32 / 49
32.ひっくり返るのは石だけでいい
しおりを挟む
春の陽光に満ちた王宮庭園は、芽吹いたばかりの若葉と色とりどりの花々に彩られ、やわらかな香りが風に溶けていた。
その奥、蔦と白い柱に囲まれた優雅なカゼボへと案内される。
「よく来たわね、アイラ。待っていたわ」
「お招きいただきましてありがとうございます、王太子妃殿下。そして、ご挨拶します、アーガントン侯爵夫人」
礼をとると、ーブルを挟んで、王太子妃殿下とアーガントン侯爵夫人の穏やかな微笑みが返ってきた。
「記憶がないと聞いたわ。“はじめまして”でいいのかしら。私は、ミレイユ・アーガントンよ」
「はじめまして。アーガントン侯爵夫人。アイラ・ウェストレイと申します」
互いに形式的な挨拶を交わしたところで、王太子妃殿下が楽しげに手を打つ。
「さぁ、堅苦しい挨拶はもういいでしょう? みんなでお茶にしましょう」
合図を受け、侍女たちが静かに近づき、繊細な手つきでカップにハーブティーを注いでいく。湯気とともに、ほのかに爽やかな香りが広がった。
「まぁおいしいわね。私、ハーブティーはそんなに得意ではなかったけれど、これはいけるわ」
「今まで私に合わせて無理して飲んでいたものね。ふふふ」
軽やかな笑いが、カゼボの中に柔らかく弾む。
「これは伯爵家の商会で取り扱っているのかしら?」
カップをもったまま、アーガントン侯爵夫人が尋ねる。
「ええ、そうです。おかげさまで王太子妃殿下御用達という話が広がり、商会の規模も大きくなりました」
もともと二人きりで切り盛りしていた商会は、仕入れと販売だけでは手が回らなくなり、ついに人を雇うことになった。急な忙しさにミガルは文句を言っていたが、その表情はどこか嬉しそうだったのを思い出す。
「新作、楽しみにしているわ」
王太子妃殿下の声に、気が引きしまる。
「もちろん誰よりも早くお届けいたします。ブレンドティーではございませんが、こちら、王太子妃殿下へお持ちした新商品です」
用意してきた包みをメリッサから受け取り差し出すと、殿下は興味深そうに身を乗り出した。
「何かしら? 香りはブレンドティーのようだけれど」
「はい、ハーブの入浴剤でございます」
「ハーブの入浴剤?」
意外そうに目を瞬かせる。
「ですので、味ではなく効能にこだわりました。効能は、こちらの用紙にまとめておきましたので、後でご覧ください」
「ハーブティーの中につかるイメージなのね。入浴剤、その発想はなかったわ。あなた面白いこと考えるのね」
感心したように頷いたあと、殿下は微笑んだ。すると、アーガントン侯爵夫人が前のめりで話し出す。
「いいわね。それ。私にもお願いしたいわ。そうだ! あなた私のために手土産を作ったんですって? 早速出していただこうかしら」
「まあ、ミレイユ。手土産を自分で催促するなんて淑女のすることじゃありませんわ。それに、アイラは、あなたのためにリバーシを特訓してきたのだから、まず、やってあげて?」
ええ、練習は、王太子妃殿下の助言でしたけど、やらなくてよいのであればやりたくない、とは言わない。
「それもそうね。アイラ、間違ってもわざと負けようなんてしないことね。私そういうのすぐわかっちゃうんだから」
――なんですって!?
ギリギリで負ける練習をしてきたというのに、これは手を抜けそうにない。小さく息をつく。
やがて侍女が盤と石を運び、テーブルの上にリバーシが整えられる。向かい合う私たちを、王太子妃殿下は少し離れた位置から楽しげに覗き込んでいた。
「さあ、やりましょう」
静かに対戦が始まる。
「そうだわ、アイラ。日記には、私のことも書いていて?」
アーガントン侯爵夫人の不意の言葉に、指先が一瞬止まる。
日記?
