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公爵邸での生活は、天国のようだった。
朝は小鳥のさえずりで目覚め、ふわふわのパンケーキを食べ、昼は広大な図書室で古文書の整理(趣味)に没頭する。
そして、足元には常に白猫のスノーがいる。
これ以上の幸せがあるだろうか。
「……ラミリア、また本を読んでいるのか」
午後のお茶の時間。
図書室にアレクセイ様が入ってきた。
公務の合間に休憩しに来たらしい。
その手には、なぜか猫じゃらしが握られている。
「はい。この屋敷の蔵書は素晴らしいですね。特に、三百年前の治水工事の記録書なんて、興奮して震えが止まりません」
「……そうか。普通の令嬢は恋愛小説で震えるものだが、お前らしい」
アレクセイ様は苦笑しながら、私の向かいのソファに腰を下ろした。
スノーが「待ってました」とばかりに彼の膝に乗る……かと思いきや、私の膝に飛び乗った。
「…………」
アレクセイ様が猫じゃらしを悲しげに見つめている。
ドンマイです、公爵様。
「ところでアレクセイ様、今日は少しお疲れではありませんか? 王城で何か?」
「ああ……。ジェラルドの騒ぎが収まらなくてな。各部署からの苦情処理に追われている。あいつは一体、何をどうしたら半日で国政を停滞させられるんだ」
彼は眉間を揉んだ。
どうやら、元婚約者の尻拭いを叔父である彼がやらされているらしい。
申し訳なさと共に、「ざまぁみろ」という黒い感情が湧くのを止められない。
その時だった。
コンコン、と控えめなノックの後、執事のセバスチャンさんが入ってきた。
その表情は、いつになく険しい。
まるで、汚物でも見つけたかのような顔だ。
「旦那様、ラミリア様。……招かれざる客が来ております」
「客? アポなしでか?」
「はい。門前で『私を通せ! 将来の公爵夫人だぞ!』と喚き散らしておりまして……」
セバスチャンさんは、極めて不愉快そうに告げた。
「男爵令嬢の、ミナ様です」
「は?」
私の思考が停止した。
ミナ様?
ジェラルド殿下の新しい恋人の?
なぜここに?
「追い返せ。時間の無駄だ」
アレクセイ様が冷たく切り捨てる。
しかし、セバスチャンさんは困ったように首を振った。
「それが……『ラミリアに謝罪させに来た』とか『公爵様に重要な話がある』とか言って、門にしがみついて離れないのです。衛兵が触ろうとすると『セクハラだ!』と騒ぐ始末でして」
「……面倒な」
アレクセイ様の瞳が、氷点下まで冷え込んだ。
部屋の温度が下がる。
物理的に。
「分かった。私が直接引導を渡してやる。ラミリア、お前も来るか?」
「え、私もですか?」
「ああ。どうせお前の悪口を言いに来たのだろう。直接聞いて、笑い飛ばしてやればいい」
アレクセイ様は私の手を取り、立ち上がらせた。
その手は力強く、守ってくれているような安心感があった。
***
屋敷の玄関ホールへ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。
「だーかーらー! 通しなさいよ! 私はヒロインなのよ!?」
ピンク色のドレスを着たミナ様が、仁王立ちで叫んでいた。
周りを囲む屈強な衛兵たちが、どう扱っていいか分からず困惑している。
「あっ! アレクセイ様ぁ~!」
私たちが現れた瞬間、ミナ様の表情がコロッと変わった。
般若のような顔から、可憐な少女の顔へ。
その切り替えの早さは、ある意味才能かもしれない。
「酷いんですぅ、この人たち! か弱い私をいじめるんです!」
ミナ様は涙目で駆け寄ろうとした。
が、アレクセイ様が片手を挙げると、見えない壁に阻まれたように立ち止まった。
