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弁護士ヒーローは法を武器とする
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「でも、会社の第一線を走る者として自信を持たなくちゃいけないんだって、わたしはみなさんに教わりました」
自信を持つことは良いことだ。
すると三宅は寂しそうに笑った。
「例えば化粧を褒められれば、この口紅つけてるわたし綺麗でしょって思ってたの。
あなたのように、季節と肌のバランスを考え、どの肌色にどの発色が映えるか。どんな思いでそれを準備したかなんて伝えたことないの。
それを説明しだした旭川さんを見たときに、愕然とした。あ、わたしにないものはこれだって」
「それはわたしが研究者だったからですよ。マニアックだって言われます」
「うん。でもわたしは、製品に誇りをもっていたわけじゃない。完璧なマネキンであればいいと思ってたのは確かなの。
吾妻副社長は、ベクトル向ける方向を間違ってるぞって言いたかったんだと思う」
お説教かと思っていたのに、なんともむず痒い時間となった。
「わ、わたしうれしいです。ポンコツなのはわかってるけど、自信を持って良い部分もあるんだって思えて。明日からまた頑張ります」
あのまま研究だけやっていたら、視野が狭くなっていたように思う。誰がどの部署で、どんな思いで仕事をしているのか知ることがなかった。
ラボに戻りたい気持ちはかわらないけれど、ここの経験を無駄にしないようにして、成長して戻りたい。
「ちょっと褒めたからって、調子に乗らないでよ? 旭川さんはまだまだ失敗も多いし、秘書とはどんなものかをまったくわかっていないんだから」
そこからはしばらく説教にかわってしまう。
「あと、気になってたんだけど、間宮さんとどうなってるの?」
「ごふっ……ゴホッゴホッゴホッ」
いきなり特大の爆弾が被弾した。
サンチュに巻いた肉を、大口開けて食べていた文は噎せてしまう。
「わ、汚いでしょ。ちょっと、ふきん持って」
「っす、ずみまぜ……」
「なあに? そんなに焦ること?」
焦るというかなんというか。いったい全体どこまで知っての質問なのだろう。
悩んだ末に、この人なら口が堅いと思い聞いてしまう。
文はジョッキに半分残っていたウーロン茶を一気飲みすると、テーブルに勢いよく置いた。
「っあ、あの……どこまでご存じなんですか?」
「こっちが聞いてるんだけど」
(……う……)
もったいぶるなという圧力に観念する。
「い、いや、あの、こん、やく……しゃ……?」
「婚約者?!」
三宅の声に、隣の席のサラリーマンが振り向く。
「しーしー」
会社でもないのに、慌てて三宅の口を塞ぐ。
「駄目です。わたしもよくわからないんです。内緒にしてください」
「どういうこと?」
「えっと、間宮さんと付き合ってたらしいんですけど、記憶がなくて。その、階段から落ちたとき、頭を打っていて……彼のことだけ思い出せないんです」
毎日毎日、何度考えても駄目なのだ。
考えすぎて頭痛がしてくるほど。
自然に思い出すから、思い詰めては駄目だと言われてはいるが、そんなわけにもいかない。
「うそでしょ。記憶障害ってこと? でも、仕事も覚えてるし、わたしのことも分かるじゃない。間宮さんだけどうして?」
「間宮さんのことも覚えてます。ただ、付き合っていた記憶がないだけでーー……」
「ぶっ……」
こんどは三宅がお酒を含んだまま噎せた。
自信を持つことは良いことだ。
すると三宅は寂しそうに笑った。
「例えば化粧を褒められれば、この口紅つけてるわたし綺麗でしょって思ってたの。
あなたのように、季節と肌のバランスを考え、どの肌色にどの発色が映えるか。どんな思いでそれを準備したかなんて伝えたことないの。
それを説明しだした旭川さんを見たときに、愕然とした。あ、わたしにないものはこれだって」
「それはわたしが研究者だったからですよ。マニアックだって言われます」
「うん。でもわたしは、製品に誇りをもっていたわけじゃない。完璧なマネキンであればいいと思ってたのは確かなの。
吾妻副社長は、ベクトル向ける方向を間違ってるぞって言いたかったんだと思う」
お説教かと思っていたのに、なんともむず痒い時間となった。
「わ、わたしうれしいです。ポンコツなのはわかってるけど、自信を持って良い部分もあるんだって思えて。明日からまた頑張ります」
あのまま研究だけやっていたら、視野が狭くなっていたように思う。誰がどの部署で、どんな思いで仕事をしているのか知ることがなかった。
ラボに戻りたい気持ちはかわらないけれど、ここの経験を無駄にしないようにして、成長して戻りたい。
「ちょっと褒めたからって、調子に乗らないでよ? 旭川さんはまだまだ失敗も多いし、秘書とはどんなものかをまったくわかっていないんだから」
そこからはしばらく説教にかわってしまう。
「あと、気になってたんだけど、間宮さんとどうなってるの?」
「ごふっ……ゴホッゴホッゴホッ」
いきなり特大の爆弾が被弾した。
サンチュに巻いた肉を、大口開けて食べていた文は噎せてしまう。
「わ、汚いでしょ。ちょっと、ふきん持って」
「っす、ずみまぜ……」
「なあに? そんなに焦ること?」
焦るというかなんというか。いったい全体どこまで知っての質問なのだろう。
悩んだ末に、この人なら口が堅いと思い聞いてしまう。
文はジョッキに半分残っていたウーロン茶を一気飲みすると、テーブルに勢いよく置いた。
「っあ、あの……どこまでご存じなんですか?」
「こっちが聞いてるんだけど」
(……う……)
もったいぶるなという圧力に観念する。
「い、いや、あの、こん、やく……しゃ……?」
「婚約者?!」
三宅の声に、隣の席のサラリーマンが振り向く。
「しーしー」
会社でもないのに、慌てて三宅の口を塞ぐ。
「駄目です。わたしもよくわからないんです。内緒にしてください」
「どういうこと?」
「えっと、間宮さんと付き合ってたらしいんですけど、記憶がなくて。その、階段から落ちたとき、頭を打っていて……彼のことだけ思い出せないんです」
毎日毎日、何度考えても駄目なのだ。
考えすぎて頭痛がしてくるほど。
自然に思い出すから、思い詰めては駄目だと言われてはいるが、そんなわけにもいかない。
「うそでしょ。記憶障害ってこと? でも、仕事も覚えてるし、わたしのことも分かるじゃない。間宮さんだけどうして?」
「間宮さんのことも覚えてます。ただ、付き合っていた記憶がないだけでーー……」
「ぶっ……」
こんどは三宅がお酒を含んだまま噎せた。
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