「ほら、オリヴィエットに、日記を読んで、過去を少し理解しているって言ったのでしょう?」
そうだった。確かに言った。私的の場ではオリヴィエットと呼んでいらっしゃるのね、王太子妃殿下のことを。やはり仲がいい。
確かに、アーガントン侯爵夫人のことは書いていた。書いてはいたが、どう説明すればいいのか言葉に詰まる。
「ふふふ、そんな顔しなくていいわ。私があなたに厳しく当たったと言うような内容が書いてあったでしょう?」
軽い調子とは裏腹に、核心を突かれ、息を呑む。会話を続けながらも、盤上では容赦なく石が返されていく。
「お聞きしてもよろしいでしょうか? 日記には、マナーやダンスなどをお教えくださったと書いてありましたが、なぜでしょうか?」
少し考えるように視線を上げ、アーガントン侯爵夫人は肩の力を抜いた。
「ええ、特に意地悪のつもりはなかったのよ? あなた何度言ってもセルジュに近づこうとするし、そうであれば、私たちの周りに常にマナーのなってない令嬢がいるというのはちょっとね。簡潔に言うと、見ていて我慢できなかっただけ」
なるほど。目障りではあるけれど、近くにいるなら最低限礼儀をきちんとしろ、そういうことだったのだろう。
「私、友人たちに教え方がうまいって言われていたのよ? なのに、“ララ”は何にも変わらなかった。だから、結構早めに諦めちゃったの」
ああ、なるほど。そんなことが書いてあった。
盤面を見つめながら、日記の内容と今の話が、静かに重なっていくのを感じていた。
「それはお手数おかけして、申し訳ありません」
「いいのよ。私が諦めたら、なぜか“ララ”もセルジュを諦めてね。結局“ララ”は、私のそばからいなくなったの。何だったのかしら?」
過去を回想するその口調はどこか楽しげで、余裕すら感じさせた。
「まぁ忘れたの? その後、コリン・ライクスバートに近づいたじゃない」
「そうだったわ。ディアーヌが怒り狂っていたわね。思い出した」
二人の軽やかに交わされる言葉の端々に、当事者にしか分からない因縁が滲む。
ディアーヌ・ライクスバート様が、怒り狂っていた!?
内心で反芻したその言葉に、血の気が引く。
「アイラ、そんなに青い顔しないで。少なくても、私は今のマナーがよく、私とリバーシを良い勝負するあなたのことが気に入ったわ。はい、これで終わり。勝ったわ」
盤上に置かれた最後の一手。柔らかな微笑みとともに流れるように告げられた宣言は、あまりにも自然だった。
その奥、蔦と白い柱に囲まれた優雅なカゼボへと案内される。
「よく来たわね、アイラ。待っていたわ」
「お招きいただきましてありがとうございます、王太子妃殿下。そして、ご挨拶します、アーガントン侯爵夫人」
礼をとると、ーブルを挟んで、王太子妃殿下とアーガントン侯爵夫人の穏やかな微笑みが返ってきた。
「記憶がないと聞いたわ。“はじめまして”でいいのかしら。私は、ミレイユ・アーガントンよ」
「はじめまして。アーガントン侯爵夫人。アイラ・ウェストレイと申します」
互いに形式的な挨拶を交わしたところで、王太子妃殿下が楽しげに手を打つ。
「さぁ、堅苦しい挨拶はもういいでしょう? みんなでお茶にしましょう」
合図を受け、侍女たちが静かに近づき、繊細な手つきでカップにハーブティーを注いでいく。湯気とともに、ほのかに爽やかな香りが広がった。
「まぁおいしいわね。私、ハーブティーはそんなに得意ではなかったけれど、これはいけるわ」
「今まで私に合わせて無理して飲んでいたものね。ふふふ」
軽やかな笑いが、カゼボの中に柔らかく弾む。
「これは伯爵家の商会で取り扱っているのかしら?」
カップをもったまま、アーガントン侯爵夫人が尋ねる。
「ええ、そうです。おかげさまで王太子妃殿下御用達という話が広がり、商会の規模も大きくなりました」
もともと二人きりで切り盛りしていた商会は、仕入れと販売だけでは手が回らなくなり、ついに人を雇うことになった。急な忙しさにミガルは文句を言っていたが、その表情はどこか嬉しそうだったのを思い出す。
「新作、楽しみにしているわ」
王太子妃殿下の声に、気が引きしまる。
「もちろん誰よりも早くお届けいたします。ブレンドティーではございませんが、こちら、王太子妃殿下へお持ちした新商品です」
用意してきた包みをメリッサから受け取り差し出すと、殿下は興味深そうに身を乗り出した。
「何かしら? 香りはブレンドティーのようだけれど」
「はい、ハーブの入浴剤でございます」
「ハーブの入浴剤?」
意外そうに目を瞬かせる。
「ですので、味ではなく効能にこだわりました。効能は、こちらの用紙にまとめておきましたので、後でご覧ください」
「ハーブティーの中につかるイメージなのね。入浴剤、その発想はなかったわ。あなた面白いこと考えるのね」
感心したように頷いたあと、殿下は微笑んだ。すると、アーガントン侯爵夫人が前のめりで話し出す。
「いいわね。それ。私にもお願いしたいわ。そうだ! あなた私のために手土産を作ったんですって? 早速出していただこうかしら」
「まあ、ミレイユ。手土産を自分で催促するなんて淑女のすることじゃありませんわ。それに、アイラは、あなたのためにリバーシを特訓してきたのだから、まず、やってあげて?」
ええ、練習は、王太子妃殿下の助言でしたけど、やらなくてよいのであればやりたくない、とは言わない。
「それもそうね。アイラ、間違ってもわざと負けようなんてしないことね。私そういうのすぐわかっちゃうんだから」
――なんですって!?
