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28.幸福への執念 sideサラ
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sideサラ
「つまり、失敗して、王太子殿下が捕らえられた、そういうこと?」
「そうです」
宰相の静かな一言が落ちた。
「やっぱり……!」
衝動のまま、椅子を押しのけて立ち上がっていた。
隷属の腕輪って何よ!
「言った通りじゃない! 言うことを聞かせて、あの女を妃にしようとしていたんでしょ? こんなの、裏切りよ!」
苛立ちで、胸が焼けつくように痛む。
「私も同行していれば――」
王太子のそばにいられたなら、愚行を止められたかもしれない。
だが、宰相は冷水を浴びせるように言い捨てた。
「もしもの話は無駄です」
私は唇をきつく噛む。
宰相は短く息を吐いた。
「では、これからの話をいたしましょう。民が消えた件はご存じですね?」
「ええ。王宮中その噂でもちきりよ。知らないわけないじゃない」
「その通りです。国王陛下は、この件の交渉の場に、あなたも出席なさるよう命じておられます」
「……私も?」
ほら、見なさい。私が必要なんでしょう?
王太子を取り戻す、それ以外に、選ぶ道なんてない。あの女に奪われたまま、終わらせられるはずがない。
宰相はわずかに目を細め、私の顔をまっすぐ見つめた。
「“ルシアーナ様が民心を操り、無理やり殿下を連れ去った”と、そのように説明したいのです」
「つまり聞こえた。私がそう証言すればいいのね?」
「ええ。力を使って操る声が聞こえたと、そうおっしゃってください」
窓辺から差し込む光が薄く揺れ、部屋の影が長く伸びる。私はゆっくりと頷いた。
罪と策略の境界線なんて、とっくに曖昧になっている。
「……わかったわ」
短く答えると、宰相、いや、今は“父”と呼ぶべき人は口の端をかすかに上げた。
「頼みましたよ、女神の使徒様」
その呼び方に、悪意を感じる。
バタン、と扉が重たく閉じた。
遠ざかっていく足音。残されたのは、沈黙だけ。
「……ほんと、嫌みなお父様」
吐き捨てた声は自分でも驚くほど弱々しく響いた。
私は鏡台の前に腰を下ろす。
窓から差す光が髪に落ちる。陽に照らされると、この髪も、瞳も、茶色がかって見る。
ため息とともにカーテンを引いた。薄暗い闇に閉ざされると、少しだけ心が静まる気がした。
「……もっと、目も髪も黒かったらよかったのに」
ぽつりと落ちた言葉は、誰に届くわけでもない。
鏡の中の私は、知らない誰かの顔をしていた。
*****
異世界。そんなものどこにあるのかも知らない。
物心ついた頃には、私は王都の路地裏にいた。崩れかけた建物の影で、子どもたちと肩を寄せ合って暮らしていた。
手伝いをして、誰かが貰ってきたパンを分け合って、ただ「今日」を生きることだけを考えていた日々。
そのころ、よく髪をなでてくれたのがベスお姉ちゃんだった。血のつながりなんてなかったけれど、家族みたいな、あたたかい人だった。
「エリーの髪、女神の使徒様とそっくりな色だよ。きっと、いいことがあるよ」
ベスお姉ちゃんはそう言いながら、私の髪をそっと撫でて笑っていた。
「女神の使徒って、何?」
幼い私は首をかしげる。お姉ちゃんは少しだけ目を細め、遠くの空を見上げるように言った。
「あら、知らなかったの? サラ様って言うんだよ。黒い髪と黒い目を持つ方でね。ここの世界じゃなくて、もっともっと遠い、空の向こうから来たんだって」
「でも私の髪も目も、日に当たると茶色よ?」
「当たらなければ黒よ。もしかしたら、子孫かもしれないわ」
黒い髪。黒い瞳。
それは、“特別”の印。淡い希望だった。
サラ様が語ったという不思議な物語。彼女が現れたという泉の場所。
ベスお姉ちゃんが話してくれたその物語を、私は何度もせがんで聞いた。覚えてしまうほどに、何度も。
それだけが希望に思えたから。
しかし、やがて王都に疫病が広がった。
噂を聞いてから三日もしないうちに路地裏の子どもたちも次々と倒れていった。息がうまく吸えないまま、静かに、儚く、確実に命が消えていく。
ベスお姉ちゃんも――。
「エリー、これを」
