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過去
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「この子にとっては生きてる方が辛いわよ。死んだ方がいいわよ…」
「まだ言いますか?一体どんな恨みがあるんですか?」
そう言うと女は話し始めた。
女の名前は山田春奈、シングルで奈月くんを産んだ。付き合ってた奴に裏切られ、気づいた時には堕胎できない週数になっていたため、仕方なく産むことにした。彼女は両親を早くに亡くし助けてくれる身内が身いなかった。色々と調べて妊婦でも受け入れてくれるシェルターを知り、そこで奈月くんを産んだ。ただこれから先、奈月くんを育てられないかもしれないと、産まれてすぐに乳児院に預けることも考えたが、産まれたわが子の顔を見たら、それができなかったと…ただ思っていたよりも幼子との生活は大変だった。
出産後しばらくしてから寮と託児所がある夜の店で働いた。そのうちの1人と縁あって結婚をしたが、彼女や奈月くんに暴力を振るうようになって別れた。その後も何人かと付き合っては別れるという生活をしていたが、そのうち彼女は奈月くんがいるせいで自分が幸せになれないんじゃないかと思うようになった。まだ小学生の奈月くんを置いて外泊したのも一度や二度じゃないと…
そして奈月くんが中3になった頃に今日、火葬された男と付き合うようになった。男はなぜか奈月くんに構うようになった。彼女は最初可愛がってくれていると思っていたが、実際は違った。彼女がいない時に男は奈月くんに性的暴力を繰り返していた。そしてたまたまその現場を彼女に見られた。
いつもは帰ってこない時間、仕事が早く終わって早くに帰ってきた彼女に奈月くんとの情事を見られたのだ。男はとっさに逃げようと部屋から飛び出した。そこに運悪く走ってきたトラックに轢かれて即死した。その後、彼女に問い詰められた奈月くんは部屋の窓から飛び降りて頭を打ち、腕を骨折した。
そんなことをされてきたのか…奈月くんは…
「奈月くんは体も小さいし、かなり細いんですが、なぜですか?ご飯は?」
「あげても、あの子すぐに吐くの。特に彼がいると食べないことも多かったのよ。最近特に酷かったわ」
「病院へは?」
「連れて行ったことないわよ。ただの気まぐれだと思ってたのに、入院した病院で栄養失調って言われたわよ。小さな子どもじゃないのに、ご飯を食べないなんて…バカな子よ」
「学校へは行ってたんですか?」
「働いてたわよ。近くのコンビニで」
「働いてたって…奈月くんはいくつなんですか?」
「18歳になるんじゃないかしら?」
俺は何も言えなくなった…18歳?どう見てもまだ中学生くらいだと思っていた。奈月くんはどんなに嫌だったのだろう。好きでもない相手に性の奴隷のように身体を弄ばれて…
「樹?」
「あぁ…来たのか」
「郁子さん送って、あとは叔父さん達に頼んできた」
「悪かったな」
「あの子は?」
「手術中だ」
「かなり酷いのか?」
「わからない」
「とりあえず手術が終わってからだな」
あの身体で手術に耐えられるのか…俺は不安になりながら手術室の赤いランプを見つめていた。
どのくらい時間がたっただろう…急に赤いランプが消えた。それと同時に相原先生が出てきた。
「相原先生…彼は?」
「あぁ…とりあえず一命は取り留めた。でも、栄養失調と衰弱が激しいし、実は…虐待の跡も見られた。このままちゃんと回復してくれるといいが…」
「虐待って…そんな…相原先生、この子を個室に入れてくれないか?」
「いいのか?」
「はい。俺がその子の面倒を全部見ます」
「わかった。キミ…個室の準備をして」
「わかりました」
看護師はバタバタと走って行った。
「樹…どんな子かもわからないのに…お前がお金出すなんて」
「いいんだ。このまま、この女の所にいさせるわけにはいかないから」
俺はただ、この子とこれっきりになりたくなかった。この子を助けたい。奈月くんを…あの大好きだった犬のモモに似ているからだろうか…でも似てるからって奈月くんの為にお金を出したいと思ったのかは今はまだわからなかった。
奈月くんを個室に連れて行ってる間に奈月くんの母親と話をすることにした。
「あなたは奈月くんはいらないって言ってましたね」
「そうよ。こんなお荷物、それにあの子がいなければ私は幸せになれたのに」
「じゃあなぜ児相にでも預けなかった?」
「そうだけど…」
そのまま口を閉ざしてしまった。きっと何度も思ったのかもしれない。
「これから先、奈月くんと暮らしたいと思いますか?」
「はぁ?無理よ。あの子を見るたびに彼が亡くなったのを思い出すわ。それに、私があの子を殺すかもしれない」
「じゃあ私が面倒を見ます。いいですか?」
「見ず知らずのあの子の面倒を見るですって?とんだ偽善者ね。それともあんたもあの子の身体に興味が湧いた?」
「そんなんじゃない」
「あの人は両方いけるって最初は言ってたのよ。私じゃなくて奈月に興味があっただけなのよ。あんたもでしょ?好きにするといいわ。18歳は成人だもんね」
