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第一章 名医の条件、仁医の条件
縁は異なもの味なもの
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大きな松明を掲げた集団が踏み込み、あっと言う間にセシリャを保護し、次いで桔梗とアンジュを取り囲む。
「っ?!」
目まぐるしい展開に茫然自失する桔梗。
「どうした?」
鋭い声と共に集団が割れ、そこから一人の青年が出て来た。
『騎士だ、騎士がいるっ!』
桔梗は心の中で感嘆の声を上げる。
翡翠色の目、肩を覆う銀髪を襟足で括っている。
鋭い容貌、高い身長、スラッとした体躯。
黒い騎士服を着ており、それが彼の優雅な立ち振る舞いとストイックな雰囲気に似合う。
彼は桔梗の右横に立つ青年に目配せをした。
「彼女は?」
「分かりません。
ロゼン ギュスターヴの傍に座っていたのですが………」
「私は医師です」
桔梗はそう言いながらゆっくりとアンジュを抱き上げ、ややあって彼らを見上げる。
『こっちは王子様かよっ!』
桔梗は心の中で突っ込んだ。
肩を擽る金髪と紺碧色の目。
甘い容貌、高い身長、スラッとした体躯。
黒い騎士服を着ており、それが彼の穏やかな雰囲気を引き立てる。
「彼女は妊娠一ヶ月です。
何もないとは思いますが、念の為私の診療所へ運んで頂けませんか?」
「失礼ですが、あなたは女性では?」
彼(桔梗曰く、王子様)は怪訝な目で桔梗を見る。
悪意はないのだろう。
これっっぽっちもないのだろうが、それだけに癪に障った。
桔梗は溜め息をつきながらまたか……と思う。
自分が医師ですと名乗ると、必ずトラブルが起こる。
『どいつもこいつも………。
女性解放運動してやろうか?』
「女だから、何です?
この国には医師の性別を定める法はなかったと記憶しておりますが」
「法はありませんが、医師は刃物を持つ事も従軍を求められる事も多い。
女性の仕事ではありません」
「あなたに心配して頂く筋合いはありません。
彼女を運んで頂けるんですか?
頂けないんですか?
頂けないなら、後日奥様の診察に伺いますと、フィリップ様にお伝え下さい」
空気が凍り付いた。
イシリエン帝国の上流階級には厳格で複雑怪奇な作法がある。
敬称も然り。
上流階級の者は皇帝をトゥール ○○と呼んでも良いが、中・下流階級の者はユア トゥールと恭しく呼ばなければいけない。
間違えたら大変だ。
セシリャの夫はギュスターヴ伯爵・フィリップ グスタヴスだ。
ギュスターヴは領地名であり、フィリップ グスタヴスが姓名である。
桔梗は彼を名で呼んだが、これは親しい者の特権だ。
彼女の身分ではユア グラーフかユア グラーフ ギュスターヴと呼ばなければならない。
私はギュスターヴ伯爵の庇護を得ている=それなりの扱いをしろと言ったも同然だ。
無礼にも程がある。
彼らは哨鎧騎士団、国を外から護る為の組織であり、国防の要を担う。
その権限は大きく、彼らが団結すれば皇帝の首を挿げ替える事も出来る。
国内では騎士団の最高峰として知られている。
間違っても平民が大口を叩いて良い相手ではない。
ないのだが、幸か不孝か、桔梗は頭に血が上っていた。
そもそも身分制度がない国で育った彼女にとって身分<命が常識である。
「では、失礼します」
桔梗はサッと立ち上がって駆け出した。
彼らはその場に呆然と突っ立っている。
これが桔梗と哨鎧騎士団の出会いだった。
彼女の元に煌星が集まり始める。
「っ?!」
目まぐるしい展開に茫然自失する桔梗。
「どうした?」
鋭い声と共に集団が割れ、そこから一人の青年が出て来た。
『騎士だ、騎士がいるっ!』
桔梗は心の中で感嘆の声を上げる。
翡翠色の目、肩を覆う銀髪を襟足で括っている。
鋭い容貌、高い身長、スラッとした体躯。
黒い騎士服を着ており、それが彼の優雅な立ち振る舞いとストイックな雰囲気に似合う。
彼は桔梗の右横に立つ青年に目配せをした。
「彼女は?」
「分かりません。
ロゼン ギュスターヴの傍に座っていたのですが………」
「私は医師です」
桔梗はそう言いながらゆっくりとアンジュを抱き上げ、ややあって彼らを見上げる。
『こっちは王子様かよっ!』
桔梗は心の中で突っ込んだ。
肩を擽る金髪と紺碧色の目。
甘い容貌、高い身長、スラッとした体躯。
黒い騎士服を着ており、それが彼の穏やかな雰囲気を引き立てる。
「彼女は妊娠一ヶ月です。
何もないとは思いますが、念の為私の診療所へ運んで頂けませんか?」
「失礼ですが、あなたは女性では?」
彼(桔梗曰く、王子様)は怪訝な目で桔梗を見る。
悪意はないのだろう。
これっっぽっちもないのだろうが、それだけに癪に障った。
桔梗は溜め息をつきながらまたか……と思う。
自分が医師ですと名乗ると、必ずトラブルが起こる。
『どいつもこいつも………。
女性解放運動してやろうか?』
「女だから、何です?
この国には医師の性別を定める法はなかったと記憶しておりますが」
「法はありませんが、医師は刃物を持つ事も従軍を求められる事も多い。
女性の仕事ではありません」
「あなたに心配して頂く筋合いはありません。
彼女を運んで頂けるんですか?
頂けないんですか?
頂けないなら、後日奥様の診察に伺いますと、フィリップ様にお伝え下さい」
空気が凍り付いた。
イシリエン帝国の上流階級には厳格で複雑怪奇な作法がある。
敬称も然り。
上流階級の者は皇帝をトゥール ○○と呼んでも良いが、中・下流階級の者はユア トゥールと恭しく呼ばなければいけない。
間違えたら大変だ。
セシリャの夫はギュスターヴ伯爵・フィリップ グスタヴスだ。
ギュスターヴは領地名であり、フィリップ グスタヴスが姓名である。
桔梗は彼を名で呼んだが、これは親しい者の特権だ。
彼女の身分ではユア グラーフかユア グラーフ ギュスターヴと呼ばなければならない。
私はギュスターヴ伯爵の庇護を得ている=それなりの扱いをしろと言ったも同然だ。
無礼にも程がある。
彼らは哨鎧騎士団、国を外から護る為の組織であり、国防の要を担う。
その権限は大きく、彼らが団結すれば皇帝の首を挿げ替える事も出来る。
国内では騎士団の最高峰として知られている。
間違っても平民が大口を叩いて良い相手ではない。
ないのだが、幸か不孝か、桔梗は頭に血が上っていた。
そもそも身分制度がない国で育った彼女にとって身分<命が常識である。
「では、失礼します」
桔梗はサッと立ち上がって駆け出した。
彼らはその場に呆然と突っ立っている。
これが桔梗と哨鎧騎士団の出会いだった。
彼女の元に煌星が集まり始める。
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