僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

リハビリを頑張る意味

「奈月よかったな。また友達ができたな」
そう声をかけると樹さんのおかげです。ありがとうございます。とお礼を言われた。

「奈月、これからは一平くんと咲夜くんに色々と相談するといいよ。奈月と年も近いからきっと話を聞いてくれるだろうからな」
そう言うと嬉しそうに頷いた。

その日から奈月は一平くんたちに言われた宿題を一生懸命やっていた。でも奈月がボールを持つと犬たちが寄ってくるのだが、まだ奈月はボールを投げるのは難しいみたいで投げようとしてもすぐに落ちてしまう。奈月はすぐにしょんぼりしてしまうが仕方がない。治ったらいっぱい遊んであげられるだろう。奈月も犬たちに謝りながらリハビリをしていたが時折、顔をしかめて痛そうにしてるのが気になった。奈月に声をかけても痛いのは治る証拠だからと言い張るのでそれ以上は言えなかった。

火曜日、一平くんたちが来る日だが、俺は仕事で間に合いそうもないので彼にメッセージを送った。
〝仕事の都合で一平くんたちが来る時間に間に合いそうもないから奈月のこと、よろしく頼むよ。それと奈月なんだがリハビリの最中、痛そうな顔をすることがあるんだ。俺が言っても我慢してるので見てやってほしい。よろしく頼むよ〟

すると休憩時間だったのだろうか、わかりました。もしかしたら無理に動かしてる可能性があるので見てみます。それまでに奈月くんと話して確認しますね。とすぐに返事をくれた。頼りになる子が見つかってよかったと胸を撫で下ろした。

仕事を淡々とこなしてやっと家に帰った。玄関を開けると3人の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「ただいま」
いつもより大きな声で言うとパタパタパタと足音が聞こえてきて奈月がかけてきた。

「樹さん、お帰りなさい」
ニコニコして駆け寄ってきた奈月を抱きしめて思わず頬にキスをしてしまった。
「ただいま奈月、いい子に待っていてくれたのか？」
そう言うと不意打ちのキスが恥ずかしかったのだろう顔を真っ赤に染めて
「お帰りなさい」
と言ってくれた。

「今、一平くんと咲夜くんも来てくれてリハビリが終わったからご飯を食べようとしてたんです。樹さんもご飯を食べますか？」
「あぁ食べるよ。卓也も今、車を置いてきてるから一緒に食べるよ。着替えてくるから奈月は先に行っていてもいいよ」
そう言うと待ってますね。と行ってリビングに戻っていった。

俺も急いでリビングに行くと母もハルさんも卓也もいてみんなで話をしながらご飯を食べていた。
「そういえば奈月のリハビリはどうだったんだ？大丈夫だったか？」
すると一平くんの顔が少し曇った感じがしたが
「はい。今日も奈月くんは頑張ってましたよ。心配しなくて大丈夫です」
「そうです。奈月くん本当に頑張り屋さんですよね」
と一平くんと咲夜くんが答えてくれた。一平くんが何か言いたそうにしてる感じがしたが、きっと奈月に聞かれたくないのだろう。あとで聞いてみることにしよう。

「そうか奈月はいい子だったのか。今日もよく頑張った」
そう言って頭を撫でてやると顔を染めた奈月は子供じゃないんですから…と恥ずかしそうにすると咲夜くんが
「奈月くん、可愛い。でも好きな人に褒められると嬉しいよね。僕もね一平に褒められると嬉しいんだ」
とお互いに顔を赤くして笑い合っていた。

ご飯を食べ終わって咲夜くんと奈月が遊び始めたのを見て一平くんに視線を送った。この前と同じく隣の和室に入って一平くんに聞いてみた。

「奈月は無理をしてるのか？」
「はい。それで少し炎症を起こしていて、奈月くんには今無理をすると動かなくなる可能性もあるし病院にいかないと治らなくなるからと少し厳しめに言ったら震えて呼吸が乱れてしまって…申し訳ありません」
その時のことを思い出したんだろう。

「処置をしてくれたのか？」
「はい……」
そう言うと一平くんは話してくれた。少し過呼吸になった奈月を抱きしめたと言うことだった。どうも咲夜くんも出会った頃は過呼吸になることがあったから対処の仕方を知ってたのだが俺がいない時に勝手なことをしたと謝られた。

「奈月のことありがとう。それは緊急だったんだ仕方がないだろう。でも奈月はなぜそれほどまでして無理をしてるんだ？」
「樹さんと一緒に手を繋ぎたいからって言ってました。手を繋いだら仲良さそうに見えるからって。何かを見てそう思ったのかもしれませんが…だから左手でもいいんじゃない？って言ったんですけど、樹さんの利き手を繋いだらダメだと思ったって言ってました」

あぁそうか…この前2人が手を繋いで仲良く帰った姿を羨ましそうに見てたのは本当は俺と手を繋ぎたかったのか…それで無理して…本当に奈月は可愛すぎるな。思わずニヤケそうな顔を片手で隠しながら一平くんにこれからもちゃんと奈月には本当のことを言って欲しいとお願いした。

万が一、過呼吸になってしまったとしても対処の仕方を知ってる人がいるだけで安心する。まぁ俺以外が奈月を抱きしめるのは嫌だが、そんなこと言える立場でもないしな。一平くんは終始申し訳なさそうな顔をしていたけど、もう謝らなくてもいいと伝えた。