威圧感だけで人を止めるスキルだ。
「……何の用だ。私の屋敷は、害虫の侵入を許可していない」
アレクセイ様の声は、絶対零度だった。
普通の人間なら震え上がって逃げ出すレベルだ。
しかし、ミナ様の神経は鋼鉄、いやオリハルコンでできているらしい。
「ご挨拶ですぅ! 私、ジェラルド殿下に愛想が尽きちゃって。だってあの人、お金もないし無能なんですもの!」
あっさり言った。
昨日、あんなに愛を誓い合っていたのに。
殿下、聞いたら泣くぞ。
「だからぁ、私、アレクセイ様に乗り換えようと思って来ました! 公爵夫人なら、私にぴったりだと思いません?」
ミナ様はスカートを摘んで、可愛らしく首を傾げた。
自信満々だ。
自分が世界で一番可愛いと信じて疑わない顔だ。
「それにぃ、そこの地味なラミリア様なんかより、私の方がずっとお役に立てますよぉ。可愛いし、愛嬌あるし、ベッドでも……きゃっ、恥ずかしい!」
一人で盛り上がっている。
私は呆れて口が開いたままだ。
この自信、どこから湧いてくるのだろう。
ある意味、羨ましい。
「……それで?」
アレクセイ様は表情一つ変えずに促した。
「あ、そうそう! ついでにラミリア様の悪事を報告しに来たんです! この女、公爵家の金を横領してますよ!」
「は?」
私が声を上げると、ミナ様はニヤリと笑った。
「だってぇ、無能な彼女がこんな豪華な暮らしをしてるなんておかしいじゃないですかぁ。きっと、アレクセイ様を騙して、裏金を……」
「黙れ」
アレクセイ様の一言が、空間を断ち切った。
静かだが、雷鳴のような響きを持った声だ。
「臭いんだよ」
「え?」
ミナ様がポカンとする。
「さっきから、鼻が曲がりそうな悪臭がする。お前か」
「あ、悪臭!? ひ、酷いです! これは最高級のローズの香水ですぅ! 殿下がプレゼントしてくれた……」
「香水? 公害レベルだ。うちの猫の嗅覚が麻痺したらどうする」
アレクセイ様はハンカチを取り出し、口元を覆った。
あからさまな拒絶。
「それに、ラミリアが横領? 馬鹿を言うな。彼女は私が無理やり頼み込んで、ここにいてもらっているのだ。金など、彼女が望むなら全財産くれてやる」
「えっ……全財産!?」
ミナ様の目が「¥」マークになった気がした。
「じゃ、じゃあ私にもください! 私の方がラミリア様より可愛いですし!」
ミナ様が一歩踏み出した、その時。
「シャーッ!!!」
私の腕の中にいたスノーが、突如として牙を剥いた。
全身の毛を逆立て、ミナ様に向かって威嚇音を発したのだ。
「ひぃっ!?」
「おっと、スノーが怒っているな」
アレクセイ様は冷ややかに見下ろした。
「動物は本能で理解するのだ。誰が無害で、誰が『有害』かをな」
「な、なによその猫! 可愛くないわね! 処分しなさいよ!」
ミナ様が逆ギレして叫んだ瞬間。
アレクセイ様の周囲に、パキパキと氷の結晶が舞った。
「……今、なんと?」
「ひっ」
「私の家族(猫)を処分しろと言ったか? ……死にたいようだな」
殺気。
本物の殺気だ。
ミナ様は腰を抜かしてへたり込んだ。
「そ、そんな……。私、ヒロインなのに……。なんで誰も私を好きにならないの……?」
「ヒロイン?」
アレクセイ様は鼻で笑った。
「自分を劇の主役だと思い込むのは勝手だが、私の舞台にお前の席はない。あるのは、ラミリアの隣の席だけだ」
彼は私の肩を抱き寄せた。
そして、ミナ様に見せつけるように言った。
「ラミリアは、香水などつけなくとも、日だまりのような良い匂いがする。お前のような、化学薬品まみれの匂いとは違う」
「~~~っ!!」
ミナ様は顔を真っ赤にして立ち上がった。
