帝国医学史奇譚~魔女と聖女の輪舞曲(ロンド)~

治世と乱世の狭間で己(おの)が医道を貫く一人の女性がいた。
彼女とその仲間が描く医学の軌跡。
そこには人の世の光と影と闇があった。




恋に生きるは儚くて、金に生きるは虚しくて、出世に生きるは草臥れて、とかくこの世は生きづらい。

「望んで生んだガキを売る親なんかいねぇ」

「大嫌いだよ、こんな国。
でも、生まれたからには生きていかなきゃね。
泣いても一生、笑っても一生なら、笑って生きた方がいい。
大嫌いな奴に泣かされっぱなしなんて悔しいじゃないか」

「殺すより生かす方が難しいんだ、人は」

「心配するな。
白衣を着たアンタは皇太子より気高い。
前だけ見て歩け」

「戦に必要なのは大義だ、正義じゃない。
大義ってのは国を動かす名分、それが正義とは限らないし、限る意味も理由もないだろ?」

「戦に正義も何もない。
正義と正義が打つかり合うのが戦だ。
こちらにこちらの正義があるように、あちらにもあちらの正義がある」

「敗者は弱者だ。
そして、弱者には権利も選択肢もない。
戦場とはそういう場所だ。
軍医はこれを呑み込んで一人前、呑み込めないアンタに軍医は無理だ」

「どんな形であれ、皆さんは我が国の勝利に貢献したのです。
それを嘲笑するなんて理不尽ですわ。
理不尽を許す必要はございません」

「なら、これだけは覚えとけ。
この世には絶対の悪も絶対の正義もねぇ。
そんな都合のいいモンは存在しねぇんだ」




表紙はこちら。
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