ソウル 魂

荒瀬雪之丞

文字の大きさ
3 / 5
自分

愛する人

しおりを挟む
私は、どうしたのか頭がボーとしている。何故か自分が自分でないような気持ちである。昨日の大雨で地面が泥濘んでいた為に
足を滑らし崖から転落してしまった。
右足から鮮血が…
ズボンの裾をたくし上げ、傷具合を確認した。「あー怪我したばい、しもた💦はよ、上に上がらんばん」
わたしは、大宮朔太郎
高等科の2年生で17歳である。
日本国の為に海軍志願を役場に提出し、受理された。
母さんは、負け戦が分かっているようで、息子を犬死させるわけにはいけないと、どうにかして引き留めようと考えていたようだが、父様が、名誉なことだと薦めてくれた。
崖から這い上がると小さな野花が咲いていた。
傷口がズキズキ痛み足にも心臓があるような痛みが、続く…
「どぎゃん、しなはったですか?」「あっ…大変‼️」
と、その子は私のズボンをたくし上げ自分が腰に下げていた手拭いを出血部分に当てて止血しようとしてくれた。
その子は、ちょうど女学校に自転車で行く途中だったらしい。
「歩くとも大変でしょ…自転車使われませんか…」
「いや、よございます。」
「ありがとうございます…」
「軍人さん、良かったら、私の後ろに乗ってください。駅まで送りますから」その方は、モンペ姿にセーラー服を着ている。
「でも…お姿を拝見すると学生さんではないですか…」
女性は、頬が、ピンク色にみるみる染まってきた。
朔太郎も傷の痛みと恥ずかしそうに声をかけてくれた女性に会って、痛みと同時に心臓の鼓動が打ち始めた。
2人は、会ったその瞬間から惹かれ合うものがあった。朔太郎は、以前より女学生の制服が、素敵だなと思ってた。
「はい、成南女学校の3年生です。名高美津子と言います…」
「はい、私は大宮朔太郎です…」朔太郎は、直立不動になった。
「海軍に志願しまして、今年、4月から三重の航空訓練学校に行きます。」
朔太郎は、名も告げずに立ち去ろうと思ったが、美津子の献身的姿に心打たれて、好意を寄せる感情がふつふつと出てきた。若い感情は、抑えられない。
「あー💦💦
美津子さんは、いつもこの道通っていくとですか…」「はい」
「あっ、自分もこの道いつも通りますので、お願いします。」
なにを言っているのか、分からない朔太郎は、必死で美津子と会える機会を模索していた。
軍人としては、意識してはいけない感情であったろう。
自転車の後ろに乗りながら、必死でペダルを踏む美津子の匂いが、ほどよく鼻にかかった。
抱きしめたい気持ちも駆り立てる。
後ろから見る頸の白さにも感動した。
駅に着き、自転車を降り、美津子に礼を言う
「美津子さん、ありがとうございます。また、良かったらお会いする事はできますか」
美津子は、汗ばみながら手ぬぐいで、汗を拭き、「はい、できる事ならお会いしたいです。」ほのかに頬は紅く火照っていた、自転車を漕いだ鼓動の高まりに合わせて朔太郎が後方にいる嬉しさと駅までの走る時間を過ごした嬉しさが、よりいっそう紅く染めていた。
駅に着き朔太郎は、自転車を降り深々と美津子に頭を下げた。
「美津子さん、また、会いまっしょ、ほんなこつ、助かりました。」
美津子も「いえ、大丈夫ですか、大した事がなからんば、よかですが」駅の中に入る朔太郎を見送った。
朔太郎は、改札口を通り階段を登って駅向こうの乗り合いホームに向かった。
美津子も改札口から朔太郎の行方を追っていた。
美津子…「大丈夫やろか…気になる」
汽車の出窓から見送る美津子の姿…手を振る…美津子もてを振っている、大声で朔太郎は叫んでた。
「また、会いましよー」
美津子も「また、あいまっしょー」
僕たちは初めて会った日から惹かれあっていた。
朔太郎は、我が家に帰ったのだが、傷口が広がり母親が心配し町の宮坂先生に診てもらった。
傷口も広がり熱も出ている、破傷風の恐れがあると町の病院へ連れて行かれた。
切断の恐れもあったが、消毒を行い、縫合し、しばらくベッドに横になっていた。
国の大戦は、窮地に追い込まれている我々の参戦も時期間近に迫っている様に思われる。
朔太郎は、実家で七日間ほど休養を取り傷口も癒えたことから訓練校に行くこととなった。その前に美津子と逢いたいと思い、最初に会った場所に所々で、稲穂の穂が垂れている田んぼ道を歩いて行った。
そこに美津子と観られる女子校生が自転車で、走ってきている。
「美津子さーん‼️」
朔太郎は、思いっきり両手を振った。
「朔太郎さん…さくたろーさーん」
美津子も久しぶりの再会に自転車から身を投げ出して、走り出した。
お互い息を切らしながら駆け寄り朔太郎は、美津子を抱き寄せた。
この時代、周りの目があるために手を繋ぐ事も憚れたが、お互い無心だった。周りなんて気にしてなかった。
それほど初めての出会いから心引き寄せていた。
「朔太郎さん…」
「美津子さん…」
あった途端にお互い抱きしめ会い、人目を忍んで田んぼ道に立つ茅葺小屋の中に入った。
抱きしめあった後に唇を重ね合う。
そこからは、2人の思いが重なり茅葺小屋の中が湯気を放つようになっていた。
お互い恥ずかしさも半面、抱きしめあった後の本人を思う気持ちからいつまでも抱きしめて頬ずりしていた。

