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第9章
わからない
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帰りの馬車の窓から外を見る。
特に何に注目するでもなく、ただぼうっと。
馬車には気づいたら乗ってたし、どうやってここまで来たのかもわからない。
頭の中はルークのことでいっぱいだった。
悲しげな顔をさせてしまった。
傷つけた。
知ろうとしなかった。
所詮ここはゲームの中で、ルークは登場人物の1人でしかない、なんて。
全部わかった気でいたけど、ここは現実。
ルークという人間を、分かろうとしなければならなかった。
『ドレスを着てほしかった』
ふと蘇る、ルークの言葉。
ほんとはヒロインに送るはずだったドレスだって、なんで私に送ったのだろうか。
わからない、わからない、わからない。
私は知らない。何も。
でも、これだけはわかる。
私がここでうじうじしてても答えは出ない。
なら…聞くしかないよね……?
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
翌日
「ねぇ、ユリア」
「はい!お姉様」
「その……ドレス、返してくれる?」
「あ、はい!もちろんですっ!」
「ありがとう」
ドレスを着て。
「…お姉様、何かありましたか?」
「…なんでもないわ」
あなたを知りに行きたい。
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
コンコン。
「入れ」
「失礼します」
書類を片手にソルが静かに入ってくる。
「王太子殿下、そろそろ休まれては如何でしょうか。顔色も良くないですし」
「……」
夜会から数日。
あれからまともに寝れていない。
ルシアはどうしてあんなことを…とずっと考えては嫌な考えがよぎって、それを否定したくてまた考える。
そんなことの繰り返しだった。
「はぁ…執務に何か影響をきたしたらどうするんですか」
「大丈夫だ」
何も大丈夫ではない。が、私事でスケジュールを乱すことはできない。
「はぁ…」
「ため息が多いな」
ソルがこんなに溜息を吐くとは…余程僕が休まないのが気に食わないのか。
「これだから頑固王太子は」
「おい」
誰が頑固だ。
「あなたからも何か言ってくださいよ」
ソルがめんどくさそうに振り返りながら、入ってきた扉の近くに立っていた人影に呼びかける。
なんだ…もう1人いたのか。
つられてそちらの方に視線を移すと。
「……は?」
「お久しぶりです、ルーク王太子殿下」
思わず間抜けな声が出る。
立ち上がり、呆然とその人物を見つめる。
そこに立っていたのは、美しいドレスに身を包んだルシアだった。
いや、そのドレスには見覚えがある。
僕がルシアに送ったドレスだ。
「だいたい、頑固王太子がさらに頑固になったのは貴方のせいなんですからね。しっかり話し合ってください」
「……ごめんなさい」
「………」
いまだに信じられなくて、自分の目を疑ってしまう。
これは幻覚…?幻聴まで聞こえてくる。
寝れなかったことと、あまりにルシアのことを考えすぎたからか?
グルグルと頭が回って整理がつかない。
「王太子殿下、時間は充分にあります。ごゆっくりと」
ソルはそれだけ言い残し、直立不動の僕に向かってにっこりといい笑顔を向け去っていった。
「…あの?」
「……なぜルシアがここに?」
やっと声が出せたが、動揺して声が震えた。
「王太子殿下に話があってきました」
「……そうか。まあ、座れ」
僕も話したいことはたくさんあるが。
今は頭が真っ白だ。
「あの…大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
何も大丈夫ではない(2回目)。
特に何に注目するでもなく、ただぼうっと。
馬車には気づいたら乗ってたし、どうやってここまで来たのかもわからない。
頭の中はルークのことでいっぱいだった。
悲しげな顔をさせてしまった。
傷つけた。
知ろうとしなかった。
所詮ここはゲームの中で、ルークは登場人物の1人でしかない、なんて。
全部わかった気でいたけど、ここは現実。
ルークという人間を、分かろうとしなければならなかった。
『ドレスを着てほしかった』
ふと蘇る、ルークの言葉。
ほんとはヒロインに送るはずだったドレスだって、なんで私に送ったのだろうか。
わからない、わからない、わからない。
私は知らない。何も。
でも、これだけはわかる。
私がここでうじうじしてても答えは出ない。
なら…聞くしかないよね……?
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
翌日
「ねぇ、ユリア」
「はい!お姉様」
「その……ドレス、返してくれる?」
「あ、はい!もちろんですっ!」
「ありがとう」
ドレスを着て。
「…お姉様、何かありましたか?」
「…なんでもないわ」
あなたを知りに行きたい。
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
コンコン。
「入れ」
「失礼します」
書類を片手にソルが静かに入ってくる。
「王太子殿下、そろそろ休まれては如何でしょうか。顔色も良くないですし」
「……」
夜会から数日。
あれからまともに寝れていない。
ルシアはどうしてあんなことを…とずっと考えては嫌な考えがよぎって、それを否定したくてまた考える。
そんなことの繰り返しだった。
「はぁ…執務に何か影響をきたしたらどうするんですか」
「大丈夫だ」
何も大丈夫ではない。が、私事でスケジュールを乱すことはできない。
「はぁ…」
「ため息が多いな」
ソルがこんなに溜息を吐くとは…余程僕が休まないのが気に食わないのか。
「これだから頑固王太子は」
「おい」
誰が頑固だ。
「あなたからも何か言ってくださいよ」
ソルがめんどくさそうに振り返りながら、入ってきた扉の近くに立っていた人影に呼びかける。
なんだ…もう1人いたのか。
つられてそちらの方に視線を移すと。
「……は?」
「お久しぶりです、ルーク王太子殿下」
思わず間抜けな声が出る。
立ち上がり、呆然とその人物を見つめる。
そこに立っていたのは、美しいドレスに身を包んだルシアだった。
いや、そのドレスには見覚えがある。
僕がルシアに送ったドレスだ。
「だいたい、頑固王太子がさらに頑固になったのは貴方のせいなんですからね。しっかり話し合ってください」
「……ごめんなさい」
「………」
いまだに信じられなくて、自分の目を疑ってしまう。
これは幻覚…?幻聴まで聞こえてくる。
寝れなかったことと、あまりにルシアのことを考えすぎたからか?
グルグルと頭が回って整理がつかない。
「王太子殿下、時間は充分にあります。ごゆっくりと」
ソルはそれだけ言い残し、直立不動の僕に向かってにっこりといい笑顔を向け去っていった。
「…あの?」
「……なぜルシアがここに?」
やっと声が出せたが、動揺して声が震えた。
「王太子殿下に話があってきました」
「……そうか。まあ、座れ」
僕も話したいことはたくさんあるが。
今は頭が真っ白だ。
「あの…大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
何も大丈夫ではない(2回目)。
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頑張ってください。お気に入り登録しました!
あらすじ的に、好きな展開になりそうな予感がしました。
楽しみにさせていただきます。
レイ様、ありがとうございます!
始めたばかりで、まだまだ未熟ですが、頑張らせていただきたいと思います。
これからも、ぜひ私が書いた本を読んでいただけると嬉しいです。
本当に、素敵な感想ありがとうございました!!