顔色の悪いベスお姉ちゃんの枕元から差し出されたのは、小さな布袋。中で硬貨が控えめに触れ合う音がした。
「これは?」
「少ししかないけど、あなたにあげるわ」
「え? 駄目よ、それはベスお姉ちゃんが、お店を開くために貯めていたお金でしょ?」
「全然足りないけどね」
ベスお姉ちゃんは弱い声で笑った。その笑顔があまりにも優しくて、胸が締めつけられた。
突き返そうとしても、震える手が力なく、しかし必死に押し戻してくる。
もう動くことさえつらいはずなのに、どうして、こんなに力強いの。
「お店を開きたいっていうよりね、あなたと、もっと幸せに暮らしたかったの」
「そんなこと言わないで。これから一緒に幸せに――」
「私の分の幸せも、あなたに託すわ」
その言葉が、最後になった。
その夜、ベスお姉ちゃんは静かに息を引き取った。
叫ぶ声も涙も出なかった。
ただ空っぽの心のまま、朝日が昇る前に日当たりのよい丘に行き、穴を掘り、ベスお姉ちゃんを埋めた。
――世界が、音を失った。
その夜、私自身にも熱が出た。
頭が割れるように痛む。息をするたび胸が焼ける。それでも、倒れてなんていられなかった。
ここでは絶対に死ねない。
こんな終わり、ベスお姉ちゃんが望むはずがない。幸せを託されたのだから。
「私は……絶対に、死なない」
震える足を引きずり、古着屋へ向かった。
安物のワンピースを買い、桶の水で体を拭いて、髪を梳かした。
そして、夜の王都を、月明かりだけを頼りに歩く。
視界がにじみ、足元もおぼつかない。それでも、止まることだけはできなかった。
そして、たどり着いた。泉。
“異世界のサラ様”が現れたという神聖な場所。
誰もいない静寂の中、月の光が水面を白く揺らしている。
「明日か……あさってか……」
自分の声が掠れていて、かすかに震えていた。
運があるなら誰かが見つけてくれる。
運がなければ、ここで終わる。
私は祈るように瞼を閉じて、そっと、意識をすべてを手放した。
運命は、まだ私を見捨てていなかった。
通りかかった旅人が私を見つけ、王都の医師に運び込んでくれた。
目を覚ましたとき、見知らぬ天蓋が目の前にあった。
やがて私は、「異世界の女神の使徒」と呼ばれるようになった。
誰もが信じた。
文字も読めず、礼儀も知らなかった私ですら、「異世界の女神の使徒」その一言ですべてが許された。
宰相、後に私の父となる男は、笑って言った。
「君に、必要なものはすべて与えよう」
望めば教師が付き、綺麗な服を与えられ、居場所まで用意された。女神の使徒の紋章でさえも。
私は願い、この1年、血のにじむような思いで、字を覚え、貴族の作法を叩き込んだ。
けれど、所詮は仮初。何もかもがまだ足りない。すぐにぼろが出る。
鏡に映る“私”は、誰かを演じている偽物だ。
――それでも。
私は、もう戻らない。嘘でも構わない。
たとえ泥の上に築かれた幸福でも、生きるためなら掴む。だから、王太子は取り戻す。それが、私の幸せに必要だから。
「私は、幸せにならなければならないの」
その呟きは、静かな部屋にゆっくりと染みこんでいった。自分で発した言葉は、祈りのようでもあり、呪いのようでもあった。
「つまり、失敗して、王太子殿下が捕らえられた、そういうこと?」
「そうです」
宰相の静かな一言が落ちた。
「やっぱり……!」
衝動のまま、椅子を押しのけて立ち上がっていた。
隷属の腕輪って何よ!
「言った通りじゃない! 言うことを聞かせて、あの女を妃にしようとしていたんでしょ? こんなの、裏切りよ!」
苛立ちで、胸が焼けつくように痛む。
「私も同行していれば――」
王太子のそばにいられたなら、愚行を止められたかもしれない。
だが、宰相は冷水を浴びせるように言い捨てた。
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私は唇をきつく噛む。
宰相は短く息を吐いた。
「では、これからの話をいたしましょう。民が消えた件はご存じですね?」
「ええ。王宮中その噂でもちきりよ。知らないわけないじゃない」
「その通りです。国王陛下は、この件の交渉の場に、あなたも出席なさるよう命じておられます」
「……私も?」
ほら、見なさい。私が必要なんでしょう?