「も、もう知らない! アンタなんかこっちから願い下げよ! 氷男! 一生独身でいればいいのよ!」
捨て台詞を吐いて、ミナ様は脱兎のごとく逃げ出した。
嵐のような訪問者だった。
玄関ホールに静寂が戻る。
アレクセイ様は、すぐに私の方を向き、心配そうに覗き込んだ。
「ラミリア、大丈夫か? あんな騒音を聞かせてすまない」
「いえ、私は平気です。むしろ、アレクセイ様こそ……」
「ん?」
「その……『日だまりのような良い匂い』というのは、少し恥ずかしいのですが」
私が頬を赤らめて言うと、アレクセイ様もハッとしたように咳払いをした。
「あ、ああ……。あれは、その……事実を述べたまでだ」
彼は視線を逸らし、耳まで赤くしている。
さっきの魔王のような威圧感はどこへやら。
「しかし、本当に臭かったな。セバスチャン、玄関ホールを換気だ。それから、塩を撒いておけ」
「承知いたしました。念入りに浄化しておきます」
セバスチャンさんが恭しく頭を下げる。
私は、アレクセイ様の腕の中で、小さく笑ってしまった。
この屋敷は、確かに最強だ。
どんな悪意も、ここでは通用しない。
だって、ここには最強の「家族愛(猫含む)」があるのだから。
(それにしても……ミナ様、これからどうするつもりなんだろう?)
ふと、逃げていった彼女の末路を案じたが、すぐに「まあ、自業自得か」と思い直した。
私には、目の前のポトフ(今夜の夕食)のことの方が重要だった。
「さあ、ラミリア。部屋に戻ろう。……少し、匂いを嗅がせてもらってもいいか?」
「えっ? あ、はい……変な匂いはしませんか?」
「いや……落ち着く」
アレクセイ様は私の髪に顔を埋め、深呼吸をした。
スノーも真似をして、私の足元でスンスンと匂いを嗅いでいる。
どうやら私は、公爵家公認の芳香剤(?)に認定されたようだった。
朝は小鳥のさえずりで目覚め、ふわふわのパンケーキを食べ、昼は広大な図書室で古文書の整理(趣味)に没頭する。
そして、足元には常に白猫のスノーがいる。
これ以上の幸せがあるだろうか。
「……ラミリア、また本を読んでいるのか」
午後のお茶の時間。
図書室にアレクセイ様が入ってきた。
公務の合間に休憩しに来たらしい。
その手には、なぜか猫じゃらしが握られている。
「はい。この屋敷の蔵書は素晴らしいですね。特に、三百年前の治水工事の記録書なんて、興奮して震えが止まりません」
「……そうか。普通の令嬢は恋愛小説で震えるものだが、お前らしい」
アレクセイ様は苦笑しながら、私の向かいのソファに腰を下ろした。
スノーが「待ってました」とばかりに彼の膝に乗る……かと思いきや、私の膝に飛び乗った。
「…………」
アレクセイ様が猫じゃらしを悲しげに見つめている。
ドンマイです、公爵様。
「ところでアレクセイ様、今日は少しお疲れではありませんか? 王城で何か?」
「ああ……。ジェラルドの騒ぎが収まらなくてな。各部署からの苦情処理に追われている。あいつは一体、何をどうしたら半日で国政を停滞させられるんだ」
彼は眉間を揉んだ。
どうやら、元婚約者の尻拭いを叔父である彼がやらされているらしい。
申し訳なさと共に、「ざまぁみろ」という黒い感情が湧くのを止められない。
その時だった。
コンコン、と控えめなノックの後、執事のセバスチャンさんが入ってきた。
その表情は、いつになく険しい。
まるで、汚物でも見つけたかのような顔だ。
「旦那様、ラミリア様。……招かれざる客が来ております」
「客? アポなしでか?」
「はい。門前で『私を通せ! 将来の公爵夫人だぞ!』と喚き散らしておりまして……」
セバスチャンさんは、極めて不愉快そうに告げた。
「男爵令嬢の、ミナ様です」
「は?」
私の思考が停止した。
ミナ様?
