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第1章
第18話
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「ノアおはよう。今日は俺と一緒に行かないか?」
そう言ってまだベットの中にいるノアを抱っこしようと手を伸ばしたら後ろからきた父上が俺を押し退けて
「い~や、ノアはずっとパパが連れてってたから今日もパパと一緒がいいよな」
と手を伸ばしてきた。
「父上は俺が帰ってきてから2日も連れてってたでしょ。今日ぐらいは俺に抱っこさせてくださいよ。夜だっていつの間にか父上と母上と一緒に寝てたなんて知りませんでしたよ」
「ノアはパパが好きだもんな~じゃあ行こうか」
戸惑って俺と父上の顔を見上げているノアをよそに結局父上はノアを抱っこしてダイニングルームに連れてってしまい慌てて追いかけた。
「あらノアおはよう。今日もパパと一緒にきたの?カイルは負けちゃったのね」
「母上からも言ってくださいよ。朝も昼も夜もいつもノアを抱っこして…父上は仕事されているんですか?」
「してるわよ。あなたも見てるでしょ?当たり前じゃない。それにしてもそんな怖い顔で睨んでいたらノアが怯えてしまうわよ」
父上の膝の上で座っているノアは動かずに俯いていた。そういえば今日はノアの声を聞いていない。怖がらせてしまったか?ノアの目線と同じ高さになるように膝を折りノアの手を両手で握った。
「ノアごめん。怖がらせてしまったか?毎日毎日、嫌な思いをさせてしまったね」
すると首を横に振りながら小さな声で大丈夫です。ごめんなさい。と聞こえた。
「ノアが謝ることはないからね」
そう優しく言ったつもりだったが
「僕がまだちゃんと歩けないからパパに毎日抱っこしてもらってごめんなさい。リハビリ頑張って1人で歩けるようにします」
申し訳なさそうに言うノアを父上から奪い取るように抱っこして俺の膝に乗せた。横抱きにしたノアの目を見て
「俺はノアを抱っこしたかっただけなんだ。これからノアが歩けるようになっても抱っこしたいんだけどダメかな?ノアが父上の抱っこがいいならそれでもいい。でも俺は父上より鍛えてるし背も高いんだ。立って抱っこしたらきっと父上よりも眺めがいいぞ」
そう言うと僕重いからカイルさん大変じゃない?と見当違いなことを言い出した。
「ノアは俺よりも小さいだろ?だから重くはないから心配しなくても大丈夫だ。それにもっと食べないと、まだ細いだろ」
小枝のように細いノアの腕をさすりながら言うと
「カイルさんの腕は僕より太いね。凄い」
とお返しとばかりにさすってくれた。
「それよりも俺も〝さん〟を付けないで呼んでもらいたいな。そうだなカイくん…っていうのはどうだ?」
バルトをルトくんと呼んでいるのを思い出した。
「カイくん?でもリアムさんにもさん付けてるよ?」
「リアムにさんを付けてるのか?さんなんて付けなくていい。あいつはリーでいい」
するとすぐそばにいたライナスも近づいてきて
「ノア様、リアムにさん付けは不要です。もちろん私にも、そろそろお食事にいたしましょ。ノア様の好きなコーンスープ、今お持ちいたしますね」
ライナスがキッチンに行くのを見ていたノアが
「ねぇカイくん、どうしてみんな僕の名前に様をつけるの?僕、偉くないよ」
ノアは素直だからすぐにカイくんと言ってくれた。嬉しくて顔が緩みそうなのを必死で堪えた。
「ノアは様を付けられるの嫌だったか?」
「う~ん。よくわからないけどノアって呼んでほしい。だって僕、お父さんとお母さん以外の人にあんまりお名前で呼ばれたことなかったから、みんなが呼んでくれて嬉しいけど、様はいらないの」
「そうだったのか…じゃあみんなノアって様を付けないで呼んでもらおうな」
そう言うと「うん」と笑顔で頷いてくれた。その笑顔は太陽よりも眩しくてキラキラしていた。
一緒にご飯を食べて一休みをしたらノアのリハビリが始まる。でも今日はどうしてもまとめなければいけない資料があって父上と父上の従者のエアロンとライナスの4人で執務室にいた。
「ライナス、ノアが様を付けないで欲しいと言っていたから、みんなにも周知してくれないか?」
「でも……」
「うん。わかってる。俺の運命だと言ってもあと10年以上もあるし、ノアはまだ子どもだからな」
「さようでございますか、承知いたしました。周知を徹底いたします」
そんな会話をしていると父上から声がかかった。
「カイル、ノアのことなんだが、そろそろ学校に通わせないか?まだ歩くのはおぼつかないがリアムと一緒に車椅子で行けば問題ないだろう。最悪マーヤに転送してもらってもいいかもしれないが…お前がいない間にムーンがきた時はとても楽しそうだったと聞いたぞ。ムーンの家族も王室には来づらいのか連絡もこないしな。どうだ?ノアもここにいるより同じくらいの子たちと遊ばせてあげるほうが心と身体の成長には必要じゃないか?」
それもそうだ、ノアは家族がいて、友達がいて楽しい日々を過ごせていたわけじゃない。当たり前の日常を過ごさせてやりたい。まぁ心配ではあるが、たまには俺も付き添って行けたらいいのではないか?と思い父上にお願いすることにすると父上はもう手配済みだからノアが返事をすれば明日から通えると…相変わらず仕事が早い。午前中の仕事が終わり、お昼ご飯の時間になったらノアに学校のことを伝えよう。ノアはどんな反応を見せてくれるだろうか?喜んでくれるかな?そう思いながら残りの仕事を片付けていった。
