悪役令嬢「殿下、私がいなくても大丈夫ですわよね?」

夏乃みのり

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16話

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王都では、アレクシスの焦りは限界に達していた。

ヴァイス公爵家からの協力が停止した影響は、国政のあらゆる面に暗い影を落としていた。貴族たちは日増しに反発を強め、民衆の間でも王太子の手腕を疑問視する声が上がり始めていた。

そしてついに、父である国王から、執務室に呼び出された。

「アレクシス。この国政の混乱、一体どう申し開きをするつもりだ」

玉座に座る父の目は、厳しく、そして失望に満ちていた。

「全ては、お前の未熟さが招いた事態。一時の感情で、我が国にとって最も重要なヴァイス家との絆を断ち切るとは。王太子としての自覚が足りなすぎる」

「申し訳、ございません……」

ぐうの音も出ないとは、このことだった。父の言うことは、全てが正論だった。

「リリアナ・ブラウン嬢は、確かに愛らしい少女だ。だが、彼女に国母が務まると思うか? お前の隣に立ち、この国を支えることができると、本気で考えているのか?」

「それは……」

「答えられまい。良いか、アレクシス。お前が失ったのは、ただの婚約者ではない。お前を、そしてこの国を、誰よりも深く理解し、支えてきた『賢者』なのだぞ」

賢者。父は、イザベラをそう評した。
冷たく、嫉妬深い女ではなかったのか。

「もはや一刻の猶予もない。何としてでも、イザベラ嬢を連れ戻してこい。お前のプライドなど、国の未来に比べれば些細なことだ。土下座してでも、彼女に許しを請うのだ」

父からの、厳命だった。

アレクシスは、打ちのめされた気分で執務室に戻った。
イザベラを、連れ戻す。それは、自分の過ちを認め、彼女に頭を下げることを意味する。

プライドが、ひどく傷ついた。
しかし、それ以上に、彼は自分の地位が危うくなっていることに恐怖を感じていた。

そうだ、彼女が必要なのだ。
私の完璧な日常を取り戻すために。王太子としての私の名声を守るために。

その思考の中に、彼女への純粋な愛情や、謝罪の気持ちはまだ、ひとかけらも存在していなかった。彼はただ、失った便利な「道具」を取り戻すことしか、考えていなかった。
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