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誓い
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その紙を胸元に大事にしまった透さんは、外のポケットから紙を取り出して
「海斗、一緒に読んでくれるか?」と聞いてきた。
それは結婚式で神父さんから言われる誓約の言葉が書いてあった。
透さんと目配せをして2人で読んだ。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓います」
なんだか本当の結婚式のようで感動していると、透さんは僕と向かい合わせになって手を繋いできた。
そしてみんなに宣言するように
「里中透は、小沢海斗を生涯愛することを誓います」
そう言って僕を抱きしめキスをしてくれた。
それから朝、渡した指輪を取り出してみんなの前ではめてくれた。
「海斗もはめてくれる?」
涙でぐちゃぐちゃの顔をハンカチで拭きながら言ってくれた。
震える手で透さんの左手にはめた。これでもう秘密にしなくていいんだと思ったら、余計に涙が溢れた。
透さんは僕を抱きしめて「幸せになろうな」と言ってくれた。
僕の耳にみんなからの祝福の声や盛大な拍手の音が聞こえてきた。すると司会の紅林さんの声が聞こえた。
「ここでお2人へのお祝いをおこないたいと思います。里中副社長が在籍していた営業部の皆様から鏡開きをご用意していただきました。鏡(樽)を開く事によって運が開けるといわれております。なお一層、二人で未来を切り開いていくという意味を込めまして、皆様の前で晴れて夫夫になった副社長、小沢さんよろしくお願いします」
「透さん……」
「そういえば営業部で余興をすると言ってけど、このことか。よかったな海斗」
するとステージに営業部のみんなと大きな樽が用意された。
「お2人さん幸せに」
「小沢、よかったな」
平井もデルもきてくれた。
「俺が「せーの」と言ったら皆様も一緒に「おめでとう」と掛け声をお願いします」と上田さんが説明してくれた。僕たちは、おめでとうの合図で鏡を割るんだと。
透さんと2人で木槌を持つと上田さんの「せーの」という掛け声で「おめでとう」と声がかかった。僕と透さんで小槌で鏡を割ると…中にはたくさんのプチギフトが詰まっていた。
「これ…」
「はい皆様、今回は乾杯も終わっているのでお酒ではなくプチギフトです。皆様も幸せのおすそわけを取りに来てください」
そう言うと、みんなが順番に取りに来るので透さんと渡していった。
その度に「おめでとう」「幸せに」とみんなが言ってくれて嬉しかった。僕たちは温かい気持ちのままお開きの時間になってしまった。
「以上をもちまして、新副社長就任披露パーティー&副社長と小沢さんの人前式を終了させていただきます。本日は皆様ありがとうございました。お忘れ物のないように、また記念品のお受け取りをされてからお気をつけてお帰りください。本日は誠にありがとうございました」
盛大な拍手の中、パーティーが終わった。
すると社長と芳賀さん、角谷さんがやってきた。
「透、海斗くんおめでとう。いい式だったよ。幸せになれよ」
「芳賀さん、ありがとうございます」
「これからも幸せになってください」
その後もいろんな方から声をかけてもらった。僕は実行委員なので片付けの手伝いをしないといけないと思ったら、主役なんだからと室長に言われて僕たちはそのまま解散となった。
「海斗、今日はこのままこのホテルで泊まるから」そう言われたのは控え室に荷物を取りに行ったときだった。
「え?ここに?」
「だって俺たちはみんなの前で人前式で誓ったんだぞ。夫夫になるって。それは結婚式と同じように。だから今日は俺たちの初夜になるじゃん」
「初夜って…」
「まあ、その前にこれ出しに行こうか?もう今日の16時に予約したから」
それはさっき書いたパートナーシップ宣誓制度の書類だった。
「とりあえず着替えようか。流石にこのまんまで行くのは目立つからな」
「そうですね」
タキシードを脱いで朝着たスーツに着替えようとしたら腰に手を回して引き寄せられた。一気に透さんとの距離がなくなった。ゆっくりと顔が近づき唇が重なった。
角度を変え、何度も唇を重ねる。透さんの舌が唇をなぞる。呼吸を求めて開いた唇に舌がねじ込まれた。歯列をなぞらた。どんどん深くなる口付けに僕の吐息が荒くなって行く。
「……んふぅ。透…さん」
「海斗、愛してる」
お互いのモノが主張してきたのがわかった。こんな所じゃダメだとわかってるのに離れたくない。そう思ったとき、ドンドン「透、海斗いるか?」
この声は「小倉さん?」
「悪い、まだ着替えてるから10分後にロビーに行くから」
「わかった。あとでな」
2人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「やばかったな」
「透さんのせいですよ」
「海斗の姿を見て耐えられなかった」
「早く着替えてロビーに行きましょ」
「夜は覚悟しろよ」
「はい。たくさん愛してください」
