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76. 暗澹
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パルティカに来て数日が経ったが、何の進展もなく時間だけが過ぎ去っていく。オルヴァルを呼び出した張本人である王は体調が優れないらしく、一度もお目通りが叶っていない。それもゲルゴルグの使いだと名乗る者が今日も面会謝絶だと伝えに来るだけだ。
宰相のゲルゴルグも到着初日に会って以来、顔を見せに来ない。オルヴァルから会いに行こうとすると、不快感を露に顔をしかめる使いの者に追い払われている。何なら王子が自室から出ようものなら、部屋を警護する兵士が常に付きまとう。対してローディルにはただ鋭い一瞥を寄こすのみで、石のようにその場から動こうとしない。何も言わず何も答えずに後をついてくる兵士は、護衛と言うよりはオルヴァルの一挙一動を監視するかのようだった。
「来いって言ったのはそっちなのに、何日も放置なんて変だ!王様が具合悪いなら、ゲルゴルグって人が用件を伝えてくれればいいのに!あのおじさん、偉い人なんだろ?王様もあの人とだけは会ってるって言うじゃん!どんな用件でオルヴァルを呼び出したか知ってるはずだろ!?」
軟禁も同然の現状に不満を抑えられないローディルは、就寝準備をしながら枕を激しく殴りつける。
王子は到着初日にイズイークとの面会を怪我なく終えたが、それ以降は音沙汰ない。彼も王同様に体調を崩しているらしい。
彼の主人は苦笑いを浮かべながら、ベッドに腰かけた。青年の背中を撫で、宥めようと試みる。
「王が病に臥せっているからこそ、ゲルゴルグ殿の負担は計り知れない。国内外の問題をほぼ一人で捌いているのだからな。それにゲルゴルグ殿が、王が俺を呼び出した理由を知っているとは限らない。極めて個人的な問題だとして、王が自分から直接話すと決めて詳細は知らないということもあり得る」
「じゃあオルヴァルを頼ればいいじゃん。オルヴァルはラルツレルナを統治してるし、王子だから国外のことだって当然分かってるだろ?ゲルゴルグが一人で抱えこまなくたって、頼れる存在がせっかく王城にいるのにさあ…」
「国内外のことについてはできる限り情報収集をしているが、実際に執政に携わってないと分からないこともある。それに俺は追放された身だ。にも関わらず国政に口出したとなれば、周囲の理解は得られない。ゲルゴルグ殿の立場まで悪くなってしまう。彼はきっとそれも承知の上で尽力してくれている。感謝こそあれど、不満はない」
主人の返答に、青年は言葉を詰まらせた。オルヴァルが納得している以上、もう何も言えなくなってしまったのだ。パンチの嵐を浴びて残念な形に歪んでしまった枕を手で優しく整える。
(もし俺が王様だったら、体調悪い時だからこそ会いたいと思うのにな…。好きな人に会ったら、具合上悪いのもどこかに吹き飛ぶと思う)
「…オルヴァルは優しすぎると思う!」
かろうじて絞り出せた一言だった。オルヴァルの言うことは理解できるが、何故だか納得がいかない。パルティカに到着してから、王子に対する周囲の対応は失礼極まりなく酷いものだ。いくらオルヴァルが追放された身とは言え、同じ国の人間としての敬意もないのかと憤りを抱く。パルティカの民が憎らしい、守る価値なんてないと過激な思想が生まれる程に。
その怒りは民だけでなく、オルヴァルにも向かっていた。彼は酷い扱いを受けても、仕方がないと諦めているきらいがある。それはきっと生まれや生い立ちが影響している。結果、彼自身もが自分のことを軽んじるようになってしまった。
ローディルをはじめ、アサドやエミルやプリヤ、ラルツレルナの屋敷の中で働くほとんどの者がオルヴァルのことを大事に思っているのに、彼の心はパルティカに囚われたままだ。
(嫌いだ…!王様も、ゲルゴルグも、兵士も民も、オルヴァルを傷つける奴はみんな嫌いだ…っ!)
