運命の番を殺した英雄

XCX

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27. 解放の時

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 ようやく、貞操帯が外される時が来た。
 ベッドの上に仰向けに寝かされて、ずっと身も心も拘束していた枷が、番の手によって開錠され、取り外される。外気にさらされて、思わずぶるりと全身が震えた。
 局部を覆う貞操帯を目にした時、シグルドの動きが止まり、苦虫を噛み潰したかのような顔になっていた。だけど僕にキスしてくれた時には、名を呼ぶ声も頭を撫でる手つきも優しく柔らかくなっていた。

「……ユテ、服全部脱がせていいか。リースロークの趣味かと思うと、気に食わねえ」

 口調は静かだけど、見下ろしてくるシグルドの瞳には激しい感情が見えた。海のように真っ青なのに、猛火を宿しているかのよう。
 頷いて了承すると、上の服も全て脱がされた。その手つきはとても丁寧でゆっくりだった。まるで体の些細な異常を見逃すまいとするかのように。
 肌の上を滑る長い指と大きな手のひら、そして熱心な眼差しに、うっとりとしてしまう。壊れ物を扱うかのような繊細な手つきに、シグルドの深い愛情の片鱗が窺えて、下腹部がきゅうと疼く。

「あ……」

 無意識に腿を擦り合わせていたのを、シグルドに足首を掴まれて大きく開かれてしまう。僅かに勃ちあがりつつある股間にシグルドの熱い視線が移動して、僕は思わず手で顔を覆った。
 シグルドはただ僕の体を視診していただけなのに、一人で勝手に盛り上がっちゃって恥ずかしい……っ!

「リースローク…あいつマジで許せねえ…。ユテの可愛いチンコをあんなグロテスクなモンで覆いやがって……」
「あゔ……っ!?」

 獣の威嚇のような低い声が聞こえたかと思うと、突然陰部に温かく湿った感覚が走った。びっくりして顔を上げると、シグルドが僕のをぱくりと咥えているところだった。

「……っ!?……ッッ!?」
「怖かったろ…。俺が口の中で舌と咽喉使ってヨシヨシしてやるからな」
「んン…っ」

 全体に口づけを落とされる度にリップ音が響く。舌を見せつけるようにねっとりと舐められて、体が大きく跳ねてしまう。

「シグ…お風呂、入ってな、…から汚、いよ……」
「汚ねえわけあるかよ。ユテの体なら風呂入ってなくても全身舐め回せるぞ」

 間髪入れずに力強く返される。しかもちょっとむっとした顔で睨まれた。
 きっぱりと言い切ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと変態っぽくて恥ずかしい。

「…それは、僕が嫌…」

 不満を訴えると、シグルドは面白がるように低く笑った。その咽喉の振動が、咥えられた僕の陰茎を刺激する。
 大好きな番の温かい口の中に包みこまれて、どんどん硬く張り詰めていく。

「…はっ、ん…、あぅ…っ」

 亀頭の下、くびれた部分を舌先で丁寧になぞられて、敏感な先端部分は咽喉で絞られる。与えられる快楽に僕の体は素直に反応して、大量のカウパーが溢れてしまう。シグルドはそれを舌で掬ってまんべんなく僕のソレに塗りつけて、じゅるっと音を立てて吸った。

「あっ、それ…だめ、ぇ…!」

 陰嚢と陰茎を同時に咥えられたのが分かった。少し顔を上げると、僕の視線に気づいたシグルドが目を細めた。悪戯で挑発的なその笑みに胸が大きく拍動する。
 シグルドの髭は剃られているせいで、彼が頭を動かす度に素肌が下肢に触れる。

「あ…っ!?ァ、あ…あー……っ!」

 次の瞬間、今までになく強く吸われて、自分のものとは思えない、悲鳴のような声が口から出ていた。
 雷に打たれるような、そんな強い快感をやり過ごそうと咄嗟にシーツを握る。でも大きくのけ反る体は抑えられなくて、シグルドの顔に局部を強く押しつける格好になってしまう。家に連れ戻されてから一度も弄ってなかった屹立から大量の精液が噴き出す。
 …シグルドの口の中で射精しちゃってる。駄目だって分かってるのに、熱い口の中が気持ち良すぎて抗えない。

「ぁっ、んぅ、んー…っ」

 シグルドもシグルドで、口を離すどころか亀頭に口で扱いて全部吸い尽くそうとしてくる。唾液と精液を啜る卑猥な音がすごくいやらしくて、耳からも愛されている感覚。

「前々からユテの竿と玉、両方いっぺんに咥えて可愛がってやりたかったんだよな。良かったか?」

 何の躊躇いもなく精液を飲み干したシグルドが満足そうな表情で僕の頰を撫でた。
 親指が、条件反射で目尻に滲む涙を拭ってくれる。強い口淫の名残で全身に甘い痺れが残っている体は、そんな優しい接触でも快感に変換してしまう。

