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「……アレクセイ様。これは一体、どういう状況でしょうか?」
私はひきつった笑顔で問いかけた。
場所は公爵邸の庭園。
色とりどりのバラが咲き誇る美しい庭なのだが、今の空気は少し……いや、かなり重苦しい。
目の前には、十数名の紳士たちが並んでいる。
彼らは皆、高級なスーツに身を包み、脂汗を流しながら直立不動の姿勢をとっていた。
まるで、処刑を待つ囚人のように。
「何と言われても……ただの茶会だ」
私の隣で、アレクセイ様が優雅に紅茶を啜りながら答えた。
彼は上機嫌だ。
しかし、その威圧感が凄まじく、周囲の気温を下げていることに本人は気づいていない。
「茶会……ですか? どう見ても、査問会に見えますが」
「失敬な。私は彼らを労おうと思って招待したのだ。日頃、我が公爵家と取引のある商会長や、友好国の外交官たちだ」
アレクセイ様は不思議そうに首を傾げた。
なるほど、招待客の顔ぶれは豪華だ。
国内最大手のゴンドル商会の会長、隣国との貿易を取り仕切る大使、王都の物流を牛耳るギルドマスター……。
経済界と外交界の重鎮ばかりである。
しかし、彼らは『氷の公爵』に突然呼び出され、「何か不手際があったのでは?」「消されるのか?」と戦々恐々としている様子だった。
(可哀想に……。アレクセイ様、コミュニケーション能力が壊滅的だから……)
私は小さく溜息をつき、一歩前に進み出た。
このままでは、せっかくの茶会が胃痛大会になってしまう。
私が場の空気を和ませなければ。
「皆様、ようこそお越しくださいました。アレクセイ公爵の婚約者、ラミリアです」
私が笑顔で挨拶すると、紳士たちはおっかなびっくり顔を上げた。
「あ、あなたが噂のラミリア嬢……?」
「断罪された悪役令嬢というのは、この方か……?」
ヒソヒソと訝しげな声が聞こえる。
彼らにとって私は、「王子に婚約破棄された、性格の悪い女」という認識なのだろう。
当然の反応だ。
しかし、その中の一人が、ハッと息を呑んだ。
ゴンドル商会の会長、太鼓腹が特徴的な初老の男性だ。
「む? その声……もしや、ラミリア様ですか? あの、電話の声だけで私の腰痛を気遣ってくださった!?」
「あら、ゴンドル会長。お久しぶりです。その後、腰の具合はいかがですか? 以前、王城にお電話いただいた際、随分とお辛そうでしたので、良い整体師を紹介させていただきましたが」
「おおお! やはり貴女様でしたか!」
ゴンドル会長の顔が、パァッと明るくなった。
「あのおかげで、私の腰は完治しました! 紹介された整体師、まさにゴッドハンドでしたよ! 殿下に取り次ぎを頼むといつも『忙しいから切るぞ』とガチャ切りされるのに、貴女様だけが私の健康を案じてくださった……!」
「それは良かったです。会長は働きすぎですから、たまには温泉でも行ってくださいね」
「ははーっ! ありがたきお言葉!」
ゴンドル会長が平伏せんばかりの勢いで感謝を示すと、隣にいた細身の男性――東方諸国の外交官が、恐る恐る口を開いた。
「あ、あの……もしかして、先月の通商条約の際、私の母国の祝日に合わせて会議の日程をずらしてくださったのは……」
「はい、私です。大使」
