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「リコ様! 折り入ってご相談……いえ、マリエッタの全人生を懸けた『プレゼン』がございますわ!」
断罪劇から一夜明けた執務室。マリエッタが鼻息荒く、大量の図表を抱えてリコの元へ突撃してきた。
その後ろでは、すっかり「リコ信者」となったレオン王子が、なぜか誇らしげに頷いている。
「……朝から騒々しいですわね。マリエッタさん、淑女は扉を蹴り開けたりしませんわよ」
リコは優雅に書類を捌きながら、視線すら上げずに釘を刺した。
「そんな細かいことは、国のGDP(国内総生産)の前では些末なことですわ! リコ様、マリエッタは決めましたの。私を、あなたの『筆頭侍従』兼『国家会計監査官』に任命してくださいまし!」
「……はあ? あなた、一応は男爵令嬢でしょう? 侍従だなんて、身分を投げ捨てるおつもり?」
リコがようやく顔を上げると、マリエッタの瞳はかつてないほど「計算高い」輝きを放っていた。
「身分なんて、ただの『固定資産』に過ぎませんわ! そんなものより、リコ様の隣でこの国の『無駄肉(汚職と浪費)』を削ぎ落とし、鉄の筋肉(財政)で固める方が、よっぽどエキサイティングですわ!」
「鉄の筋肉……。マリエッタさん、いつからそんな脳筋な会計士になったのかしら」
「愛ですわ、リコ様! レオン様を愛しているからこそ、彼が将来、借金取りに追われるような惨めな王様になるのを防ぎたいのです! そのためには、マリエッタがこの国の財布の紐を、筋肉のごとく締め上げねばなりませんの!」
マリエッタが力説すると、レオン王子が深く感銘を受けたように拳を握った。
「そうだ、リコ! マリエッタの言う通りだ! 私も、彼女のような『歩く監査機関』が傍にいてくれれば、安心して国政(という名の、君からの宿題)に専念できる!」
「……レオン様。あなた、単に自分で計算するのが嫌なだけではありませんこと?」
「ギクッ……。そ、そんなことはないぞ! 私はただ、適材適所の『組織構築』を提案しているだけで……!」
リコは深く、深いため息をついた。
かつては「私を愛して!」と縋り付くだけだった二人が、今や「この国の予算を筋肉質にしたい」と熱弁を振るっている。教育の成果としては百点満点だが、方向性が少々「苛烈」に振り切れている気がしなくもない。
「……よろしい。マリエッタさん、あなたの『筆頭侍従』への就任、特別に認めて差し上げますわ。ただし、一円の誤差でも出したら、即座にクビ。……そして、レオン様の腹筋と同じ数だけ、再計算のペナルティを与えますけれど?」
「望むところですわ! レオン様の腹筋なら、昨夜のトレーニングのおかげで、今は見事なシックスパック(六等分)になっていますもの! 計算ミス六回まではセーフですわね!」
「……マリエッタ。その数え方は、私の腹筋に対して失礼ではないかな?」
レオンが少し寂しそうな顔をするが、マリエッタはもはや数字のことしか考えていない。
「さあ、リコ様! まずは王宮の『カーテン維持費』からメスを入れましょう! こんな高価な布、裏返して使えばあと十年は持ちますわ!」
「……いいわ。その徹底的なケチ……いえ、節約精神、嫌いじゃありませんわ。セバス、マリエッタさんに専用の『黄金の算盤』と『鉄の印鑑』を用意して。……今日からこの部屋は、恋の相談所ではなく『国家改造計画室』になりますわよ」
「承知いたしました。……お嬢様。当初の『婚約破棄されて自由になる』という計画が、跡形もなく消え去っておりますが……よろしいのですか?」
セバスが耳元で囁く。
リコは、熱心に帳簿を突き合わせ始めたレオンとマリエッタを眺め、不敵に微笑んだ。
「いいのよ、セバス。自由なんて、他人に与えられるものではなく、自分で奪い取るものですわ。……この二人を完全に使いこなして、世界で一番『楽で贅沢な隠居生活』を勝ち取ってみせますわよ」
リコの瞳には、もはや悪役令嬢としての意地悪さではなく、この国そのものを「私有財産」として磨き上げる、支配者の野心が宿っていた。