「よかった、けど……いきなりで、びっくり、したよ……」
「はは、わりわりい。ユテがあんまり可愛いもんだからよ、ちょっと意地悪したくなっちまった」

 
 こんな歳で可愛いって言われて喜ぶなんてみっともないって思われそうだけど大好きな人からの言葉だと心が充足感でいっぱいになる。

「シグ…僕もシグに……」
「俺のことは気にしなくていい。疲れたろ?寝ていいぜ。清拭して服着せとくから」

 穏やかな笑み。シグルドのことだから、僕を気遣ってのことなんだって分かってるのに、何故だか拒絶されたように思えてしまった。

「…なんで…?僕、触られ、…の嫌…?僕じゃ…興、奮しな、ぃ…?」
「はっ?な、なんでそうなるんだよ。もちろん自分の番に興奮するし、触ってもらいてえに決まってるだろ!」
「じゃあなんでぇ…っ!」
「それはユテの体のことを考えて……」
「やだ…っ、心配、いらない…!したい、もん…っ!」

 駄々を捏ねながら泣く僕と、目を見開いてあたふたと慌てるシグルド。彼を困らせてるって十分理解してるのに、感情が爆発するのを止められない。

「分かった分かったっ!……けど、挿入するのは無しな。最後までヤるのは休息を取ってからだ。これだけは譲れねえ」

 いいな?、と聞かれて僕は何度も頷いた。仕方ねえな、と言わんばかりにシグルドが苦笑いを浮かべる。
 抱き起こされ、ベッドヘッドにもたれて座る彼の膝の上に座らされる。

「ユテはどうしたいんだ?兜合わせで擦りあいっこするか?」
「ううん…僕も口でしたい…。いい…?」
「ああ、好きにしてくれていいぜ」
「じゃあ…これ、脱いで。見慣れない格好だから、別人みたい…。髭もないし…」

 軍服を摘んで引っ張る。我儘を言って困らせてしまったかなって心配になったけど、杞憂だった。
 シグルドがにやつきながら、近衛師団の軍服を脱いで上半身裸になった。僕が次に何を言うのか、面白がっているように見えた。

「…どうして髭、剃っちゃったの?」
「変装のためだな。近衛師団兵に紛れ込むのに髭がない方が都合が良かった。髭なんてまた生やせばいいし、これでユテが救えるんなら安いもんだしな。自分でも変な感じだが、髭ねえと気持ち若く見える気もするし、ユテがこっちのほうがいいってんなら、このままでもいいかって思ってる。ユテは髭ありと髭なし、どっちが好みだ?」

 そう尋ねられて、僕はシグルドの顔をじっと見つめた。
 髭があってもなくても、かっこいいのは変わらない。形のいい高い鼻に、晴天の空のような真っ青な青色の切れ長の瞳。太く真っ直ぐな眉と目の間隔が狭くて、彫りが深い。
 髭があると元々の眼光の強さが輪をかけて鋭くなって威圧感があったけど、髭がないとそれが和らいで、確かに若々しい。それに加えて精悍なかっこよさが全面に出てしまっている。
 ……シグルドのことを素敵だと思う人が今以上に増えたら困る。そう思うのは僕だけでいいはず。

「髭のない今も好きだけど……、僕は髭があるほうがもっと好き。渋みと色気があって、大人の男って感じがしてドキドキする」
「なら、伸ばす一択だな。ユテに常にドキドキしてもらえるなら願ってもねえ」

 シグルドは心底嬉しそうに、ぱあっと顔を輝かせた。無邪気な表情が、可愛い。

「いやあ、良かったぜ。実は、ずっと生やしてたから剃ったら剃ったでスースーして落ち着かねえんだ」

 顔が近づいてきて、何度も唇を啄まれる。
 髭があるほうが好きな理由はもう一つあるけど、黙っておくことにした。…だって、全身にキスされるときに髭があたってくすぐったいのと同時に気持ちいい、なんて言えない。シグルドは間違いなく喜んでくれるだろうけど、僕としては変態っぽくて恥ずかしい。
 口づけに応えながらそんなことを考えていた僕は、目の前の大きな身体に両手を突いて押し倒した。僕の行動にシグルドは一瞬目を瞬かせたけど、すぐににやけ面に戻った。

「お、強引なユテ、そそるな」
「…最後までしてくれるなら、もっと頑張っちゃうよ?」
「コラ、惑わせようったってそうはいかねえからな。俺にだって年上としての矜持がある。二言はねえよ」

 僕の挑発を、シグルドがすぐさまいなす。余裕の表情で、全く効いていない感じがして悔しい。不満から唇が尖っていくのを止められない。
 胸の筋肉に手を滑らせる。酒に溺れて自堕落な生活を送っていたなんて信じられないくらい、シグルドの体はかっこよく整っている。同じ男でも惚れ惚れするくらいに均整のとれた厚みのあるがっしりした体格。
 胸筋は大きく盛り上がっていて、抱きしめられると自然と谷間に顔が包まれる形になって収まりがいい。僕のために誂えたみたいにぴったり。そしていい匂いがする。
 腹筋は六つに割れて、すごく硬い。一緒にお風呂に入ると、水滴が腹筋の溝を滴り落ちていく様はとんでもなくエッチで、ついつい目が釘付けになってしまう。
 ズボンを寛げて下着をずり下げると、勃ち上がったペニスが反動で揺れながら姿を現した。
 完全に勃ち上がってないのに存在感のあるそれは、シグルドの体格に見合った長さと太さをしていた。途端に口の中にあふれる唾液を飲み込むと、予想以上に咽喉が鳴った。
 シグルドに視線を向けると、茶目っ気たっぷりのウインクが飛んできた。…やっぱり聞こえてたみたい。