私は彼に向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「東方諸国では『星祭りの日』は家族と過ごすのが伝統でしょう? そんな大事な日に、堅苦しい関税の話なんて野暮ですものね。ジェラルド殿下は『知らん、来させろ』と仰っていましたが、私が勝手にスケジュール表を書き換えておきました」
「なんと……! あれは貴女様の配慮でしたか!」
大使は目頭を押さえた。
「おかげで、数年ぶりに娘と祭りに行けました。娘が『パパ、仕事ばっかりだと思ってたけど、大好き!』と言ってくれたのは、一生の思い出です……! 貴女様は我が家の恩人です!」
「まあ、素敵なエピソードですね。娘さんによろしくお伝えください」
「ううっ、一生ついていきます!」
場の空気が、劇的に変わり始めた。
最初は私を「悪女」だと思っていた紳士たちが、次々と「あの時の!?」「あのお気遣いは貴女様だったのか!」と気づき始めたのだ。
「先日のパーティーで、私が苦手な甲殻類をメニューから外してくださったのも?」
「はい、アレルギーだと伺っておりましたので」
「私の妻の誕生日に、王家からの花束を手配してくださったのは?」
「殿下は忘れていらっしゃったので、私が代わりに手配しました。奥様の好きな青いバラを選びましたが、お気に召しましたか?」
「うおおお! 最高でした! 妻の機嫌が直りました!」
次々と判明する真実。
王子の背後で、黒子として彼らの要望を叶え、トラブルを未然に防ぎ、細やかな配慮をばら撒いていたのは、全て私だったという事実。
紳士たちは、もはやアレクセイ様の恐怖など忘れていた。
彼らの目は、尊敬と崇拝の輝きを帯びて私に向けられている。
「ラミリア様……いや、ラミリア姐さんと呼ばせてください!」
「うちの商会の顧問になっていただけませんか!? 年棒は言い値で!」
「いや、我が国の名誉市民になってください! 税金免除します!」
「ちょ、ちょっと皆様? 落ち着いてください」
私が困惑していると、背後から氷のような冷気が漂ってきた。
振り返ると、アレクセイ様が般若のような顔をしている。
いや、怒っているのではない。
これは……嫉妬?
「……おい」
アレクセイ様がドスの利いた声で唸った。
「お前たち。誰の婚約者に色目を使っている?」
「ひぃっ!?」
紳士たちが一斉に縮み上がった。
忘れていた。
ここには、世界で一番怖い公爵がいることを。
「こ、公爵閣下! 滅相もございません! 我々はただ、ラミリア様の有能さと人徳に感動していただけで……!」
ゴンドル会長が必死に弁明する。
アレクセイ様はフンと鼻を鳴らし、私の腰に手を回して引き寄せた。
所有権を主張するような、強い抱擁だ。
「ラミリアは私のものだ。顧問? 名誉市民? ふざけるな。彼女の職場は私の屋敷、彼女の肩書きは私の妻(予定)のみだ」
「は、はいぃぃっ! 承知いたしましたぁぁ!」
「だが……まあ、良いだろう」
アレクセイ様はふっと表情を緩めた。
その瞳には、隠しきれない優越感と、誇らしげな色が浮かんでいる。
「私の選んだ女性が、これほどまでに貴様らの信頼を得ているとはな。私の目に狂いはなかったということだ」
「さ、左様でございます! 閣下のお目は節穴どころか、千里眼でございます!」
「うむ。ならば、今後も我が公爵家とラミリアのために、精々尽くすがいい」
「イエス・マイ・ロード!!」
紳士たちが一斉に敬礼した。
その顔つきは、もはや取引先ではない。
忠誠を誓った騎士団のようだ。
(……あれ? なんか変なことになってない?)
