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最初は、誰もが半信半疑だった。
「貴族のお嬢様の道楽だろ」
「どうせ、すぐに飽きて放り出すに決まってる」
水路作りを提案した時、村人たちの反応はそんなものだった。しかし、私は諦めなかった。
翌日から、私はアランを引き連れて、一人で作業を開始した。川から村までの距離を測り、傾斜を計算し、水路を掘るための目印となる杭を打ち込んでいく。
もちろん、慣れない肉体労働だ。手にはマメができ、体は泥だらけになった。
「リリアンヌ様、もうおやめください。このようなことは我々下々の者の仕事です」
アランは毎日そう言って私を止めようとするが、私は首を縦に振らなかった。
「これは、わたくしの村の未来をかけたプロジェクトですわ!領主代行であるわたくしが率先して動かずして、誰がついてきますの!」
悪役令嬢らしからぬ、妙にリーダーシップのあるセリフを吐きながら、私はシャベルで土を掘り続けた。
三日目のことだった。私が一人で土を掘っていると、背後からぶっきらぼうな声がかかった。
「…嬢ちゃん、シャベルの持ち方が逆だ」
振り返ると、先日「なんで知ってるんだ」と尋ねてきた年配の村人が立っていた。彼は私の手からひょいとシャベルを取り上げると、正しい使い方を見せてくれた。
「…手伝って、くださるの?」
「勘違いするな。お嬢様のやり方じゃ、日が暮れちまうから見てられねぇだけだ」
彼はそう言いながらも、黙々と土を掘り始めた。
それを皮切りに、一人、また一人と、遠巻きに見ていた村の男たちが集まってきた。
「しょうがねぇな、俺も手伝ってやんよ」
「どうせ暇してたからな」
口では憎まれ口を叩きながらも、その手つきは真剣そのものだった。
いつしか、私の周りには大勢の村人たちが集まり、皆で一緒に汗を流していた。シャベルで土を掘る音、竹を割る音、そして、男たちの威勢のいい掛け声。
私は泥だらけの顔のまま、その光景を見ていた。アランが、優しい眼差しで私に微笑みかける。
「やりましたね、リリアンヌ様」
「えぇ。これも全て、わたくしのカリスマ性のなせる技ですわね!」
私がドヤ顔でそう言うと、どこからか「調子に乗るなー!」という野次が飛んできて、皆で大笑いした。
村人たちの心が、少しだけ一つになった瞬間だった。
「貴族のお嬢様の道楽だろ」
「どうせ、すぐに飽きて放り出すに決まってる」
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翌日から、私はアランを引き連れて、一人で作業を開始した。川から村までの距離を測り、傾斜を計算し、水路を掘るための目印となる杭を打ち込んでいく。
もちろん、慣れない肉体労働だ。手にはマメができ、体は泥だらけになった。
「リリアンヌ様、もうおやめください。このようなことは我々下々の者の仕事です」
アランは毎日そう言って私を止めようとするが、私は首を縦に振らなかった。
「これは、わたくしの村の未来をかけたプロジェクトですわ!領主代行であるわたくしが率先して動かずして、誰がついてきますの!」
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三日目のことだった。私が一人で土を掘っていると、背後からぶっきらぼうな声がかかった。
「…嬢ちゃん、シャベルの持ち方が逆だ」
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「しょうがねぇな、俺も手伝ってやんよ」
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