僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの

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奈月くんのトラウマ

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ハルさんの昼ごはんを食べ終わったころ、健さんが来てくれた。健さんは庭師としてわが家の庭を手入れしてもらっている。最初は健さんのお父さんだったが腰を痛めて最近は息子さんの健さんがきてくれるようになった。

「こんにちは。初めましてだね」
眼鏡をかけて髭を生やした健さんが優しい笑みを浮かべて奈月くんに挨拶すると少し顔が強張った。少し手が震えてるのが見えて、額にも少し汗をかいている。

「奈月くん大丈夫?」
と声をかけると大丈夫です。とかなり小さい声で挨拶してくれたが、どうも様子がおかしいと思ったら母が奈月くんちょっとおいでと違う部屋に連れて行ってくれた。俺はそれを不思議に思いながらも久しぶりに会えた健さんとハルさんが植えたいと話していた花の話をしていた。

少し経ったころ母が樹ちょっといい?と廊下に呼び出された。
「奈月くんは?」
と聞くとココと遊んでるという。何があった?と聞くと

「樹は見てないの?奈月くんのお母さんの彼氏の写真を…」

「いや、覚えてないな」

「そう。私は見たのよ。小さな写真だったけど眼鏡と口髭を生やしていたの。樹から聞いた話だと虐待を受けてたんでしょ?いくら亡くなったからといってすぐに忘れられるわけがない。きっと覚えてる。健さんが違う人だとわかってるけど眼鏡と口髭はあの子にとってトラウマなのよ。あのままここにいたらフラッシュバックで過呼吸を起こす可能性が高いから、しばらく健さんに会わせないように気をつけてね」

「わかった。母さんありがとう」
母さんが気づかなかったら、もしかしたら奈月くんは辛い思いをしたんじゃないかと思ったら怖くなった。
健さんには申し訳ないがしばらくの間、家に来るのは控えてもらうことになった。健さんが帰った後、奈月くんの様子を見にいくとココたちと仲良く遊んでいた。

「奈月くん、すっかり仲良くしてるみたいだけど」

「はい。わんちゃんたち、とってもお利口さんで僕の方が遊んでもらってるかもしれないです」

「そうか、楽しんでくれて良かったよ」

「もう少し慣れたらお散歩に行ってもいいですか?」

「そうだね。骨折が治ったらだね。今はまだのんびり過ごすといいよ」

「的場さん、猫ちゃんには慣れないんです。どうしたらいいですか?」

「猫は気分屋だから、そのうち寄ってくるよ。あと奈月くん、母さんも的場なんだよ。だから名前を呼んでくれると嬉しいんだけど、どうかな?」

「あの…名前、教えてもらってもいいですか?」

「樹っていうんだ」

「樹さんですか?」
首を傾げながら聞いてくる奈月くんが可愛過ぎて抱きしめたくなるのを我慢して頷くと

「樹さん」
と呼んでくれた。名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しい気持ちになるのを久しぶりに感じた。




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