魂を紡ぐもの

にゃら

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第4章

正しさとは

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「私はシズクに会いに来ているの!あんた邪魔!」
「邪魔と言われましても今の所此処が居場所ですので」
「ルクスの奥の方にでも隠れてなさいよ!」
「そう言われましても」
「私はあんたの顔見たくないわけ!分かる!?」
 おお。部屋の前まで来たのは良いけど開ける勇気が湧かない。
「シズク…」
「全く…」
 そう言いながらシズクは扉を開け
「リズうるさい。成美や陽奈が怖がっているでしょ」
 そう一喝した。
「シズク!お帰り!おお!成美ちんに陽奈ちん!」
「リズっち久々!」
 リズっちは私を抱きしめ離れ陽奈を抱きしめた。
「むむむ?陽奈ちんどうした?元気ないぞ」
「ちょっと気分が悪くてね。ってかリズさん痛い」
「おお!さては時空酔いだな」
 そんな言葉初めて聞いた。
「コーヒーでも飲む?」
「あ、ありがとうございます。大地さん」
「とりあえず横になってなよ」
「うん。ゴメンね。話まだ聞けそうにない」
「良いよ。私先に桜井加奈の件片付けるね」
「あ、あのお姉さん今日なんだ」
 確か浄化だっけ?シズクが一番忙しい時だ。それなのにわざわざ今日集合させたんだ。
「そうだよ。リズ。2人をお願いね」
「ラジャー!お裾分け期待しているね!」
「それはない」
 そう言ってシズクが部屋から出て行った。
「成美ちん」
「何?リズっち」
「後から覗きに行く?」
「あ、行きたい!」
 シズクがどう浄化するのか見てみたい。
「決まりだね。陽奈ちんは?」
「私は此処で待っいてる」
「ラジャー!」
 サクマさんや大地くんが何も言わないけど私見て良いのかな。ま、いっか。

 あれから1週間が過ぎた。つまり今日がこの夢とサヨナラする日。私は何個かの罪に既に気付いている。後はあの女が現れるのを待つだけだ。
「佳奈?どうしたの?」
 隣で大地が心配してくる。偽物の大地が。
「なんでもない」
「嘘だよね」
「え?」
「俺に嘘…隠している事あるよね」
「ないよ」
「それが嘘なんだよ!」
 こんな怒る大地を見たことがない。いつも優しくしてくれた大地ではない。
「どうしたの大地」
「他の男もそうやって優しくしたのだろ」
「何言っているの?」
「他の男を騙して金奪っていたんだってな」
「どうして…それを」
 動揺を隠せない。身体が震える。この世界が偽物と知っているのに全てが現実世界でバレた気がしてしまう
「佳奈の友達から全部聞いた。最近おかしいから不思議だったんだ。でも分かった。俺も他の男と一緒な存在なんだろ!」
「ち、違うよ大地」
「名前を呼ぶな!今更罪悪感でもあるのか」
「どうして分かってくれないの!」
「分かるもんか!じゃあな!」
「待って!」
 慌てて追いかける。何に焦っているのだろう。私が罪を見つけるとこの世界は無くなるというのに。
「近寄るな!触るな!」
 近付けた手を叩かれる。
 痛い…。
「お願いだから話を聞いて!」
 再び手を近付け、叩かれる。それでも手を近付ける。叩かれる。
 そんな行為を何回繰り返しただろうか。手から血が流れる。そしてようやく手を掴んだと思った時、大地が消えた。
 鈍い音と共に。
「…え」
 気付くといつの間にか階段の1番上に私…1番下に階段を転がり落ちた大地が。
「だ…大地!」
 慌てて階段を降り大地の元へ走る。
見た大地は首が変な方向に向き身体中から血を流していた。
「いやぁぁぁぁあああ!!!」
 どうして…どうして…どうして…。
「あーあ。殺しちゃった」
 聞き覚えがある声が上から聞こえる。
「シズク…!」
「喧嘩の原因は違うだろうけど、そうやって現実の世界でも彼氏殺したのね」
 身体の震えが止まらない。
「どうしてそれを…」
「言ったでしょ。ここは夢と現実の狭間。それで罪は分かったの?」
「私の罪は人を騙し続けたことよ」
 これが1番だろうと思い告げる。これで私の勝ちだ。そう思ったからこそシズクの言葉に驚愕する。
「それだけ?」
「ほ、他にもあるわ」
「へぇ。どんなの?」
 それが一番で無い事に慌てる。だ、大丈夫。まだある。
「み、見たでしょ!現実でも同じ事をしたわ!彼を助ける事が出来なかった事よ」
「うん。不正解。他には?」
 考えろ。考えろ私。これに負けたら待つのは死なのだから。
 はぁと溜息が聞こえる。
「次が最後ね。罪は分かった?」
 考えろ。頭をフル回転させる。それでも先程の考え以上が思いつかない。それでも私は考える事を止めない。止めるわけにはいかない。考えていると顔の横を何かが通り過ぎた。
 頬から血が流れている。
「え!?な、なに!」
「何って…ピアス投げつけた」
「なぜ!」
「桜井加奈を殺すため」
 槍の様な物が頬をかすめ、血が流れる。
「私そんなに気が長くないの。だから早く答えて」
「や、やめて!」
 慌てて逃げる。後ろからクスクスと笑いながら後を追ってくる。
「罪は分かったの?」
「止めてよ!」
「貴女は止めたことあるの?」
 クスクス笑いながら近付いてくる。
「来ないで!」
 怪我した足をかばいながら地をはうように逃げる。殺される
「罪は分かった?」
「お願い…助けて…」
 目の前に立たれる。手には大きな槍の様なモノを持っている
「貴女はその願い叶えてあげたことある?」
 ゆっくりと近付いてくる。
「来ないで…」
 笑いながら近付いてくる。
 身体が言うことを聞かない。
 笑っている。
 逃げ出したいのに言うことを聞かない。
 槍の様なモノの先端が心臓に近付く。
 怖い…動けない。
「ねぇ桜井加奈。最後の質問ね」
 彼女は笑顔で続ける。
「罪は分かった?」
「た…助けて」
「残念ね。さよなら」
 心臓に刺さる。
 あぁこんな風に最後を迎えるなんて思わなかった。誰からも優しくされなかった人生だった。
違うか。私が優しくしてなかったのか。なんで生きている時気付けなかったのだろうか。
 自分自身の罪に。
 こんな簡単な事に。
「私の罪…優しさに気付けず…与えなかったこと」
「正解」
 そうして私は死んだ。
 最後に見たのは私に優しさを教えてくれた女の笑顔だった。
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みんなの感想(1件)

花雨
2022.01.05 花雨

先が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^^)

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