私は首を傾げた。
ただ普通に挨拶をして、昔話を少ししただけなのだが。
いつの間にか、国の経済と外交を支える重要人物たちが、ガッチリと「ラミリア派閥」に組み込まれてしまったようだ。
「よし、ラミリア。茶会は終わりだ。彼らはこれから、お前の偉大さを広めるために忙しくなるだろうからな」
「えっ、もう終わりですか? まだケーキも食べていないのに」
「お前には、部屋で特製のタルトを用意してある。……二人きりでな」
アレクセイ様は妖艶に微笑むと、紳士たちに「帰れ」と合図した。
紳士たちは「ラミリア様万歳!」「公爵家万歳!」と叫びながら、嵐のように去っていった。
残された静かな庭園で、私はアレクセイ様を見上げた。
「あの、アレクセイ様。彼ら、大丈夫でしょうか? 何か変な宗教に入信したみたいな目をしていましたけど」
「気にするな。人は、真の指導者に出会うとああなるものだ」
「指導者? 誰のことですか?」
「自覚がないのが、お前の恐ろしいところだな」
アレクセイ様は苦笑し、私の額にそっと口づけた。
「ジェラルドは馬鹿な男だ。お前という『最強の外交カード』を手放し、敵に回したのだからな。……今頃、商会からの融資を打ち切られて泣いているのではないか?」
「まさか。ゴンドル会長は温厚な方ですよ?」
「さあな。だが、商人というのは損得に敏感だ。『無能な王子』と『有能な公爵夫人』。どちらに投資すべきか、彼らは正しく理解したはずだ」
アレクセイ様の予言通り、翌日から王城には「取引停止」「価格改定(値上げ)」「支援打ち切り」の通知が山のように届くことになるのだが、それはまた別の話である。
今はただ、この温かい紅茶と、ほんのり甘い嫉妬の味を楽しむことにしよう。
「……ラミリア。私のことも、もっと褒めてくれないか?」
「はい?」
「あの古狸どものことばかり詳しくて、少し妬けた。私の好きなものも、当然把握しているのだろうな?」
アレクセイ様が拗ねたように唇を尖らせる。
氷の公爵らしからぬ、子供っぽい表情だ。
私はクスッと笑った。
「もちろんです。アレクセイ様のお好きなものは……」
私は彼の耳元に顔を寄せ、内緒話をするように囁いた。
「甘さ控えめのザッハトルテと、ブラッシングされた猫の肉球と、……私の淹れた紅茶、ですよね?」
「…………ッ!」
アレクセイ様は顔を真っ赤にして、口元を手で覆った。
どうやら正解だったようだ。
「……お前には敵わんな。一生、私の側でその能力を振るってくれ」
「はい、喜んで。契約更新、ありがとうございます」
こうして、私は無自覚のうちに、公爵家という巨大な後ろ盾に加え、経済界・外交界という強力な「ラミリア親衛隊」を手に入れたのであった。
私はひきつった笑顔で問いかけた。
場所は公爵邸の庭園。
色とりどりのバラが咲き誇る美しい庭なのだが、今の空気は少し……いや、かなり重苦しい。
目の前には、十数名の紳士たちが並んでいる。
彼らは皆、高級なスーツに身を包み、脂汗を流しながら直立不動の姿勢をとっていた。
まるで、処刑を待つ囚人のように。
「何と言われても……ただの茶会だ」
私の隣で、アレクセイ様が優雅に紅茶を啜りながら答えた。
彼は上機嫌だ。
しかし、その威圧感が凄まじく、周囲の気温を下げていることに本人は気づいていない。
「茶会……ですか? どう見ても、査問会に見えますが」
「失敬な。私は彼らを労おうと思って招待したのだ。日頃、我が公爵家と取引のある商会長や、友好国の外交官たちだ」
アレクセイ様は不思議そうに首を傾げた。
なるほど、招待客の顔ぶれは豪華だ。
国内最大手のゴンドル商会の会長、隣国との貿易を取り仕切る大使、王都の物流を牛耳るギルドマスター……。
経済界と外交界の重鎮ばかりである。
しかし、彼らは『氷の公爵』に突然呼び出され、「何か不手際があったのでは?」「消されるのか?」と戦々恐々としている様子だった。
(可哀想に……。アレクセイ様、コミュニケーション能力が壊滅的だから……)