そう言ってまだベットの中にいるノアを抱っこしようと手を伸ばしたら後ろからきた父上が俺を押し退けて
「い~や、ノアはずっとパパが連れてってたから今日もパパと一緒がいいよな」
と手を伸ばしてきた。
「父上は俺が帰ってきてから2日も連れてってたでしょ。今日ぐらいは俺に抱っこさせてくださいよ。夜だっていつの間にか父上と母上と一緒に寝てたなんて知りませんでしたよ」
「ノアはパパが好きだもんな~じゃあ行こうか」
戸惑って俺と父上の顔を見上げているノアをよそに結局父上はノアを抱っこしてダイニングルームに連れてってしまい慌てて追いかけた。
「あらノアおはよう。今日もパパと一緒にきたの?カイルは負けちゃったのね」
「母上からも言ってくださいよ。朝も昼も夜もいつもノアを抱っこして…父上は仕事されているんですか?」
「してるわよ。あなたも見てるでしょ?当たり前じゃない。それにしてもそんな怖い顔で睨んでいたらノアが怯えてしまうわよ」
父上の膝の上で座っているノアは動かずに俯いていた。そういえば今日はノアの声を聞いていない。怖がらせてしまったか?ノアの目線と同じ高さになるように膝を折りノアの手を両手で握った。
「ノアごめん。怖がらせてしまったか?毎日毎日、嫌な思いをさせてしまったね」
すると首を横に振りながら小さな声で大丈夫です。ごめんなさい。と聞こえた。
「ノアが謝ることはないからね」
そう優しく言ったつもりだったが
「僕がまだちゃんと歩けないからパパに毎日抱っこしてもらってごめんなさい。リハビリ頑張って1人で歩けるようにします」
申し訳なさそうに言うノアを父上から奪い取るように抱っこして俺の膝に乗せた。横抱きにしたノアの目を見て
「俺はノアを抱っこしたかっただけなんだ。これからノアが歩けるようになっても抱っこしたいんだけどダメかな?ノアが父上の抱っこがいいならそれでもいい。でも俺は父上より鍛えてるし背も高いんだ。立って抱っこしたらきっと父上よりも眺めがいいぞ」
そう言うと僕重いからカイルさん大変じゃない?と見当違いなことを言い出した。
「ノアは俺よりも小さいだろ?だから重くはないから心配しなくても大丈夫だ。それにもっと食べないと、まだ細いだろ」
小枝のように細いノアの腕をさすりながら言うと
「カイルさんの腕は僕より太いね。凄い」
とお返しとばかりにさすってくれた。
「それよりも俺も〝さん〟を付けないで呼んでもらいたいな。そうだなカイくん…っていうのはどうだ?」
バルトをルトくんと呼んでいるのを思い出した。
「カイくん?でもリアムさんにもさん付けてるよ?」
「リアムにさんを付けてるのか?さんなんて付けなくていい。あいつはリーでいい」
するとすぐそばにいたライナスも近づいてきて
「ノア様、リアムにさん付けは不要です。もちろん私にも、そろそろお食事にいたしましょ。ノア様の好きなコーンスープ、今お持ちいたしますね」
ライナスがキッチンに行くのを見ていたノアが
「ねぇカイくん、どうしてみんな僕の名前に様をつけるの?僕、偉くないよ」
ノアは素直だからすぐにカイくんと言ってくれた。嬉しくて顔が緩みそうなのを必死で堪えた。
「ノアは様を付けられるの嫌だったか?」
「う~ん。よくわからないけどノアって呼んでほしい。だって僕、お父さんとお母さん以外の人にあんまりお名前で呼ばれたことなかったから、みんなが呼んでくれて嬉しいけど、様はいらないの」
「そうだったのか…じゃあみんなノアって様を付けないで呼んでもらおうな」
そう言うと「うん」と笑顔で頷いてくれた。その笑顔は太陽よりも眩しくてキラキラしていた。
一緒にご飯を食べて一休みをしたらノアのリハビリが始まる。でも今日はどうしてもまとめなければいけない資料があって父上と父上の従者のエアロンとライナスの4人で執務室にいた。
「ライナス、ノアが様を付けないで欲しいと言っていたから、みんなにも周知してくれないか?」
「でも……」
「うん。わかってる。俺の運命だと言ってもあと10年以上もあるし、ノアはまだ子どもだからな」
「さようでございますか、承知いたしました。周知を徹底いたします」
そんな会話をしていると父上から声がかかった。
「カイル、ノアのことなんだが、そろそろ学校に通わせないか?まだ歩くのはおぼつかないがリアムと一緒に車椅子で行けば問題ないだろう。最悪マーヤに転送してもらってもいいかもしれないが…お前がいない間にムーンがきた時はとても楽しそうだったと聞いたぞ。ムーンの家族も王室には来づらいのか連絡もこないしな。どうだ?ノアもここにいるより同じくらいの子たちと遊ばせてあげるほうが心と身体の成長には必要じゃないか?」
それもそうだ、ノアは家族がいて、友達がいて楽しい日々を過ごせていたわけじゃない。当たり前の日常を過ごさせてやりたい。まぁ心配ではあるが、たまには俺も付き添って行けたらいいのではないか?と思い父上にお願いすることにすると父上はもう手配済みだからノアが返事をすれば明日から通えると…相変わらず仕事が早い。午前中の仕事が終わり、お昼ご飯の時間になったらノアに学校のことを伝えよう。ノアはどんな反応を見せてくれるだろうか?喜んでくれるかな?そう思いながら残りの仕事を片付けていった。
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