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第三話 交渉
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「…そうですね。今回は僕の独断で来ました、申し訳ございません。しかし、どうしても貴方に聞きたい事があるのです。」
「ほう?…聞きたい事とは、何の事だい?」
「ご存知でしょうが、”ストレンジ”という現在感染を拡げているウイルスについて、何か知っていることはありませんか?」
戌井は少し考え込んだ表情になった。機密情報でもあるような内容な為、ダメ元ではあったが今は少しでも情報が無ければ学生のお遊びで終わってしまう。
戌井がどこまで寛容な精神の持ち主かによって、ルイク達の今後が決まってしまう。
「…あぁ。最近新たに判明した事があるんだ。聞きたいかい?」
「…!勿論です!お願いします!」
予想もしていなかった回答に、ルイクは身を乗り出すほどの勢いで返答した。その姿に、戌井は少しクスッと笑みをこぼした。が、そう上手くはいかない。
「しかし、タダという訳にはいかないだろう?等価交換だ。君がくれた情報と同じ価値の情報をこちらも提供しよう。」
「…分かりました。まず、感染経路は感染者の体液に触れることだと予想しています。今までの感染者は全員、もれなく吐血をしています。」
「だが、血液からの空気感染だとは考えられないのかい?」
「そうだとした場合、感染者数はもっと爆発的に増えていると思います。ですが、感染者数は増え続けているとはいえ大きく増加している訳ではありません。そのため、空気感染ではないと考えています。」
「ほう。ならば傷口に血液やその他体液が触れることで感染するのかい?」
「…恐らく、それでもないと思います。今まで感染した人の中には怪我をした人が居ませんでした。完治の前に感染した可能性もありますが、しかしとても気になっている事があるのです。」
「気になっている事…?」
「最初の感染者は、懲罰房にいた囚人です。その時、囚人に外傷は見られなかったようです。それに、しばらくの間懲罰房に居たため、他の人間との接触も無かったのです。それでは…一体どうやって感染したというか、不思議でたまりません。」
「そうだね…それについては私も調べている最中だよ。しかし、何者かが懲罰房にウイルスを解き放った可能性が高いだろうね。」
「とにかく、結論としては傷口からの感染でもなく、”少しでも体液に触れるだけで感染する”のだと僕は考えています。」
一通り話終わったところで、ルイクはほっと息を吐いた。自分が唯一持っている確証はない情報。それがどう動くかどうかは分からない。
戌井はまた頭の中で考えをまとめているような顔をしている。数秒か、または数分が経った頃ついに決断は下された。
「…最近、私の研究で分かったことがあるのだよね。マウスを使った研究だよ。しかし、とある”特殊なマウス”を使ってね。」
「特殊なとは、新種という意味でしょうか?」
「まぁある意味そうだね。最近見つかったばかりの”魔力を持った”マウスさ。片方は通常のマウス、もう片方は魔力持ちのマウス。二匹が入ったケースに感染者の血液を入れると、なんと魔力持ちのマウスは感染せずに生き残っていた!」
その驚きの実験結果に、取り残されたレントのようにあんぐりと口を開けた。確かに、最初の実験で感染しなかったマウスが居たことを知っていたが、何故生き残っていたかまでは解明されていなかった。だが、これではっきりした。
「つまり、魔力を持つ者には感染しないんだよ。最初の実験で使われたマウスにも魔力持ちが含まれていて、感染していなかった個体がそうだ。」
「し、しかし!こんな情報、良いのですか!?とても重大な情報では…?」
「感染経路について私はまだ解明できていなかった、そのヒントを君はくれたのだよ。これで等価交換は完了さ。」
「あ、ありがとうございます!…その、厚かましいのですが、連絡先を聞いてもよろしいでしょうか?再度協力をお願いする場面があるかもしれないのですが…」
「別にいいよ。しかし、その場合はまた情報の等価交換さ。」
「ありがとうございます。それでは、失礼しました。」
院長室から出て、扉を閉めた時身体中の力が抜けへたり込んでしまった。想像もしていなかった結果が得られた事への驚きと、こんな生徒を通した事への疑問が心に残っていた。
(レントの所に早く戻らないとな)
そう考えていた時、戌井は今日の会話をメモしていた。
「一体あの青年は、情報を集めて何をする気なのだろうか。ウイルスを消滅させることか、ワクチンを作ることか、どちらにせよ、まずはアマミにあの青年がどういう生徒か…だが、名前を聞くのを忘れていたな」
そう考えていると、戌井の携帯が鳴る。警察からの電話だった。すぐさま電話に出ると、
「もしもし。緑葎総合病院院長の戌井です。」
「もしもし。こちらH県警の生活完全課です。現在、行方不明となっている”貞女述 天海さん”について、何か知っている事や、目撃情報はありませんか?」
「……”行方不明”…?」
息を呑んだ。世界でも戦えるような魔法が使える強者が、幼少からの友人が行方不明となった。戌井は警察からの電話の後、すぐさまアマミに電話をかけたが案の定出ない。
