黒豹獣人の一途な愛情

なの

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「あの~俺、なにか怒らせてしまったでしょうか?」
俺が部屋を出た後、そんな声が聞こえたが俺はそれを否定できないくらいの衝動に駆られていた。

自室に籠って何度自身の手で慰めているだろう。本来ならすぐにでも抱いて自分のものにしてしまいたいのだが、そんな野獣みたいな真似はできないと必死に抑えてる結果がこれだ。正直今まで誰かに性的な感情を抱くことはなかった。そりゃあ年頃になって誰かとそういう関係を持ちたいと思ったこともあったが、でも俺はいずれ総帥になることが小さいころから決まっていた。それに俺の両親は運命の番同士だ。だから俺にもいずれ見つかるかもしれない。その時にその相手に恥じない行動を取りたかった結果だが、みんなは俺がいまだに童貞だとは知らないだろう。そんな話をしたこともないが……こんな歳になっても操を守りたいなんてかっこつけてはいるが、ただ単に好きでもない相手とそういう行為をしたくなかっただけなのだ。でも隣に番がいるというだけで抑制剤の意味なんてないんだよな。ようやく落ち着いたのは5回も吐き出した後だった。

「疲れた~」
なんとなく自身の青臭い匂いが纏わりついてるのが嫌で何度もシャワーを浴びたが、まだなんとなく残っているような気がする。だが俺も限界で下着姿のままベットに横になった。明るかった日差しがもうすっかり落ちて夜になってしまっているが誰も何も言わずに察してくれているわが家の従者は優秀だと思いながら俺はデリーに連絡を取った。

「明日は仕事に行く」こんな状態で家に籠るよりは仕事をしたほうがまだいいだろう。それにニックの検査結果は明日には出ると言ってたから、なぜヒートがこないのかもわかるかもしれないしな。

俺が部屋から出るとアレンが声をかけてきた。
「総帥、落ち着きましたか?ニック様はルークと食事を召し上がっておりましたよ」
「ルークと?」
「はい。お部屋にお食事を持って行くと一緒に食べようと声をかけられたそうです。ルークも嬉しかったようで……」
「そうかルークには心を開いているのかもしれないな」
「そうですね。今お食事をお持ちいたしますのでお待ちください」
俺もいつかニックと一緒に食べれる日が来るのだろうか?今のままなら随分先になりそうだな。と自虐的に笑ってしまった。

いつもより早く目が覚めてしまったが、仕事に行くために用意をしているとアレンが声をかけてきた。先程ピーターがニックの検査結果を持ってきてくれたと……きっと俺のことを思って寝ずにまとめてくれたんだろう。感謝しないとな。そう思いながら報告書を読んだ俺は胸が痛んだ。

ニックには全身に青あざや切り傷、火傷の跡があって日常的に虐待をされていた可能性がある。酷いのは腕で鉄の箸で焼かれたと見られる火傷の跡が何本も残っていると……それとお腹に手術跡のようなものがあったが、本人も幼い頃からあって覚えてないらしい。病気だったのか事故だったのか……でも血液検査の結果はホルモン値以外は異常はなくホルモン値だけが、かなり低いことがわかった。これが原因でヒートが来ていない可能性があるが、薬物の治療をすれば多少は改善されるのと今までの医師としてのピーターの経験から運命の番だけには反応を示すオメガがいたことも記されていた。

もしかしたら俺が気がついていないだけでニックも俺に対して何か感情を表してくれていたのかもしれない。でも俺が未熟なせいでニックの傍に長くいてやれないから俺のフェロモンがわからないのかもしれないな。せめて抱きしめることができたら多少は違うのかもしれない。そう思いながら報告書を鞄にしまった。少し早いが出かけようとドアを開けると額に汗を浮かべたダニエルが息を切らして走ってきた。

「総帥、大変です」
「何があった」
「あの~ニック様がっ……お掃除を……断ったのに」
「はっ?」
いつも冷静なダニエルがこんな慌てている姿を見たことがない。ニックが掃除?俺は使用人としてニックを雇ったわけではないぞ。そう思いながらダニエルと共にニックがいるという大階段に向かった。

ニックはこんなことしなくていいんだよ。総帥の番なんだから。俺が怒られちゃうだろ?」
「俺はそんな大それた方の番なんかじゃないよ。それなのにあんなに温かい布団で寝かせてもらって、美味しい食事まで出してもらったのに何もしないで帰るわけには行かないんだ。せめてこの階段の掃除をしてから家に帰るから」
ニックはまだ俺と番だってことを信用していないんだな。それに帰るって……あんな家に帰すわけがないのに……

「ニック」
俺が呼ぶと少し飛び跳ねながら振り向いた。
「おはようございますアイザック様」
「ザックでいい」
「でも……」
「ニックは俺の番なんだ。まだ信じられないようだが……あの家にはもう帰れないよ」
「そんな……でもそしたら俺はどこに……」
「どこにって……ここにいればいい」
「ここにいてもいいんですか?」 
「いてくれなきゃ困るからな。今日は早めに帰ってくるから必ず待っていてくれ約束だ。じゃあ行ってくる」
「わかりました。じゃあお言葉に甘えます。すみません。いってらっしゃい」
笑顔で手を振られて赤面しそうで思わず顔を隠したが、一瞬見えたルークがニヤニヤと笑みを浮かべていた。

「ダニエル、今日はニックの好きなようにさせてやってくれ。ただ念のため家から出ないようにと無理はさせずにケガには注意するようよく見ておいてくれ」
「承知いたしました。いってらっしゃいませ」

本来なら何もせずにいてほしいが今までのニックを思うとそんな無理矢理押さえつけることはできないな。それにしてもあの花のような笑顔を毎日見れるのかと思うとそれだけで元気がわいてくるんだからやはり運命の番だからだろうな不思議だ。

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