王太子を取り戻す、それ以外に、選ぶ道なんてない。あの女に奪われたまま、終わらせられるはずがない。
宰相はわずかに目を細め、私の顔をまっすぐ見つめた。
「“ルシアーナ様が民心を操り、無理やり殿下を連れ去った”と、そのように説明したいのです」
「つまり聞こえた。私がそう証言すればいいのね?」
「ええ。力を使って操る声が聞こえたと、そうおっしゃってください」
窓辺から差し込む光が薄く揺れ、部屋の影が長く伸びる。私はゆっくりと頷いた。
罪と策略の境界線なんて、とっくに曖昧になっている。
「……わかったわ」
短く答えると、宰相、いや、今は“父”と呼ぶべき人は口の端をかすかに上げた。
「頼みましたよ、女神の使徒様」
その呼び方に、悪意を感じる。
バタン、と扉が重たく閉じた。
遠ざかっていく足音。残されたのは、沈黙だけ。
「……ほんと、嫌みなお父様」
吐き捨てた声は自分でも驚くほど弱々しく響いた。
私は鏡台の前に腰を下ろす。
窓から差す光が髪に落ちる。陽に照らされると、この髪も、瞳も、茶色がかって見る。
ため息とともにカーテンを引いた。薄暗い闇に閉ざされると、少しだけ心が静まる気がした。
「……もっと、目も髪も黒かったらよかったのに」
ぽつりと落ちた言葉は、誰に届くわけでもない。
鏡の中の私は、知らない誰かの顔をしていた。
*****
異世界。そんなものどこにあるのかも知らない。
物心ついた頃には、私は王都の路地裏にいた。崩れかけた建物の影で、子どもたちと肩を寄せ合って暮らしていた。
手伝いをして、誰かが貰ってきたパンを分け合って、ただ「今日」を生きることだけを考えていた日々。
そのころ、よく髪をなでてくれたのがベスお姉ちゃんだった。血のつながりなんてなかったけれど、家族みたいな、あたたかい人だった。
「エリーの髪、女神の使徒様とそっくりな色だよ。きっと、いいことがあるよ」
ベスお姉ちゃんはそう言いながら、私の髪をそっと撫でて笑っていた。
「女神の使徒って、何?」
幼い私は首をかしげる。お姉ちゃんは少しだけ目を細め、遠くの空を見上げるように言った。
「あら、知らなかったの? サラ様って言うんだよ。黒い髪と黒い目を持つ方でね。ここの世界じゃなくて、もっともっと遠い、空の向こうから来たんだって」
「でも私の髪も目も、日に当たると茶色よ?」
「当たらなければ黒よ。もしかしたら、子孫かもしれないわ」
黒い髪。黒い瞳。
それは、“特別”の印。淡い希望だった。
サラ様が語ったという不思議な物語。彼女が現れたという泉の場所。
ベスお姉ちゃんが話してくれたその物語を、私は何度もせがんで聞いた。覚えてしまうほどに、何度も。
それだけが希望に思えたから。
しかし、やがて王都に疫病が広がった。
噂を聞いてから三日もしないうちに路地裏の子どもたちも次々と倒れていった。息がうまく吸えないまま、静かに、儚く、確実に命が消えていく。
ベスお姉ちゃんも――。
「エリー、これを」
顔色の悪いベスお姉ちゃんの枕元から差し出されたのは、小さな布袋。中で硬貨が控えめに触れ合う音がした。
「これは?」
「少ししかないけど、あなたにあげるわ」
「え? 駄目よ、それはベスお姉ちゃんが、お店を開くために貯めていたお金でしょ?」
「全然足りないけどね」
ベスお姉ちゃんは弱い声で笑った。その笑顔があまりにも優しくて、胸が締めつけられた。
突き返そうとしても、震える手が力なく、しかし必死に押し戻してくる。
もう動くことさえつらいはずなのに、どうして、こんなに力強いの。
「お店を開きたいっていうよりね、あなたと、もっと幸せに暮らしたかったの」
「そんなこと言わないで。これから一緒に幸せに――」
「私の分の幸せも、あなたに託すわ」
その言葉が、最後になった。
その夜、ベスお姉ちゃんは静かに息を引き取った。
叫ぶ声も涙も出なかった。
ただ空っぽの心のまま、朝日が昇る前に日当たりのよい丘に行き、穴を掘り、ベスお姉ちゃんを埋めた。
――世界が、音を失った。
その夜、私自身にも熱が出た。
頭が割れるように痛む。息をするたび胸が焼ける。それでも、倒れてなんていられなかった。
ここでは絶対に死ねない。
こんな終わり、ベスお姉ちゃんが望むはずがない。幸せを託されたのだから。
「私は……絶対に、死なない」
震える足を引きずり、古着屋へ向かった。
安物のワンピースを買い、桶の水で体を拭いて、髪を梳かした。
そして、夜の王都を、月明かりだけを頼りに歩く。
視界がにじみ、足元もおぼつかない。それでも、止まることだけはできなかった。
そして、たどり着いた。泉。
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誰もいない静寂の中、月の光が水面を白く揺らしている。
「明日か……あさってか……」
自分の声が掠れていて、かすかに震えていた。
運があるなら誰かが見つけてくれる。
運がなければ、ここで終わる。
私は祈るように瞼を閉じて、そっと、意識をすべてを手放した。
運命は、まだ私を見捨てていなかった。
通りかかった旅人が私を見つけ、王都の医師に運び込んでくれた。
目を覚ましたとき、見知らぬ天蓋が目の前にあった。
やがて私は、「異世界の女神の使徒」と呼ばれるようになった。
誰もが信じた。
文字も読めず、礼儀も知らなかった私ですら、「異世界の女神の使徒」その一言ですべてが許された。
宰相、後に私の父となる男は、笑って言った。
「君に、必要なものはすべて与えよう」
望めば教師が付き、綺麗な服を与えられ、居場所まで用意された。女神の使徒の紋章でさえも。
私は願い、この1年、血のにじむような思いで、字を覚え、貴族の作法を叩き込んだ。
けれど、所詮は仮初。何もかもがまだ足りない。すぐにぼろが出る。
鏡に映る“私”は、誰かを演じている偽物だ。
――それでも。
私は、もう戻らない。嘘でも構わない。
たとえ泥の上に築かれた幸福でも、生きるためなら掴む。だから、王太子は取り戻す。それが、私の幸せに必要だから。
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