「もう、黙っててよ」
「俺、何も言ってねえだろ」
「…視線がうるさかった」
「そりゃしょうがねえ。愛でてたら無意識にそうなっちまう」

 気恥ずかしさからついつい可愛くない口をきいてしまったけど、シグルドは全く気にする様子もなく声を立てて笑い飛ばした。
 こうやってまた、他愛のない軽口を交わせて嬉しい。言葉では言い表せないほどの多幸感が全身を駆け巡っていっぱいになる。
 熱の塊を両手で包みこんで、至る部分に口づけを落とす。その次は自分がされたことを真似て、舌を這わせた。くびれたところ、血管が浮き出たところを丹念に舌先でなぞる。
 その度に手の中でぴくぴく震えるのが可愛い。

「む、ぅ…」

 先端の窪みから先走りが露のように滲み出てるのを見て、亀頭を口に含んだ。カウパーごと先端を一緒に吸って、舌先で尿道を苛めると、次から次へとどんどん溢れてくる。

「ん…ふ、んン…っ」

 夢中でちゅうちゅう吸ってると、シグルドの陰茎がどんどん硬くなっていった。質量も増して、口の中がいっぱいになってしまう。
 苦しい。でも僕の口淫で気持ち良くなってくれてるのが分かるから、喜びが上回る。
 もっと、もっともっとシグルドを気持ち良くしたい。気持ち良くなって欲しい。

「ん、ぅ…ちゅ、…ふ」

 自分のアルファを喜ばせたくて、口と手の両方を使って奉仕した。

「ユテ……」
「んっ…」

 少しかすれた声。息も乱れて聞こえる。僕、上手に出来てる…?
 耳たぶを触られて、思わず声が出てしまう。そんなところ、性感帯でもなんでもないはずなのに、少し触れられるだけで、下腹部がじんと痺れる。

「もういい…。このままだと、口ン中に出しちまう」
「……?」

 一瞬、何を言われてるのか分からなかった。だって、口の中に射精して欲しかったから。
 シグルドは何の躊躇いもなく当然のように僕の精液を飲んだ。僕だってシグルドのを飲みたい。だって、これも愛情表現の一種だもん。

「ユテ…マジでやべえから…。な?」

 今度は頭を撫でられる。額から後頭部にかけて撫でる手つきに、僕を引き剥がそうとする意思が見られた。
 それに対する抗議として、亀頭に少し強めに吸いついた。

「あっ、おい…っ!」

 シグルドの余裕のなさそうな声を聞きながら、唇と指で太いペニスを扱く。
 出して、と舌使いでシグルドに訴える。口の中でピクピク震えるそれの限界が近いことは分かっていた。
 頭上から、堪えるような短い呻き声が聞こえると同時に、熱の塊が一際大きく脈動した。

「んぅ…っ!」

 勢い良く放出される体液を受け止める。上顎や舌に精液が当たるたびに、微弱な電気のようなものが腰に流れるのを感じた。
 射精は長く続いた。その間、口の中でいっぱいになる精液をこぼさないようにするのに必死だった。

「ユテッ、飲むなよ!?出せ、全部!ずっと処理してなくて溜まってたから、やべえんだよ…!」

 ペニスから口を離すと、シグルドは珍しく狼狽していた。顔は青ざめて、何とか吐き出させようと僕の口に手を添える。
 …シグルドの精液は確かに量が多くて、濃い。味も匂いも。でも、全然嫌じゃない。むしろ、シグルドも僕と一緒で、離れてからはそういうことをしてなかったんだって分かるから嬉しい。
 シグルドの目をじっと見つめて、僕は口内の体液をごくんと飲みこんだ。呆気に取られる顔が何だかおかしくて、つい笑ってしまう。

「シグだって僕の全部飲んでくれた。シグのこと大好きだから、僕も同じことをしたかったんだ」

 そう伝えると、シグルドは盛大な溜息を吐きながら天を仰いだ。その状態で止まってしまって、だんだん不安に見舞われる。

「シグ…嫌、だった?嬉しくない…?」
「嬉しいに決まってる。ただちょっと…」
「あっ」

 嬉しいと言うわりには微妙な表情を浮かべるシグルドに、突然肩の上に担ぎ上げられる。

「俺の今の理性には刺激が強すぎて良くねえんだよな。とっとと風呂入るぞ。これ以上エロ小悪魔に何かされたら堪らねえからな」
「ひゃあっ!?」

 悪戯に対するお仕置きとばかりに、お尻を軽く叩かれる。剥き出しだったから小気味のいい音が響いて、続いて低い笑い声が聞こえた。
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