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一つ目の感情
事故の後
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俺の心にはもう何も無かった。ふとトラックの方へ顔を向けた。死んでいるのだろうと思いながら振り向くと男が担架で救急車に運ばれていった。どうして。どうしてあいつは生きているの。なんでお父さん達はいないのにあいつは生きているの。
男の方を見ていくにつれて男の心の部分に黒いもやがかかっているのが見えた。
事故の前の事を思い出した、あいつは逆走してぶつかってきたのを。警察が言うには居眠り運転だった。
「……」
もう感情が無かった。
これから俺はどうすればいいのだろう。孤独だ。親戚の家に住むのか。皆嫌がるだろう。あいつのせいで孤独になった。涙はずっと出ない。しかしまだ雨は降っている。まるで自分の涙のように。自分の涙の代わりなのか雨が少し強くなった。本当にもう自分自体が無になった。
何にも染まれる白ではなく、何ににも染められない黒でもない。無だ。
そして雨の音と共に、いつの間にか来ていた救急車のサイレンが鳴り始めた。男が病院へ行ったのだ。
男の心にはまだ黒いもやがかかっている。
すると俺は自分の名前を呼ばれた。警察だった。
「悲しいと思うが、君も病院へ行った方がいい。トラックの男は警察病院へ運ばれたので会うことは無いから安心しろ」
「はい……」
そう言って近くの病院まで救急車で運ばれた。
俺は救急車の中でずっと天井を見ていた。一点だけずっと見ていた。
すると救急車に乗っている医者が
「どうして泣いていないのだい?悲しくないのかい?」
と、優しい口調で言った。
しかし僕は医者の人の言葉を無視した。
あの男はきっと、死刑にならず数年後に刑務所から出てくるのだろう。どうして、どうして人を殺したのにまだ生きていられるの?
誰か……教えてよ……
車が止まった。病院に着いたのだった。
検査を受けたが異常はなかった。肉体だけは。
感情って何だっけ。思い出せない。笑うって何だ? 楽しいって何だ? もう分からない。
「君は両親に愛されていたんだね。ドライブレコーダーを警察が見せてくれたんだよ。お母さんは事故の直前、君を守るように抱きついていたよ」
「え……」
「お父さんは最後こんなこと言ってた」
そう言ってドライブレコーダーに撮られてた音声を聞かせてくれた。
「陽真は俺たちのヒーローだ。陽真のおかげで楽しかった。今度は俺たちが守る番だな」
二人は同時に
「あり……が…とう」
と言ってそこで音声は終わった。
「三日後には退院できるよ。安静にしていてくださね。悲しいと思いますが頑張りましょう」
俺は医者がなんて言ったか分からなかった。聞こえてない訳では無い。悲しいという意味が分からなかった。下を向き、病室へ連れていかれた。病室へ行くまでに看護師さんが何か俺に話していたかもしれない。しかし分からない。自分の病室に着いた時もう看護師さんはいなかった。
何故だろう。両親が来てくれるのを待っている自分がいた。いつ来るのだろう。早くお見舞して欲しい。そうしているうちに視界は段々と暗くなっていた。俺は夢を見た。笑っている少年と手を繋いでいる男女二人が歩いている夢を。すると段々と男女2人が消えて、少年一人になっていた。中学生くらいだろうか。顔は見えない。辺りが暗くなり少年は床に座りこみ顔に手を当てて泣いていた。最初は温かい緑色をしたもやだったが次第に無色に変わっていた。
陽真の感情:無
男の方を見ていくにつれて男の心の部分に黒いもやがかかっているのが見えた。
事故の前の事を思い出した、あいつは逆走してぶつかってきたのを。警察が言うには居眠り運転だった。
「……」
もう感情が無かった。
これから俺はどうすればいいのだろう。孤独だ。親戚の家に住むのか。皆嫌がるだろう。あいつのせいで孤独になった。涙はずっと出ない。しかしまだ雨は降っている。まるで自分の涙のように。自分の涙の代わりなのか雨が少し強くなった。本当にもう自分自体が無になった。
何にも染まれる白ではなく、何ににも染められない黒でもない。無だ。
そして雨の音と共に、いつの間にか来ていた救急車のサイレンが鳴り始めた。男が病院へ行ったのだ。
男の心にはまだ黒いもやがかかっている。
すると俺は自分の名前を呼ばれた。警察だった。
「悲しいと思うが、君も病院へ行った方がいい。トラックの男は警察病院へ運ばれたので会うことは無いから安心しろ」
「はい……」
そう言って近くの病院まで救急車で運ばれた。
俺は救急車の中でずっと天井を見ていた。一点だけずっと見ていた。
すると救急車に乗っている医者が
「どうして泣いていないのだい?悲しくないのかい?」
と、優しい口調で言った。
しかし僕は医者の人の言葉を無視した。
あの男はきっと、死刑にならず数年後に刑務所から出てくるのだろう。どうして、どうして人を殺したのにまだ生きていられるの?
誰か……教えてよ……
車が止まった。病院に着いたのだった。
検査を受けたが異常はなかった。肉体だけは。
感情って何だっけ。思い出せない。笑うって何だ? 楽しいって何だ? もう分からない。
「君は両親に愛されていたんだね。ドライブレコーダーを警察が見せてくれたんだよ。お母さんは事故の直前、君を守るように抱きついていたよ」
「え……」
「お父さんは最後こんなこと言ってた」
そう言ってドライブレコーダーに撮られてた音声を聞かせてくれた。
「陽真は俺たちのヒーローだ。陽真のおかげで楽しかった。今度は俺たちが守る番だな」
二人は同時に
「あり……が…とう」
と言ってそこで音声は終わった。
「三日後には退院できるよ。安静にしていてくださね。悲しいと思いますが頑張りましょう」
俺は医者がなんて言ったか分からなかった。聞こえてない訳では無い。悲しいという意味が分からなかった。下を向き、病室へ連れていかれた。病室へ行くまでに看護師さんが何か俺に話していたかもしれない。しかし分からない。自分の病室に着いた時もう看護師さんはいなかった。
何故だろう。両親が来てくれるのを待っている自分がいた。いつ来るのだろう。早くお見舞して欲しい。そうしているうちに視界は段々と暗くなっていた。俺は夢を見た。笑っている少年と手を繋いでいる男女二人が歩いている夢を。すると段々と男女2人が消えて、少年一人になっていた。中学生くらいだろうか。顔は見えない。辺りが暗くなり少年は床に座りこみ顔に手を当てて泣いていた。最初は温かい緑色をしたもやだったが次第に無色に変わっていた。
陽真の感情:無
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