黒豹獣人の一途な愛情

なの

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「よし綺麗になったね。そもそもあまり汚れてはいないけど……じゃあ次はどこ掃除しようかな?」
「ニック~そろそろ一休みしたら?」
「何言ってるのルーク、このお屋敷は広いんだから早くしないとアイザック様が帰ってきちゃうよ」
「そんな~~」

本当にニック様は働きものだ。その後も各部屋を掃除に回って昼食をみんなで食べた。ニック様はたくさんいる獣人たちを少し怖がっていたが次第に慣れてきて笑顔で話をしてる様子が目に入ってきた。午後からも仕事をしようとする様子にルークとは大違いだなと思っていると総帥の部屋の前で止まって俺の方を見た。
「この部屋は総帥の部屋ですが何かありましたか?」
するとニック様は少しだけ顔を赤らめて
「この部屋からはとてもいい匂いがしますっ」
と言い出した。アレンから聞いたがニック様はまだヒートの経験がないのにこの部屋からの匂いがわかるなんて……やはり運命の番はわかるのかもしれない。

「ニック様、もしよければ総帥の部屋の掃除をしていただけますか?」
「俺なんかが掃除してもいいんですか?」
「はい。お願いいたします。きっと総帥もお喜びになりますから」
「そうですか?喜ぶかどうかわかりませんが、頑張ってお掃除してきます」
そう言って部屋に入っていった。

「ルーク、周りに周知してこい。この部屋周辺には近づかないようにと」
「承知いたしました」
これはもしかしたらついに……思わず顔が綻んでしまいそうだが、俺は急いでアレンに連絡をとった。ニック様が総帥の部屋に入ったと……それを聞いたらもしかしたら早々に総帥も戻られるかもしれない。

そんなことが家で起こってるなんて知らない俺は普通に出勤すると待ってましたとばかりにデリーが声をかけてきた。
「おーっザック普通に出勤か?」
「あぁ……まだ俺が番だと認識してもらってないからな」
「はぁ?そんなことあるのか?」
「あるんだよ」
俺はピーターから受け取った検査結果を見せた。

デリーは時折、顔をしかめながら全てを読んでくれた。
「かわいそうだな」
「あぁ……」
「もっと早くにお前と番になればよかったのに」
「仕方がないが、きっと今だったんだよ」

とりあえずあのマークに話をつけないとならない。俺たちはマークのいる詰所に向かった。俺がここに来ることはほぼないからかドアを開けると皆が一斉に声をかけてきた。
「総帥、お疲れ様です」
「本日はいかがなさいましたか?」
一番端のデスクに座っていたマークは俺の姿をチラッと横目に見ただけで自分には関係ないという態度だったので仕方なくマークの前に立った。

「用がある少し出られるか?」
「総帥が直々に俺になんのご用ですか?ここで話していただいて構いませんが」
俺が獣人なのが気に入らないのか、はたまた俺が総帥なのが気に入らないのかいつもこんな態度だ。

「周りに聞かれたくない話だと思うが本当にここでいいのか?」
「はぁ?俺、忙しいので手短にどうぞ?」
一応気を使ってやったのだが、この態度じゃ仕方ないとみんなが注目をしている中、話し始めた。

「お前、結婚した相手とは籍を入れてなかったんだな」
「なんでそれをっ……」
「色々と調べさせてもらった。それと……ニックは俺の番だから返してもらう。今頃、俺の従者がニックの荷物を取りに行ってるだろうな」
「そんな勝手なこと……総帥だからって人のもの盗んで許されると思ってんのか?」
「はぁ?何言ってるんだお前は……夫婦でもないんだから盗んでないだろ。しかもニックを使用人のようにこき使っていたお前になんか言われたくないわ。お前はせいぜいあのレニーっていう奴と仲良くしてればいいんじゃないのか?」
言いたいことも言ったし、ここにいる用はないと踵を返そうとするとマークはデスクを叩き、顔を真っ赤にして怒りはじめた。

「あいつなんて娼婦以下なんだよ!オメガのくせにヒートも来ないし、身体中あざだらけで萎えるんだわ~だからお前もあいつを抱く時はうつ伏せにしてシーツで顔も傷も見えないようにした方がいいぞ」
その言い方に腹が立った俺は思わずマークのデスクを殴りつけた。

「ヒィー一」
「ザックここまでにしろ」
デリーに腕を掴まれて我に返った。机には大きな穴が空いていた。周りの騎士団員たちもブルブルと震えていて腰が抜けている奴もいた。俺はデリーに腕を掴まれたまま詰所を後にした。

「冷静沈着のお前も番のことになったら容赦ないな」
「そりゃそうだ。あんなこと言われて黙ってられるほど俺はできた獣人じゃない」
「はいはい。きっとこれから近衛騎士団長や副団長がマークに尋問するだろう。あの2人の奥さんたちもオメガだから、あの馬鹿にした言い方には頭に来てるだろうよ」
「そうだといいんだけどな」
「まぁこれで総帥に運命の番が現れたって今日にも国中に知れ渡るだろうな」

すっかりお昼を過ぎてしまった頃、アレンがダニエルから連絡が入ったとやってきた。
ニックは俺の部屋からいい匂いがすると言って部屋の中に入ったと……もしかしたら俺の匂いを感じ取ってヒートが起きるかもしれないから一応念のため俺の部屋には近づかないように措置をとってくれているが、帰れるなら早く帰ってあげてほしいと……

「デリーすまない」
「いいって、いいって、お前と俺の仲じゃないか水臭い。明日、無理そうならいつでもいいから連絡くれよな」
「助かる」
俺がアレンと共に部屋を出ようとすると俺の耳元でささやいた。

「祝、童貞卒かな?」
「おっ……まえっ」
「だてに何十年もお前の幼なじみしてるわけじゃないからさぁ~健闘を祈る」
真面目な顔で敬礼されてしまった。アレンは何事かと不思議そうに見ていたが、こんなこと言えるはずもなく足早に家路を急いだ。


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