若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの

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誓いの言葉と、影の足音

「よし、そろそろリハーサルいくぞ」

朝の会議室に、いつもとは違う鷹臣の声が響いた。

鷹臣は腕を組み舎弟たちを前に重々しく宣言した。

「リハーサル……ですか?」

「おう。指輪の差し出しと誓いの言葉のタイミングを練習する」

「兄貴どんだけガチなんすか……!」

若頭の目は真剣で、空気が一気に張り詰めた。

……そう、この任務は「若頭の全人生を賭けた大勝負」

誰もがそう確信していた。すると舎弟の1人が声を上げた。

「じゃ、オレが悠真さん役やります!」

「は?お前の顔で兄貴がとか言うの耐えられるわけねぇだろ!」

「じゃあお前やれよ!」

「いや、俺イケメンじゃねぇし……」

――リハーサル開始5秒で迷走してしまった。

***

その頃、悠真はダイニングでトーストを齧っていた。

「……なんかさ、最近あいつら変じゃね?」

舎弟・藤倉が隣で冷や汗をかきながら笑っていた。

「へ、変ですかね?いやほら、皆さん春ですから、気分がこう……」

「は?」

「いやっ……関係なかったっすー!」

(こいつ嘘つくの下手すぎだろ……)

悠真はコーヒーをすすりながらため息をひとつついた。ま、鷹臣も忙しそうだしな。舎弟たちと何か組の仕事してるんだろ。

……この時は、まだそう思っていた。

***

「じゃ、もう一回いくぞ。誓いの言葉の時は一歩前に出て声は低く、でも優しく。圧も忘れんな」

「は、はいっ!」

「てか兄貴、その誓いの言葉……マジで言うんすか?」

鷹臣は静かに読み上げた。

「お前の笑顔を守るためなら、俺はこの命も全部差し出す」

「きゃー!カッコいいーー!!」

「惚れるーー!!」

「静かにしろ、集中できねぇ!」

笑いが広がる中、扉がノックされた。

「若、ちょっと……玄関に、お客様が」

「客?」

鷹臣の眉がピクリと動いた。

「誰だ?」

「名乗りはありません。悠真に用があるとだけ……」

「……チッ、怪しいな」

鷹臣はジャケットを羽織りながら低く呟く。

「もし絡みなら、ここでケリをつける」

「承知!」

空気が一変して、リハーサルは一時中断された。

***

玄関に現れたのは見知らぬスーツ姿の中年男だった。だが、どこか胡散臭い笑みを浮かべていた。

「お忙しいところすみませんねぇ、鷹瀬の若頭さん」

「名乗らねぇ客は歓迎しねぇ」

「いやいや……私はただの、悠真くんの昔なじみですよ」

「……は?」

その瞬間、鷹臣の目つきが変わった。

「何の用だ」

「昔の借りをね、ちょっと返してもらおうかと思いまして。ってのは意外と重いんですよ」

男の声はどこか楽しげ。
だが……次の一言が鷹臣の怒りに火をつけた。

「鷹瀬さんが肩代わりしてくれるってことで、いいのかな?」

鷹臣の拳が静かに握られる。

一歩、また一歩。
鷹臣が男に向かって歩み寄って部屋の空気が、凍った。

「……二度と近づくな。今すぐ消えろ」

低く、しかし絶対的な命令。

怒鳴りでも脅しでもない。
だが男は一瞬で言葉を失い、顔を青ざめさせ踵を返して逃げ出した。

鷹臣はその背を見送らず、ただ背後の舎弟にだけ聞こえるように

「……あの時の後始末、まだ終わってなかったらしいな」

「……すぐ確認します」

「頼む。……悠真には何も言うなよ」

背中には悠真の前では見せないがあった。

***

夕方。鷹臣と悠真はソファーに並んでコーヒーを飲んでいた。

「……今日、なんかあった?」

「いや。なんもねぇよ」

そう言って悠真の髪をそっと撫でた。

「それより、今度出かけるか。たまには外で、ちゃんと俺の隣にいてほしいんだ」

その言葉に、悠真は少しだけ驚いて……ふっと笑った。

「……わかった」

その笑顔を見ながら鷹臣はポケットにしまってある箱を握りしめていた。全部、俺の手で守る。だから……もう少しだけ、待っててくれ。

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