最強の「猛獣使い」と、更生された「猛獣」たち。
彼らの進撃は、まだ始まったばかりであった。
断罪劇から一夜明けた執務室。マリエッタが鼻息荒く、大量の図表を抱えてリコの元へ突撃してきた。
その後ろでは、すっかり「リコ信者」となったレオン王子が、なぜか誇らしげに頷いている。
「……朝から騒々しいですわね。マリエッタさん、淑女は扉を蹴り開けたりしませんわよ」
リコは優雅に書類を捌きながら、視線すら上げずに釘を刺した。
「そんな細かいことは、国のGDP(国内総生産)の前では些末なことですわ! リコ様、マリエッタは決めましたの。私を、あなたの『筆頭侍従』兼『国家会計監査官』に任命してくださいまし!」
「……はあ? あなた、一応は男爵令嬢でしょう? 侍従だなんて、身分を投げ捨てるおつもり?」
リコがようやく顔を上げると、マリエッタの瞳はかつてないほど「計算高い」輝きを放っていた。
「身分なんて、ただの『固定資産』に過ぎませんわ! そんなものより、リコ様の隣でこの国の『無駄肉(汚職と浪費)』を削ぎ落とし、鉄の筋肉(財政)で固める方が、よっぽどエキサイティングですわ!」
「鉄の筋肉……。マリエッタさん、いつからそんな脳筋な会計士になったのかしら」
「愛ですわ、リコ様! レオン様を愛しているからこそ、彼が将来、借金取りに追われるような惨めな王様になるのを防ぎたいのです! そのためには、マリエッタがこの国の財布の紐を、筋肉のごとく締め上げねばなりませんの!」
マリエッタが力説すると、レオン王子が深く感銘を受けたように拳を握った。
「そうだ、リコ! マリエッタの言う通りだ! 私も、彼女のような『歩く監査機関』が傍にいてくれれば、安心して国政(という名の、君からの宿題)に専念できる!」
「……レオン様。あなた、単に自分で計算するのが嫌なだけではありませんこと?」
「ギクッ……。そ、そんなことはないぞ! 私はただ、適材適所の『組織構築』を提案しているだけで……!」
リコは深く、深いため息をついた。
かつては「私を愛して!」と縋り付くだけだった二人が、今や「この国の予算を筋肉質にしたい」と熱弁を振るっている。教育の成果としては百点満点だが、方向性が少々「苛烈」に振り切れている気がしなくもない。
「……よろしい。マリエッタさん、あなたの『筆頭侍従』への就任、特別に認めて差し上げますわ。ただし、一円の誤差でも出したら、即座にクビ。……そして、レオン様の腹筋と同じ数だけ、再計算のペナルティを与えますけれど?」
「望むところですわ! レオン様の腹筋なら、昨夜のトレーニングのおかげで、今は見事なシックスパック(六等分)になっていますもの! 計算ミス六回まではセーフですわね!」
「……マリエッタ。その数え方は、私の腹筋に対して失礼ではないかな?」
レオンが少し寂しそうな顔をするが、マリエッタはもはや数字のことしか考えていない。
「さあ、リコ様! まずは王宮の『カーテン維持費』からメスを入れましょう! こんな高価な布、裏返して使えばあと十年は持ちますわ!」
「……いいわ。その徹底的なケチ……いえ、節約精神、嫌いじゃありませんわ。セバス、マリエッタさんに専用の『黄金の算盤』と『鉄の印鑑』を用意して。……今日からこの部屋は、恋の相談所ではなく『国家改造計画室』になりますわよ」
「承知いたしました。……お嬢様。当初の『婚約破棄されて自由になる』という計画が、跡形もなく消え去っておりますが……よろしいのですか?」
セバスが耳元で囁く。
リコは、熱心に帳簿を突き合わせ始めたレオンとマリエッタを眺め、不敵に微笑んだ。
「いいのよ、セバス。自由なんて、他人に与えられるものではなく、自分で奪い取るものですわ。……この二人を完全に使いこなして、世界で一番『楽で贅沢な隠居生活』を勝ち取ってみせますわよ」
リコの瞳には、もはや悪役令嬢としての意地悪さではなく、この国そのものを「私有財産」として磨き上げる、支配者の野心が宿っていた。
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