「…っく、海斗、煽るな。我慢してるんだから」
すっかり落ち着いた僕たちは着替えてロビーに向かった。
「海斗、一緒に読んでくれるか?」と聞いてきた。
それは結婚式で神父さんから言われる誓約の言葉が書いてあった。
透さんと目配せをして2人で読んだ。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓います」
なんだか本当の結婚式のようで感動していると、透さんは僕と向かい合わせになって手を繋いできた。
そしてみんなに宣言するように
「里中透は、小沢海斗を生涯愛することを誓います」
そう言って僕を抱きしめキスをしてくれた。
それから朝、渡した指輪を取り出してみんなの前ではめてくれた。
「海斗もはめてくれる?」
涙でぐちゃぐちゃの顔をハンカチで拭きながら言ってくれた。
震える手で透さんの左手にはめた。これでもう秘密にしなくていいんだと思ったら、余計に涙が溢れた。
透さんは僕を抱きしめて「幸せになろうな」と言ってくれた。
僕の耳にみんなからの祝福の声や盛大な拍手の音が聞こえてきた。すると司会の紅林さんの声が聞こえた。
「ここでお2人へのお祝いをおこないたいと思います。里中副社長が在籍していた営業部の皆様から鏡開きをご用意していただきました。鏡(樽)を開く事によって運が開けるといわれております。なお一層、二人で未来を切り開いていくという意味を込めまして、皆様の前で晴れて夫夫になった副社長、小沢さんよろしくお願いします」
「透さん……」
「そういえば営業部で余興をすると言ってけど、このことか。よかったな海斗」
するとステージに営業部のみんなと大きな樽が用意された。
「お2人さん幸せに」
「小沢、よかったな」
平井もデルもきてくれた。
「俺が「せーの」と言ったら皆様も一緒に「おめでとう」と掛け声をお願いします」と上田さんが説明してくれた。僕たちは、おめでとうの合図で鏡を割るんだと。
透さんと2人で木槌を持つと上田さんの「せーの」という掛け声で「おめでとう」と声がかかった。僕と透さんで小槌で鏡を割ると…中にはたくさんのプチギフトが詰まっていた。
「これ…」
「はい皆様、今回は乾杯も終わっているのでお酒ではなくプチギフトです。皆様も幸せのおすそわけを取りに来てください」
そう言うと、みんなが順番に取りに来るので透さんと渡していった。
その度に「おめでとう」「幸せに」とみんなが言ってくれて嬉しかった。僕たちは温かい気持ちのままお開きの時間になってしまった。
「以上をもちまして、新副社長就任披露パーティー&副社長と小沢さんの人前式を終了させていただきます。本日は皆様ありがとうございました。お忘れ物のないように、また記念品のお受け取りをされてからお気をつけてお帰りください。本日は誠にありがとうございました」
盛大な拍手の中、パーティーが終わった。
すると社長と芳賀さん、角谷さんがやってきた。
「透、海斗くんおめでとう。いい式だったよ。幸せになれよ」
「芳賀さん、ありがとうございます」
「これからも幸せになってください」
その後もいろんな方から声をかけてもらった。僕は実行委員なので片付けの手伝いをしないといけないと思ったら、主役なんだからと室長に言われて僕たちはそのまま解散となった。
「海斗、今日はこのままこのホテルで泊まるから」そう言われたのは控え室に荷物を取りに行ったときだった。
「え?ここに?」
「だって俺たちはみんなの前で人前式で誓ったんだぞ。夫夫になるって。それは結婚式と同じように。だから今日は俺たちの初夜になるじゃん」
「初夜って…」
「まあ、その前にこれ出しに行こうか?もう今日の16時に予約したから」
それはさっき書いたパートナーシップ宣誓制度の書類だった。
「とりあえず着替えようか。流石にこのまんまで行くのは目立つからな」
「そうですね」
タキシードを脱いで朝着たスーツに着替えようとしたら腰に手を回して引き寄せられた。一気に透さんとの距離がなくなった。ゆっくりと顔が近づき唇が重なった。
角度を変え、何度も唇を重ねる。透さんの舌が唇をなぞる。呼吸を求めて開いた唇に舌がねじ込まれた。歯列をなぞらた。どんどん深くなる口付けに僕の吐息が荒くなって行く。
「……んふぅ。透…さん」
「海斗、愛してる」
お互いのモノが主張してきたのがわかった。こんな所じゃダメだとわかってるのに離れたくない。そう思ったとき、ドンドン「透、海斗いるか?」
この声は「小倉さん?」
「悪い、まだ着替えてるから10分後にロビーに行くから」
「わかった。あとでな」
2人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「やばかったな」
「透さんのせいですよ」
「海斗の姿を見て耐えられなかった」
「早く着替えてロビーに行きましょ」
「夜は覚悟しろよ」
「はい。たくさん愛してください」
「…っく、海斗、煽るな。我慢してるんだから」
すっかり落ち着いた僕たちは着替えてロビーに向かった。
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