鬼上司と秘密の同居

なの

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俺の家族

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部長は、泣き崩れてる俺を抱えてタクシーに乗せてくれた。
「っすみ…ま…せん」
「人には言いたくないこともあるから気にするな」と抱きしめて頭を撫でてくれた。

部長の家に帰ってきてた。
「風邪ひくから風呂に入ってこい。その間にパスタでも作っとく。いいか?」
「はいっ…」

部長はそのままキッチンに向かって、俺はお風呂に入った。
お風呂は予約していたのか温かいお湯が溜まっていた。

お風呂に入りながら俺は…と言われた過去を思い出していた。
 
あれは俺が小6の年の夏休みだった…
俺は一人っ子で、両親から可愛がられて育ったと思う。俺も両親が大好きだった。
小学校の副校長だった父と小学校の養護教諭の母。俺も将来は学校の先生になりたいと言っていた。

夏休みになり父さんにどこ行きたい?と聞かれて「海」がいいと答えた。

母さんは暑いからプールにしない?プールじゃだめなの?と言ってたけど海がいい…と言った俺が悪かったんだと思う。

「海斗、お前も大きくなったな。これからもっと背が伸びて抜かれそうだな」そう言って父さんは笑ってた。
「父さんなんてすぐに追い越すよ」
「父さん、あそこの旗まで競争ね」

父さんと一緒に旗がある所まで泳いでる途中で突然、大きな波が来て…俺と父さんはそのまま波にさらわれた。近くのサーファーに助けられたけど…父さんは意識がなかった。
父さんは病院に運ばれた。
意識不明のまま、色んな管を体に付けてベッドに寝ていた。

母さんは毎日泣いてた。ご飯もあまり食べられなくなって痩せてきてしまった。それでも父さんの病院に毎日通っていた。

「海斗が海に行きたいって言わなければ…」
「あそこで泳がなければ」
「どうしてお父さんが…」
「海斗…お父さんを返して、返してよ」
「海斗なんて
顔見るといつも言われてた。

そして次の年の秋、意識が戻ることなく父さんは亡くなった。

俺は母さんとは喋らなくなった。
ご飯も自分で作って1人で食べたり悠人の家に行くことが多くなった。
母さんは仕事を辞めた。父さんの面影を探して毎晩、飲み歩くようになっていった。
男の人と家に帰って来ることもあった。でもどの人とも長続きしなかった…けど、なんとなく父さんに似ている人ばかりだったような気がする…

男の人と別れると仏壇の前にいた。

「お父さん早く迎えに来て」
「お父さん、あの子に海なんて名前つけたから海が好きだったの?」
「もっと長生きできたよね」
あの子なんて」
「本当よ」
そういつも言っていた…

高校生になりバイトに明け暮れた。家に帰りたくなくて悠斗の家に泊まることも増えていった。
母はお酒の飲み過ぎから身体を壊し入退院を繰り返すようになっていった。
俺は奨学金が借りられる大学を選んだ。学校の先生になる夢はとうに捨てた。
だから教育学部じゃなく経済学部にした。

大学に入りアイツと出会って付き合うようになった頃、母は病気が悪化してほとんど家に帰ってこれなくなった。
たまに見舞いに行くと
「お父さん、いつ来てくれる?」
「早くお父さんの所に行きたい」
そんな事しか言わなくなった。
精神的にもおかしくて不安定な状態が続いた、そんなある日アイツと一緒にいたとき病院から電話がかかってきた。

母さんが死んだ。俺のせいだ…
父さんが死ななければ…母さんは病気にならなかったのに…

俺はアイツに抱えてもらいながら病院に行った。

俺のせいで両親は亡くなった。
だから俺は…幸せになんてなっちゃいけないんだ…幸せになれないんだよ。すっかり忘れてた…自分が幸せになりたいと思ってた。

「…っと・いと・海斗」肩を叩かれふと顔を上げると部長が俺を呼んでいた。
「部長…」
「随分と入ってたが、のぼせるぞ。出られるか?」
俺は部長につかまってお風呂を出た。長く浸かってたせいか頭が痛い。

「食べられそうか?」そう言われ、椅子に座る。ダイニングテーブルには魚介たっぷりのペスカトーレとスープ、サラダが用意されていた。
手を合わせて「いただきます」とパスタを一口入れると魚介とトマトの旨味が広がり、にんにくの香りが鼻を抜けた。「美味しいです」
「そっか…食べれるだけ、食べろよ」そう言って黙って食べる俺を部長はなにも言わなかった。何も聞いてこなかった。

「ごちそうさまでした。すみません食欲なくて…」
俺は半分も食べられなかった。
「頭痛いんで、もう寝ます。おやすみなさい」
「海斗、薬は?」
「大丈夫です。すみません」
そう言って俺はベットに横になった。

俺…いつまでここにいられるんだろう…早く家、探さないと…部長にお試しって言われたけど、断ろう。俺なんかより部長はもっといい人ができるはずだから。しかも次期社長になる人だもん。おれなんかが幸せになんてしてもらえないよ。俺なんか…

会社…辞めないとかな?仕方ないアイツに会うのも嫌だから、どこか違う場所でも行こうか…
そんな事を考えていたが、横になって部長の香りがする布団に顔を埋めてるうちに意識を手放していた。



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