そういって病院を出てってしまった。
「まだ言いますか?一体どんな恨みがあるんですか?」
そう言うと女は話し始めた。
女の名前は山田春奈、シングルで奈月くんを産んだ。付き合ってた奴に裏切られ、気づいた時には堕胎できない週数になっていたため、仕方なく産むことにした。彼女は両親を早くに亡くし助けてくれる身内が身いなかった。色々と調べて妊婦でも受け入れてくれるシェルターを知り、そこで奈月くんを産んだ。ただこれから先、奈月くんを育てられないかもしれないと、産まれてすぐに乳児院に預けることも考えたが、産まれたわが子の顔を見たら、それができなかったと…ただ思っていたよりも幼子との生活は大変だった。
出産後しばらくしてから寮と託児所がある夜の店で働いた。そのうちの1人と縁あって結婚をしたが、彼女や奈月くんに暴力を振るうようになって別れた。その後も何人かと付き合っては別れるという生活をしていたが、そのうち彼女は奈月くんがいるせいで自分が幸せになれないんじゃないかと思うようになった。まだ小学生の奈月くんを置いて外泊したのも一度や二度じゃないと…
そして奈月くんが中3になった頃に今日、火葬された男と付き合うようになった。男はなぜか奈月くんに構うようになった。彼女は最初可愛がってくれていると思っていたが、実際は違った。彼女がいない時に男は奈月くんに性的暴力を繰り返していた。そしてたまたまその現場を彼女に見られた。
いつもは帰ってこない時間、仕事が早く終わって早くに帰ってきた彼女に奈月くんとの情事を見られたのだ。男はとっさに逃げようと部屋から飛び出した。そこに運悪く走ってきたトラックに轢かれて即死した。その後、彼女に問い詰められた奈月くんは部屋の窓から飛び降りて頭を打ち、腕を骨折した。
そんなことをされてきたのか…奈月くんは…
「奈月くんは体も小さいし、かなり細いんですが、なぜですか?ご飯は?」
「あげても、あの子すぐに吐くの。特に彼がいると食べないことも多かったのよ。最近特に酷かったわ」
「病院へは?」
「連れて行ったことないわよ。ただの気まぐれだと思ってたのに、入院した病院で栄養失調って言われたわよ。小さな子どもじゃないのに、ご飯を食べないなんて…バカな子よ」
「学校へは行ってたんですか?」
「働いてたわよ。近くのコンビニで」
「働いてたって…奈月くんはいくつなんですか?」
「18歳になるんじゃないかしら?」
俺は何も言えなくなった…18歳?どう見てもまだ中学生くらいだと思っていた。奈月くんはどんなに嫌だったのだろう。好きでもない相手に性の奴隷のように身体を弄ばれて…
「樹?」
「あぁ…来たのか」
「郁子さん送って、あとは叔父さん達に頼んできた」
「悪かったな」
「あの子は?」
「手術中だ」
「かなり酷いのか?」
「わからない」
「とりあえず手術が終わってからだな」
あの身体で手術に耐えられるのか…俺は不安になりながら手術室の赤いランプを見つめていた。
どのくらい時間がたっただろう…急に赤いランプが消えた。それと同時に相原先生が出てきた。
「相原先生…彼は?」
「あぁ…とりあえず一命は取り留めた。でも、栄養失調と衰弱が激しいし、実は…虐待の跡も見られた。このままちゃんと回復してくれるといいが…」
「虐待って…そんな…相原先生、この子を個室に入れてくれないか?」
「いいのか?」
「はい。俺がその子の面倒を全部見ます」
「わかった。キミ…個室の準備をして」
「わかりました」
看護師はバタバタと走って行った。
「樹…どんな子かもわからないのに…お前がお金出すなんて」
「いいんだ。このまま、この女の所にいさせるわけにはいかないから」
俺はただ、この子とこれっきりになりたくなかった。この子を助けたい。奈月くんを…あの大好きだった犬のモモに似ているからだろうか…でも似てるからって奈月くんの為にお金を出したいと思ったのかは今はまだわからなかった。
奈月くんを個室に連れて行ってる間に奈月くんの母親と話をすることにした。
「あなたは奈月くんはいらないって言ってましたね」
「そうよ。こんなお荷物、それにあの子がいなければ私は幸せになれたのに」
「じゃあなぜ児相にでも預けなかった?」
「そうだけど…」
そのまま口を閉ざしてしまった。きっと何度も思ったのかもしれない。
「これから先、奈月くんと暮らしたいと思いますか?」
「はぁ?無理よ。あの子を見るたびに彼が亡くなったのを思い出すわ。それに、私があの子を殺すかもしれない」
「じゃあ私が面倒を見ます。いいですか?」
「見ず知らずのあの子の面倒を見るですって?とんだ偽善者ね。それともあんたもあの子の身体に興味が湧いた?」
「そんなんじゃない」
「あの人は両方いけるって最初は言ってたのよ。私じゃなくて奈月に興味があっただけなのよ。あんたもでしょ?好きにするといいわ。18歳は成人だもんね」
そういって病院を出てってしまった。
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