ジェラルド殿下の新しい恋人の?
なぜここに?
「追い返せ。時間の無駄だ」
アレクセイ様が冷たく切り捨てる。
しかし、セバスチャンさんは困ったように首を振った。
「それが……『ラミリアに謝罪させに来た』とか『公爵様に重要な話がある』とか言って、門にしがみついて離れないのです。衛兵が触ろうとすると『セクハラだ!』と騒ぐ始末でして」
「……面倒な」
アレクセイ様の瞳が、氷点下まで冷え込んだ。
部屋の温度が下がる。
物理的に。
「分かった。私が直接引導を渡してやる。ラミリア、お前も来るか?」
「え、私もですか?」
「ああ。どうせお前の悪口を言いに来たのだろう。直接聞いて、笑い飛ばしてやればいい」
アレクセイ様は私の手を取り、立ち上がらせた。
その手は力強く、守ってくれているような安心感があった。
***
屋敷の玄関ホールへ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。
「だーかーらー! 通しなさいよ! 私はヒロインなのよ!?」
ピンク色のドレスを着たミナ様が、仁王立ちで叫んでいた。
周りを囲む屈強な衛兵たちが、どう扱っていいか分からず困惑している。
「あっ! アレクセイ様ぁ~!」
私たちが現れた瞬間、ミナ様の表情がコロッと変わった。
般若のような顔から、可憐な少女の顔へ。
その切り替えの早さは、ある意味才能かもしれない。
「酷いんですぅ、この人たち! か弱い私をいじめるんです!」
ミナ様は涙目で駆け寄ろうとした。
が、アレクセイ様が片手を挙げると、見えない壁に阻まれたように立ち止まった。
威圧感だけで人を止めるスキルだ。
「……何の用だ。私の屋敷は、害虫の侵入を許可していない」
アレクセイ様の声は、絶対零度だった。
普通の人間なら震え上がって逃げ出すレベルだ。
しかし、ミナ様の神経は鋼鉄、いやオリハルコンでできているらしい。
「ご挨拶ですぅ! 私、ジェラルド殿下に愛想が尽きちゃって。だってあの人、お金もないし無能なんですもの!」
あっさり言った。
昨日、あんなに愛を誓い合っていたのに。
殿下、聞いたら泣くぞ。
「だからぁ、私、アレクセイ様に乗り換えようと思って来ました! 公爵夫人なら、私にぴったりだと思いません?」
ミナ様はスカートを摘んで、可愛らしく首を傾げた。
自信満々だ。
自分が世界で一番可愛いと信じて疑わない顔だ。
「それにぃ、そこの地味なラミリア様なんかより、私の方がずっとお役に立てますよぉ。可愛いし、愛嬌あるし、ベッドでも……きゃっ、恥ずかしい!」
一人で盛り上がっている。
私は呆れて口が開いたままだ。
この自信、どこから湧いてくるのだろう。
ある意味、羨ましい。
「……それで?」
アレクセイ様は表情一つ変えずに促した。
「あ、そうそう! ついでにラミリア様の悪事を報告しに来たんです! この女、公爵家の金を横領してますよ!」
「は?」
私が声を上げると、ミナ様はニヤリと笑った。
「だってぇ、無能な彼女がこんな豪華な暮らしをしてるなんておかしいじゃないですかぁ。きっと、アレクセイ様を騙して、裏金を……」
「黙れ」
アレクセイ様の一言が、空間を断ち切った。
静かだが、雷鳴のような響きを持った声だ。
「臭いんだよ」
「え?」
ミナ様がポカンとする。
「さっきから、鼻が曲がりそうな悪臭がする。お前か」
「あ、悪臭!? ひ、酷いです! これは最高級のローズの香水ですぅ! 殿下がプレゼントしてくれた……」
「香水? 公害レベルだ。うちの猫の嗅覚が麻痺したらどうする」
アレクセイ様はハンカチを取り出し、口元を覆った。
