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第二章 魔獣退治編
35 プリンスプリン
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フンス、フンス。
リコはキッチンで、気合が入っている。
王子様のためのプリンはいつもより豪華なグラスに入っていて、仕上がりも病的なまでにチェックされていた。
念入りに氷の結晶でプリンを冷やすリコの様子を、レオは立ち尽くして見ている。
「あの……いいんですよ? いつも通りで。気合入れなくても」
「王子様のプリンだよ!? 気合入れるよ!」
リコのテンションに、ミーシャも舞い上がっている。
「ねえリコ、お城に招待されちゃうかもね!」
「どうしよう! 私、ドレス持ってないよ!」
「舞踏会に呼ばれたりして!?」
乙女チックな夢を語りあっていて、レオはまた目眩がしていた。
(リコさんの成功を一番祈っていたはずなのに、自分はこのプリンを、事故を装って届けないことまで考えてしまう。なんて悪い奴なんだ)
レオはひとりで怒り、不安になり、反省し、情緒が不安定になっていた。
「できた! レオ君、無事に運んでね!?」
リコの切なる願いに、レオは我に返る。
「勿論です。完璧に運びますよ」
黒猫に乗って王宮に向かうレオを、リコもミーシャも、希望に満ちた笑顔で送り出した。
「くよくよするなよ。いつも通りの仕事をこなすんだ」
自分に言い聞かせて、レオはまっすぐ王宮に向かった。
* * * *
豪華なテーブルの上にリコプリンが置かれて。
金色のスプーンで、ノエル王子はプリンを召されていた。
(僕は、人の昇天顔を見るのが好きなんだな……)
自己分析しながら、レオはノエル王子の喜びぶりを観賞している。
三度の飯よりお菓子が大好きなノエル王子だが、ここまで感激する姿は初めて見た気がした。レオの心に嬉しさと、誇らしさと、不安がごちゃ混ぜで押し寄せる。
「美味い! なんて美味さなんだ!」
ノエル王子は空になったグラスを天に掲げて、輝く瞳でレオを振り返った。
「これを作った者を、ここに連れて参れ!!」
思った以上に率直に、早い段階で、レオの恐れていた命令が下されていた。
「ちょっと……待ってください」
レオは動揺のあまり否定の言葉を発しそうになるが、ノエル王子は興奮していて気づかない。
「余はこの素晴らしいプリンを作った者に会いたいのじゃ! 直接会って、褒めてつかわす!」
当たり前の上から目線にレオは体が震えていたが、そんな様子にも気づかずに、ノエル王子は高揚している。
「こんな繊細なものを作るのは、女性であろうな! そうだろう、レオ!」
「そ、それは……さぁ……」
「ここにリコプリンと書いてある。リコという名の女性だろう?」
プリンのコースターに直筆で商品名が書かれていて、見落としていたレオは衝撃を受けていた。こんなに一気に、名前と性別が明かされて、心が付いて行かない。
「レオよ。すぐにリコ殿に、城に来てくれるよう通してくれ! 余はリコ殿とプリンを語り合いたい!」
レオはゴチャゴチャの頭のまま一歩下がると、優美に礼をして胸に手を当てた。
「承りました……」
リコはキッチンで、気合が入っている。
王子様のためのプリンはいつもより豪華なグラスに入っていて、仕上がりも病的なまでにチェックされていた。
念入りに氷の結晶でプリンを冷やすリコの様子を、レオは立ち尽くして見ている。
「あの……いいんですよ? いつも通りで。気合入れなくても」
「王子様のプリンだよ!? 気合入れるよ!」
リコのテンションに、ミーシャも舞い上がっている。
「ねえリコ、お城に招待されちゃうかもね!」
「どうしよう! 私、ドレス持ってないよ!」
「舞踏会に呼ばれたりして!?」
乙女チックな夢を語りあっていて、レオはまた目眩がしていた。
(リコさんの成功を一番祈っていたはずなのに、自分はこのプリンを、事故を装って届けないことまで考えてしまう。なんて悪い奴なんだ)
レオはひとりで怒り、不安になり、反省し、情緒が不安定になっていた。
「できた! レオ君、無事に運んでね!?」
リコの切なる願いに、レオは我に返る。
「勿論です。完璧に運びますよ」
黒猫に乗って王宮に向かうレオを、リコもミーシャも、希望に満ちた笑顔で送り出した。
「くよくよするなよ。いつも通りの仕事をこなすんだ」
自分に言い聞かせて、レオはまっすぐ王宮に向かった。
* * * *
豪華なテーブルの上にリコプリンが置かれて。
金色のスプーンで、ノエル王子はプリンを召されていた。
(僕は、人の昇天顔を見るのが好きなんだな……)
自己分析しながら、レオはノエル王子の喜びぶりを観賞している。
三度の飯よりお菓子が大好きなノエル王子だが、ここまで感激する姿は初めて見た気がした。レオの心に嬉しさと、誇らしさと、不安がごちゃ混ぜで押し寄せる。
「美味い! なんて美味さなんだ!」
ノエル王子は空になったグラスを天に掲げて、輝く瞳でレオを振り返った。
「これを作った者を、ここに連れて参れ!!」
思った以上に率直に、早い段階で、レオの恐れていた命令が下されていた。
「ちょっと……待ってください」
レオは動揺のあまり否定の言葉を発しそうになるが、ノエル王子は興奮していて気づかない。
「余はこの素晴らしいプリンを作った者に会いたいのじゃ! 直接会って、褒めてつかわす!」
当たり前の上から目線にレオは体が震えていたが、そんな様子にも気づかずに、ノエル王子は高揚している。
「こんな繊細なものを作るのは、女性であろうな! そうだろう、レオ!」
「そ、それは……さぁ……」
「ここにリコプリンと書いてある。リコという名の女性だろう?」
プリンのコースターに直筆で商品名が書かれていて、見落としていたレオは衝撃を受けていた。こんなに一気に、名前と性別が明かされて、心が付いて行かない。
「レオよ。すぐにリコ殿に、城に来てくれるよう通してくれ! 余はリコ殿とプリンを語り合いたい!」
レオはゴチャゴチャの頭のまま一歩下がると、優美に礼をして胸に手を当てた。
「承りました……」
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