困ったような微笑みを浮かべるオルヴァルを見ていられなくて、ローディルは主人に襲いかかった。体当たりして、彼が倒れたところに馬乗りになる。覆いかぶさるように抱きついた。
「オルヴァルはもっと怒るべきだよ…。酷いことをして自分を傷つけてくるような奴らのこと、簡単に許しちゃだめだ」
「…俺のために怒ってくれるのか。ローディルは優しいな」
(またそうやってはぐらかす。俺の言葉、全然届いてない)
長い腕が体に巻きつき、頬擦りを受ける。抱きしめられて嬉しいのに、返ってきた言葉にローディルは泣きたくなった。
(俺じゃ、オルヴァルの力にはなれないのかな…。少しでも支えになりたいのにな)
オルヴァルにはこれまでに何度も自分の気持ちを伝えてきた。一人で抱えこまず、自分達にも背負わせてほしいと。でもいつも彼はありがとうと言うだけだ。拒絶されているかのような感覚に陥る。だが本人にそのつもりがないのは、それとなく伝わって来る。きっと、無意識なのだ。自己犠牲の精神が、長年にわたってオルヴァルの人格に擦りこまれてしまった。まるで呪いのように。
「当たり前だろ…!ご主人様が傷つけられて、気分がいいわけない!俺はいつでもオルヴァルの味方なんだからな…っ」
悲しみのあまり、本人に対しても怒りをぶつけるかのように声が上擦ってしまう。後悔先に立たず。発言した後に、思わず感情的になってしまった自分が疎ましくなる。
(最低だ、俺…。俺もオルヴァルを傷つける奴らと一緒だ…困らせることしかできてない)
ベッドに涙がこぼれる。ローディルは、泣いているのを知られたくなくて、顔を隠すために先程よりも強くしがみついた。声が漏れないように、下唇を強く噛む。
だが青年の思いとは裏腹に、王子の目をごまかすことは出来なかった。オルヴァルが上体を起こしたことで、膝の上で抱きしめられる体勢になる。頬にキスを受けながら、顔を覗きこまれた。
「そんなに強く噛んだら傷がついてしまう」
「んっ…」
男の声は優しく甘く柔らかい。指で唇をつつかれる。上唇を食むように啄まれて気持ちいい。噛むのをやめると、下唇についた歯形をなぞるように舌先でチロチロと舐められ、声がもれた。
「ローディル、どうして泣いてるんだ?俺がいけないことをしていたら教えてくれ」
「……ちが、ぅ。俺のほうが、オルヴァルのこと、困らせた…」
「ローディルが俺を?どうしてそう思うんだ?」
「だって…オルヴァルのこと、責めるみたいになった…」
驚きに見開かれたオルヴァルの目が、優しく細められる。だが、涙のあふれる目元を擦りながらぐしゅぐしゅに泣くローディルは男の表情の変化に気がついていない。
男は、乱暴に涙を拭う青年の手をはずし、摩擦で熱を持った目蓋を労わるように唇を押しあてた。
「全然そうは思わなかった。むしろ俺のことを思う強い気持ちが伝わってきて嬉しかったくらいだ。それに今もこうして傍にいて支えてくれている。感謝でいっぱいで、困ることなどない」
「おれ…オルヴァルの支えになれてる…?」
「勿論だ。ローディルがいなければ、俺もきっと心が折れていた」
アサドやエミルから離れて、自分の無力さを実感し自信を喪失していた青年だったが、主人に慰められて落ち着きを取り戻す。
完全に子供の癇癪だ、とローディルは思った。オルヴァルに不満をぶつけたと思ったら泣きだして、結局慰めてもらっている。泣きたいのはきっと彼の方だろうに、みっともなくわんわん泣いてしまい、自己嫌悪に見舞われる。
男の肩に頭をもたせかけながら、青年は心の中で謝罪した。
(明日からはまた元気に頑張るから、今日だけ、今だけは許して欲しい)
強くあろうと頑張っているが、パルティカに来てからは心乱れることが多くなっている。
