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「おお……! なんという……なんという神々しい大腿四頭筋(だいたいしとうきん)だ! これほどまでに美しく、かつ強靭な四肢を持つ女性がこの世に存在したとは!」
王宮の第三訓練場。
バルク公国のゴーガン王子が、地面に膝を突き、雷に打たれたような顔で叫んでいた。
彼の視線の先にいるのは、リリアン様だ。
彼女は今、五十キロのバーベルを担ぎながら、一ミリのブレもなく深いスクワットを繰り返している。
「ふんっ! ……はぁっ! ……九十八、九十九……百! ……ふぅ。……あら、バルクの王子様。わたくしの筋肉に何か御用ですの?」
リリアン様が爽やかに汗を拭いながら振り返る。
その際、太ももの筋肉がドレスの隙間から「カット」と呼ばれる鮮やかな溝を見せた。
「……パチ、パチパチ。……ハンス、見て。ゴーガン王子の瞳の輝き。あれは恋に落ちた男の目ではありません。……『至高の資産』を見つけた投資家の目ですわ」
私は特等席から、算盤の珠を弾きながらその様子を観察していた。
「お嬢様、あれはどう見ても一目惚れですよ。……しかも、顔じゃなくて大腿筋に。……バルク公国の美の基準、本当に筋肉だけなんですね」
ハンスが引き気味に呟く。
ゴーガン王子は、リリアン様に歩み寄ると、その場で深々と頭を下げた。
「リリアン殿! 我が公国へ来てはくれまいか! 貴殿のその脚力があれば、我が国の山脈を越える軍馬など不要! 私と共に、世界一の『筋肉家系』を築こうではないか!」
「軍馬の代わり!? 失礼ですわね。わたくし、自分の体を支えるために鍛えているのであって、誰かを運ぶためではありませんわ!」
リリアン様がツンと鼻を鳴らす。
だが、ゴーガン王子はめげない。
「ならば、私とバルク(質量)を競い合ってくれ! 私が勝ったら、我が国の特産『超高純度プロテイン大豆』を一生分贈ろう!」
「一生分のプロテイン……。……パチリ。……リリアン様、その提案、悪くないわね」
私が横から口を出すと、リリアン様の目がキラリと光った。
「お師匠様がそうおっしゃるなら……。……わかりましたわ、ゴーガン王子! その勝負、受けて立ちます! ただし、わたくしが勝ったら、あなたの国のトレーニング機材の設計図をいただきますわよ!」
「ガハハ! 良いだろう! これぞ筋肉を通じた魂の交流だ!」
二人がそのまま「デッドリフト対決」を始めようとしたところで、私は算盤をチャッ、と鳴らして制した。
「パチ、パチパチ……。……ゴーガン殿下。リリアン様は我が国の『重要文化財』にして、私の大事な一番弟子です。……彼女をバルク公国へ連れて行くというのなら、相応の『筋肉持参金』を提示していただかなければ困りますわ」
「筋肉持参金だと……? それは何だ、アステリア公嬢」
「簡単なことですわ。パチリ。……両国の関税撤廃、並びに『共同筋肉研究施設』の設立。そして、バルク公国が保有する『鉄の鉱山』の優先供給権。……これらを契約書に盛り込んでいただけるなら、リリアン様の『筋肉留学』を許可いたしましょう」
「……お嬢様、どさくさに紛れて国家規模の利権をむしり取ろうとしてませんか?」
ハンスがツッコミを入れるが、私は止まらない。
ゴーガン王子は、リリアンの見事なデッドリフトのフォームに見惚れながら、二つ返事で頷いた。
「構わん! その程度の条件、筋肉の美しさに比べれば微々たるものだ! 書状を用意しろ!」
「……パチリ。……交渉成立ですわね」
私は勝利の笑みを浮かべた。
これで我が国には安価な鉄が入り、騎士団のトレーニング機材はさらに充実する。
リリアン様も、新しい刺激を得てバルクアップする。
……全てが完璧な数式(スキーム)通りだ。
そこへ、遠くからその様子を眺めていたキース様が、困り果てた表情で近づいてきた。
「……公嬢。……君は、リリアン嬢を外交の道具に……いや、筋肉の交換留学生にするつもりか?」
「キース様。これは道具ではありません、適材適所ですわ。パチパチ。……リリアン様は、広い世界で揉まれるべきなのです。……それに」
私は、キース様の太い腕をそっと指先でなぞった。
「……強い筋肉同士が惹かれ合うのは、宇宙の真理ですわ。……キース様と私が、こうして隣にいるように」
「…………」
キース様は、顔を赤くして視線を逸らした。
だが、その手は私の腰をしっかりと引き寄せ、隣国の王子に見せつけるように力を込めた。
(パチリ。……独占欲による筋緊張。……最高ですわね)
