5 / 12
叔父さんの本音
しおりを挟む思い詰めた表情の太一が 、一瞬の沈黙を弱々しく破った。
「姉さんから託された俺の子供····とは思えなくなってた。いつの間にか、可愛くて大切で····守りたくて」
「僕、男だよ? 彼女にはなれないし、血も繋がってるんだよ」
「俺も気の迷いかと自分を疑ったよ。でも、誤魔化しようのない気持ちはどんどん膨れ上がるんだよ。俺なぁ、恋ってたぶん初めてなんだ」
「なっ····、何言ってんだよ。バツイチのくせして」
「あれは、流されてというか、唯香に押し切られたというか····」
押しに弱い太一らしい。怪しいツボとか財布とか、押し売りされたら半笑いしながら買いそうなお人好しなのだ。
きっと、この見た目のおかげで、これまで押し売りとかに引っ掛からなかったんだろうな。と、そんな事はどうでもいい。
····あれ? そういえば、叔父さんと結婚ってできんの? 違う違う、男同士なんだから、そもそも無理なんだよ。
「いくら僕がヒョロいからって、女と勘違いはしてないよね?」
「してないぞ? お前はれっきとした立派な男の子だもんな」
「良かった。そこはわかって言ってんだ」
「お前、俺の事バカだと思ってるだろ」
「まぁ、賢いとは思ってないかな」
「酷い言われようだな、はは。あ! それとな、俺たち血ぃ繋がってないぞ」
「······はぁ?」
「俺と姉さん、もといお前の母さんな、本当の兄弟じゃないんだよ。あれ? 聞いてなかったのか?」
聞いていないぞ。そもそも、母さんとまともに会話した記憶が無いのだが。
なんでも、太一は本当の拾われっ子らしい。確かに、あのクソ真面目な仕事人間の母さんや、堅物のじいちゃんばあちゃんと太一じゃ違いすぎる。
36年前のまだ薄らと肌寒さが残る春先、玄関の前に藤籠で眠る生後間もない太一が居たそうだ。手紙の内容から、夜逃げしたじいちゃんの知り合いの子と思われた。だが、その知り合いとは音信不通で真相はわからないらしい。
太一はあっけらかんとしていて、気に病んでいたり、負い目に感じている様子は無いようだ。何があったって前向きでクヨクヨしないのは、太一の良いところだと思う。僕には無いものだ。
とにかく、僕と太一は他人なのだそうだ。これはチャンスなのだろうか。
浅はかな淡い期待を胸に灯らせてしまったではないか。大前提として、僕たちは男同士だ。こんなの、世間が許してくれない。
0
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる