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夜会。
それは貴族社会における華であり、社交の場であり、そして私にとっては「地獄のサービス残業」以外の何物でもない。
煌びやかなシャンデリア。
むせ返るような香水の匂い。
そして、意味のないお世辞と腹の探り合いが飛び交う会話。
「……帰りたい」
会場の入口に立った瞬間、私のやる気ゲージはマイナスへと振り切れた。
ドレスという名の拘束具に締め付けられ、ヒールという名の拷問器具で立ち続ける。
労働基準法があれば、即座に是正勧告が出されるレベルの環境だ。
「どうしたダリア。顔色が悪いぞ」
エスコート役のルーカスが、私の腰に手を回して囁く。
今日の彼は、漆黒の礼服に身を包み、まさに「夜の魔王」といった風情だ。
周囲の令嬢たちが彼を見て頬を染めているが、私には「残業を強いる鬼上司」にしか見えない。
「人酔いしました。今すぐ帰宅して、ベッドにダイブしたい気分です」
「まだ入場して五秒だぞ。……まあいい。今日の君の任務は、隣国の使節団への顔見せだ。それが済めば、バルコニーで休んでいて構わない」
「本当ですか!?」
「ああ。ただし、粗相のないようにな」
ルーカスがニヤリと笑う。
私は心の中でガッツポーズをした。
挨拶回りさえ終わらせれば、後は自由時間。
ならば、私の取るべき戦略は一つだ。
『気配遮断』。
私はかつて王城の夜会で培ったスキルを総動員することにした。
壁のシミになりきるのだ。
誰の記憶にも残らず、誰とも会話せず、ただそこに「在る」だけの存在。
そうすれば、面倒なダンスの誘いも、退屈な自慢話も回避できる。
「では、行ってまいります」
私はルーカスの元を離れ、会場の隅へと移動した。
目指すは、観葉植物の影にあるデッドスペース。
あそこなら目立たないし、給仕が通りかかるルートに近いからドリンクの確保も容易だ。
私はスルスルと人混みを縫って移動した。
ドレスの裾が触れ合わない絶妙な距離感を保ち、誰とも目を合わせず、空気のように流れる。
これぞ、定時退社のために編み出した歩法「ゴースト・ウォーク」だ。
定位置(観葉植物の裏)に到着。
私はグラスを片手に、彫像のように静止した。
(ふふ……完璧だわ)
ここからは会場全体が見渡せるが、向こうからは私が植物の影になって見えにくい。
人間観察をしながら、終わりの時間を待つだけの簡単なお仕事だ。
私は半分目を閉じて、脳内で羊を数え始めた。
しかし。
私のその「省エネ行動」が、またしても周囲に奇妙な誤解を与えていることに、私は気づいていなかった。
「……おい、見ろ。あそこにいるのは」
「ああ。噂の『氷の軍師』、ダリア嬢だ」
「なんて鋭い眼光だ……」
「会場全体を監視しているのか?」
ひそひそ話が聞こえてくる。
鋭い眼光?
いいえ、これは単に眠くて目が据わっているだけです。
「あの一切の無駄のない立ち姿を見ろ。微動だにしないぞ」
「まるで獲物を待ち構えるスナイパーだ」
「下手に動けば、即座に弱点を見抜かれて社会的に抹殺されるぞ……」
違います。
動くとカロリーを消費するから動かないだけです。
あと、ヒールで足が痛いので重心を固定しているだけです。
周囲の貴族たちが、私を恐れ戦いて遠巻きにしている。
おかげで半径五メートル以内に誰も近寄ってこない。
快適だ。
ATフィールド全開だ。
その時だった。
一人の男が、会場の反対側からこちらへ近づいてきた。
隣国の使節団の一員と思われる、口髭を蓄えた小太りの男だ。
彼は明らかに挙動不審だった。
視線が泳ぎ、額に脂汗を浮かべている。
(……ん? あの人)
私が彼を目で追ったのは、他意はない。
ただ、彼が手に持っている皿の上の「ローストビーフ」が美味しそうだったからだ。
あ、いいな。
私もあれ食べたいな。
でも取りに行くの面倒だな。
彼がこっちに来て、うっかり落としてくれないかな。
そんな邪なことを考えながら、私は彼をじーっと見つめた。
ローストビーフ(肉)への執着を込めた、熱視線で。
すると、男が私の視線に気づいた。
彼はビクリと肩を震わせ、立ち止まる。
(あ、止まった。こっち来ないのかな。お肉……)
私は「早くこっちに来い」という念を込めて、さらに凝視した。
眉間に皺が寄っていたかもしれない。
空腹だったので、若干殺気立っていたかもしれない。
男の顔色が蒼白になる。
「ひっ……!」
彼は後ずさりし、持っていたグラスを落としそうになった。
そして、逃げるように方向転換し、会場の出口へと早足で去っていこうとする。
(あーあ、行っちゃった。私のお肉……)
私は残念に思い、小さく溜息をついた。
その時だ。
「確保しろ!」
ルーカスの鋭い声が響いた。
影から現れた近衛兵たちが、逃げようとした男を取り押さえる。
「な、何をする! 私は外交官だぞ!」
「失礼。貴殿の懐に、我が国の機密書類が入っているとの情報がある」
「な、何を根拠に……!」
兵士たちが男のボディチェックをすると、上着の内ポケットから一枚の羊皮紙が出てきた。
それは、先日の会議で使用された軍事施設の配置図だった。
会場が騒然となる。
スパイだ。
外交官に紛れて情報を盗み出そうとした産業スパイだったのだ。
ルーカスがゆっくりと男に歩み寄る。
「逃げられると思ったか? 我が国の『目』は誤魔化せない」
そう言って、ルーカスは私の方を振り返った。
会場中の視線が、観葉植物の影にいる私に集まる。
「……へ?」
私はグラスを持ったままフリーズした。
「ダリア。君のおかげだ」
ルーカスが満足げに微笑む。
「君はずっと彼をマークしていたな? 彼が入場した瞬間から、その不自然な挙動を見抜き、決して目を離さなかった。そして彼が動こうとした瞬間、その鋭い殺気で威圧し、逃亡の機先を制した」
「……はい?」
「君の視線に怯えた彼が、焦って逃げようとした隙を突くことができた。見事な連携(アシスト)だ」
違います。
私はローストビーフを見ていただけです。
彼が肉に見えただけなんです。
「す、凄すぎる……」
「あの距離から、懐の書類を見抜いたのか?」
「ただ立っているだけでスパイを追い詰めるとは……」
「やはり『氷の軍師』……底が知れない!」
称賛の嵐。
拍手喝采。
私は冷や汗をかきながら、引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
(なんで!? サボってただけなのに!?)
私の「定時退社」計画は、またしても「昇進」という名のバグを引き起こしてしまった。
スパイの男が連行されていく。
彼は去り際に私を見て、「あんな恐ろしい目は見たことがない……心の奥底まで見透かされるようだった……」と呟いていた。
空腹だっただけです、本当に。
「ダリア、こっちへ来い」
ルーカスに手招きされ、私は渋々メインステージへと上がった。
スポットライトが当たる。
一番避けたかった「目立つ」ポジションだ。
「皆さん、紹介しよう。これが我が公爵家の新たな『知能』、ダリア嬢だ」
ルーカスが高らかに宣言する。
貴族たちが崇拝の眼差しで私を見上げる。
「彼女の眼力(めぢから)の前では、いかなる偽りも通用しない。今後、我が国に仇なす者は、彼女の視線一つで裁かれることになるだろう」
やめて。
ハードルを上げないで。
私はただ、美味しいご飯を食べて、ふかふかのベッドで寝たいだけなの。
「ダリア。褒美に何を望む?」
ルーカスが耳元で囁く。
私は、ここぞとばかりに主張した。
「帰りたいです。今すぐ」
「フッ……謙虚だな。だが、主役が今抜けるわけにはいかない。少なくとも、ラストのダンスまでは付き合ってもらおう」
「えええ……」
「それに、君に見つめられて嬉しくない男はいない。……俺も含めてな」
ルーカスが私の手を取り、ダンスのステップへと誘う。
音楽が流れ始める。
私は諦めて、彼に身を委ねた。
彼のリードは完璧で、疲れている私でも無理なく踊れるほどだった。
至近距離で見ると、この「魔王」も意外と整った顔をしている。
性格さえブラックじゃなければ、悪い物件ではないのだが。
「……足、痛くないか?」
不意に、彼が優しい声で尋ねてきた。
「少し」
「そうか。なら、重心を俺に預けろ。支えてやる」
彼の手が、私の背中をしっかりと支える。
ふわりと浮くような感覚。
足の痛みが消える。
(……あれ?)
なんだか、心地いい。
人間ゆりかごみたいだ。
このまま揺られていたら、寝てしまいそう。
「……ダリア? おい、寝るな」
「……スヤァ」
「ダンス中に寝る奴があるか! 器用すぎるだろ!」
私はルーカスの腕の中で、意識を手放した。
会場からは「公爵閣下に身を委ねて目を閉じるなんて、なんて信頼関係だ」「愛し合っているのね」という黄色い声が上がったらしいが、夢の中の私には関係のないことだった。
こうして夜会は終わった。
私は「スパイを視線で殺し、公爵の腕の中で眠る大物」として、社交界の伝説となった。
私の「平穏な日常」は、今日も遠ざかっていく。
それは貴族社会における華であり、社交の場であり、そして私にとっては「地獄のサービス残業」以外の何物でもない。
煌びやかなシャンデリア。
むせ返るような香水の匂い。
そして、意味のないお世辞と腹の探り合いが飛び交う会話。
「……帰りたい」
会場の入口に立った瞬間、私のやる気ゲージはマイナスへと振り切れた。
ドレスという名の拘束具に締め付けられ、ヒールという名の拷問器具で立ち続ける。
労働基準法があれば、即座に是正勧告が出されるレベルの環境だ。
「どうしたダリア。顔色が悪いぞ」
エスコート役のルーカスが、私の腰に手を回して囁く。
今日の彼は、漆黒の礼服に身を包み、まさに「夜の魔王」といった風情だ。
周囲の令嬢たちが彼を見て頬を染めているが、私には「残業を強いる鬼上司」にしか見えない。
「人酔いしました。今すぐ帰宅して、ベッドにダイブしたい気分です」
「まだ入場して五秒だぞ。……まあいい。今日の君の任務は、隣国の使節団への顔見せだ。それが済めば、バルコニーで休んでいて構わない」
「本当ですか!?」
「ああ。ただし、粗相のないようにな」
ルーカスがニヤリと笑う。
私は心の中でガッツポーズをした。
挨拶回りさえ終わらせれば、後は自由時間。
ならば、私の取るべき戦略は一つだ。
『気配遮断』。
私はかつて王城の夜会で培ったスキルを総動員することにした。
壁のシミになりきるのだ。
誰の記憶にも残らず、誰とも会話せず、ただそこに「在る」だけの存在。
そうすれば、面倒なダンスの誘いも、退屈な自慢話も回避できる。
「では、行ってまいります」
私はルーカスの元を離れ、会場の隅へと移動した。
目指すは、観葉植物の影にあるデッドスペース。
あそこなら目立たないし、給仕が通りかかるルートに近いからドリンクの確保も容易だ。
私はスルスルと人混みを縫って移動した。
ドレスの裾が触れ合わない絶妙な距離感を保ち、誰とも目を合わせず、空気のように流れる。
これぞ、定時退社のために編み出した歩法「ゴースト・ウォーク」だ。
定位置(観葉植物の裏)に到着。
私はグラスを片手に、彫像のように静止した。
(ふふ……完璧だわ)
ここからは会場全体が見渡せるが、向こうからは私が植物の影になって見えにくい。
人間観察をしながら、終わりの時間を待つだけの簡単なお仕事だ。
私は半分目を閉じて、脳内で羊を数え始めた。
しかし。
私のその「省エネ行動」が、またしても周囲に奇妙な誤解を与えていることに、私は気づいていなかった。
「……おい、見ろ。あそこにいるのは」
「ああ。噂の『氷の軍師』、ダリア嬢だ」
「なんて鋭い眼光だ……」
「会場全体を監視しているのか?」
ひそひそ話が聞こえてくる。
鋭い眼光?
いいえ、これは単に眠くて目が据わっているだけです。
「あの一切の無駄のない立ち姿を見ろ。微動だにしないぞ」
「まるで獲物を待ち構えるスナイパーだ」
「下手に動けば、即座に弱点を見抜かれて社会的に抹殺されるぞ……」
違います。
動くとカロリーを消費するから動かないだけです。
あと、ヒールで足が痛いので重心を固定しているだけです。
周囲の貴族たちが、私を恐れ戦いて遠巻きにしている。
おかげで半径五メートル以内に誰も近寄ってこない。
快適だ。
ATフィールド全開だ。
その時だった。
一人の男が、会場の反対側からこちらへ近づいてきた。
隣国の使節団の一員と思われる、口髭を蓄えた小太りの男だ。
彼は明らかに挙動不審だった。
視線が泳ぎ、額に脂汗を浮かべている。
(……ん? あの人)
私が彼を目で追ったのは、他意はない。
ただ、彼が手に持っている皿の上の「ローストビーフ」が美味しそうだったからだ。
あ、いいな。
私もあれ食べたいな。
でも取りに行くの面倒だな。
彼がこっちに来て、うっかり落としてくれないかな。
そんな邪なことを考えながら、私は彼をじーっと見つめた。
ローストビーフ(肉)への執着を込めた、熱視線で。
すると、男が私の視線に気づいた。
彼はビクリと肩を震わせ、立ち止まる。
(あ、止まった。こっち来ないのかな。お肉……)
私は「早くこっちに来い」という念を込めて、さらに凝視した。
眉間に皺が寄っていたかもしれない。
空腹だったので、若干殺気立っていたかもしれない。
男の顔色が蒼白になる。
「ひっ……!」
彼は後ずさりし、持っていたグラスを落としそうになった。
そして、逃げるように方向転換し、会場の出口へと早足で去っていこうとする。
(あーあ、行っちゃった。私のお肉……)
私は残念に思い、小さく溜息をついた。
その時だ。
「確保しろ!」
ルーカスの鋭い声が響いた。
影から現れた近衛兵たちが、逃げようとした男を取り押さえる。
「な、何をする! 私は外交官だぞ!」
「失礼。貴殿の懐に、我が国の機密書類が入っているとの情報がある」
「な、何を根拠に……!」
兵士たちが男のボディチェックをすると、上着の内ポケットから一枚の羊皮紙が出てきた。
それは、先日の会議で使用された軍事施設の配置図だった。
会場が騒然となる。
スパイだ。
外交官に紛れて情報を盗み出そうとした産業スパイだったのだ。
ルーカスがゆっくりと男に歩み寄る。
「逃げられると思ったか? 我が国の『目』は誤魔化せない」
そう言って、ルーカスは私の方を振り返った。
会場中の視線が、観葉植物の影にいる私に集まる。
「……へ?」
私はグラスを持ったままフリーズした。
「ダリア。君のおかげだ」
ルーカスが満足げに微笑む。
「君はずっと彼をマークしていたな? 彼が入場した瞬間から、その不自然な挙動を見抜き、決して目を離さなかった。そして彼が動こうとした瞬間、その鋭い殺気で威圧し、逃亡の機先を制した」
「……はい?」
「君の視線に怯えた彼が、焦って逃げようとした隙を突くことができた。見事な連携(アシスト)だ」
違います。
私はローストビーフを見ていただけです。
彼が肉に見えただけなんです。
「す、凄すぎる……」
「あの距離から、懐の書類を見抜いたのか?」
「ただ立っているだけでスパイを追い詰めるとは……」
「やはり『氷の軍師』……底が知れない!」
称賛の嵐。
拍手喝采。
私は冷や汗をかきながら、引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
(なんで!? サボってただけなのに!?)
私の「定時退社」計画は、またしても「昇進」という名のバグを引き起こしてしまった。
スパイの男が連行されていく。
彼は去り際に私を見て、「あんな恐ろしい目は見たことがない……心の奥底まで見透かされるようだった……」と呟いていた。
空腹だっただけです、本当に。
「ダリア、こっちへ来い」
ルーカスに手招きされ、私は渋々メインステージへと上がった。
スポットライトが当たる。
一番避けたかった「目立つ」ポジションだ。
「皆さん、紹介しよう。これが我が公爵家の新たな『知能』、ダリア嬢だ」
ルーカスが高らかに宣言する。
貴族たちが崇拝の眼差しで私を見上げる。
「彼女の眼力(めぢから)の前では、いかなる偽りも通用しない。今後、我が国に仇なす者は、彼女の視線一つで裁かれることになるだろう」
やめて。
ハードルを上げないで。
私はただ、美味しいご飯を食べて、ふかふかのベッドで寝たいだけなの。
「ダリア。褒美に何を望む?」
ルーカスが耳元で囁く。
私は、ここぞとばかりに主張した。
「帰りたいです。今すぐ」
「フッ……謙虚だな。だが、主役が今抜けるわけにはいかない。少なくとも、ラストのダンスまでは付き合ってもらおう」
「えええ……」
「それに、君に見つめられて嬉しくない男はいない。……俺も含めてな」
ルーカスが私の手を取り、ダンスのステップへと誘う。
音楽が流れ始める。
私は諦めて、彼に身を委ねた。
彼のリードは完璧で、疲れている私でも無理なく踊れるほどだった。
至近距離で見ると、この「魔王」も意外と整った顔をしている。
性格さえブラックじゃなければ、悪い物件ではないのだが。
「……足、痛くないか?」
不意に、彼が優しい声で尋ねてきた。
「少し」
「そうか。なら、重心を俺に預けろ。支えてやる」
彼の手が、私の背中をしっかりと支える。
ふわりと浮くような感覚。
足の痛みが消える。
(……あれ?)
なんだか、心地いい。
人間ゆりかごみたいだ。
このまま揺られていたら、寝てしまいそう。
「……ダリア? おい、寝るな」
「……スヤァ」
「ダンス中に寝る奴があるか! 器用すぎるだろ!」
私はルーカスの腕の中で、意識を手放した。
会場からは「公爵閣下に身を委ねて目を閉じるなんて、なんて信頼関係だ」「愛し合っているのね」という黄色い声が上がったらしいが、夢の中の私には関係のないことだった。
こうして夜会は終わった。
私は「スパイを視線で殺し、公爵の腕の中で眠る大物」として、社交界の伝説となった。
私の「平穏な日常」は、今日も遠ざかっていく。
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