キューティーラビー  ~月と魔物と正義の味方~

角野総和

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希理子、再び変身する!

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ニュース速報に驚いた希理子が呆然と固まっていると、どこかでニュースを聞いたのだろう、顔色を悪くした左之助が走り込んできた。

「お、じいちゃん……今、ニュースで……」
「ああ、わしも聞いた。しかしあそこは町中じゃ。今までの魔物はどれも皆海から上がって来ておったぞ。あんな町中に出るなど、信じられん」
「でも、テレビで言ってる」
「ああ、確かに」

互いに無言で顔を見合わせる。


希理子はまだ変身具を着けている。ワードさえ唱えれば、魔物に対峙できる能力を持っている。

でも、もう2度とヒロインにならないと決めたのだ。小説みたいにさくさく~と倒せるチート持ちならまだしも、能力そのまま、全く平凡な希理子のままじゃ出張っても今度こそやられるに決まっている。
だけど、僅かにでも撃退できる可能性があるのは希理子の持つ三日月スティックだけだろう。あれでエネルギーを充填すれば、魔物は住みかへ帰っていく。

そう思うが、希理子の中の半分は。放っておいても警察や消防が対処すればいいと思ってしまう。だって自分はただの高校生。好き好んで魔物となんか戦いたくない。これから先、素敵な彼氏を見つけてラブラブバカップル生活を送るのだ。彼氏は―――できれば黄田君がいいが、叶わぬ夢だとしっている。でも、思う位は自由―――――


「って、水族館?」

希理子は思い出した。先日白井が言っていた、さっきまで希理子自身考えていた事を。

『ソフト部とサッカー部の皆が………水族館に行くんだ』

まさかの事態だ。希理子の憧れ、学園のアイドル黄田君が危険にさらされている!


「行こう!今すぐ出動しよう。水族館に居合わせた人たちを助けなきゃ」

左之助の腕をひっ掴んで走り出した。







駆けつけた駅前はパトカーや救急車、消防車のサイレンがけたたましく鳴り響いていた。逃げ惑う人と、こんな時だというのにスマホで写真を撮りまくっている人もいる。

「じいちゃん、どうする?近寄れないよ」
「ああ。だが、騒ぎはあの向こうじゃぞ。何とかしてあちらへ行かねばどうにもならん」

何とか術はないかと2人で頭を捻ってみるが、とんとアイデアは浮かばない。こうなったら奥の手で、政府関係者に連絡を取ってもらうかと希理子が言いかけたその時、岩を砕くようなすさまじい音が響いた。

「ひゃああっ!な、何っ」

周りからも悲鳴が上がって、希理子たちもそちらを見た。

警察車両がバリケードのように並んでいるその奥から、いきなり飛び出してきた何かが街灯に巻き付きへし折ったのだ。


そいつが全貌を現した時、パトカーは踏みつぶされ、建物は崩壊していた。

腰まである真っ赤の長い髪と白い肌。上半身は裸で豊かな乳房が丸見えになっている。スケベな男なら喜んで見つめたくなる美乳だった。が、居合わせた野次馬は皆彼女のおっぱいより下半身に目を奪われていた。

はっきり言おう。半裸美女の下半身は、クネクネ動くタコの足だった。


「ほぉ、なかなか別嬪じゃな」
「じいちゃんっ」

呑気な感想をもらす左之助を一喝して、希理子は魔物を睨みつける。

ゲーム好きな若者なら馴染みがあるだろう。モンスター・スキュラ、それに酷似している。
先日のクラゲは、まだ海洋生物だと言いはれたかもしれないが、目の前のあれはどう見ても魔物だろう。魔物以外の何物でもない。あんな生物、地球上に存在しないのだから。

でも、でも――――声を大にして言いたい。

「何でまたヌルヌル系なのよ~~~っ!!!」




呪文を唱える希理子の声で銀の光が溢れ出す。そして、変身。

「うぎゃ~~っ。衣装が変わってる~」

前回希理子が文句を言ったミニスカエロワンピが、今回黄色のもこもこチューブトップとホットパンツになっていた。足元も同色のニーハイブーツ。

「前の戦闘服はお前が破ったじゃろ?」
「やっぱりエロい~~~。何よこれは。何でこんなに露出度高いのよ。信じらんないっ」
「変身具の自動補正じゃ。わしゃ知らん」

そんな事より頑張って魔物にエネルギーチャージしろ、と蹴り出された希理子だった。



とは言っても、服が変わっただけで希理子の戦闘能力がアップする筈もない。左之助に蹴り出された希理子は、あっけなくタコの足に捕まってしまう。

「うぎゃ~~っ、ヤダッ、ヤダヤダヤダッ!は~なして~~」

腰に回った、幼児の胴体程もあるタコ足は叩いても蹴っても外れない。それどころか全く堪えていない風で、軽々希理子を持ち上げる。
気が付けば、希理子と魔物はフェイス トゥー フェイス。目の前30センチの距離に互いの顔があった。

く……悔しいけど、美人じゃん。

頓珍漢な感想を浮かべた希理子が嫉妬心ダダ漏れで彼女を睨みつけたら、何故かにっこり微笑まれた。そして――――



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