魂を紡ぐもの

0章

出会い

人間、いやこの場合だと動植物も含まれるが。大雑把に分けると２種類になると俺は思っている。例えば死んでいるか生きているか。好かれているかそうでないか。平凡かそうでないか。まぁ、対極する言葉を紡いだらいくらでも２種類に分けられる。
　なら俺はどうか。多分だが平凡でどこにでもいる様な高校生なはずだ。なぜ多分か？俺だって１００％平凡だって言い切りたい。だがどうしても言い切れない部分がある。宇宙人にさらわれた経験も無ければ幽霊を見たことも無い。ましてや天使や悪魔出会った事ももちろんないと言いたい。ならそうはっきりと言えと思うだろ？それが言い切れない場面に出くわしてしまっているのだ。
「頼む。もう１度説明してくれ」
「そんなに難しいことは言ってないのですが仕方ありません。よく聞いて下さい。貴方、山海大地(サンカイダイチ)はすでに死んでいます。そして私たちの手伝いをしてください」
 髪はボサボサで肩に付きそうなくらいの長さで片目は完全に隠れている男が言う。
「……もう１度」
「はぁ。これで何回目ですか」
「いいから説明してくれ」
「貴方山海大地は死んでいます。そして私達の手伝いをして下さい」
「……もう１度」
「何度言っても現実は変わりませんよ？理解したくない気持ちは分かりますが」
「うるせぇ！なんで俺が死ななきゃならないんだ！！」
そう。俺は死んだのだ。しかも記憶喪失に近い状態というおまけ付きで。
時は少し遡る。
 俺はいつも通り目を覚ました。何も変わらない日常が始まる。多少憂鬱な日常が。ただ今日は少し、いや大分違っていた。まず目に入ったのは天井。そしてベッド。扉。窓。全てが初めて見る光景だった。
「ここ…どこだ」
　思わず呟いてしまう。こういう時はどうしたらいいのか分からない。友達に聞きたくても携帯は手元に無いし、仮に聞けたとしてもうまく説明できそうにない。説明できたとしてもだ。目を覚ませとか馬鹿じゃねとかググれとか言われるのがオチだ。まあそもそもそんな連絡が出来る友達がいないのだが…。そこ！寂しいやつとか思うなよ。
「とりあえず動くか」
　ベッドから降り、扉に向かう。こういう時動かないのが得策だったりするのか。いやでも動かないと何も変わらないしとか思いながら扉の前に立つ。
「開けたら崖の上とかだったりして」
　そんなことを言いながら扉を押したら
　ドン！！
　鈍い音が響き
「いったぁぁぁい！！」
　女の子の声が響いた。
「え！？ご、ゴメンなさい！」
　思わず謝り、声のするほうを見た。そこには男の９５％は街で出会ったらおもわず２度振り返りそうな美少女が涙目で頭を押さえている。残りの５％はあれだ。分かるだろ。いちいち言わなくても。髪は朱色のメッシュが入って長さは肩の辺りまで伸びている。なによりも目がいってしまうのは胸から腰のラインだ。エロ本の表紙やパッケージに騙された！っていう経験はないだろうか。あるやつならすぐに分かる。そのパッケージのまんまの美少女なのだ。
　なのだが…１個だけ問題がある。
「変態かっ！！」
「え！？なに！？」
「服！なんで服着てないんですか！！」
　そう。この美少女は服を着ていない。目を反らすべきなのか見ていていいものなのか悩んでいると
「服？あぁこれはね」
　自分の体を触りながら少女は言う。
「これは？」
「馬鹿には見えない服を着ているから大丈夫」
「んなわけあるか！！」
　何なんだこの人は！会ったことも無い人間に裸は見せるは人のことを馬鹿呼ばわりするし！ってかなんでこの人裸なんだよ…。
「まったく…なかなか起きないから心配で見に来たらこんな目に合うなんて」
「どういう事ですか」
「君がなかなか目を覚まさないから心配していたの。看病も私がしていたんだから」
「あ、それはありがとうございます」
　どうやら倒れていた所をこの人に助けてもらったようだ。全然記憶にないが。それにしても
「看病に裸はおかしい」
　思わず声に出してしまった。
「だから着ているって。ほら」
　そう言いながら彼女は俺の前に来た。慌てて顔をそらそうとしたが
「着ている」
　服を着た彼女がいた。少し残念な自分が嫌だ。
「まぁ大地が見たいなら考えとくね」
「見たいなん……え？」
　違和感を覚えた。
「どうして俺の名前知っているんですか？」
「え？だってはじめましてじゃないし…もしかして…」
　彼女は何かに気付いたように
「私のこと覚えてないの？」
　そう続けた。
「え？はい」
　覚えていないというか記憶にない。こんな第一印象から変わった人と記憶する人を忘れたくても忘れられないだろう。
「あっちゃぁぁぁ！失敗した！！」
　……失敗？
「あのぉ、どういう意味ですか？」
「どこでだろう…あの時少し欠けたから…それともあの時喰ったから」
　無視ですか…時々聞こえる単語が怖いのですが…。
「とりあえずこの件は保留！」
　いや。保留にしないで下さい。
「私、サクマに報告してくるからここにいて。あ、私の名前はシズクね」
　そして現在に至る。