極的な『お世話』はしなかった。

人に気遣われることに気後れするレインも、一人でできる気晴らしは、苦にならなかったので、しだいに彼につられて本を読むようになった。誰かが横にいるのも、苦ではなかったから。

そうやって過剰に『お世話』をされないでいるうちに、ようやく安心できたのだ。

サンダースさんたちは『あいつら』とは違うのだと気づいて、落ち着きを取り戻せた。ここにいても大丈夫だと実感できたのだ。

クラウドが自分の好きなシリーズ物の冒険小説の前の巻をレインが手に取りやすい所に置いてくれたり、レインの好きな植物図鑑を一緒に眺めるようにもなり、ささやかな交流も生まれるようになった。

もちろん双子や爺様や婆様が、お願いしたことだろうと今ならば分かる。

本やおやつを餌に、彼も釣られたかもしれない。

それでも、彼の側は本当に居心地が良かったのだ。

一緒に絵本に載っていたおやつを作ってもらい、図鑑で見た植物を庭へ見に行くような穏やかな日々を過ごせるようになって、ようやくレインは世界を取り戻せた。

今の自分の非力さを責めて閉じこもるのでなく、居場所をくれた彼らの役に立てるようになっていきたいと願うようになったのだ。


(だから、彼には…、彼だけには…、絶対に『お荷物』扱いされたくなったのに……。)

あの日々が、たとえ彼にとっては、誰かに頼まれた『お世話』のだったとしても、あの時の彼は、少なくとも、それを露わにはしなかった。

彼や、辺境伯家のみんなは、レインを『お世話』しても『お荷物』扱いはしなかったのだ。

だからこそ、レインは、今こうしてここにいれるのだ。

(関わることでクラウドを『お世話』に縛り付けてしまうのならば、わたしはこのまま都会では一人ぼっちでいるしかないのか…。嫌だ、嫌だ、嫌だ!!そんなの無理だ!!そんなのおかしい!!!そうだ。クラウドは、あのサニーに騙されて、ちょっとおかしくなっているだけなのだ。昔の彼ならば、絶対に、回路の事を勝手にばらしたり、自分を『お世話係』なんて思うはずがない。都会は怖い。本当怖い。すぐ人を騙す悪い奴らばかりだ…。レインは『お荷物』なんかじゃないのだ。絶対に!!悪い王都の奴らに負けてなるものか…。今度こそ、すごいことをして、レインを認めさせるのだ。そしてクラウドの目を覚ましやるのだ!!)


さまざまな感情を煮詰めるようにしながら、レインは召喚術を学んだ。

召喚術は未だ謎の多い危険な術で、中等科のレインが挑むには、かなり無謀な挑戦だ。

けれど全てを解消する薬は作れないから。全てを解決する魔法も起こせないから。

記載が出来ない自分にも出来るかもしれない、奇跡の術。

取り残されてしまったような心境の中、全てを叶えてくれる誰かに縋りたかったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした

玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。 しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様” だけど――あれ? この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!? 国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...