空気は淀んでいるし、妙な匂いもする。一度オルヴァルに同意を求めたことがあるが、彼はパルティカ独特の空気感に気づいてはいたが、匂いに関しては何も感じていないようだった。洗濯がてら使用人にそれとなく聞いてもみたが、頭がおかしいと言わんばかりの目で見られた。半分獣の自分にしか嗅ぎ取れないと分かってからは、より神経が張り詰めるようになった。
用意される食事については全て匂いを嗅ぎ、念のため自分が毒見して問題ないことを確認してから食べる。洗濯や配膳片付けのために城内を歩くこともあるが、それ以外の時間はオルヴァルと一緒に部屋にこもりきりだ。
オルヴァルの警護が主な目的だが、実家にも関わらず不自由を強いられている彼を一人にしておくことができなかったからだ。手紙を書くことも受け取ることも許されず、外部の情報は何も得られない。アサドは戻って来たのかどうかさえ分からない。ラルツレルナで帰りを待ってくれているエミル達のことを思うと、一刻も早くパルティカを脱したい一心だ。
加えて、シシリハの部屋の近くで目にした青い光の粒子がローディルの心をざわつかせている。部屋の外へ出る度に、決まって目の前に現れるのだ。洗濯場でも厨房でも廊下でも、場所は問わずに至るところで。そしてローディルをシシリハの部屋へと誘おうとする。好奇心に勝てずについていくのだが、目的地に近づくと決まってニルンの剣呑な気配を感じる。まるで大きな獣に威嚇されているかのようで、本能的に危険を察知してそれ以上は踏みこめないのだ。
青い光を視認できるのもローディルだけらしく、誰にも相談できないでいる。もちろんオルヴァルにも。余計な心配をかけたくなかったからだ。ただでさえオルヴァルは色んな問題を抱えているのに、これ以上悩みの種を増やしたくなかった。
(シシリハの部屋に一体なにがあるんだろう。比較的自由に動ける俺が、自分でどうにかしなきゃ…。いつまでもオルヴァルに頼りきりじゃだめだ!)
自分よりも大きな体を精一杯抱きしめながら、ローディルは決意を新たにするのだった。
宰相のゲルゴルグも到着初日に会って以来、顔を見せに来ない。オルヴァルから会いに行こうとすると、不快感を露に顔をしかめる使いの者に追い払われている。何なら王子が自室から出ようものなら、部屋を警護する兵士が常に付きまとう。対してローディルにはただ鋭い一瞥を寄こすのみで、石のようにその場から動こうとしない。何も言わず何も答えずに後をついてくる兵士は、護衛と言うよりはオルヴァルの一挙一動を監視するかのようだった。
「来いって言ったのはそっちなのに、何日も放置なんて変だ!王様が具合悪いなら、ゲルゴルグって人が用件を伝えてくれればいいのに!あのおじさん、偉い人なんだろ?王様もあの人とだけは会ってるって言うじゃん!どんな用件でオルヴァルを呼び出したか知ってるはずだろ!?」
軟禁も同然の現状に不満を抑えられないローディルは、就寝準備をしながら枕を激しく殴りつける。
王子は到着初日にイズイークとの面会を怪我なく終えたが、それ以降は音沙汰ない。彼も王同様に体調を崩しているらしい。
彼の主人は苦笑いを浮かべながら、ベッドに腰かけた。青年の背中を撫で、宥めようと試みる。
「王が病に臥せっているからこそ、ゲルゴルグ殿の負担は計り知れない。国内外の問題をほぼ一人で捌いているのだからな。それにゲルゴルグ殿が、王が俺を呼び出した理由を知っているとは限らない。極めて個人的な問題だとして、王が自分から直接話すと決めて詳細は知らないということもあり得る」
「じゃあオルヴァルを頼ればいいじゃん。オルヴァルはラルツレルナを統治してるし、王子だから国外のことだって当然分かってるだろ?ゲルゴルグが一人で抱えこまなくたって、頼れる存在がせっかく王城にいるのにさあ…」
