【完結】君に触れたら、壊れてしまいそうで

なの

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新しい日常のリズム

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遥の体調が回復してから、俺たちは新しい生活のリズムを作ることにした。

まず何よりも、「無理をしない」こと。それが最優先だった。

「今日は、どんな予定?」

朝食をとりながら、俺が遥に声をかける。

「午前中は授業。午後はアルバイト。でも、夕方には帰ってくる予定」
「サークルは?」
「今日は休み。週三回までって決めたから」

遥は、医師とカウンセラーの助言を聞き入れ、自分の活動量をきちんと調整していた。

「それが一番いい。無理は禁物だからな」

俺も、自然と遥の体調を最優先に考えるようになっていた。

「涼太も、無理しないでね」

遥が、ふと真剣な顔で俺を見る。

「俺は大丈夫」
「でも、俺の看病でずっと無理してたでしょ?」

たしかに、遥が寝込んでいた間、心配と不安で気が張っていたのは事実だった。でも、それを苦だと思ったことは一度もなかった。

「疲れたけどさ、お前が元気になったなら、それで全部報われたよ」

俺の言葉に、遥はホッとしたように笑ってくれた。

俺たちは以前よりずっとお互いを気遣うようになった。

「今日は顔色いいね」
「うん、ちゃんと眠れたから」
「よかった」

そんな何気ない会話にも、心からの安心と喜びが宿るようになった。

アルバイト先の図書館でも、遥の体調を気にかけてくれる人がいる。

「遥くん、無理しちゃだめよ」

尾花さんが優しく声をかけてくれると、遥は少し照れながらも真面目にうなずいた。

「ありがとうございます。ちゃんと気をつけます」

遥は、周囲の人たちのあたたかさに支えられていることを、あらためて実感していた。

夜になると、二人で過ごす静かな時間が一層大切に思える。

「今日はどうだった?」
「ちょっと疲れたけど、楽しかった。子どもたちがたくさん来てくれて」

「無理はしてない?」
「うん、大丈夫。涼太がいてくれるから、安心して頑張れる」

遥の言葉に、俺の胸がじんわりと熱くなった。

「俺も、お前がいてくれるから、踏ん張れるよ」

お互いを思いやる日々が、少しずつ積み重なっていった。

だけど――問題もあった。思わぬ形で、俺たちの生活を揺さぶったのは、経済的な困難だった。

「……家賃、足りないかも」

遥が、不安そうに家計簿を睨みながらつぶやく。

「大丈夫。俺のバイト代もあるから」

できるだけ明るく言ったつもりだったけど、遥の顔は曇ったままだった。

「でも、涼太だって、自分の生活だけでも精一杯じゃない?」

確かに、俺のバイト代で二人分の生活費をまかなうのはかなり厳しい。それでも、遥を心配させたくなかった。

「なんとかなるって」

そう言いながらも、正直ギリギリの毎日だった。

食費を削り、娯楽費をほぼゼロにして、ぎりぎりのやりくり。

「ごめん、俺のせいで……」

遥が、ぽつりと俯いてつぶやく。

「お前のせいじゃない。体調を崩すなんて、誰にでもあることだよ」

「でも……」

「でもはなし。一緒に乗り越えていこう」

俺の言葉に、遥は少し安心したように頷いた。

それから、俺はアルバイトのシフトを増やしてもらうことにした。

「もう少し、シフト入れてもらえませんか?」

ファミレスの店長に相談すると、すぐに頷いてくれた。

「結城くん、ほんとによく頑張ってるよね。できるだけ調整してあげるよ」

その言葉に、心から感謝した。

けれど、その分だけ遥と過ごす時間は減ってしまう。

「涼太、無理しすぎないでね?」

遥が、気遣わしげに俺を見つめてくる。

「大丈夫。一時的なことだから」

そう答えながらも、体は確実に疲れていた。

それでも、遥と過ごす時間に癒されながら、なんとか日々を乗り越えていた。

「おかえり。今日もお疲れさま」

ある夜、アルバイトから帰ると、遥が温かいご飯を用意して待ってくれていた。

「ありがとう」

その優しさが、冷えた体にじんわりと沁みた。

「安い食材しか使えなかったけど、栄養は考えたから」

「十分すぎるよ。お前が作ってくれた料理が一番うまい」

俺の言葉に、遥はほっとしたように微笑んだ。

食後、二人でソファに並んで、これからの生活について話し合った。

「俺も、もう少しバイト増やそうかな」

遥が言い出した。

「体調は大丈夫か?」
「うん。もう完全に戻ったから」

「でも、無理はするなよ」
「わかってる。でも、涼太ばっかりに負担かけたくないんだ」

その言葉に、胸の奥が熱くなった。

俺たちは、自然に手を繋いだ。

困難の真っ只中だったけど、二人でなら、乗り越えられる気がしていた。

翌週から、遥もアルバイトのシフトを少し増やした。

もちろん体調を最優先にしながら、無理のない範囲で。

夜には、毎日一緒にその日の出来事を話し合うのが日課になった。

「今日も疲れた?」
「うん。でもね、すごく充実してた」

「体調は?」
「大丈夫。涼太が心配してくれるから、無理しないようにしてるよ」

その笑顔に、俺もようやく肩の力が抜けた。

生活は少しずつ落ち着き始めていた。

そして何よりも――

俺たちは、大切なことを学び始めていた。

困難な時こそ、支え合うことの大切さを。

「俺たち、ちょっとずつ強くなってきた気がする」

遥がふとつぶやいた。

「そうだな。一人じゃできないことも、二人ならできるよな」

「うん。これからも、一緒に頑張っていこうね」

目と目を合わせて微笑み合うこの瞬間が、何より愛おしかった。

これから先も、きっといろんな壁が立ちはだかるだろう。

でも、俺たちはもう知っている。
一緒にいる限り、どんな困難も越えていける。

――そんな確信を、今、しっかりと胸に抱いていた。


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