私は小さく溜息をつき、一歩前に進み出た。
このままでは、せっかくの茶会が胃痛大会になってしまう。
私が場の空気を和ませなければ。
「皆様、ようこそお越しくださいました。アレクセイ公爵の婚約者、ラミリアです」
私が笑顔で挨拶すると、紳士たちはおっかなびっくり顔を上げた。
「あ、あなたが噂のラミリア嬢……?」
「断罪された悪役令嬢というのは、この方か……?」
ヒソヒソと訝しげな声が聞こえる。
彼らにとって私は、「王子に婚約破棄された、性格の悪い女」という認識なのだろう。
当然の反応だ。
しかし、その中の一人が、ハッと息を呑んだ。
ゴンドル商会の会長、太鼓腹が特徴的な初老の男性だ。
「む? その声……もしや、ラミリア様ですか? あの、電話の声だけで私の腰痛を気遣ってくださった!?」
「あら、ゴンドル会長。お久しぶりです。その後、腰の具合はいかがですか? 以前、王城にお電話いただいた際、随分とお辛そうでしたので、良い整体師を紹介させていただきましたが」
「おおお! やはり貴女様でしたか!」
ゴンドル会長の顔が、パァッと明るくなった。
「あのおかげで、私の腰は完治しました! 紹介された整体師、まさにゴッドハンドでしたよ! 殿下に取り次ぎを頼むといつも『忙しいから切るぞ』とガチャ切りされるのに、貴女様だけが私の健康を案じてくださった……!」
「それは良かったです。会長は働きすぎですから、たまには温泉でも行ってくださいね」
「ははーっ! ありがたきお言葉!」
ゴンドル会長が平伏せんばかりの勢いで感謝を示すと、隣にいた細身の男性――東方諸国の外交官が、恐る恐る口を開いた。
「あ、あの……もしかして、先月の通商条約の際、私の母国の祝日に合わせて会議の日程をずらしてくださったのは……」
「はい、私です。大使」
私は彼に向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「東方諸国では『星祭りの日』は家族と過ごすのが伝統でしょう? そんな大事な日に、堅苦しい関税の話なんて野暮ですものね。ジェラルド殿下は『知らん、来させろ』と仰っていましたが、私が勝手にスケジュール表を書き換えておきました」
「なんと……! あれは貴女様の配慮でしたか!」
大使は目頭を押さえた。
「おかげで、数年ぶりに娘と祭りに行けました。娘が『パパ、仕事ばっかりだと思ってたけど、大好き!』と言ってくれたのは、一生の思い出です……! 貴女様は我が家の恩人です!」
「まあ、素敵なエピソードですね。娘さんによろしくお伝えください」
「ううっ、一生ついていきます!」
場の空気が、劇的に変わり始めた。
最初は私を「悪女」だと思っていた紳士たちが、次々と「あの時の!?」「あのお気遣いは貴女様だったのか!」と気づき始めたのだ。
「先日のパーティーで、私が苦手な甲殻類をメニューから外してくださったのも?」
「はい、アレルギーだと伺っておりましたので」
「私の妻の誕生日に、王家からの花束を手配してくださったのは?」
「殿下は忘れていらっしゃったので、私が代わりに手配しました。奥様の好きな青いバラを選びましたが、お気に召しましたか?」
「うおおお! 最高でした! 妻の機嫌が直りました!」
次々と判明する真実。
王子の背後で、黒子として彼らの要望を叶え、トラブルを未然に防ぎ、細やかな配慮をばら撒いていたのは、全て私だったという事実。
紳士たちは、もはやアレクセイ様の恐怖など忘れていた。
彼らの目は、尊敬と崇拝の輝きを帯びて私に向けられている。
「ラミリア様……いや、ラミリア姐さんと呼ばせてください!」
「うちの商会の顧問になっていただけませんか!? 年棒は言い値で!」
「いや、我が国の名誉市民になってください! 税金免除します!」
「ちょ、ちょっと皆様? 落ち着いてください」
私が困惑していると、背後から氷のような冷気が漂ってきた。
振り返ると、アレクセイ様が般若のような顔をしている。
いや、怒っているのではない。
これは……嫉妬?