あからさまな拒絶。
「それに、ラミリアが横領? 馬鹿を言うな。彼女は私が無理やり頼み込んで、ここにいてもらっているのだ。金など、彼女が望むなら全財産くれてやる」
「えっ……全財産!?」
ミナ様の目が「¥」マークになった気がした。
「じゃ、じゃあ私にもください! 私の方がラミリア様より可愛いですし!」
ミナ様が一歩踏み出した、その時。
「シャーッ!!!」
私の腕の中にいたスノーが、突如として牙を剥いた。
全身の毛を逆立て、ミナ様に向かって威嚇音を発したのだ。
「ひぃっ!?」
「おっと、スノーが怒っているな」
アレクセイ様は冷ややかに見下ろした。
「動物は本能で理解するのだ。誰が無害で、誰が『有害』かをな」
「な、なによその猫! 可愛くないわね! 処分しなさいよ!」
ミナ様が逆ギレして叫んだ瞬間。
アレクセイ様の周囲に、パキパキと氷の結晶が舞った。
「……今、なんと?」
「ひっ」
「私の家族(猫)を処分しろと言ったか? ……死にたいようだな」
殺気。
本物の殺気だ。
ミナ様は腰を抜かしてへたり込んだ。
「そ、そんな……。私、ヒロインなのに……。なんで誰も私を好きにならないの……?」
「ヒロイン?」
アレクセイ様は鼻で笑った。
「自分を劇の主役だと思い込むのは勝手だが、私の舞台にお前の席はない。あるのは、ラミリアの隣の席だけだ」
彼は私の肩を抱き寄せた。
そして、ミナ様に見せつけるように言った。
「ラミリアは、香水などつけなくとも、日だまりのような良い匂いがする。お前のような、化学薬品まみれの匂いとは違う」
「~~~っ!!」
ミナ様は顔を真っ赤にして立ち上がった。
「も、もう知らない! アンタなんかこっちから願い下げよ! 氷男! 一生独身でいればいいのよ!」
捨て台詞を吐いて、ミナ様は脱兎のごとく逃げ出した。
嵐のような訪問者だった。
玄関ホールに静寂が戻る。
アレクセイ様は、すぐに私の方を向き、心配そうに覗き込んだ。
「ラミリア、大丈夫か? あんな騒音を聞かせてすまない」
「いえ、私は平気です。むしろ、アレクセイ様こそ……」
「ん?」
「その……『日だまりのような良い匂い』というのは、少し恥ずかしいのですが」
私が頬を赤らめて言うと、アレクセイ様もハッとしたように咳払いをした。
「あ、ああ……。あれは、その……事実を述べたまでだ」
彼は視線を逸らし、耳まで赤くしている。
さっきの魔王のような威圧感はどこへやら。
「しかし、本当に臭かったな。セバスチャン、玄関ホールを換気だ。それから、塩を撒いておけ」
「承知いたしました。念入りに浄化しておきます」
セバスチャンさんが恭しく頭を下げる。
私は、アレクセイ様の腕の中で、小さく笑ってしまった。
この屋敷は、確かに最強だ。
どんな悪意も、ここでは通用しない。
だって、ここには最強の「家族愛(猫含む)」があるのだから。
(それにしても……ミナ様、これからどうするつもりなんだろう?)
ふと、逃げていった彼女の末路を案じたが、すぐに「まあ、自業自得か」と思い直した。
私には、目の前のポトフ(今夜の夕食)のことの方が重要だった。
「さあ、ラミリア。部屋に戻ろう。……少し、匂いを嗅がせてもらってもいいか?」
「えっ? あ、はい……変な匂いはしませんか?」
「いや……落ち着く」
アレクセイ様は私の髪に顔を埋め、深呼吸をした。
スノーも真似をして、私の足元でスンスンと匂いを嗅いでいる。
どうやら私は、公爵家公認の芳香剤(?)に認定されたようだった。
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