「国内外のことについてはできる限り情報収集をしているが、実際に執政に携わってないと分からないこともある。それに俺は追放された身だ。にも関わらず国政に口出したとなれば、周囲の理解は得られない。ゲルゴルグ殿の立場まで悪くなってしまう。彼はきっとそれも承知の上で尽力してくれている。感謝こそあれど、不満はない」
主人の返答に、青年は言葉を詰まらせた。オルヴァルが納得している以上、もう何も言えなくなってしまったのだ。パンチの嵐を浴びて残念な形に歪んでしまった枕を手で優しく整える。
(もし俺が王様だったら、体調悪い時だからこそ会いたいと思うのにな…。好きな人に会ったら、具合上悪いのもどこかに吹き飛ぶと思う)
「…オルヴァルは優しすぎると思う!」
かろうじて絞り出せた一言だった。オルヴァルの言うことは理解できるが、何故だか納得がいかない。パルティカに到着してから、王子に対する周囲の対応は失礼極まりなく酷いものだ。いくらオルヴァルが追放された身とは言え、同じ国の人間としての敬意もないのかと憤りを抱く。パルティカの民が憎らしい、守る価値なんてないと過激な思想が生まれる程に。
その怒りは民だけでなく、オルヴァルにも向かっていた。彼は酷い扱いを受けても、仕方がないと諦めているきらいがある。それはきっと生まれや生い立ちが影響している。結果、彼自身もが自分のことを軽んじるようになってしまった。
ローディルをはじめ、アサドやエミルやプリヤ、ラルツレルナの屋敷の中で働くほとんどの者がオルヴァルのことを大事に思っているのに、彼の心はパルティカに囚われたままだ。
(嫌いだ…!王様も、ゲルゴルグも、兵士も民も、オルヴァルを傷つける奴はみんな嫌いだ…っ!)
困ったような微笑みを浮かべるオルヴァルを見ていられなくて、ローディルは主人に襲いかかった。体当たりして、彼が倒れたところに馬乗りになる。覆いかぶさるように抱きついた。
「オルヴァルはもっと怒るべきだよ…。酷いことをして自分を傷つけてくるような奴らのこと、簡単に許しちゃだめだ」
「…俺のために怒ってくれるのか。ローディルは優しいな」
(またそうやってはぐらかす。俺の言葉、全然届いてない)
長い腕が体に巻きつき、頬擦りを受ける。抱きしめられて嬉しいのに、返ってきた言葉にローディルは泣きたくなった。
(俺じゃ、オルヴァルの力にはなれないのかな…。少しでも支えになりたいのにな)
オルヴァルにはこれまでに何度も自分の気持ちを伝えてきた。一人で抱えこまず、自分達にも背負わせてほしいと。でもいつも彼はありがとうと言うだけだ。拒絶されているかのような感覚に陥る。だが本人にそのつもりがないのは、それとなく伝わって来る。きっと、無意識なのだ。自己犠牲の精神が、長年にわたってオルヴァルの人格に擦りこまれてしまった。まるで呪いのように。
「当たり前だろ…!ご主人様が傷つけられて、気分がいいわけない!俺はいつでもオルヴァルの味方なんだからな…っ」
悲しみのあまり、本人に対しても怒りをぶつけるかのように声が上擦ってしまう。後悔先に立たず。発言した後に、思わず感情的になってしまった自分が疎ましくなる。
(最低だ、俺…。俺もオルヴァルを傷つける奴らと一緒だ…困らせることしかできてない)
ベッドに涙がこぼれる。ローディルは、泣いているのを知られたくなくて、顔を隠すために先程よりも強くしがみついた。声が漏れないように、下唇を強く噛む。
だが青年の思いとは裏腹に、王子の目をごまかすことは出来なかった。オルヴァルが上体を起こしたことで、膝の上で抱きしめられる体勢になる。頬にキスを受けながら、顔を覗きこまれた。
「そんなに強く噛んだら傷がついてしまう」
「んっ…」