「……おい」
アレクセイ様がドスの利いた声で唸った。
「お前たち。誰の婚約者に色目を使っている?」
「ひぃっ!?」
紳士たちが一斉に縮み上がった。
忘れていた。
ここには、世界で一番怖い公爵がいることを。
「こ、公爵閣下! 滅相もございません! 我々はただ、ラミリア様の有能さと人徳に感動していただけで……!」
ゴンドル会長が必死に弁明する。
アレクセイ様はフンと鼻を鳴らし、私の腰に手を回して引き寄せた。
所有権を主張するような、強い抱擁だ。
「ラミリアは私のものだ。顧問? 名誉市民? ふざけるな。彼女の職場は私の屋敷、彼女の肩書きは私の妻(予定)のみだ」
「は、はいぃぃっ! 承知いたしましたぁぁ!」
「だが……まあ、良いだろう」
アレクセイ様はふっと表情を緩めた。
その瞳には、隠しきれない優越感と、誇らしげな色が浮かんでいる。
「私の選んだ女性が、これほどまでに貴様らの信頼を得ているとはな。私の目に狂いはなかったということだ」
「さ、左様でございます! 閣下のお目は節穴どころか、千里眼でございます!」
「うむ。ならば、今後も我が公爵家とラミリアのために、精々尽くすがいい」
「イエス・マイ・ロード!!」
紳士たちが一斉に敬礼した。
その顔つきは、もはや取引先ではない。
忠誠を誓った騎士団のようだ。
(……あれ? なんか変なことになってない?)
私は首を傾げた。
ただ普通に挨拶をして、昔話を少ししただけなのだが。
いつの間にか、国の経済と外交を支える重要人物たちが、ガッチリと「ラミリア派閥」に組み込まれてしまったようだ。
「よし、ラミリア。茶会は終わりだ。彼らはこれから、お前の偉大さを広めるために忙しくなるだろうからな」
「えっ、もう終わりですか? まだケーキも食べていないのに」
「お前には、部屋で特製のタルトを用意してある。……二人きりでな」
アレクセイ様は妖艶に微笑むと、紳士たちに「帰れ」と合図した。
紳士たちは「ラミリア様万歳!」「公爵家万歳!」と叫びながら、嵐のように去っていった。
残された静かな庭園で、私はアレクセイ様を見上げた。
「あの、アレクセイ様。彼ら、大丈夫でしょうか? 何か変な宗教に入信したみたいな目をしていましたけど」
「気にするな。人は、真の指導者に出会うとああなるものだ」
「指導者? 誰のことですか?」
「自覚がないのが、お前の恐ろしいところだな」
アレクセイ様は苦笑し、私の額にそっと口づけた。
「ジェラルドは馬鹿な男だ。お前という『最強の外交カード』を手放し、敵に回したのだからな。……今頃、商会からの融資を打ち切られて泣いているのではないか?」
「まさか。ゴンドル会長は温厚な方ですよ?」
「さあな。だが、商人というのは損得に敏感だ。『無能な王子』と『有能な公爵夫人』。どちらに投資すべきか、彼らは正しく理解したはずだ」
アレクセイ様の予言通り、翌日から王城には「取引停止」「価格改定(値上げ)」「支援打ち切り」の通知が山のように届くことになるのだが、それはまた別の話である。
今はただ、この温かい紅茶と、ほんのり甘い嫉妬の味を楽しむことにしよう。
「……ラミリア。私のことも、もっと褒めてくれないか?」
「はい?」
「あの古狸どものことばかり詳しくて、少し妬けた。私の好きなものも、当然把握しているのだろうな?」
アレクセイ様が拗ねたように唇を尖らせる。
氷の公爵らしからぬ、子供っぽい表情だ。
私はクスッと笑った。
「もちろんです。アレクセイ様のお好きなものは……」
私は彼の耳元に顔を寄せ、内緒話をするように囁いた。
「甘さ控えめのザッハトルテと、ブラッシングされた猫の肉球と、……私の淹れた紅茶、ですよね?」
「…………ッ!」
アレクセイ様は顔を真っ赤にして、口元を手で覆った。
どうやら正解だったようだ。
「……お前には敵わんな。一生、私の側でその能力を振るってくれ」
「はい、喜んで。契約更新、ありがとうございます」
こうして、私は無自覚のうちに、公爵家という巨大な後ろ盾に加え、経済界・外交界という強力な「ラミリア親衛隊」を手に入れたのであった。
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