王都の平和は、筋肉という名の新しい通貨と、熱い恋(?)によって、ますます強固なものになっていくのだった。
王宮の第三訓練場。
バルク公国のゴーガン王子が、地面に膝を突き、雷に打たれたような顔で叫んでいた。
彼の視線の先にいるのは、リリアン様だ。
彼女は今、五十キロのバーベルを担ぎながら、一ミリのブレもなく深いスクワットを繰り返している。
「ふんっ! ……はぁっ! ……九十八、九十九……百! ……ふぅ。……あら、バルクの王子様。わたくしの筋肉に何か御用ですの?」
リリアン様が爽やかに汗を拭いながら振り返る。
その際、太ももの筋肉がドレスの隙間から「カット」と呼ばれる鮮やかな溝を見せた。
「……パチ、パチパチ。……ハンス、見て。ゴーガン王子の瞳の輝き。あれは恋に落ちた男の目ではありません。……『至高の資産』を見つけた投資家の目ですわ」
私は特等席から、算盤の珠を弾きながらその様子を観察していた。
「お嬢様、あれはどう見ても一目惚れですよ。……しかも、顔じゃなくて大腿筋に。……バルク公国の美の基準、本当に筋肉だけなんですね」
ハンスが引き気味に呟く。
ゴーガン王子は、リリアン様に歩み寄ると、その場で深々と頭を下げた。
「リリアン殿! 我が公国へ来てはくれまいか! 貴殿のその脚力があれば、我が国の山脈を越える軍馬など不要! 私と共に、世界一の『筋肉家系』を築こうではないか!」
「軍馬の代わり!? 失礼ですわね。わたくし、自分の体を支えるために鍛えているのであって、誰かを運ぶためではありませんわ!」
リリアン様がツンと鼻を鳴らす。
だが、ゴーガン王子はめげない。
「ならば、私とバルク(質量)を競い合ってくれ! 私が勝ったら、我が国の特産『超高純度プロテイン大豆』を一生分贈ろう!」
「一生分のプロテイン……。……パチリ。……リリアン様、その提案、悪くないわね」
私が横から口を出すと、リリアン様の目がキラリと光った。
「お師匠様がそうおっしゃるなら……。……わかりましたわ、ゴーガン王子! その勝負、受けて立ちます! ただし、わたくしが勝ったら、あなたの国のトレーニング機材の設計図をいただきますわよ!」
「ガハハ! 良いだろう! これぞ筋肉を通じた魂の交流だ!」
二人がそのまま「デッドリフト対決」を始めようとしたところで、私は算盤をチャッ、と鳴らして制した。
「パチ、パチパチ……。……ゴーガン殿下。リリアン様は我が国の『重要文化財』にして、私の大事な一番弟子です。……彼女をバルク公国へ連れて行くというのなら、相応の『筋肉持参金』を提示していただかなければ困りますわ」
「筋肉持参金だと……? それは何だ、アステリア公嬢」
「簡単なことですわ。パチリ。……両国の関税撤廃、並びに『共同筋肉研究施設』の設立。そして、バルク公国が保有する『鉄の鉱山』の優先供給権。……これらを契約書に盛り込んでいただけるなら、リリアン様の『筋肉留学』を許可いたしましょう」
「……お嬢様、どさくさに紛れて国家規模の利権をむしり取ろうとしてませんか?」
ハンスがツッコミを入れるが、私は止まらない。
ゴーガン王子は、リリアンの見事なデッドリフトのフォームに見惚れながら、二つ返事で頷いた。
「構わん! その程度の条件、筋肉の美しさに比べれば微々たるものだ! 書状を用意しろ!」
「……パチリ。……交渉成立ですわね」
私は勝利の笑みを浮かべた。
これで我が国には安価な鉄が入り、騎士団のトレーニング機材はさらに充実する。
リリアン様も、新しい刺激を得てバルクアップする。
……全てが完璧な数式(スキーム)通りだ。
そこへ、遠くからその様子を眺めていたキース様が、困り果てた表情で近づいてきた。
「……公嬢。……君は、リリアン嬢を外交の道具に……いや、筋肉の交換留学生にするつもりか?」
「キース様。これは道具ではありません、適材適所ですわ。パチパチ。……リリアン様は、広い世界で揉まれるべきなのです。……それに」
私は、キース様の太い腕をそっと指先でなぞった。
「……強い筋肉同士が惹かれ合うのは、宇宙の真理ですわ。……キース様と私が、こうして隣にいるように」
「…………」
キース様は、顔を赤くして視線を逸らした。
だが、その手は私の腰をしっかりと引き寄せ、隣国の王子に見せつけるように力を込めた。
(パチリ。……独占欲による筋緊張。……最高ですわね)
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