いてもたってもいられない戌井は、急いで院長室飛び出した。
「ほう?…聞きたい事とは、何の事だい?」
「ご存知でしょうが、”ストレンジ”という現在感染を拡げているウイルスについて、何か知っていることはありませんか?」
戌井は少し考え込んだ表情になった。機密情報でもあるような内容な為、ダメ元ではあったが今は少しでも情報が無ければ学生のお遊びで終わってしまう。
戌井がどこまで寛容な精神の持ち主かによって、ルイク達の今後が決まってしまう。
「…あぁ。最近新たに判明した事があるんだ。聞きたいかい?」
「…!勿論です!お願いします!」
予想もしていなかった回答に、ルイクは身を乗り出すほどの勢いで返答した。その姿に、戌井は少しクスッと笑みをこぼした。が、そう上手くはいかない。
「しかし、タダという訳にはいかないだろう?等価交換だ。君がくれた情報と同じ価値の情報をこちらも提供しよう。」
「…分かりました。まず、感染経路は感染者の体液に触れることだと予想しています。今までの感染者は全員、もれなく吐血をしています。」
「だが、血液からの空気感染だとは考えられないのかい?」
「そうだとした場合、感染者数はもっと爆発的に増えていると思います。ですが、感染者数は増え続けているとはいえ大きく増加している訳ではありません。そのため、空気感染ではないと考えています。」
「ほう。ならば傷口に血液やその他体液が触れることで感染するのかい?」
「…恐らく、それでもないと思います。今まで感染した人の中には怪我をした人が居ませんでした。完治の前に感染した可能性もありますが、しかしとても気になっている事があるのです。」
「気になっている事…?」
「最初の感染者は、懲罰房にいた囚人です。その時、囚人に外傷は見られなかったようです。それに、しばらくの間懲罰房に居たため、他の人間との接触も無かったのです。それでは…一体どうやって感染したというか、不思議でたまりません。」
「そうだね…それについては私も調べている最中だよ。しかし、何者かが懲罰房にウイルスを解き放った可能性が高いだろうね。」
「とにかく、結論としては傷口からの感染でもなく、”少しでも体液に触れるだけで感染する”のだと僕は考えています。」
一通り話終わったところで、ルイクはほっと息を吐いた。自分が唯一持っている確証はない情報。それがどう動くかどうかは分からない。
戌井はまた頭の中で考えをまとめているような顔をしている。数秒か、または数分が経った頃ついに決断は下された。
「…最近、私の研究で分かったことがあるのだよね。マウスを使った研究だよ。しかし、とある”特殊なマウス”を使ってね。」
「特殊なとは、新種という意味でしょうか?」
「まぁある意味そうだね。最近見つかったばかりの”魔力を持った”マウスさ。片方は通常のマウス、もう片方は魔力持ちのマウス。二匹が入ったケースに感染者の血液を入れると、なんと魔力持ちのマウスは感染せずに生き残っていた!」
その驚きの実験結果に、取り残されたレントのようにあんぐりと口を開けた。確かに、最初の実験で感染しなかったマウスが居たことを知っていたが、何故生き残っていたかまでは解明されていなかった。だが、これではっきりした。
「つまり、魔力を持つ者には感染しないんだよ。最初の実験で使われたマウスにも魔力持ちが含まれていて、感染していなかった個体がそうだ。」
「し、しかし!こんな情報、良いのですか!?とても重大な情報では…?」
「感染経路について私はまだ解明できていなかった、そのヒントを君はくれたのだよ。これで等価交換は完了さ。」
「あ、ありがとうございます!…その、厚かましいのですが、連絡先を聞いてもよろしいでしょうか?再度協力をお願いする場面があるかもしれないのですが…」
「別にいいよ。しかし、その場合はまた情報の等価交換さ。」
「ありがとうございます。それでは、失礼しました。」
院長室から出て、扉を閉めた時身体中の力が抜けへたり込んでしまった。想像もしていなかった結果が得られた事への驚きと、こんな生徒を通した事への疑問が心に残っていた。
(レントの所に早く戻らないとな)
そう考えていた時、戌井は今日の会話をメモしていた。
「一体あの青年は、情報を集めて何をする気なのだろうか。ウイルスを消滅させることか、ワクチンを作ることか、どちらにせよ、まずはアマミにあの青年がどういう生徒か…だが、名前を聞くのを忘れていたな」
そう考えていると、戌井の携帯が鳴る。警察からの電話だった。すぐさま電話に出ると、
「もしもし。緑葎総合病院院長の戌井です。」
「もしもし。こちらH県警の生活完全課です。現在、行方不明となっている”貞女述 天海さん”について、何か知っている事や、目撃情報はありませんか?」
「……”行方不明”…?」
息を呑んだ。世界でも戦えるような魔法が使える強者が、幼少からの友人が行方不明となった。戌井は警察からの電話の後、すぐさまアマミに電話をかけたが案の定出ない。
いてもたってもいられない戌井は、急いで院長室飛び出した。
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