もう、流石に外が薄暗くなったので、美津子に服を着せて、朔太郎も褌を締め、軍服を着た。

駅まで一緒に
美津子は朔太郎にいつから三重に行くのか尋ねた。
朔太郎は「三重の航空隊に行くのは3月10日です。駅まで来てくれますか。」
美津子、泣きながら「行きます。生きて帰ってきてください」
駅では、人前もあったので、朔太郎は、敬礼を美津子に送り、美津子は深々とお辞儀をした。一駅しか離れてないが、一生の別れのようにお互い感じ合っていた。
朔太郎は、汽車の窓に美津子を思い浮かべて、白く曇ったガラス窓に ミ.ツ.コと指でなぞってみた。

3月10日浦田駅には、お見送りの住民が、日本旗を振っている。

朔太郎は、自宅での身支度を終えて、いよいよ日本国のために三重の訓練校に行く。
「父様、母様、私は、この戦いに悔いを残さぬように成果をあげて存じ上げます」
朔太郎の父、直一は「朔太郎、貴方の選択は父も羨ましい限りです。日本のためにつくしてください。」肩は震え両手を握るしめるしかなかった。
母親のテルは、泣き崩れたいところだが、気丈に振る舞い、てを握りしめるだけだった。
朔太郎は、「行って参ります。お国のため天皇陛下のためにも敵陣を参らせて参ります。」

昼の1時の汽車に乗った。見送りは「勝ってくるぞと勇ましく…」と歌い出した。
朔太郎は美津子の姿を探す。駅の階段の縁に美津子の姿を見つけた。

「美津子さーん」手を振り続ける。
美津子も声は聞こえないが、走って追いかけて手を振っている。

汽笛と一緒に美津子の走る姿も小さくなっていく。

三重まで2日、激しい訓練が待っている。
三重航空隊、いよいよ着いた。
これから、御国のために
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

【完結】悪役令嬢の薔薇

ここ
恋愛
公爵令嬢レオナン・シュタインはいわゆる悪役令嬢だ。だが、とんでもなく優秀だ。その上、王太子に溺愛されている。ヒロインが霞んでしまうほどに‥。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...