ギリギリで負ける練習をしてきたというのに、これは手を抜けそうにない。小さく息をつく。
やがて侍女が盤と石を運び、テーブルの上にリバーシが整えられる。向かい合う私たちを、王太子妃殿下は少し離れた位置から楽しげに覗き込んでいた。
「さあ、やりましょう」
静かに対戦が始まる。
「そうだわ、アイラ。日記には、私のことも書いていて?」
アーガントン侯爵夫人の不意の言葉に、指先が一瞬止まる。
日記?
「ほら、オリヴィエットに、日記を読んで、過去を少し理解しているって言ったのでしょう?」
そうだった。確かに言った。私的の場ではオリヴィエットと呼んでいらっしゃるのね、王太子妃殿下のことを。やはり仲がいい。
確かに、アーガントン侯爵夫人のことは書いていた。書いてはいたが、どう説明すればいいのか言葉に詰まる。
「ふふふ、そんな顔しなくていいわ。私があなたに厳しく当たったと言うような内容が書いてあったでしょう?」
軽い調子とは裏腹に、核心を突かれ、息を呑む。会話を続けながらも、盤上では容赦なく石が返されていく。
「お聞きしてもよろしいでしょうか? 日記には、マナーやダンスなどをお教えくださったと書いてありましたが、なぜでしょうか?」
少し考えるように視線を上げ、アーガントン侯爵夫人は肩の力を抜いた。
「ええ、特に意地悪のつもりはなかったのよ? あなた何度言ってもセルジュに近づこうとするし、そうであれば、私たちの周りに常にマナーのなってない令嬢がいるというのはちょっとね。簡潔に言うと、見ていて我慢できなかっただけ」
なるほど。目障りではあるけれど、近くにいるなら最低限礼儀をきちんとしろ、そういうことだったのだろう。
「私、友人たちに教え方がうまいって言われていたのよ? なのに、“ララ”は何にも変わらなかった。だから、結構早めに諦めちゃったの」
ああ、なるほど。そんなことが書いてあった。
盤面を見つめながら、日記の内容と今の話が、静かに重なっていくのを感じていた。
「それはお手数おかけして、申し訳ありません」
「いいのよ。私が諦めたら、なぜか“ララ”もセルジュを諦めてね。結局“ララ”は、私のそばからいなくなったの。何だったのかしら?」
過去を回想するその口調はどこか楽しげで、余裕すら感じさせた。
「まぁ忘れたの? その後、コリン・ライクスバートに近づいたじゃない」
「そうだったわ。ディアーヌが怒り狂っていたわね。思い出した」
二人の軽やかに交わされる言葉の端々に、当事者にしか分からない因縁が滲む。
ディアーヌ・ライクスバート様が、怒り狂っていた!?
内心で反芻したその言葉に、血の気が引く。
「アイラ、そんなに青い顔しないで。少なくても、私は今のマナーがよく、私とリバーシを良い勝負するあなたのことが気に入ったわ。はい、これで終わり。勝ったわ」
盤上に置かれた最後の一手。柔らかな微笑みとともに流れるように告げられた宣言は、あまりにも自然だった。
1,031
あなたにおすすめの小説
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる