鬼上司と秘密の同居

なの

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隠しカメラ

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「お待たせいたしました。皆様、プロジェクターをご覧ください」
そう角谷さんに言われて画面を見ると、映像が流れてきた。
それは秘書課の部屋からだ。右下には日付と時間が表示されていた。今から2ヶ月前の映像だ。

「まさか室長があの桜宮さんのことが好きだなんて知りませんでしたよ」

「大学の同期だったんだ。今でも同期会とかで交流があってね。この前、同期会でたまたま会って川上さんの所のグループ会社の副社長になるって聞いて思わず秘書は?って聞いたらこれから選ぶんだって、しかも経験がある男性の方がいいかもって言ってたんだよ。女性だと同性でやりやすいけど、色々と面倒な事もあるからって…しかも彼女、最近離婚したと聞いたからね…これは俺の最後のチャンスじゃないかと思ったんだよ」

「室長はここを辞めてもいいと思ってるんですね。副社長と秘書なんて関係深まるし、恋愛に発展するといいですね。じゃあ私も…ちゃんと浅井部長の秘書になれるようにしてくれますよね?そうじゃないとパパに推薦してあげないですよ」

「わかってるよ。お互いにwin-winの関係だろ?実は俺にいい考えがあるんだ。小沢は浅井部長の推薦だって聞いただろ?でも小沢が本当は仕事ができない人間だと知ったら、いくら推薦でも上層部も黙ってないんじゃないかって思ってる。その為に小沢が仕事ができない人間だって仕立て上げないとな。川上さんも常務の秘書で忙しいと思うがよろしく頼むよ」

「えー他に方法ないんですか?たまに鈍臭いけど、真面目な子なのに…」

「確かに真面目に秘書検定合格の為にスクールにも通ってる。隙もないし、角谷さんも気にいってる。おまけに社長や常務の奥様方にも気に入られてるしな。それこそ、浅井部長のパートナーになるかもしれないぞ。何せ男が好きだとカミングアウトしたくらいなんだから、それでもいいのか?」

「えーそれは困る。確かに気に入られてるみたいだけど…私がさりげなく仕事のフォローをしながら、ここぞ!という場面で小沢さんにミスを押し付ければいいですかね?」

「あぁ…タイミングは任せる」

資料には室長と川上さんのやり取りの詳細が書かれていた。いつ、どこで、どんな内容だったのか…まさか、その映像が残っていたとは…わが社は社内の安全の為、防犯カメラがたくさん設置してある。みんなが気づくものから実は気づかないものまで…だからまぁ…オフィスラブ…なんてことをしても警備員さんにはバレバレだ。だから俺と海斗のことも一部の警備員は知っているが、みんな個人情報だと思って気をつけてるから誰にも言うことはないが…

そのあとにも、ちょこちょこと2人は会って近況報告をしていたようだった。
そして決定的な証拠があった。海斗が作成した資料を川上さんがすり替えていた。
そして、その資料を見た室長が海斗に暴言を吐いてる様子が写し出された。

「小沢くん、資料が違うんだけど、これじゃないんだよ、頼んだ資料は…明後日の重役会議にメインで使う資料なんだよ。君に任せた俺が悪かったようだね」

「えっそんなわけ……申し訳ありませんでした。今すぐ用意を…」

「もういいよ。川上さんがちゃんと用意してくれたから、全く資料の1つ満足に用意できないんじゃ来週の秘書検定試験も合格なんかできないんじゃないか?せっかく浅井部長の推薦だかなんだか知らないけど、まだ勤務年数も浅い君には秘書なんて部署は荷が重かったのかもしれないね。今後のことは、考え直した方がいいよ。私から角谷さんや、社長に伝えておいてあげるから。もういいよ。業務に戻りなさい」

海斗は項垂れてるように見える。以前、上田とのことがあってから、余計に資料には慎重になっていたのに、かわいそうに今すぐに抱きしめてやりたい。

そして最後に川上さんの様子が映し出された。別角度の映像だろう口角を上げて笑っているようにも見えた。

「皆様、ご覧いただいたように、室長と川上さんが小沢くんにミスをなすりつけていたようですが、これに関して反論はございますか?室長」
そう社長に問いただされて、室長はわなわなと震え出した。

「角谷さん、川上さんをお連れして来てください」

「承知いたしました」
角谷さんが出ていくと、周りの空気が変わったのがわかる。社長は室長を睨みつけて、隣にいた里中の叔父さんと話していた。

「お連れいたしました」
川上さんは会議室にいるメンバーを見て顔が綻んで来ているのがわかる。この女、絶対に勘違いしてるだろう。

「社長、どのようなお話しでしょうか?」
おいおい顔がどんどん緩んでるぞ。

「川上さんにお聞きしたいことがあってね。浅井部長の…」と社長が話そうとしたのを遮って

「はい。承知しております。浅井新副社長の秘書でしたらこのわたくしにお任せくださいませ。しっかりとお役目、はたさせていただきます。よろしくお願いします」

社長は笑いながら「ん?何か勘違いしてはいないのかね?」と尋ねた。

「勘違い…ですか?」

「そう。私は浅井部長の部下だった小沢さんのことについて聞きたいと思ったんだが…」

「あら私ったら…失礼いたしました」川上さんの顔が一気に青ざめた。
おいおい、こいつは大丈夫か?周りをよく見てみろ。みんな笑ってるぞ。どんな勘違いしてるんだよ。俺はいくら金を積まれたとしても、絶対にこいつを秘書になんてしたくない。

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