男の声は優しく甘く柔らかい。指で唇をつつかれる。上唇を食むように啄まれて気持ちいい。噛むのをやめると、下唇についた歯形をなぞるように舌先でチロチロと舐められ、声がもれた。
「ローディル、どうして泣いてるんだ?俺がいけないことをしていたら教えてくれ」
「……ちが、ぅ。俺のほうが、オルヴァルのこと、困らせた…」
「ローディルが俺を?どうしてそう思うんだ?」
「だって…オルヴァルのこと、責めるみたいになった…」
驚きに見開かれたオルヴァルの目が、優しく細められる。だが、涙のあふれる目元を擦りながらぐしゅぐしゅに泣くローディルは男の表情の変化に気がついていない。
男は、乱暴に涙を拭う青年の手をはずし、摩擦で熱を持った目蓋を労わるように唇を押しあてた。
「全然そうは思わなかった。むしろ俺のことを思う強い気持ちが伝わってきて嬉しかったくらいだ。それに今もこうして傍にいて支えてくれている。感謝でいっぱいで、困ることなどない」
「おれ…オルヴァルの支えになれてる…?」
「勿論だ。ローディルがいなければ、俺もきっと心が折れていた」
アサドやエミルから離れて、自分の無力さを実感し自信を喪失していた青年だったが、主人に慰められて落ち着きを取り戻す。
完全に子供の癇癪だ、とローディルは思った。オルヴァルに不満をぶつけたと思ったら泣きだして、結局慰めてもらっている。泣きたいのはきっと彼の方だろうに、みっともなくわんわん泣いてしまい、自己嫌悪に見舞われる。
男の肩に頭をもたせかけながら、青年は心の中で謝罪した。
(明日からはまた元気に頑張るから、今日だけ、今だけは許して欲しい)
強くあろうと頑張っているが、パルティカに来てからは心乱れることが多くなっている。
空気は淀んでいるし、妙な匂いもする。一度オルヴァルに同意を求めたことがあるが、彼はパルティカ独特の空気感に気づいてはいたが、匂いに関しては何も感じていないようだった。洗濯がてら使用人にそれとなく聞いてもみたが、頭がおかしいと言わんばかりの目で見られた。半分獣の自分にしか嗅ぎ取れないと分かってからは、より神経が張り詰めるようになった。
用意される食事については全て匂いを嗅ぎ、念のため自分が毒見して問題ないことを確認してから食べる。洗濯や配膳片付けのために城内を歩くこともあるが、それ以外の時間はオルヴァルと一緒に部屋にこもりきりだ。
オルヴァルの警護が主な目的だが、実家にも関わらず不自由を強いられている彼を一人にしておくことができなかったからだ。手紙を書くことも受け取ることも許されず、外部の情報は何も得られない。アサドは戻って来たのかどうかさえ分からない。ラルツレルナで帰りを待ってくれているエミル達のことを思うと、一刻も早くパルティカを脱したい一心だ。
加えて、シシリハの部屋の近くで目にした青い光の粒子がローディルの心をざわつかせている。部屋の外へ出る度に、決まって目の前に現れるのだ。洗濯場でも厨房でも廊下でも、場所は問わずに至るところで。そしてローディルをシシリハの部屋へと誘おうとする。好奇心に勝てずについていくのだが、目的地に近づくと決まってニルンの剣呑な気配を感じる。まるで大きな獣に威嚇されているかのようで、本能的に危険を察知してそれ以上は踏みこめないのだ。
青い光を視認できるのもローディルだけらしく、誰にも相談できないでいる。もちろんオルヴァルにも。余計な心配をかけたくなかったからだ。ただでさえオルヴァルは色んな問題を抱えているのに、これ以上悩みの種を増やしたくなかった。
(シシリハの部屋に一体なにがあるんだろう。比較的自由に動ける俺が、自分でどうにかしなきゃ…。いつまでもオルヴァルに頼りきりじゃだめだ!)
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